会議室で出発
異変はすぐに起こった。
空に「ヘビ」が現れたのである。
節々に原色の輪をまとう、嫌悪感を引き起こさずにはいられない不気味さだった。
「ありす」
会議室に集まる少女たち。最初に口を開いたのは美墨なぎさだった。
「あの星のこと、何かわかった?」
「いいえ」
あの「ヘビ」の発生源はあの連星ではあるようだったが、彼女たちの目視によるものだった。確信はあるが、証拠はない。
「あたしたち、ここに集まってる意味ないんじゃない?」
何人かが なぎさを振り向き、何人かが頷いた。
「ごめん、ありすとか四葉とかを責めてるんじゃないよ。
ただ、町のみんなが心配なんだ」
頷く顔が増える。
小泉学園、夕凪町…それぞれが産まれ、育ち、暮らしてきた町。その人たちも、同じようにあの「ヘビ」に怯えているはずだった。
「そうですわね」
ありすは、マナが頷くのを見ると決断した。みなが立ち上がる。
「当家の警備部隊に送らせます。急がせますので、少々お待ちください」
セバスチャンが会議室を出て行った。
「ありすちゃん、ミラクルライトを貸してくれない?」
はるかが言った。さすがに、みなみも驚いている。
「いちかちゃんたちがきっと突破口を開いてくれるから」
「そうだ。そのとき、あたしたちも力になれる」
「プリキュアの光の力を送れるかもしれません」
ありすは頷くと、ラボのミラクルライトを持ってくるよう指示を出した。
やがてそれは全員に行き渡り、護衛となる警備部隊の準備が整ったところから出発していく。それを、「事態が悪化すれば変身できなくなる可能性がある。早めにプリキュアに変身しておいた方がいい」という月影ゆりの意見が追いかけた。
「あゆみさんは、当家にお残りください」
「でも」
「わかってる。
あゆみちゃんもフーちゃんも横浜の町が大好きだっていうことはわかってるよ」
マナがあゆみの肩を握る。
「でも、戦える状態じゃないでしょ」
「一人では危険ですわ」
真琴からも亜久里からも心配があふれている。
でも、とあゆみは言いかけたが、途中でやめた。「ヘビ」が現れてからの疲労感ははっきりしていた。自分だけでなく、グレルもエンエンも元気がない。
「わたしたちと一緒にいよう」
六花がのぞき込む。
その心配はうれしい。とてもうれしいが、自分が「半人前」であることがまた突きつけられているのも事実だった。
(わたしは、いつまで…)
しかし、それを跳ね返すだけの根拠もない。グレルとエンエンの様子に、それでも変身する、とも言えない。
わかりました、と答えるしかなかった。
最終更新:2019年08月17日 14:54