飛べないもう一羽のウサギ【1】
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「なあラブ。次の日曜、映画行かないか?」「う~ん、美希たんやブッキーも一緒ならいいけど」「なんでだよ。映画なんだから二人でいいだろ」「だったら行かない」「はぁっ?」「だって大輔、二人きりになると変なんだもん。口数少なくなるし、人の顔ばっかりジロジロ見るし」「それは! んぐぐ……」
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大輔とまた喧嘩した。あたし、酷いこと言っちゃったな。大輔の告白に「言わな~い」なんて曖昧な返事をして、それからずっと友達とも恋人とも言えない関係で。両想いになって付き合うのが幸せゲットだって信じてたから、由美の背中だって押したのに。大輔のことだけじゃなくて、最近あたし、変だ……。
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「もしもし美希たん? ショーに出るなんて凄いよ。あたし絶対観に行くね。うん、おやすみなさい」「もしもしブッキー? あ、勉強してたんだ。ゴメン切るね。え、じゃあ少しだけ……」通話を終えると、ついため息が出る。何でだろ。前みたいに一緒に過ごせてないだけで、二人とは今でも仲良しなのに。
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あと一人、そう思って気付く。その人とは連絡を取る方法すら無いんだってこと。SETSUNAというプレートがかかった部屋は、あの頃のまま。せつなは確かにここに居て、今頃はラビリンスで精一杯頑張っているはず。「逢いたいな……」堪えた涙と引き換えに、口にしないよう我慢していた言葉が零れ落ちた。
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何だか無性にカオルちゃんのドーナツが食べたくなって、久しぶりに四つ葉町公園へ。でもドーナツカフェが見えた途端、あたしの足はぴたりと止まった。カオルちゃんと喋ってる後ろ姿はミユキさんだ。ミユキさんに会いたい! でも……合わせる顔がない。あたしは二人に背を向けて、公園から走り去った。
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あたし、きっとひどい顔してるな……そう思ったら、自然と人気のない場所に足が向いたみたい。気が付いたら、町外れの小道を歩いていた。この先は、占いの館があった森。不幸のゲージがあった場所。今はもう館は無いけど……行ってみようかな。あそこはせつなと初めて出会った、思い出の場所だから。
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確かこの辺り――だよね。間違いない、ここが占いの館があった場所。破片とか残骸とか、何かひとつでもいいから残ってないかな。あの日々が、夢じゃなかったんだって証明してくれる何かが……。しばらく探したけど、何も見つからなかった。諦めて帰ろうとした時、あたしの靴にコツンと、何かが当たった。
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「これなに? 何かの木の実かなぁ」枯れて茶色くなって干乾びた、丸い実。ここに来てから一時間、必死に探し回った成果がこれだけ。「あたし何やってるんだろ……」これではまるであの日に戻りたいみたいじゃない。そうじゃない。みんなで頑張って、やっと掴んだ最高の幸せが、今の日々のはずなのに。
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あたし、間違ってないよね。せつなは夢を叶えるためにラビリンスに帰ったんだし、美希たんやブッキーの夢だって応援したい。商店街のみんなにも笑顔でいて欲しい。でも……木の実をギュッと握りしめる。「あたしの幸せって何だっけ……」その時、言葉と一緒に頬を伝った涙が、木の実にポトリと落ちた。
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えっ? 何これ……あたしの涙が落ちた途端、それを吸って木の実が動き出した!? 木の実というより、何だか動物の赤ちゃんみたいにジタバタしてる! びっくりして木の実を放り出したら、それは小さな人型になって、急速に大きくなって……。巨大な樹木の真ん中に、不気味に光る赤い一つ目。それは――
最終更新:2020年08月14日 02:00