『月虹譜』5
まどかの心の昂りに同調するかのように、えれなの気持ちも抑えきれなくなってしまう。
ひどい事を言われている。
でも、水晶みたいに澄んだ声でなじられるたび、耳の穴 ―― 外耳道を『ぞぞぞっ…』とこそばゆさが走り、頭の奥の何処かが甘く溶けそうになる。
「ごめんなさい、あたし、はぁっ、あっ、本当に……変態で…ンっ……あぁっ」
「まだ終わらないのですか? ……いつまで続くのです? その見苦しい真似は」
「ごめんっ、すぐに……あぁああっっ」
「いちいち変態の情けない啼(な)き声を聞かせないでもらえますか? ……ふふっ、気分が悪くなってしまいそうです」
「すぐだからっ、あっ…あッ、まどかのお尻の穴見ながら、すぐ済ませるから…うぅっっ」
息遣いが徐々に荒くなる。
右肩上がりで高まり続ける興奮のせいだ。
女子に人気の高い爽やかな顔付きが、切なげに上気。
処女の粘膜をせわしなくイジりまわしていた指使いが、今夜教わったばかりのクリトリスへと移る。
「ん゛っ、うっっ……、んん゛ッ……あッッ!」
まどかにした時とは違う ―― ただ、甘美な快楽をむさぼるための淫らな指戯。
包皮のむき方も知らないまま、愛液にまみれた指先で敏感な肉真珠を押さえながら甘擦りを続け、健康的に引き締まった腰をあさましく揺する。
脳まで響いてくる卑猥な悦び。気持ちよすぎて、指が止められない。
淫らな飛沫がベッドに散った。
「ごめんっ、頭の中……もうっ、あっ、こんなの…すごすぎ……ッッ! あッ、アアッッ!」
すっかり興奮の涙で潤んでしまった瞳は、なおも親友の肛門を食い入るように見つめていた。
そんなえれなを、まどかがさらに言葉の鞭で打ち据える。
「全くあなたは、どうしようもない最低の人間ですね」
小馬鹿にした口調に含まれる、冷ややかな軽蔑の響き。
「……フフッ、まちがえました。人間扱いしてあげる必要すらありませんね。
他人のお尻の穴にあさましく発情するあなたは、もうただのいやらしいメス犬です」
―― 犬呼ばわり。
けれど、そのあざけりの声すら柔らかく透き通っていて、綺麗だった。
人間の尊厳の部分を鞭打たれたえれなが、倒錯的にブルブルッ…!と快感に震えてしまうほどに。
「どうしたのです、えれな? 犬は ―― 匂いを嗅ぐものでしょう?」
クスクスと小さく笑い、まどかがいかがわしい行為を煽る。
「うん。そうだね」
と、興奮ですっかり乾いてしまった口で、えれなが答える。
大事な親友が一糸まとわぬ姿で肛門 ―― 排泄の穴を晒し、その匂いを嗅げと言う。
人間ではなく、犬として扱われる。屈辱的なはずなのに、よろこびを感じてしまう。
えれなが両まぶたを閉じて、鼻先を尻の谷間へ沿わせようとする。
「…ンッ」
と、声をこらえたまどかが羞恥を抑えきれず、ピクンッ、と腰を跳ねさせた。
瑞々しい肉厚のヒップが、えれなの頬に偶然ぶつかって、弾む。
柔らかな衝撃。
愛しげに、その幼くも色気づいた桃尻に頬擦りしてから、あらためて鼻先を尻の谷間へとくっつけるみたいに。
(これも……まどかの匂い)
微かに『むわっ…』と鼻腔に広がる、女子中学生の肛門の生々しいニオイ。
清潔に保たれてはいるものの、汗ばんだ尻たぶに挟まれて、匂いが熟成されてしまったのだろうか。
スンスンと嗅ぐ。
決して清らかとは言えないニオイ。でも、嗅ぐのは嫌じゃない。
思いきって、鼻の奥へと深く吸い上げる。
恥じらいに染まりつつも、他人の視線に晒されて悦びを覚えている排泄の肉穴。
うなじも、髪も ―― 香久矢まどかのカラダはどこも奥ゆかしさを感じさせる良い匂いで満ちているのに、ここだけが下品に匂い立っている。
そう思った途端、えれなの興奮がたまらなく昂った。
(ああ……ごめん、まどか。あたし、もう……)
鼻息のくすぐったさに、尻穴のシワをひくつかせて耐えているまどかの背後で、
―― ビクンッッ!!
と、えれなが腰を強く跳ねさせた。そして、そのまま腰をガクガクと震わせながらへたり込む。
クリトリスをいじり回して得た性的歓喜よりも、親友の肛門のニオイを嗅ぐという変態行為によって感情がたかぶりすぎて、その勢いで達してしまったようだ。
まだ腰の奥に、快楽のさざ波が断続的に打ち寄せている。
「本当にブザマですね。……でも、そのブザマさがお似合いですよ。メス犬のあなたには」
優しく見下してくれる、まどかの声。
ひどい事を言われると嬉しくて、クセになってしまいそう。
絶頂を迎えたばかりだというのに、濡れた秘所がゾクゾクとざわめき出す。
(このまま、この夜が終わらなければいいのにな……)
まどかの尻の丸みに頬を乗せて荒く息をついていたえれなが、ゆっくりとだが、チカラの入らない手足を使ってヨタヨタと前に進み始める。
それに気付いたまどかが、ベッドに両ひざを滑らせて、突き出していた腰を下ろしていった。えれなが進みやすいように、うつ伏せの姿勢になる。
「……あんよが上手♪ あんよが上手♪」
と、ささやき声で囃(はや)し立てるまどかの背中へと這いずってきた褐色の裸身が、折り重なるように突っ伏した。
―― かと思えば、いきなり、ぐいっとまどかのカラダをひっくり返して、彼女が驚くのもかまわず、その小ぶりな乳房の先っぽへとむしゃぶりついてきた。
(えれなったら……おなかを空かせた赤ちゃんみたいです)
まだ荒い息も収まっていないのに、必死で乳首に吸いついている姿がおかしくて、まどかがクスッと微笑む。
「そんなに一生懸命に吸ってもミルクは出ませんよ?」
えれなのカラダを愛しげに抱擁しつつ、彼女の頭をヨシヨシと撫でてあげる。
……普段の彼女なら、きっと優しく扱ってくれるだろう敏感な突起。けれど今は興奮の昂りに任せて、薄桃色の乳頭を乱暴に舐めまわしたり激しく吸い上げたりを繰り返している。
「……ッ!」
と、まどかが声を押し殺して、軽く眉をひそめる。
えれなが唇をすぼめ、「ぢゅううっ!」と乳首をきつく吸引してきたのだ。
出るはずがないのに、それでも母乳の味を求めて、15歳の少女の胸から強引に搾乳しようとしている。
「………………」
まどかが両目を閉じて沈黙したまま、えれなの頭を優しく撫で続ける。
この吸い方。感じやすい乳首をいたぶられているみたいで、正直ツライ。
それでも、えれなの興奮が落ち着くまでは、好き勝手させてあげるつもりだった。
(大丈夫ですよ、わたくしは。だから、えれなも気にしないでください)
母が子を愛しく思うように、
この瞬間だけは、ただ、えれなを愛しく感じていた。
(…………あ、でも、これはあとで『お仕置き』が必要ですね。ふふっ)
まどかが悪戯っぽく片目を軽く開いて微笑む。
えれなの髪に手櫛をを通りながら、もう一方の手で、熱くなった褐色の背中を優しく何度も抱きなおす。
まだあどけなさを完全に拭いきれていない乳房に夢中になっていたえれなも、ようやく落ち着いてきたのか、もう胸先にきつく吸いついたりはせず、ソフトで甘やかな吸い方でしゃぶりついているだけだ。
吸われていない反対側の胸のふくらみも、今は穏やかに撫でさすられている。ときおり乳房を揉みこんでくるのは、無意識の手の動きか。
(ん~~、ちょっとじれったいですが、こういうのも案外悪くありませんね)
学校では『観星中の太陽』として皆から好感を抱かれている彼女が、母の胸に甘える赤ちゃんみたいになっていて、すごくかわいかった。
「美味しいですか? まだミルクは出せませんが、たくさん吸ってくださいね」
…………。
…………。
やっぱり、小さな鈴が転がるようなくすぐったさが乳頭に響いてムズムズするのはガマンできない。
いやらしい気持ちが処女の性器をうずかせてくる。
「あの……もういいですか、えれな?」
まどかが少しバツが悪そうに尋ねると、えれなは乳房の先っぽを口に含んだまま、無言で肯いた。
スッ…と息を吐いて呼吸を整え直したまどかが、「では…」と冷ややかな口調に戻って、えれなに話しかける。
「あなたには、しっかりと自分の立場を理解してもらう必要があります」
言葉以上に冷ややかな視線。
それを感じて、びくっ、と震えるえれな。反射的に、咥えていた乳房の先っぽを離す。
髪を撫でていた手が滑るようにあごの下へと回りこんできて、クイッと上を向かせる。
「まず、あなたは今夜から、わたくしに飼われる事になりました」
あごの下に回りこんでいた手がフワッと浮き離れて、代わりに、ほそやかな指先がそこを軽やかにくすぐり始める。
「だって、あなたみたいな変態のメス犬を放置はできないでしょう? わたくしが責任をもって、きちんと飼い慣らしてあげませんと」
くすくすと上品に笑うまどか。
まるでオモチャを買ってもらって喜ぶ子供みたいに。
「……もちろん、あなたも同意してくれますね、えれな?」
優しい口調だが、その声音は月の光みたいに静かで、ひんやりと冷たい。
あくまで問いかけの形式を取ってはいるが、うなずく以外の選択肢を用意していない。
えれなは、少しだけ被虐的な気分にゾクゾクしながら答える。
「あたし、まどかに飼われる。今日からまどかのペットになる」
「ふふっ。いい子ですね」
満足そうな微笑みを浮かべるまどかと視線を合わせたまま、えれなのカラダが前へと這い進む。
そして、まどかのくちびるに「ちゅっ」と甘い音を鳴らしてキスをする。
「……あたしを一生飼ってくれる?」
「ええ。あなたは生涯、わたくしだけの天宮えれな。 ―― わたくしだけのメス犬です」
キスの甘さにうっとりと両目を細めたまどかが、さっそくえれなを試してみる。
「えれな、……御主人様への挨拶の仕方はわかりますか?」
「うん、これでいいよね」
えれなが両目を閉じて ―― まどかのくちびるに、燃えるような熱いくちづけ。
これから自分を飼ってくれる御主人様へ、世界一愛しいと告げるためのキス。
(わたくしの心を溶かしてしまうつもりですか、もおっ……)
まどかのほうからも、くちづけを返す。
女子中学生とは思えない蠱惑的なキス。舌先で湿らせた桜唇を親友のくちびるに押し付け、時間をかけつつ軟らかにむさぼり、その快感の虜にする。
(でもまあ、わたくしへの挨拶としては上出来ですよ、えれな)
とろけたくちびるの感触が、少女たちを淫靡に酔わせていく。
二人ともたかぶる感情を抑えきれず、キスで繋がった口から舌を伸ばして、お互いにそれを舐め合い始める。
(えれな……)
(まどか……)
最初、舌先同士をちろちろと可愛らしく舐め合わせていたが、すぐにそれでは物足りなくなった。
ツッ…と上向かせたまどかの舌の裏側を、えれなが丁寧に舐めて愛撫。
くすぐったさにビクッとなって一瞬引っ込んだまどかの舌が、今度はえれなの舌の裏側を同じようにくすぐる。えれなも同じ反応を示した。
愛しさが止まらなかった。
交互に自分のツバを相手の舌全体にまんべんなく擦りつける。いっそう二人の感情が高まった。
「んっ…うんっ、ふっ……くっ……」
「ンンっ…ふっ、んっ……ん……」
唾液まみれの舌をヌルヌルと卑猥に絡ませて愛し合う。激しい。口の中にあふれてきた唾液を互いにすすって飲んでいく。
「……ん゛っ」
軟らかに密着するくちびるの間から唾液が漏れて、まどかの頬を伝い落ちる。
(本当に……いい子です、えれなは)
―― だから、もっといい子になれるように、しっかりと躾けてあげないと。
「よく挨拶できましたね。えらいですよ、えれな」
くちづけを解いて、彼女のチャームポイントである左目尻の泣きぼくろに、チュッ、と御褒美の甘いキス。
御主人様であるまどかに褒められて、えれなが照れくさそうに頬を赤らめ、はにかむ。
(ああ…、あたし、ちゃんとまどかに飼ってもらえてるんだ)
―― 早く、次に何をするか言ってほしい。
―― また褒めてほしい。
そんな視線を感じたまどかが、右手を伸ばして、えれなの左耳にかかる髪を優しくかき上げ、くるりんと軽やかに指に髪を巻きつけ、
そして、不意にグイッと引っぱった。
「あッ!」
急に引っぱられた痛みに驚きながら、まどかの右手に逆らえず、そちらのほうへ頭を傾けるえれな。
口元のすぐ近くまで招き寄せた彼女の左耳へ、優しく ―― 冷たく、ささやきかける。
「勘違いしてはいけませんよ。あなたはどうしようもない変態のメス犬で、それを可哀想に思ったわたくしが、仕方なく飼ってあげているにすぎないのですよ?
―― なのに、あなたのほうから何かを要求してくるなんて。身の程のわきまえ方も分からないのですか?」
えれなの髪が再びグイッと強く引っぱられる。
「ご、ごめんなさいっ」
と、髪を引っ張られたまま謝った直後に、「……御主人様」と甘い声で付け足す。こんな扱いをされているのに、今はゾクゾクしてしまう。
「ごめんなさい……、ごめんなさい、御主人様……」
髪を引っぱられながら、まどかの頬に口を寄せ、舌を出して、ペロ…ペロ…と許しを乞うみたいに舐め続ける。
まどかは頬で感じるくすぐったさに、顔がほころびそうになるのを抑える。
頬だけでは飽き足らないのか、くちびるを、鼻先を、閉じたまぶたの上から眼球を、次々とペロペロしてくる。まどかが許すと口にするまで、ひたすら顔中を舐めまわすつもりらしい。
「んっ…」とうめいて、こそばゆさから逃げるように顔を背けるも、えれなの顔が追ってくる。そしてまた顔のあちこちをペロペロと舐められる。
切なげな表情。愛しげなまなざし。甘いアイスをゆっくり舐め溶かすみたいな舌使い。
……本当は終わってほしくないけれど。
(このままでは気持ちよすぎて、気が狂ってしまいそうです……)
ぶるっ…、と裸身を震わせたまどかが、仕方なく許す事にした。
しかし、ただ許すのも勿体ない。
―― まどかが良いことを思いつく。
「今回は特別に許します。その代わり、あなたには今からメス犬にふさわしい仕事を与えます」
お互いのカラダの上下の位置を入れ替え、えれなの後頭部の下に枕をそっと差し入れてやる。
―― 思いついたのはいいけれど、いざ実行しようとすると異常なほどの羞恥が湧き上がってきて、カラダが怯えるみたいにこわばってしまう。
(あぁぁ……、お尻の穴まで見せておきながら、いまさらどうして、わたくしは……)
ふと気になって、ちらっ、とえれなの様子を窺い、恥じらいと共に視線を逸らした。
(もうっ…、そんなにドキドキソワソワした顔で待たれたら、あとに引けないではありませんか)
フゥ…っと小さく息を吐いて、まどかが身を起こす。
正直、カラダが震えそうになっている。
それでも頑張って気持ちを奮い立たせ、えれなの上半身をまたぐ姿勢でひざ立ちになった。
暗さに慣れた目なら、なんとか見えるであろう処女の秘所。うっすらと生える恥毛の下で、物欲しそうにうずく卑猥な肉貝。
えれなの視線を感じながら、両手の指で左右から『くちゅっ…』と濡れた恥裂を開いて、愛液にまみれた粘膜を見せつける。
「分かりますか? ―― 今から、このいやらしい汁で汚れきった場所を、あなたの舌で掃除するのです」
最終更新:2020年04月07日 22:04