『月虹譜』2
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これは、少女たちにとって二度目となる秘密の夜 ―― まどかのベッドにて、再び甘いひとときを愉しんだ後の物語。
うっすらと汗ばむ白い肌の下に、心地よいまどろみの感覚が広がっていく。
行為の最中にめくり上げられた羽毛の掛け布団は、いつのまにか少女たちの足元まで位置がずり下がっていた。夢中で愛し合う二人の下半身の動きによって、どんどん押し下げられていったのだろう。
季節は冬。
しかし、ベッドの上にさらけ出された全裸のカラダが寒さを感じることはなかった。むしろ室内の空気が、ほてった肌をちょうど良く冷ましてくれる。
気だるげに横向きで寝そべる細身の裸体を、後ろから抱きしめてくる褐色の腕。すらりと伸びやかな腕は、決して太くはないが、同年代の女子よりも随分と力強い。
筋力はあれど無骨さとは無縁。しなやかでスリムなプロポーションを彩るのは褐色の肌。
その肌もまた、情事の余韻でうっすらと汗ばんでいた。
彼女の腕に抱かれる少女が、「んっ…」と声を洩らして、小さく身じろぎする。
美しく均整の取れた四肢と、たおやかながらも、きゅっと麗しく引き締められたボディ。雪肌の裸身は、背後から密着してくる少女の褐色の肌と対照的。
「……わたくしが眠るまで、そうしていてください」
えれなの体温が ―― 彼女の肌の感触が、まどかの意識を気持ちのいい眠りへ導こうとする。
けれど、えれなはまだ、まどかを寝かせたくないようだった。
「ゴメン。まどかのカラダ、おかわりしたい」
「え…?」
ちゅっ。…ちゅっ、ちゅっ。
まどかの長い髪をなぞってくるキスの音。
背中に、ぐっ、と押し付けられる健康的な双乳の弾力。
カラダの正面をゆっくりとまさぐってくる手の動き。
「ふふっ」と笑いながら、まどかが裸体をよじって逃げようとする。
髪を滑ってきたくちびるが、耳の輪郭を這う。……くすぐったい。
まだ発育途中だが、大人びた曲線を綺麗に描くバスト。えれなの手の平が、その淑やかな乳房を優しく撫でさすってくる。
「もお…、だめです」
まどかが困ったような声を上げ、えれなの腕を押さえて抵抗の意志を示すも、あくまでカタチだけだ。本気でとめようなんて思っていない。
ソフトなマッサージを思わす手付き。
瑞々しい果実を愛でるみたいに手の平をすべらせ、しっとりとした柔肌の下にある弾力感を味わおうとしている。
―― このムズムズするようなくすぐったさが、たまらなく気持ちいい。
(ふふ…、まだ気持ちいい感覚が残っているのに、こんな風に触られたら……)
まどかのカラダの奥が、ゾクッ…と妖しい痺れにうずく。
今夜二度目となる甘い情欲の波が、幸せな余韻に浸っている秘所へと静かに打ち寄せてくる。
「い…いけない子ですね、えれなは……本当に……」
自分の声に興奮がにじんでいるのが、はっきりと分かる。
押さえていた親友の腕をスッ…と離した。
そして、手を背後に伸ばして、えれなのキュートに引き締まった尻の丸みをさわさわと撫でまわす。その褐色の肌に包まれた弾力ある肉感は、まどかの手の平に気持ちの良い触り心地を返してくれる。
「んっ…、んっ、ふふふっ、だめっ…」
えれながこそばゆそうに笑って悶える。
すべらかな褐色の尻の表面を撫でさする手が、左右の尻肉の割れ目へと這う。
そのヒップラインに沿って上下に手を滑らせるたび、ぴくっ…、ぴくっ…、と腰を小さく震わせて反応を返してくるのがカワイイ。
「そんなにわたくしの手は気持ちいいですか?」
「ん、くすぐったいよ……」
「くすぐったいだけですか?」
もっと大胆に撫でてみようと思った矢先、
「あっ……あぁっ」
色っぽい声がまどかの口を割った。
優しい愛撫を受けていた胸のふくらみ ―― その先っぽがスリスリと指で甘やかにこすられている。
えれなが少しだけ声に意地悪さを含ませて言った。
「こっちのほうは、くすぐったいだけじゃないみたいだね」
可愛らしくツンとこわばった薄桃色の突起が、羽毛みたいにソフトなタッチで ―― 。
時折、爪の先の硬い感触で『つつっ』となぞり上げる動きも織り交ぜられて ―― 。
胸先がえれなの指使いに翻弄される。
まだ触られ慣れていない敏感な乳頭が、甘美なくすぐったさに酔わされていく。
「んッ…、あ、うっ……」
同じ指使いを他の人がしても、こんな風にゾクゾクしない。
相手がえれなだからこそ ―― 。
「……ふっ、はぁっ…、んっ……うっ」
まどかが声をこらえながら喘ぐ。
気持ちいいけれど、その声をえれなに聞かれるのが恥ずかしい。
だが、声は抑えられても、カラダの反応は抑えられない。
華奢な肩の悶え。きめこまやかな柔肌の下で肩甲骨がモゾモゾ動く感触。
なまめかしく揺すられる白い背中と一緒に、それら全てが、密着したえれなの裸身に伝わってしまう。
「ふふっ、まどかのカラダって正直……」
耳のすぐ後ろで、えれながクスクスと笑う。
そして、甘ったるいささやき声で ―― 。
「ねえ、今からもっと気持ちよくなっちゃおうか?」
耳にかかる、えれなの吐息。 ―― 興奮のせいで、熱く湿っている。
さっきまで乳首をいじめていた指先は、くるり…くるり…とじらすみたいに、やや色素薄めの乳輪をなぞって軽やかに円を描き続けている。
けど、それでも胸先が快感でうずいてしまう。
「……っ、……んッッ」
ベットのシーツをぎゅっと掴みながら、押し殺した喘ぎを洩らす。
耳たぶの裏に「ちゅっ」と軽めのキス。そのくちびるが甘いささやきで、まどかの鼓膜をくすぐってくる。
「声…ガマンしないで。まどかの声、すっごくカワイイから。いっぱい聞かせて……」
「……だめ…です、恥ずかしい……」
まどかが眉間に悩ましげなシワを刻んで答える。
けれど次の瞬間、彼女は「ひっ!」と声を上げて、こそばゆさに身をすくめた。
―― 耳の内側。
普段触られる事のない凹凸の部分を、唾液でぬめった舌先がなぞり上げてくる。
狭い部分にも尖らせた舌先を差し込まれて、ねちっこく舐められていく。
「ん゛ッ…ンンッッ」
全身に鳥肌が立つかと思った。
性感帯として扱われる『耳』への責めによって、香久矢まどかの端整な面立ちが官能的に溶けている。
「あぁぁ……やめて…、ほんとうに、駄目……はあっ…ああああぁぁぁ」
「そういう声、もっと聞きたいなぁ。 ―― あっ、そうだ」
いい事を思いついたえれなが、さっそく実行してみる。
ちろちろちろちろっ……。
感じやすい耳の内側を、こうやって小刻みな舌の動きで舐め洗ってあげたら……。
びくんっ!とベッドの上で裸身を跳ねさせたまどかが、泣きそうな声で悶える。
「ひっ……いっ、アッ…アッ、だめっ、あっ……嫌っ、あぁ……あっ、あッッ!」
思わず逃れようとしたカラダが、背後から強く抱きしめられて拘束される。
「こーら。逃げちゃダ~~メ」
「ああ…っ、お願い、許して……。許してください……」
「そんなに可愛い声でお願いされたら、逆にもっとしたくなるに決まってるでしょ」
えれなが微笑みつつ、「ちゅぶっ」と濡れた音を立てて、耳の内側に軟らかなキスが押し付けてきた。
「あっ! 駄目ですっ!」
快感の声と反応。まどかの白い背筋が、クッ…と弓反る。
熱く蕩けたくちびるの感触が、耳の内側の凹凸を丁寧にまさぐって「ちゅっ…ちゅっ…」と甘くついばんでくる。
「あああ……あああぁあああ、ああぁぁっ……」
ゾクッ……ゾクッ……。
(本当に駄目…、このままだと気持ちよすぎて……)
―― 耳が変になってしまいそう。
ギュッと両目を閉じてくすぐったさに耐えていたまどかが、うっすらとまぶたを開く。
瞳には興奮の潤み。
まどかが逃げようとするのをやめたので、えれなは彼女を抱きしめていた腕を解き、再び優しく胸のふくらみを愛撫してゆく。
「ん゛っ…」
短く喘いで、もぞっ…と、まどかが腰をくねらせる。
裸身を密着させているえれなが、その動きを感じて、耳孔へ「フゥ…ッ」と細い吐息を吹きかける。
外耳道 ―― 耳の穴の内側から、ぞぞぞっ…と這い登ってくるこそばゆさ。
「ひぁっ!」
声を上げたまどかが、ぶるる…ッ!と白い背筋を震わせた。
「も…もおっ、意地の悪い事ばかりしないでください……」
「ごめんね。でも、いじめられてる時のまどかってカワイイから……」
下乳の丸みに沿ってスッ…と登ってきた手の平が、ふくらみの頂点を滑り落ちて、もう片方の乳房へ。
女子中学生の若々しい乳房の肉感を、手の平で味わいながら愛でてくる。
「まどかの胸の先っぽ、さっきより固くなってない?」
小ぶりな乳房に覆い被さる手が、ゆったりと円を描く動きで愛撫 ―― 手の平全体を使って敏感な乳首を甘く擦り転がし始めた。
―― 軟らかな乳輪の上で可愛らしく尖った乳首を感じつつ、親指の付け根から人差し指の付け根、そして小指の付け根へ。そこから滑るように手の平の真ん中へ。クルクルと小さく円を描いた手の平が乳房の丸みに沿って優しく上下に往復。再びゆったりと大きく円を描く。
「耳をいじめられるのって、そんなに良かった?」
「わたくしは、えれなにしてもらえるのなら、何だって最高に気持ちいいですよ」
「これも?」
えれなの指が、快感に喘いでいる乳頭を『キュッ』ときつめに摘まむ。
不意を突かれたまどかが、一瞬びくっと裸身を震わせたが、あえて物静かな口調で答える。
「……ええ、すごく気持ちいいですよ」
「嘘、ホントは痛かったでしょ。まどかの背中、びくってなったもん」
「ふふっ。それはきっと、えれなの気のせいです」
―― こんな会話を続けている中でも、えれなの指はお詫びするみたいに、まだ少し疼く乳首を優しくナデナデしてくれている。その感触が甘く、くすぐったくて、気持ちいい。
こうやって胸先の快感を愉しんでいると、二人の最初の夜を思い出してしまう。
最初、えれなは恥ずかしがって両手で乳房を隠し、かたくなに胸先を見せることを拒んでいた。
そんな彼女の緊張を解きほぐそうとして、乳房を覆う手 ―― 主に指と指の間を、まどかは静かに舐め続けた。
体感時間では10分以上もの間、ぺろ…ぺろ…と一定のペースを崩さずに、辛抱強くそうやって舐めていたと思う。
やがて、えれなが、ぎこちなく中指と薬指の間から胸先の突起を覗かせてきても、まどかの優しい舐め方は変わらなかった。
可愛らしく尖らせた乳首を、舌先で舐めて、丁寧に愛撫する。
あまりくすぐったがらせないように ―― 。
徐々に慣らしていく感じで ―― 。
「……あの時は、ずいぶんと時間がかかりましたね」
その言葉を聞いて、えれなもまた、初めての夜の事を思い出した。
まどかの胸をいらっていた手が、するりと腹部へ下り、腰の後ろへと滑って白い臀部を撫でつつ、ゆっくりと太ももへ。
―― その手で太ももを押すのと同時に、密着させている上半身でグッと彼女の背中を後ろから押した。
「……んっ」
と、意図を察したまどかは、素直にごろり転がって、うつ伏せの姿勢になった。
横向けた顔を枕に預け、目を閉じる。
肩甲骨の辺りにかかる長い髪を優しく払う手の動き。……くすぐったい。
そっと下半身をまたぐ足の感触。続いて背中に、健康的に引き締まった上体の重みが静かに這う。
汗ばんだ褐色の柔肌がぬくくて、まどかの意識がまどろみへと引き込まれそうになる。
えれなも同様だった。
このまま、まどかの白磁の背中を抱いて眠れたら最高だと思いつつ呟く。
「あたし、正直こういうコトって、パリのシャンゼリゼ通りでデートするみたいな……おしゃれなムードのものだって思ってた」
……肩とほぼ同じ高さに投げ出されていた彼女の両手の甲に、えれなが左右の手の平を重ね、ゆっくりと撫でていく。
「けど実際は、ベッドの上でハダカになるのもカラダを触られるのも、想像以上に生々しくて恥ずかしいっていうか、今更だけど、途中、怖くて逃げたいって気持ちにもなったよ」
そう言って、まどかの髪に鼻先をすり付けて匂いを嗅いだ。気持ちがすごく安らぐ。
彼女のつややかな髪に、くちびるを滑らせながら続ける。
「……でもね、ちゃんとね、まどかが一生懸命あたしを気持ちよくしようって頑張ってくれてるのは伝わってきたし、それがすごく嬉しくて……」
えれなの眼差しが、さも愛しげな様子で細められた。
「だから、あたし……まどかとなら、もう怖くないよ。まどかと一緒にこういうコトするのは、本当に大好き」
「わたくしも大好きですよ。
―― えれなを気持ちよくするのも。
―― えれなに気持ちよくされるのも」
本当の「気持ちよさ」は、性欲よりもさらに深い場所から湧き上がってくる。
最終更新:2020年04月07日 22:00