飛べないもう一羽のウサギ【3】
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カオルちゃんの車に乗せてもらって、ヒソヒソ声で語り合う。「あのソレワターセ、なんかヤケに小さくなかった?」「うん、ひょっとして栄養が足りてないのかも」美希たんとブッキーの言う通り、かつて見たのと比べると背丈は半分以下だし随分痩せてる。でも……何だか昨日より大きくなってる気がした。
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商店街に戻るとカオルちゃんがあちこちに電話してくれた。あっという間に特別対策室ができる。カオルちゃん、やっぱり何者……? 森の周囲にバリケードが張り巡らされ、除草剤を積んだ消防車が何台もやって来た。除草剤放水器を背中に背負った討伐隊も組織される。もうあたしたちの出番は無いみたい。
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「まさにトントン拍子ね。何とかなりそうじゃない?」「だといいけど……」さっきはおもちゃの水鉄砲でも嫌がってたんだし、今度はきっと倒せるはず。なのにどうしてだろう、胸騒ぎが止まらない。何だか肝心なことを忘れてる気がする。居ても立ってもいられなくて、あたしはもう一度森へと駆け出した。
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「ダメダメ、危険だから家に帰りなさい」森をぐるっと囲んだバリケードの周りには、警備員さんが立っていて近づくことすらできない。ブッキーが持ってきた双眼鏡で覗いてみたけど、ソレワターセの姿は森の木々に隠れて見えない。思わずため息をついた、その時。「おいラブ、森の様子が気になるのか?」
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「大輔! 裕喜君や健人君まで。どうしてここに?」「ニュースでやってたから気になってな」大輔が合図をすると、健人君が持っていたコントローラーを得意げに操った。するとその足元からドローンが飛び立ち、凄い勢いで森の上空目指して飛んで行く。みんなから歓声が上がる。さすが御子柴家の御曹司!
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健人君の持つ小さなモニターをみんなで覗き込む。ドローンからの映像がそこに映るんだって。「居た! 健人、見失うなよ」「任せて下さい!」三人の討伐隊員が除草剤を放水しては逃げるを繰り返す。どうやらおびき出す作戦みたい。そして開けた場所に出ると、四方から現れた討伐隊員が一斉に放水した。
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「グオォ――ッ」四方八方から除草剤を浴びせられ、ソレワターセが見る見る小さくなっていく。「やった!」大輔がガッツポーズを取った。その直後に、あたしはさっきの胸騒ぎの正体に気付いて愕然とする。小さくなったソレワターセがヨロヨロと近くの大木にもたれかかって――そのまま同化しちゃったんだ。
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自分の何倍もある大木を吸収して巨大化したソレワターセ。討伐隊員の人たちはそれでも放水を続けたけど、もう焼け石に水みたい。「プランAを放棄、プランBに移行する!」ドローンの集音器は人の声まで鮮明に拾ってくれる。声と同時に討伐隊が除草剤を投げ捨て、一斉に逃げ出す姿がモニターに映った。
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「大変! 助けに行かないと」「落ち着け、ラブ。プランBに移行って言ってたろ? きっと次の作戦があるんだよ」大輔の言う通り、討伐隊は大きくなったソレワターセをさらに別の場所に誘導してるみたい。思った通り、森の出口に十台の消防車が待ち構えていて、高濃度の除草剤の放水が一斉に始まった。
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「それじゃダメ!」声なんて届くわけがないのに思わず叫んだ。ソレワターセは再び弱っていくけど――最悪の予感が的中する。ソレワターセが伸ばした蔦に、一台の消防車が捕まる。そして隊員が悲鳴を上げて車から降りるのと同時に、ソレワターセは消防車を引き寄せ、同化して巨大な車型の怪物になった。
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「何あれ」「暴走してるの?」美希たんとブッキーが呟く。消防車の怪物になったソレワターセには、もう除草剤も効かない。その上次々と消防車を吸収して、それが終わると周りの木を手当たり次第に吸収して、どんどん大きくなっている。どうしよう。どうすればいいんだろう。最悪の悪夢の始まりだった。
最終更新:2020年08月14日 02:02