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飛べないもう一羽のウサギ【2】




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「グオォ――ッ」今や見上げる大きさに成長した化け物が、不気味な叫びを上げて襲いかかる。「ソレワターセ! どうして?」とにかく変身! とっさに携帯に手をやってすぐに気付いた。もうあたしには、戦う力は無いんだ。だったらここは逃げるしかない! 怪物に背を向け、ひたすら走る。森の――奥へと。
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息が苦しい。手も足も擦り傷だらけ。でも足を止めるわけにはいかない。少しでも速度が落ちたら掴まっちゃう。ソレワターセの雄叫びと足音、それに木々をなぎ倒す音がすぐ後ろから聞こえる。プリキュアとして戦ったソレワターセはもっとずっと大きかった。だけど……化け物って、こんなに怖かったんだ!
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森の奥をぐるぐる走り回って何とかソレワターセを捲いたあたしは、商店街に戻ってきた。身体が重い。足が棒みたい。口から内臓が飛び出そう。でも行かなくちゃ! あれ……おかしいな。なんで地面がこんなところにあるの……?「おい、大丈夫か?」早く……早く美希たんとブッキーに知らせなきゃ……。
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翌朝、美希たんとブッキーとドーナツカフェに集合した。昨日は家に辿り着くだけで精一杯だったから。「事情はわかったわ。でもなぜソレワターセが今になって生まれたのかしら」「確かソレワターセは不幸のエネルギーで育つのよね?」「もしかしたら……」意を決して口を開く。「あたしの涙が原因かも」
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あたしのせいだ。あたしが何とかしなくちゃいけなかったのに、ただ逃げるので精一杯で……。「落ち着いて。ラブちゃんは悪くないわ」「ええ、でも街に出てきたら大変よ」二人ともありがとう。大人に相談しても、証拠も無しに信じてはくれないだろう。だったら……。あたし達は頷き合うと、席を立った。
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「こんな時、せつなちゃんかタルトちゃんと連絡が取れたら……」「それは言わない約束でしょ」「シッ、近いよ。ここからはお喋り禁止」ソレワターセが暴れた痕跡と、できれば本体も写真に撮る。それで行政や警察の協力も得られるはず。一刻も早く森を封鎖しなくちゃ――それが通用するかわからないけど。
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昨日逃げ回った森の奥に、ソレワターセを見つけて写真に収める。でも帰り際に小枝を踏んだ音で気付かれた。「このままじゃ追いつかれちゃう。あたしが気を引くから、二人は別々の方向に逃げて!」「無茶よ!」「それじゃラブちゃんが!」「元々はあたしのせいだもの。お願い、その写真で街を守って!」
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あたし、自分達で世界を救った気になってた。ダンスだって勉強だってお手伝いだって、何もかも中途半端で、自分の力で成し遂げた事なんて何一つ無いクセに。みんなの笑顔のために頑張るなんて当たり前。きっと誰だってそうやって生きてる。ごめんなさい、ずっと守られてきたのはあたしの方だったんだ。
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覚悟を決めてソレワターセと向き合う。太い腕を屈んで躱し、足元の石を拾って力一杯投げつけた。「こっちだよ!」不思議。昨日と同じ状況なのに、心の底から勇気が湧いてくる。そっか、今は、心が二人と一緒だから。ウサギは寂しいと死んじゃう動物だって聞いたことあるけど、あたしも一緒なのかもね。
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「美希たん、ブッキー、頼んだよ!」姿が見えなくなった二人の無事と成功を祈る。さあ、後は時間稼ぎだ! 攻撃は単調。左右の腕を振り回すだけ。常に木の裏に回り込むように立ち回る。小刻みに動いて的を散らす。自分を褒めてあげたいくらい、身体が軽やかに動いた。きっとダンスの練習の成果だよね。
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どのくらい時間が経っただろう? 疲れて足が上がらない。盛り上がった木の根に躓いてとうとう転んじゃった。ソレワターセの姿が視界一杯に広がる。丸太のような腕があたしめがけて振り下ろされる!「負けない――あたしは絶対に!」素早く転がって攻撃を躱し、四つん這いになってようやく立ち上がった。
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「グオォ――ッ!」ダメッ、やられる! そう思った時、一陣の黒い風のように何かが目の前を横切った。ソレワターセもよろめく跳び蹴り。紫色の背広に、日の光に煌めくサングラス。「カオルちゃん!」美希たんとブッキーも駆け寄ってきた。カオルちゃんはすかさず透明の銃を構え、緑色の液体を発射した。
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「助かったよ。ありがとう、カオルちゃん。それは?」「ああこれ? おもちゃの水鉄砲。中身は強力な除草剤の原液なんだけど――足止めくらいにしかならないみたいだね~ぐはっ」カオルちゃんが水鉄砲を連射してソレワターセを食い止める。その間に、あたしは美希たんとブッキーの肩を貸りて逃げ出した。



最終更新:2020年08月14日 02:01