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ラボで出発




「プリキュア ラブリンク!」
 ゆりのアドバイスの通り、空から星が消え始めるころにマナたちは変身した。四葉タワーに移動する。
 何が起こっているわけではない。だが、地上から光が失われていく。空には、「ヘビ」の毒々しく鮮やかな節だけが見える。人々は絶望し生きる意志を失い始めていた。

 あゆみには、連星の状況を監視しろ、という役割が与えられていた。ありすがキュアロゼッタとなった今では、四葉のラボで連星の位置を示すことができるのは一人しかいない。
「数値を確認させてください」
 あゆみは技官のディスプレイをのぞき込んだ。さっきと同じ。
(うん)
 変わるはずがない。連星は移動するわけではないし、観測できないのだから、そもそも満足な数値が得られない。あゆみには、その光が暗くなっていく一方だということはわかるが、ここに張り付く必然性はなかった。
「わたし、ちょっと」
 あゆみは、小さな声で言うと、グレルとエンエンをトートバッグに入れ、ラボを出た。
「坂上様、どちらへ」
 セバスチャンがいた。いや、立ちはだかっている。
「ありすお嬢様より、坂上様はきっとそのようになさるので、気を付けるよう申しつかっておりました。
 危険でございます。ラボにお戻りください」
 あゆみは、しっかりと首を振った。
「坂上様」
「黙っているなんてできません」
「ですが」
「わたしもプリキュアなんです!」
「しかし、今は」
「変身できなくてもプリキュアなんです!!」
 言葉に詰まるセバスチャン。
 グレルはあゆみのトートバッグから飛び出すと剣を抜いた。
「どけ!
 俺たちだってプリキュアだ! 邪魔するな!!」
「セバスチャンさん、お願い!!」
 エンエンも身を乗り出して叫ぶ。
「行かせてください。
 ありすちゃんには後でわたしから話します。
 それに」
 あゆみはきっと顔を上げた。
「きっとわかってくれると思います」
「プリキュアだから…でございますか」
 頷くあゆみ。
 セバスチャンは、三人の目を順番に見つめた。
 わかる。わかりすぎるほど。
「承知しました」
「セバスチャンさん!」
「二人ほどおつけします」
「いえ、それは」
「四葉も大変なんだろ?」
「それがわたしどもの役割でございますので」
 実際のところ、それぞれの町にプリキュアたちを送り届けたメンバーはここに戻ってきている。人が足りないわけではない。なにより、この三人は絶対に守らなければならない三人だった。
「どちらにいらっしゃる予定ですか」
「四葉タワーに」
 セバスチャンの目が細められる。
「…。
 理由をうかがってもよろしいですか?」
 キュアロゼッタをはじめ、ドキドキ!プリキュアの五人がそこにいる。それに合流しようというのか。
「わたしが今行けるところで、一番、あの星に近いところだから」
「プリキュアの光を届けに行くんだね」
 エンエンの言葉にあゆみが頷いた。
 今、光を失ったも同然の あゆみには、届けられるものは何もない。だが、二手に別れ、意思の疎通もできない状態になっているとはいえ、50人ものプリキュアがそれぞれに活動している。そのおかげで事態が改善されたとき、できる限り、あの星に近いところにいたい。
「承知しました。
 メンバーをこちらに呼びますので少々お待ちください」
「ありがとうございます。
 あ、ありすちゃんにはわたしが」
 あゆみがスマートホンを取り出すのをセバスチャンが止めた。
「わたしがいたします」
「でも」
「いえ、それがわたしの役目でございますので」



最終更新:2019年08月17日 14:55