飛べないもう一羽のウサギ【6】
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「クローバボックスよ、あたし達に力を貸して!」「プリキュアフォーメーション。レディ・ゴーッ!」掛け声と共に四人一斉に走り出す。パッション、パイン、ベリー、そしてあたし。四人が重ねたハートに飛び乗り、右手を挙げて高らかに叫ぶ。「「「「ラッキークローバー・グランドフィナーレ!」」」」
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四つ葉の真ん中に生まれた巨大な水晶が、ソレワターセを閉じ込め一切の動きを封じる。
「「「「はあぁぁ~!」」」」
水晶の内側が燦然と輝き出すと、消防車の鎧が剥され、おびただしい数の森の木々が、次々と解放される。そして見る見る小さくなったソレワターセの一つ目から、一滴の涙が零れ落ちた。
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「待って!」気が付いたら声を上げていた。腕を下ろした途端、水晶は消え失せて、最初に見た時と同じくらいの大きさのソレワターセがそこに立っていた。「ラブ、どういうつもり?」みんなを代表するみたいにベリーがあたしに問いかける。「お願い、ここからはあたしに任せて。確かめたいことがあるの」
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考えてみれば、おかしなことばっかりだったんだ。不幸のエネルギーも無しに生まれて成長したこと。生身のあたしでも逃げ切れたこと。森から出ようとしなかったこと――。あたしはゆっくりとソレワターセに歩み寄り、向かい合う。「グオォ――ッ!」ソレワターセは腕を振り上げて、あたしの肩に叩きつけた。
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「「「ピーチ!」」」「来ないでッ!」駆け寄ろうとするみんなを止める。だって――弱すぎるもの。こんなの攻撃じゃないよ。まるで駄々をこねてるみたい。「もしかして……あなたはあたしと同じなの?」言葉が通じたのかはわからない。でもその時、ソレワターセは身じろぎして、もう一滴涙を流したんだ。
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ごめん。あたしが弱かったばっかりに、気が付いてあげられなくて。肩の上に乗ったままの腕に頬ずりしたまま、また一歩、二歩と歩み寄る。次の攻撃は来なかった。この子はノーザに置き去りにされて、この地に忘れ去られて、そのまま干乾びて……。だから、寂しさで流したあたしの涙に反応したんだよね。
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ソレワターセの身体に手を回して、そっと抱きしめる。「グオォ――ッ」少しだけ哀しそうな叫び声が聞こえた。「うん、わかった」頷いて、子守歌を口ずさむ。「悪いの悪いの飛んでいけ。プリキュア・ラブサンシャイン……」あたしの身体から淡いピンク色の光が放たれて、ソレワターセを優しく包み込んだ。
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腕の中で、まるで溶けるようにソレワターセが縮んでいく。やがて最初の枯れた実よりもっと小さな、クルミくらいの大きさの木の実があたしの掌に残った。きっとこれが、ソレワターセの本来の姿なんだろう。「ワガママばっかり言ってゴメン。終わったよ」そう言って振り返ると、みんなが駆け寄ってきた。
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「あたし、みんなに謝らなきゃ」変身を解いて頭を下げる。タルトとシフォンも加えた仲間達に、この事件の発端になった、あたしの気持ちを打ち明けた。みんなが笑顔になるのが嬉しくて、それがあたしの幸せだと思ってた。でも、その幸せの中にあたしの居場所がなくなった時、途端に寂しくなったことを。
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苦しんでいるせつなの力になりたいと思った。運命に翻弄されているシフォンの力になりたいと思った。あたしはずっと、みんなの助けになっているつもりだった。でも本当は――助けられていたのは、力になってもらっていたのは、あたしの方だった。だってウサギは、寂しくなると死んじゃう動物なんだもの。
最終更新:2020年08月14日 02:06