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ミデンの陰に…




「!」
「戻れた」
 ミデンに記憶を奪われ、子どもになってしまっていたプリキュアたちだが、はぐたんとメモリーズライトの力で元に戻ることができた。
「なんでキュアエールだけいないの?!」
 キュアエールはミデンの心の中にとどまっていた。ミデンを独りぼっちにできなかったのだ。
「エールらしい」
 キュアエトワールが笑うと雰囲気が緩んだ。
「あれ…」
 キュアマジカルが辺りを見回した。
「どうしたの?」
「エコーは?」
 プリキュア全員が同じように自分たちの顔を見る。確かに、キュアエコーがいなかった。
「そもそも、中にいたっけ?」
 キュアハッピーが首をひねる。やはり同じように誰もが首をひねった。記憶を奪われて子どもになっていた時のことを覚えていないのだ。
「最初からいなかった可能性の方が高いんじゃないかしら。ウソバーッカのときもそうだったわ」
 キュアアクアが言った。
 春の戦いで、ウソバーッカはプリキュアたちをチーム単位で狙ったため、キュアエコーが網から漏れた。そのことが逆転する上で意味を持ったのだが、今回も同じではないだろうか。
「だといいんですけど…」
 キュアマジカルはまだ心配そうである。
「ミデンがあのときのことを知っているとは思えないし、そうだとすればエコーを特別扱いして別のところに閉じ込めたりする理由もないと思うわ」
 キュアパルフェの指摘はもっともだった。
「エールのところに向かいましょう。ほかのプリキュアが囚われていないか注意しながら」
 キュアムーンライトの提案に皆が頷く。

 キュアエールの言葉はミデンに届いた。
「ありがとう…」
 ミデンの体が光の粒になって天に昇っていく。
「…」
 キュアダイヤモンドが眉をひそめた。光の粒の下に何かが見える。
「…。
 そうか!」
 キュアホワイトが叫んだ。その声に何人かの視線が動いたが、多くのプリキュアは動けないでいた。
 知っている。見たことがある。一度や二度ではない。
 やがて光は消え、ミデンの姿はなくなった。そこに現れる、栗色のツインテールの少女の姿。
「あゆみちゃん!」
 キュアマジカルが飛び出す。体を起こしていいのかどうかわからず、手を泳がせていた。あゆみは、何かを握りしめている。
「ホワイト、どういうこと?」
「…」
「さっき、『そうか』って言ったよね」
 キュアホワイトは黙っている。
「ホワイト!」
「…。
 まず、地上に戻りましょう」

「ほのか、話して」
 野乃はなたちがピクニックをしていた原っぱに戻る。あゆみはレジャーシートの上に体を横たえていたがまだ目覚めなかった。
「ほのか」
 美墨なぎさに問い詰められる形で雪城ほのかは口を開いた。
「たぶん、ミデンに最初に捕まったのがあゆみさんなんだと思う」
「あゆみちゃんが?」
「わたしたちがミデンに襲われたの、横浜だったでしょう」
「あ」
「でも、あゆみちゃんはミデンの中から出てきたように見えたよ」
 日向咲が言う。
「行動を起こすには実体が必要だった、ということじゃないかしら。だから最初だけは、記憶を奪うだけじゃなくて、体ごと乗っ取ったんだと思う」
 彼女たちが、あゆみ、またはキュアエコーが中にいなかった、と断言できないのはそのせいだった。ミデンがプリキュアの力を使うとき、その体はそれぞれの色に染まったが、その時、彼女たちはあゆみと「一心同体」になっていたのである。その感触のせいで、「いなかった」と言い切れないでいたのだ。
「ミデンが白かったのは…」
 頷くほのか。あれは、キュアエコーの白だったのだ。
「あゆみちゃん!」
 リコが叫んだ。あゆみが目を開いた。
「え、リコちゃん…どうして、ここに」
「大丈夫? 怪我はない?」
「え…!」
 あゆみは突然、ジャージの襟に手をやった。
「え…え?」
 何かを探している。リコがキュアデコルを差し出す。
「探しているのはこれ?」
「フーちゃん!」
 あゆみはそれを両手で受け取った。
「フーちゃん…」
〈あゆみ…フーちゃんは大丈夫〉
「よかった」
 あゆみの目じりがにじむ。
〈あゆみ…ごめん〉
「フーちゃんは悪くない」
〈ごめんなさい。
 フーちゃんは、ちょっと疲れた。休んでもいいか?〉
「うん…」
 あゆみはキュアデコルを胸に抱くと、聞こえるか聞こえないか、という声で「ごめんね」と言った。
 みなは顔を見合わせていたが、剣城あきらが膝をついた。
「あゆみちゃん…何があったのか教えてくれるかな」



最終更新:2018年12月27日 23:05