「甘い夢を、その唇に」3
あきらの右手がおそるおそる触れてくるのを感じて、ゆかりがトップスの裾をヘソの上までめくり上げた。白くて柔らかな腹部を、慣れない指の動きが這う。
くっ…と、ゆかりが小さく喉をのけ反らせた。
あきらの指が動くたび、ゆかりのお腹がひくつく。声を我慢している分、ゆかりの呼吸がわずかに乱れてきている。暗闇の中、それを耳で感じとったあきらが、もう少しだけカラダをすり寄せ、彼女の首の下から回した左腕で、そっと頭を抱く。
「ゆかり、くすぐったかったら、無理して声をこらえなくてもいいから」
「……無理なんてしてないわ」
いつもどおり、どこか退屈そうな口調。でも、その声音にガマンの色がにじみ出ている事に、ゆかり自身は気付いていないようだった。あきらが声を立てずに苦笑。
顔を寄せて、彼女の頬に鼻の頭を、ちょこん、と当てた。
ボディソープのいい匂いの下にある、ゆかり自身の本来の匂いを嗅ぎ分けて、目を閉じる。
「ゆかりの匂い、嗅いでると落ち着く」
ほっそりしたウエストの肉付きを、指先ですりすりと静かにさすってみる。
柔らかな肉の下でキュッと締まった腹筋がこそばゆさに反応するたび、ゆかりの白いお腹が可愛らしく、そして悩ましげに揺すられる。
肌の張りの下から指先に伝わってくる、柔らかな肉の弾力が気持ちいい。
(指だけじゃ物足りない。ゆかりのお腹、もっと味わってみたい)
雪のように白く、きめこまやかな肌に手の平を這わせて ――― 。
ゆっくりと、円を描くみたいに。
「…っっ!」
びくっ!と、ゆかりの全身が激しく震えた。ぞわっ…と鳥肌が立たんばかりのくすぐったさ。
それでも何とか声は押し殺す。
(ああ、だめっ、気が……変になる……)
すべすべとした腹部を、サー…っと羽根が這うような愛撫でなぞり上げられる。しかも、単調な動きではなく、ゆかりの意識を責め立てるみたいに上手く緩急を付けて。
「んっ…、んっっ……、ふっ、うっ」
懸命にこらえようとするくちびるから、甘く洩れるうめき声。
びくっ…びくっ…と、柔らかな肉の下で痙攣する腹筋が、おかしくなりそうだった。
(でも、この感じ、ふふふっ、嫌いじゃないわ)
こんな風に、無防備なお腹を他人の手で撫でまわされるのは、もちろん初めて。
くすぐったいけれど、それだけではない。あきらの手の動きに、カラダが悦びを覚えている。
平静さを装った声で、あきらに問うてみる。
「どう? わたしのお腹のさわり心地は」
「うん。やわらかいし、きもちいい。……あ、おへそ」
あきらが、つつーっ…と、その綺麗なくぼみへ指先をすべらせた。ゆかりが腹筋をひくつかせながら、ついに笑ってしまった。
「ひゃっ…、あははっ、あはははっ、こらっ、あきらぁっ…」
「ようやく降参したね、ゆかり」
「別に降参なんてして ――― 、やっ…、待ってっ、あっ、ホントにっ……だめっ」
さわっ…さわっ…。
女子高生の腹部をまさぐり続ける手の動きに、たまらず音(ね)を上げてしまうゆかり。我慢を忘れて、ベッドの上でくねくねとカラダを悶えさせる。
「そろそろ降参?」
「あ…、うっ、しない…わよっ、あっ……」
「じゃあ、こういう触り方なら? それとも、この可愛らしいおへそを……こうかな?」
くにくに……こしょこしょ……。
「あっ、……あっ、あははっ、やだっ、駄目ぇっ」
「くすぐったい? 降参?」
「するわけ ――― あっ! あぁっ、ちょっと待って、わき腹……駄目っ! あっ、やぁっ」
「ゆかり?」
「ああっ……、はひぃっ…、くっ、うっ…、嫌よ、絶対にっ、……しないわっ」
誰かに屈するのは、彼女のプライドが許さないらしい。負けず嫌いな姿勢を貫こうとするゆかりが可愛くて、そんな自分の気持ちを伝えるように、あきらがくちびる同士を重ね合わせた。
(ゆかり……)
あきらのくちびるの下で、ゆかりの美しい桜唇が、人生で二度目のくちづけに喘ぐ。
軟らかい。とろけている。
甘美な感覚。
(……ウッッ!)
――― それに酔いかけたあきらの意識が、一瞬で醒めた。
痛み。
くちびるを噛まれた、と理解して思わず顔を離したあきらへ、ゆかりが艶然と笑いかけた。
「ふふふっ、ごめんなさい。わたしもあきらと同じで、キスが下手なの」
「へえ、そうなんだ。奇遇だね」
あきらは怯まない。受けて立つ気満々だ。
ゆかりのお腹に手を置いたまま、再びキスを交わしにいく。
(ふーん、まだするのね)
ゆかりが、微笑みながら両目を細めた。
ご主人様にイタズラする犬は、躾けなくっちゃ ――― 。
三度目のキス。
あきらのつややかなくちびるに、きつく歯を立てる。
けれど、今度のあきらは、その痛みすら愛おしいと言わんばかりに、くちびるを押しつけてくる。
(……っ!)
と、ゆかりが閉じたまぶたの裏で動揺。
くちびるを熱く酔わせる『ショコラ』の味を前に、噛みつくチカラが、みるみる弱まっていく。
――― 心が、甘く溶け崩れるみたいに。
(あきら……)
ゆかりが、噛んでいたくちびるを解放した。
そして、噛んでいた部分に、詫びるように優しく舌先を添わした。ゴメンナサイという言葉の代わりに、チロチロと舐める。
「んっ」と、こそばゆそうに顔を引きかけたあきらが、お返しに、ゆかりのくちびるを一舐め。
「あっ…」
短く喘いだゆかりが、熱く息を湿らせて、舌先を突き出した。あきらもまた同じく。
二人の舌先が触れ合う。
「んんっ…」
「うっ……ンッ」
くちづけよりも、ずっと興奮した。
お互いに舌先をチロチロと動かして、くすぐったさに身じろぎしつつ、唾液で濡れた肉の弾力を味わい続ける。
(わたし、あきらのツバ舐めちゃってる……)
もっと舐めようとした舌先が、あきらのくちびるに咥えられた。そのまま強く吸われる。
「ん゛ぅっ」
舌を柔らかな圧力で締め付けられたゆかりが、眉間に悩ましげなシワを刻んでうめく。
ゆかりのお腹を撫でさする手の動きも、いつのまにか復活していた。
スー…っとヘソの上を通って滑り落ちた手の平が、再びスー…っと戻ってきて ――― 。
優しく往復する手の動きに交じって、たまに不意を突いて、あきらが指先でゆかりの綺麗なヘソをいじくってくる。
「む゛ぅっ……うぅ……」
ゆかりが不自由な口であえぐ。
もうくすぐったいのか気持ちいいのか、彼女自身にも判断できない。
「んっ…、う、んっっ……ん……」
腹部をひくつかせて悶えるゆかりの舌を、あきらが執拗なほどに吸いしゃぶって、ツバまみれにしてくる。くちびるをなまめかしく動かして、熱く濡れた舌の軟らかさを、さらに蕩けさせようとするみたいに。
(そうね、特別に今夜だけ ――― 降参してあげてもいいかも)
ゆかりが心の中で、ぼんやりとそんな事を思った。
……ようやく。あきらのくちびるが、ゆかりの舌を解放した。
ゆかりが目を閉じたまま、そのくちびるへ、こつんっ、と甘えるようにおでこを当てた。
「お腹だけでいいの? わたしのカラダ、もっと美味しい所もあるわよ」
ゆかりのおでこに軽くキスを這わせたあきらが、「こっち?」とお腹から右手を上げて、胸のふくらみに触れてきた。瞬間、小さな官能の波が、恥骨のあたりをゾクゾクと撫でた。
ブラジャーを着けていないせいで、ケーブルニット越しにとはいえ、あきらの手の平の感触が、敏感に伝わってきてしまう。
「あああ…っ」
口からこぼれる声を、ゆかりは抑えられなかった。
ルームウェアの上から、そっとタッチしてくる柔らかな手つき。
17歳の若々しいバストが描く肉感的な曲線を、手の平が優しく滑るように愛撫してくる。時間をかけて、何度も、繰り返し。
たった一枚の生地で隠されたふくらみのサイズやカタチを、あきらの手で赤裸々に観察されているみたいな気分になって、ゆかりが甘い喘ぎと共に恥ずかしそうに身悶えた。
「うぅ…、んっ、くすぐった…い……」
「……たしかに、お腹よりも美味しいね、ゆかりの胸は」
左手で抱いたゆかりの頭へ顔を寄せ、彼女の髪にくちびるを這わせた。
「 ――― 直接さわってほしかった?」
「あら、わざとじらしてるの? いけず」
「ふふっ、こういうイジワルも、今のゆかりにとっては『甘い味付け』に変わると思って」
両目を細めたあきらが、指先を動かして、ルームウェアの上から胸の先端を探った。
生地を通しても分かる小さな突起のカタチ。それをスリスリとこすって刺激。
……びくっ。
身を縮めたゆかりが、瞳を潤ませて微笑む。
「躾がなってない犬に遊ばれてみるのも、意外と悪くはないわね」
「気まぐれな猫の影響を受けてるからね。今日の私は、少しお行儀が悪いよ?」
ゆかりの胸のふくらみを丁寧に愛撫していた手が、その質感に魅せられたように、ぐっ、と指を沈める。しっとりときめこまやかな肌の下にあるのは、瑞々しく指を押し返してくる肉の弾力。
「んっ…、う、……あっ」
女子高生の乳房を優しく揉みしだく手の動きに、ゆかりが熱い溜め息を洩らした。
「やっ…、あきら、だめ……」
「何がどう『駄目』なの? 自分の口で言ってみて、ゆかり」
一揉みごとにカラダを小さくわななかせる彼女へ、色香を匂わす低めの声でささやきかけた。
しかし、答えてくれなかったので、あきらの指が、またルームウェアの上から胸の先っぽをいじわるく摘みにいく。そのくすぐったさに、ゆかりが消え入りそうな悲鳴を上げて、たおやかな肢体をくねらせた。
(だめ……、あきらの指のせいで、変にムズムズしちゃう……)
あきらの指使いが、敏感な胸先を辱めるようにもてあそぶ。さっきから、ふくらみの先端を摘もうとしているが、ルームウェアの上からでは上手くいかないらしく、それがもどかしくて、じれったい。
「うっ、ん……、あぁぁ…」
生地越しに加えられる微妙な快感のせいで、乳房の先にフラストレーションが溜まる。なめらかなツヤのある乳突起は、あきらの指でいじられ続けて、生殺しの状態だ。
「あきらぁ……」
暗闇の中、しっとりと潤んだ瞳で訴えるように、弱々しく彼女の名を呼んだゆかりが、
――― ギュッ、
と、あきらに強くしがみついた。
「お願い、もう、ガマン……できないから」
彼女のやわらかなカラダと、その喘ぐような声を受け止めたあきらが気付いた。
こうして密着していないと、分からないくらい小さな動き。
ゆかりが、まるで尿意に耐えるみたいに腰をモゾモゾと動かしていた。
……なんだか、いじらしくて可愛かった。
あきらの表情に、微笑みの色が広がる。
(大丈夫だよ、ゆかり。『躾のなってない犬』が、キミを甘く食べてあげる)
あきらのくちびるが、
――― 熱い吐息と一緒に、ゆかりの耳もとへ言葉を吹きかけるように。
「ねえ、着替えている私の後ろでハダカになった時のドキドキ、まだ憶えてる?」
ゆかりが答えるよりも早く、あきらが、フフッ…と笑い声を挟んで続けた。
「そのドキドキ、私も味わってみたいな」
最終更新:2018年03月12日 01:14