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新人研修! シャッフル・トロピカ☀デリシャスマイル❤ 《前半》/りとるぶたー




「――プリキュア新人研修?」

 シン・ジン・ケン・シュー。
 なんだか『働く大人』っぽい、難しげな言葉。
 カッチリとしてスタイリッシュな響きを持つそのフレーズを、夏海まなつはオウム返しにする。

 はい! と、受話器の向こうから、友達である花咲つぼみの声が返ってきた。
 まなつは、ふーん? と固定電話を耳に当てたまま首を傾げる。

「毎年やってるって言ってたよね? でも私の時は、研修じゃなくて、のどかちゃんたちとの楽しいダンスパーティだったよー?」

 まなつの純粋な疑問に、つぼみは軽く謝りを入れつつ説明する――おととしは、とっても強い敵が世界中に現れ、みんなその対処で大変だった。だから、なかなか全員でゆっくり集まる時間が取れなかった――

「ですから今回は、まなつちゃんたちの紹介も含めて、新しいプリキュアの歓迎会みたいな物を開こうと思いまして」

「わぁーっ! いいね、すっごくトロピカってる~ぅ!」

 間髪いれずに、まなつが電話を持っていない方の腕を振り回しながら、はしゃぐ。
 回線を通った大声は割れ、その声の波が行き着いた先で、つぼみが表情だけで静かに苦笑していた。

「それで、何人くらい来るのー?」

 まなつが胸踊らせながら聞く。
 少し考え込んでつぼみは、片手の指を折りながら、再び声を電話口に向けた。

「ひかるちゃんたち、のどかちゃんたち、まなつちゃんたちの14人、他のチームの代表各1人で合わせて13人、そして新しく入った4人――計21人ですね!」

 つぼみの声が弾み、心地好い春風とともに、まなつの耳に届く。
 おぉーっ! まなつのきらきらしい歓声が、パッと噴水のように上がった。



*****



「――プリキュア新人研修?」

 同じ日、白昼、別の場所。
 おんなじ言葉を軽やかに、春の麗らかな陽気に乗せた――少女・和実ゆいは、芙羽ここね、華満らん、ローズマリーと、自宅でおやつを食べていたところであった。

 そこへかかってきた1本の電話。
 ゆいにメイクをしてくれた、いつぞやの少女5人組の1人――夏海まなつという女の子からであった。

「そう! とーってもトロピカってる歓迎会だよー!」

 しんにゅーせーかんげーかい! と、まなつの声が元気に響く。

「へぇ、別の伝説のプリキュアがねぇ」

 ローズマリーもとい、マリちゃんが、ゆいの横で期待特盛りな顔をしながら、スマホから漏れる音声を聴いている。

「話にはチラッと聞いたことがあるけど、本当に会うことになろうとは思わなかったわ~」

「それ、もうOK出す前提で言ってない?」

 苦笑いをする、ここね。しかしその声音は、新人研修を楽しみにする彼女の気持ちを、隠さず偽らず表していた。

「ねぇねぇ、行こうよ! らんらんも他のプリキュアに会ってみた~い!」

 らんが目を輝かせると、パムパムやメンメンも、行きたい意を示した。コメコメも、「コメー!」と乗り気に見える。

「じゃあ、全会一致ね!」

 マリちゃんが満面の笑みで掌をパチンと合わせると、ゆいが再びスマホを耳に当てた。

「勿論行くよ、まなつちゃんー! 当日はよろしくね!」

「うん、よろしくねー! じゃあ、またね!」

 ふつと通話が切れ、ツー、ツー、ツー、と単調な音がスマホから鳴る。

「新人研修――楽しみだなぁ~」

 ゆいは日の差す庭の方に視線をやりながら、目を細めてにっこりと笑った。



*****



 ――『プリキュア新人研修』当日。


「来たよーッ、南乃島~!」

 ゆいの晴れやかな声が、どこまでも澄み渡って開放的な青空に吸い込まれていった。

「コメ~!」

 コメコメが、ゆいに合わせて大空に叫ぶ。

「凄~い! お日さまの光を浴びて、さらキラな砂浜! ちゃぷしゃわな波打ち際~! 夏場にここで遊ぶのも楽しそう~!」

 らんが視線を、水平線の上から下に向けて感動する。

「ここが、夏海さんの故郷……素敵なところね」
「だよね~、ここねちゃん!」

 目を眩しそうに細めながら、ゆいが笑う。

「そうだ! 折角だから、まなつちゃんたち他のプリキュアのことも、名前で呼んでみたらどうかな?」
「えっ!?」

 ゆいの思わぬ提案に、ここねはびっくりして、恥ずかしそうに頬を赤らめる。

「だって、これから会うのは、みーんなプリキュアの『仲間』だよ。きっと皆、喜んでくれるよ!」
「ゆい……」

 ここねにとって、初めての友達である、ゆい――

「そうねっ、今から練習してみるわ」
「その意気だよー、ここねちゃん!」

 ――そんな彼女に満面の笑みで提案されてしまったら、ここねはやる気になるほか無かった。

 ここねは目を輝かせながら、気合いを入れて、「まなつ、まなつ、まなつ……」と、名前呼びの練習をする。

「おーい、ゆいちゃーん!」

 その時、山側から、少女の元気な声がゆいたちへと響き渡る。

「あっ、まなつちゃん!」
「――まなつ、まなつ、まな……って、ふぇぇっ!?」

 ゆいがまなつに手を振って答えると、その隣で名前呼びの練習中だったここねが、まさかのご本人の登場に、あわあわと動揺した。

「ほうぇ~! 本当に太陽みたいなキラピカな子だー!」
「ホント、笑顔が眩しくて素敵だわ~」

 らんもゆいに合わせてブンブンと大きく手を振ると、マリちゃんが、らんの横で腕を組みながら、微笑ましげに少女たちを眺めていた。

「早くおいでよー! 皆、ゆいちゃんたちに会うの、楽しみにしてるよー!」
「はーい! じゃあ、行こう、皆っ」

 まなつの呼びかけにゆいが応え、続いて、デパプリのチームメイトの方へ振り向く。
 それぞれが胸に期待を膨らませて頷き、そして、全員で、「えい、えい、おーっ!」と高らかに声を合わせた。


 *

【新人研修! シャッフル・トロピカ☀デリシャスマイル❤】

 *


「よし! これで全員揃ったね!」

 なぎさが、今回の新人研修参加者の顔を見渡す。
 その隣で咲が指を動かして人数を数えだす。

「全員で、えぇっと……」
「にじゅういっちに~ん!」

 のぞみが元気に手を挙げて、「21人」と即答した。
 そのやり取りを見て、ラブが首を傾げる。

「あれ? 二人とも、参加人数は前もって知ってるんじゃないの?」
「『DX3』の冒頭付近であった、くるみちゃんとのぞみちゃんのやり取りの再現でしょうか」

 とするとおそらくファンサービスのためのやり取りですね――と、つぼみが顎に手を当てて付け加えた。
 何気に第四の壁を突き破っている。相方のえりかがいないので、その分の役割がつぼみに回ってきてしまっているようである。
 ちなみに、新人研修の参加人数を21人にしたのは、このネタを狙ったわけでもなんでもなく単なる偶然である。

「ファンサービスって――誰に対するものよ!?」

 つぼみの言葉に、響が鋭くツッコミを入れる。

「わぁ~! それはともかく、いつの間にか凄い数だね、プリキュア!」
「確か、研修に参加していない人も含めると――72人?」

 みゆきが目を輝かせると(本人は意図していないようであるが、発言が何気にDX3のノリに乗ってしまっている)、マナが「うーん」とオールスターズ全体の人数について考える。

「オールスターズの集まりに来るのは時々だけど、あゆみちゃんも入れたら73人だよ?」

 マナの発言を受けて、めぐみがあゆみの話を出し、はるかがみらいに話を振る。

「そう考えたら他にももっと人数がいるね! みらいちゃん、確かモフルンも一度変身したことがあるんだよね?」
「うん! 話せば長くなっちゃうんだけどね……」

 みらいが笑って頬を掻くと、いちかが、栗色のツインテールをぴょんっと弾ませながら手を挙げた。

「ルミエルさんもプリキュアだったし……ペコリンもプリキュアになるよー!」
「そういえば、前に私がはぐたんとキラパティに行った時、ペコリンが変身してたね! 私が他に知ってるプリキュアは、あと――大体72億人かな」
「72億~!? キラやば~っ☆」

 はなが飛びぬけて巨大な数字を口に出すと、ひかるが瞳に星をきらめかせて話に食いついた。

「オヨ!? 『ななじゅうにおく』ってどれくらいルン!?」

 ララが触角をオヨオヨと動かし、目を回して混乱する。
 そんなララの肩を優しく支えてあげながら、えれなが「凄い人数だよねぇ!」と眩しい笑顔を見せる。

「それって、最初にマナが出した人数の1億倍になるよね?」
「そうですね、本当に凄まじい数です――あっ! もしかしてその数字、この地球の人口では?」
「ニャン!? 一体、何が起こったら星中の人がプリキュアになるのよ」

 まどかが驚いて発言したその横で、ユニは驚愕を通り越し、もはや呆れ返っている。
 しかし、ユニの隣に立っているのどかは、また違う反応を示しているようだ。

「ふわぁ~、私たちの知らないプリキュアがたくさんいるんだね!」
「本当ね! 機会があれば、その72人全員だけにでも会ってみたいわ」

 のどかが頬を薄紅色に染め、わくわくと胸を躍らせていると、ちゆが両手を胸の辺りで組んで笑顔で同意した。

「そ~んなにたくさんの人でお泊り会とかやったら、ぜぇったい楽しいよね~!」
「え? 72億人ものニンゲンが泊まれる建物があるのですか?」

 ひなたが「きゃーっ!」と興奮してお泊り会の話を出すと、アスミが天然ボケをかましてきた。当然、文脈的に、72人の話である。
 そもそも72人のお泊り会、というのも凄い話ではあるが。学校行事の合宿レベルである。

 『お泊り』と聞いて、さんごが愛らしい笑顔を見せながら提案する。

「お泊り会も素敵だし、どこか皆で遠くへ旅行にも行ってみたいね」
「この21人だけじゃなくて、72人でもう一度、南乃島に遊びに行くのもいいかもしれない」

 みのりが眼鏡を軽く持ち上げながら意見を出す。
 彼女の意見を聞いて、あすかが苦笑した。

「まぁ、よく考えれば21人も十分多いけどな」

 あすかのそばで、ローラが気取る。

「私は何人でもいいわよ? どれだけ大勢の人がいても皆と仲良くするのが女王ですもの」
「その言い方だと、全員国民に引き込もうとしてないか? ……あ、違うな。多国間での親善パーティとかがあるか」
「――全員国民に、ねぇ……」
 そのフレーズを聞いて、ローラの脳裏に、一人の女性の顔が浮かんだ。
 “ローラの未来が幸せいっぱいでありますように――”
 彼女の美しく柔らかい笑顔が、ローラには未だに鮮明に思い出せる。
 ――ねぇ、シャロン。私は確かに今、幸せでいっぱいよ――ローラが小さく呟いた。

「ローラ?」
 背をかがめたあすかが、覗き込むようにローラを見る。
 ローラはわざと女王様然とした態度を作って、あすかにやや上から目線で笑いかける。
「あらなぁに、あすか? そりゃあ楽しみよ、お泊り会! 日程が決まったら、グランオーシャンに連絡ちょうだいね」

 ――わいわいと大勢で盛り上がっている中、まなつが「ねぇねぇ!」と手をブンブン振る。

「確か、みゆきちゃんが、す~っごくトロピカってる物を持ってきたんだよね?」

 見せて見せてー! と、まなつが催促すると、みゆきが満面のスマイルで「うん!」と頷き、鞄の中を探った――が、程なくして、そのスマイルが焦り顔に変わっていく。

「え、あ……あれっ?」
「みゆきちゃん……?」

 まなつが不思議がって首を傾げると、なぎさ辺りが「まさか忘れたわけじゃないわよね……」と不安そうにする。

「――あ! あったぁ~!」
「よかったー!」

 みゆきが「いぇーい!」とはしゃぎながら、見つけた目当ての物を空高く掲げると、周囲のあちらこちらからホッとした声が聞こえてきた。

「ところで――みゆき、と言ったかしら? その小瓶の中身は何なの?」

 マリちゃんが、みゆきの持つ蓋つきフラスコに掌を向けて訊く。
 いい質問が来たとばかりに、みゆきは鼻息を荒くする。

「ふっふーん、これはねぇ――」

 ――イレカワール・改!

「イレカワール……」
「改?」
「何それ面白そぉ~!」

 順に、ゆい、ここね、らんが反応する。

「コメ~!」
「もうちょっとネーミングどうにかならなかったパム?」
「メンメンはこれでもいいと思うメン」

 それに続いて、はしゃぐコメコメ、名付けセンスを疑うパムパム、取り敢えず今を楽しむことにしたメンメン、と三者三様の感想が述べられた。

 ところで、『スマイルプリキュア!』本編に出てきた『イレカワール』は、指輪型(ペアリング)である。
 しかし、この『イレカワール・改』は、小瓶に入った液体型。
 今回の研修に向けて、スマイルチームがマジョリンに制作をお願いしたことでできた、多人数ランダム入れ替え型の魔法アイテムなのである!

「これを一人一杯飲んで、参加者全員が飲み終わった後、瓶に蓋をすれば、スイッチが入って皆の中身が入れ替わるんだよね?」

 咲が、瓶の中の緑色の液体を眺めながら確認する。

 同じように瓶を見つつ、響が冷や汗を垂らしながらみゆきに訊いた。

「念のため訊くけど、元に戻る方法はちゃんとあるのよね……?」
「もっ、勿論、そのためのアイテムくらいあるよ?」
「ここで言うのは、それをちゃんと持ってきてるのかって意味よ?」

 無駄に挙動不審になるみゆきの態度を見て、響が増々不安がる。
 ――あれ~? 見当たらない! という一芝居をもう一度打ちつつ、結局、元に戻すアイテム『モトニモドール・改』は見つかった。

 ラブが、褐色の液体――モトニモドール・改をしげしげと見る。

「それも『改』なんだね」
「なんか、飲めるようにグレードアップしたんだって」

 はるかがラブに声をかける。
 その言葉を聞いて、ラブが「へぇ~?」と不思議そうにした。

「飲むって、なんでわざわざそういう仕組みにしたんだろう?」

 ラブの疑問に、めぐみが同調する。

「確かに、体に振りかけるタイプとか――そもそも液体じゃなくてもいいのにね?」

 イレカワール・改だって、かなり形を変えたみたいだから、モトニモドール・改だって大幅に変えてもいいはずなのに――と、めぐみが言葉を足した。

「その辺りについては、入れ替わった後に説明があるみたいだよ? っていうか、実は私が説明役なんだよね~」

 えへへ~と、いちかが話に入ってくる。
 内緒話をする時に特有のこそばゆさが、いちかの顔に出ている。

 そこから少し離れた場所で、つぼみが首を傾げながら疑問を口に出した。

「それにしても、入れ替わるってどんな感じなんでしょう? 入れ替わりの前後で身長差があった時は、感覚のズレが起こったりしないでしょうか?」
「大丈夫なんじゃない? 魔法のアイテムなんでしょ?」

 なぎさが楽観的に構える。
 彼女の言葉を聞いて、ひかるが「うんうんっ!」と首をブンブン縦に振った。

「キラやば~っ☆ 『誰かと入れ替わる』ことが体験できるなんて~!」
「奇跡も魔法も、すぐ目の前にあるなんて凄いねぇ」

 その隣に立っていたのどかが、弾む気持ちを抑えきれないかのように、口角を可愛らしくキュッとあげた。
 マナも同じ気持ちのようで、目を細めて満面の笑みを見せている。

「もぅ、キュンッキュンだね~! ねぇみらいちゃん、もしみらいちゃんの体を借りることになったら、魔法教えてね」
「勿論だよ! う~、私は誰と入れ替わるのかな~? わくわくもんだぁ!」

 みらいがマナと手を握り合って、ぴょんぴょんと跳んだ。

「それじゃあそろそろやってみよう!」

 めっちゃ楽しみ、もう待ちきれないよ~! と、はなが皆を促す。
 その催促に、のぞみが頷いた。

「そうだね! 皆で入れ替わること、けって~い!」

 キュポンッと小気味良い音を立て、魔法の小瓶の蓋が開けられた。


*****


「うわぁ~、お薬みたいな味なんだ~」

 ゆい――だった少女は、『イレカワール・改』の味にびっくりしつつ、口の中の強い薬草臭を薄めようと、舌を口内で弄ぶ。

 ゆいだった少女は、つい先程のことを思い返す。
 緑色の液体を喉に通して暫くすると、ゆいはエメラルド色の妖しい光に包まれていた。
 光が晴れてみれば、ゆいはさっき立っていた所とは違う場所に立っている。

 すぐ近くの小瓶に目を移すと、ゴム栓と思しき蓋は、ぴったりと瓶の口に収まっていた。

「たし……かに、あたしの声じゃない。服も違うし……」

 先程までゆいだった彼女は、ぐるりと今の自分の全身を見渡した。
 この服、さっき見たはずだけど誰だったっけ。顔が見えないからわかんないなぁ……と、ゆいだった少女が考えていると――

「お~い! ゆーいちゃーん! どこー!?」

 淑やかで、どこか凛とした声がゆいだった少女の耳に届いた。
 やたらと大きなその声の発生源を見やると、赤紫色の髪をしたツーサイドテールの女の子が、両腕を振りながらぴょーんぴょーんと高く弾み続けている。

(確かあの子、『花咲つぼみ』ちゃんだよね。入れ替わる前は、だけど)

 今の彼女の雰囲気には、声や容姿のものと、喋り方や挙動のそれとで、大きな差が出ている。

(つまり、普段は活発な子がつぼみちゃんの中に……)

 つぼみの中身は現在いったい誰なんだろうか、とゆいだった少女は短い間考えてみる。

 ――あの弾むようなカラッと晴れ渡った話し方。全力で今を楽しんでいるようなエネルギッシュな挙動。

(こんな感じで喋ってる子、さっきも見た! そうだ……間違いないよ、この子は……!)

「まなつちゃーん! あたしはここだよ~っ!」

 ゆいだった少女は、つぼみ(まなつ)によく聞こえるように、高らかな声をあげる。

「えっ、うわぁ~っ! ゆいちゃん、みゆきちゃんの体の中にいるんだ~っ!」

 トロピカってる~ぅ! と、つぼみ(まなつ)が眩しい笑みをみゆき(ゆい)に見せる。
 きゃいきゃいとはしゃぐ二人を眺めながら、ピンクのツインテールの女の子が苦笑いをした。

「あたしはひかるちゃんとかぁ~、色々と大胆な入れ替わり方をしたみたいねぇ」
「その喋り方……なぎささん?」

 ひかる(なぎさ)が振り向くと、まなつの体を借りた誰かが、「えへっ」と車掌さんみたいな敬礼をする。

「えっと……あ! もしかして――」
「そう、私! 野乃はな、14歳!」

 はなちゃ~ん! と、ひかる(なぎさ)は顔を輝かせて、まなつ(はな)に白い歯を見せる。
 そんなひかる(なぎさ)の元へ、長身の男性が駆けてくる。マリちゃんだ。

「わぁっ、なぎささん今、私の中に入ってるんだ~、キラやば~っ☆」
「えぇっと、ひかるちゃん、なの? ローズマリーさんの中に入ってるのって」

 先刻見た通常のマリちゃんからはおよそ乖離した言動をする彼に、ひかる(なぎさ)は戸惑う。
 さっき見た限りでは、外見も中身もオトナ感が激盛りな『イイカンジの人』だっただけに、はっちゃけてる現在だとイメージのギャップが凄まじい。

「そうだよ~! 凄いね~、入れ替わるって! 服とかペンダントとか、カッチョい~!」
「ホントよ~、まさかしっかり入れ替わっちゃうなんて~!」
「ぅわ、びっくりしたッ!」

 ひかる(なぎさ)がビクッと肩を震わせて、唐突に会話に入ってきた女性――アスミに目をやる。
 当然ながら、このアスミも中身はアスミ本人でないため、彼女らしからぬ話し方をしている。

 まなつ(はな)が「あのぉ~」とアスミに声をかける。

「もしかして、アスミちゃんがローズマリーさん?」
「当たりよ。まさかこんな素敵なことが経験できるなんてねぇ」

 思わずはしゃいじゃったわ~、とアスミ(マリちゃん)が片手を頬にあてる。
 そこへマリちゃん(ひかる)が興奮気味に詰め寄って、キラキラとした声色で話しかけた。

「ねぇねぇマリちゃんっ」
「あらなに~? 私の美しさの秘訣、気になっちゃった~?」
「あっ、えっと……お肌は綺麗だなーって思うけど、そうじゃなくて……」

 わいわいと、ペンダント(正式名称:デリシャストーン)の話や、今までのキュアプレシャスたちの戦いについての話を始める、アスミ(マリちゃん)とマリちゃん(ひかる)。

 その様子を視界に入れながら、ひかる(なぎさ)がどこか遠い目をした。

「……わかってたつもりだけど、元のキャラを知ってる分、入れ替わってる状態だとやっぱ強烈な違和感があるね、はなちゃん」
「あはは。私もいつもと全然違うひかるちゃんの姿を見て、めっちゃ新鮮な気持ちだよ、なぎささん」

 衝撃が未だに後引く中、ひかる(なぎさ)はまなつ(はな)に手を引っ張られ、「誰と誰が入れ替わってるか、今から確認しに行こうよ!」とその場を離れた。


「――あのぅ、わたくしの体の中にいるのは、どなたでしょうか?」

 ひかる(なぎさ)たちが向こうへ行った後、アスミ(マリちゃん)へ声をかけてきた人がいた。
 張りのある、少女らしい元気な声なのに、口調もあってか随分大人びて聞こえる。

「あなたは――ラブ、だったかしら? あ、今は違うんだっけ」
「はい。中身は風鈴アスミです」

 ラブ(アスミ)は、亜麻色のツインテールをふわりと揺らしながら微笑む。
 そこへ、ある少女が青い髪を揺らしながらスキップするように駆け込んできた。

「わっは~! アスミちゃんだったの? どうりで随分大人っぽいカンジの『あたし』だなーって思ったよ~!」
「ちゆ! あ、今はラブでしたね」
「そうそう! って、あたし今ちゆちゃんなんだ。鏡が無いからわかんなかったよ~、ありがとう!」

 いえいえ、とラブ(アスミ)が笑う。

 少女同士の談笑が始まりそうな雰囲気に、アスミ(マリちゃん)が微笑を浮かべながら静かに場を離れた。
 もっと話をしたかったのか、マリちゃん(ひかる)が「あっ、私も行く!」と付いていく。

 ラブ(アスミ)と暫く一緒に笑っていたちゆ(ラブ)だが、ふと何かに気付いて、疑問を口にした。

「そういえば、ちゆちゃんの中身は誰の体に入ってるんだろう?」
「こっちよ」

 声の方へ向くと、青い髪をおさげにした少女が片手を軽く上げていた。少女に生えている猫耳やしっぽが一緒に揺れる。
 ラブ(アスミ)が「まぁ」と片手の掌で口を覆った。

「ユニの中にいるのですね」

 彼女に続いて、ちゆ(ラブ)が言葉をかける。

「ユニちゃんって宇宙人でしょ? いつもの体と比べてどんな感じ?」
「そうね……感覚的には特に変わりないわ。でも変化の能力と香水を使ったら、自由に見た目を変えられるみたいだから、ちょっとワクワクしてる」

 後でユニに教わってみるわ、とユニ(ちゆ)が香水を片手に口角を上げた。
 そこへ、明るく愛らしい声がユニ(ちゆ)の耳へと届く。次いで、戸惑っているか怒っているかのような声も。

「お~い、ちゆちー!」
「ちょ、ちょ、ちょっと、引っ張るのやめなさいよ、ひなた!」

 やってきた二人を目にして、ラブ(アスミ)とちゆ(ラブ)がそれぞれ声をあげた。

「めぐみ、ひなた。……ではないんでしたね」
「でも、めぐみちゃんの方は『ちゆちー』って言ってるから、多分ひなたちゃんだよね? お~い!」

 そのまま、めぐみ(ひなた)とひなた(?)が近づいてくると、「いやぁ~」とめぐみ(ひなた)が過剰に感慨深そうに腕を組んだ。

「普段私の姿を直で眺めることってないから、こーゆーのってなんかレアっていうか、貴重っていうかぁ――イイよねっ!」
「しみじみするのもいいけど、そろそろ私の腕から手を放してほしいわね……」
「うわ、ごっめん、ユニ!」

 めぐみ(ひなた)は慌てて、ひなた(ユニ)から手を引っ込めた。

 あわあわと頭を下げる相手を「まぁいいけど……」とジト目で見やりながら、ひなた(ユニ)は腰に手をあてる。

「確かに、自分を外から見るのは不思議な気分ニャン」
「私としても、つんけんしてるひなたを見てると不思議な気分になるわね……」

 ユニ(ちゆ)が苦笑する。
 その言葉を聞いて、めぐみ(ひなた)がひょこっと顔を起こす。

「マジ? 良さそうなら、私もそーゆーキャラで暫くやってみよっかな~? 語尾に『ニャン』とかやってみたり」
「うふふっ。大丈夫、ひなたは元のままが一番よ」

 モトニモドール・改で戻っても、つんとした性格のままの猫系ひなた――想像して可笑しくなったのか、ユニ(ちゆ)が吹き出し笑いをする。

(いや、でも『猫系』は元からね。ニャトランとパートナーだし)

 くつくつと笑いを耐えているユニ(ちゆ)を横目に、ひなた(ユニ)は、ふいっと他所の方向を見る。

「にしても、ララたちをほっぽる形になっちゃったわね。あっちはどうなっているのかしら」
「わっ、ほんとにごめん、ユニ~! ちゆちーがユニの中に入ってるって聞いて、『よし、ユニを連れて行こ~』って、いてもたってもいられなくなって~!」
「別にもう謝らなくていいわよ、怒ってないし。むしろいい体験ができたニャン」
「ユニぃ~!」

 「なんて懐の広い!」とでも言わんばかりに、感激してガバッと抱き着くめぐみ(ひなた)。
 それに面食らって、ひなた(ユニ)は「ちょ、抱き着かなくていいわよ。抱き着かなくても!」とじたばた手足を動かす。

 そんな様子に一同が笑みをこぼす中――少し離れた所で、ここね(?)とらん(?)と響(?)がお喋りをしていた。

「オヨ~」

 ここね――正確に言えば、ララの精神が入ったここねが息を吐く。

「『入れ替わり』って凄いルン」

 触角が無いって不思議な気分ルン、と、ここね(ララ)が頭の横を撫でた。

「ほんと、話してる感じはいつもと一緒なのに、姿が全然違うって、妙な気持ちになるよねぇ」

 らん(えれな)が頬を掻く。
 それを見つめながら、響(まどか)が、ふふっと笑いを含めた吐息をこぼす。

「わたくしは少しわくわくしています。『全くの別人に変わる』って、ユニを見て憧れていたんですよね」
「オヨォ。ユニといえば、さっきひなたにいきなり連れていかれてたけど大丈夫ルン……?」

 友人の身を案ずるここね(ララ)の元を、マリちゃん(ひかる)たちが通りかかる。

「あっ、ララ!」
「ひかる!? もう、やっと会えたル~ン!」
「ごめんごめん、つい色んな人と話し込んじゃってぇ……」

 ぽかぽかと軽くマリちゃん(ひかる)を叩く、むくれっ面のここね(ララ)。
 その光景を見たアスミ(マリちゃん)は、どこか微妙な表情をしている。

(普段のここねとまるっきり違うから、見ていてちぐはぐな感じがするというか――複雑な気持ちになってくるわね……)

 アスミ(マリちゃん)の浮かべる引き攣った笑いを目にして、らん(えれな)が顔を覗き込んでくる。

「ローズマリーさん……だったよね?」
「えっ? えぇ」

 軽く驚いたアスミ(マリちゃん)が、らん(えれな)に目を移す。
 らんに『マリッペ』と呼ばれないのは何だか新鮮だ。

「ゆいちゃんたちと落ち合わなくて大丈夫なの?」
「あー……ゆいはさっき見かけたけど、そういえばここねとらんが誰と入れ替わったか、まだ確認してないわ」
「だったら早めに確認した方がいいと思うよ」

 そうですね、と響(まどか)が同意する。

「詳しい内容は聞いていませんが、『研修』ってくらいですし、ある程度グループでまとまって行動――というのはあると思います」
「そうそう。だから予め集まっておいた方がいいと思うんだ」
「なるほどね、それもそうだわ。ありがとう、えれな、まどか」

 あっところで、とアスミ(マリちゃん)は、去り際にらん(えれな)とここね(ララ)に訊く。

「パムパムとメンメン、知らない? まだあなたたちの近くにいたら連れていきたいのだけど」
「う~ん、それが……入れ替わった直後には、『らんちゃんと早く落ち合わないとメン』ってどこかに行っちゃったんだ」
「私も気づいたら向こうに飛んでいくところだったルン。力になれなくてごめんルン」
「あっ、いえ、いいのよ。改めてありがとうね」

 よし、とアスミ(マリちゃん)は気合いを入れ直すと、四人に手を振って、ここねやらんたち(の精神が入っている人物)を探しに向かった。
 らん(えれな)から、「チャオ~!」と明るい声が掛けられた。

 ――ひかる(なぎさ)は現在、まなつ(はな)と別行動で、とある物を探していた。

(あたしの体に今入っている人は……)

 彼女が今探しているのは、なぎさの私物であるスマホ。
 ポケットに入れたままなので、自分の体へと入れ替わっている人を見つけ出さなければ、スマホを見つけられようもない。

 ひかるのスマホからなぎさの物へと電話を発信すれば容易に見つけられないことも無いが、勝手に触るのは勿論気が引けたし、現在ローズマリーの中にいるひかる本人は、スマホ云々と話しかけられるような状況では無かった。
 先程見かけた所、スタプリのメンバーでわいわいと談笑していて、とても蜂を刺せる――もとい、水を差せる感じではなかったのだ。


 ――一方、らん本人。

(確かにらんらん、誰かと入れ替わったみたい……でも、誰となんだろう~?)

 両手をグーパーしながら、らんが中に入った少女は歩く。
 健康的に焼けた肌だ。体つきも程よく筋肉質。活発に運動する子へと入れ替わったのだろう。

「ゆいぴょんはさっきまなつちゃんと落ち合ってたのを見たけど、ここぴーとマリッペがどこかわかんないよ~……」

 ほぇぇ~、と、らんの精神が入った少女はため息を吐く。

「うぅ~っ! せめてメンメンだけとでも会えないかなぁ? もぅっ、人がいっぱいいるし、誰が誰だかわかんないよぉ~!」
「――ねぇっ!」

 悶々とする彼女へ、一言、声が届く。
 「これ話しかけて大丈夫なのかな」って迷いを振り切って、勇気を出したような硬い声だ。

「……ほぇ? えーっと、ひかるちゃん、だったかな? 入れ替わる前は……」
「あぁ……っと、うん、そう! で、あたしはその、あなたが今入ってる体の――」

 うぅーん、なんて言えばいいんだろう~! と、相手は――ひかる(なぎさ)は、語彙力の少なさを嘆く。
 急に自分より困ってそうな話し相手が現れたことで、なぎさ(らん)からは一時的に悩みが吹っ飛び、相手に助言をする。

「んと、『持ち主』とか『本人』とか、そんな感じ?」
「あ、そうそう! そういう感じ、ありがとう!」
「はにゃ~、らんらんこそ『ありがとう』だよぅ~! 鏡持ってなかったから、今らんらんが誰なのかわかってなくってぇ~」

 なぎさ(らん)が照れたように、両腕を前に突き出して、ぶんぶんと掌を振る。

「ほぁっ、でも、らんらんは今、らんらんじゃないし……な、なんて言えばいいのかなぁ。『ワタシ』?」
「別に楽な言い方で大丈夫だけど……」

 ひかる(なぎさ)は苦笑いしながら首をコテンッと横に小さく倒した。
 文字通りの自分自身が、普段とは全く違う性格や言動をして目の前で動いていたら、そりゃあ苦笑でお茶を濁したい気分にもなるだろう。

「あ、そうだ、改めて自己紹介しなきゃ。あたしは美墨なぎさ。よろしくね、らんちゃん――で、合ってるかな?」
「そうそう、華満らんだよ~! よろしくね~、なぎささん!」

 にこにこと笑いかけてくれるなぎさ(らん)に、ひかる(なぎさ)は遠慮がちにお願いをした。

「早速だけど、らんちゃん――あたしのスマホ、貸してもらってもいい……?」


「ほわぁ、何事かと思ったよぉ。パートナーさんにドッキリを仕掛けるんだね?」
「あははっ。うん、ごめんね。紛らわしかったかな」

 ひかる(なぎさ)はスマホの電源を入れながら、さっぱりとした笑い方をする。

「あたしがひかるちゃんに喋り方を寄せて、ほのかにビデオ通話しても、ひかるちゃん本人じゃないって見破れるかなーって」
「はわ~面白そぉ! それ、らんらんも協力してみたい!」

 えっ? と、ひかる(なぎさ)がなぎさ(らん)を凝視する。

「らんらんも……じゃなくて、『あたし』も、なぎささんの喋り方を練習して、ドッキリに参加してみたい!」

 彼女がふんすと意気込んでいるところへ、赤髪の少女が通りかかった。

「何話してるのー?」

 少女は、ひょっこりと頭をのぞかせる。
 ひかる(なぎさ)は振り向くなり、うわぁっ!? と叫んで、バランスを崩し、尻もちをつく。
 距離感がかなり近い。ふと視線を動かしたらすぐそこに顔があった――なんてことが起これば、誰でもビビる。

「あわわわわああ、あ、あ、あすか!? ……じゃ、無いのか。なんなのよもう、誰?」

「わ、ごめん! あたしだよ、あたし。咲!」
「あぁ、咲かぁ……」

 ホッとして息を一つ吐く。
 あすか(咲)はきまり悪そうに少し苦そうな笑いを口元にたたえた。

「あなたは――喋り方も、持ってるスマホからしても、なぎささんだよね?」

 当たり。流石にわかっちゃうかー、と、ひかる(なぎさ)は、元の晴れ空のような笑顔を取り戻す。
 なぎさ(らん)はその横で元気よく片腕を上げて自己紹介をした。

「華満らんだよー!」
「あっ、『デリシャスパーティ』の! よろしくね、らんちゃんっ」
「うんうん! らんらんたち今ねー、ドッキリ仕掛けよっかなーって話をしてるの~」

 かくかくしかじか、と簡素ながら説明をする。
 あすか(咲)が紅い双眸を大きく見開いた。

「へぇー、面白そう!」
「あたし、今回の研修の内容、あえて秘密にしてたからねー。こういうのやってみたくて!」
「そーだ! らんらんにちょっと提案があるんだけど~」

 頭の上に疑問符を浮かべながら、ひかる(なぎさ)とあすか(咲)が視線を向けてくる。

「折角だから、もう少しだけ沢山の人を誘って――それぞれの不参加のチームメイト皆に、ドッキリを仕掛けてみよーよ!」
「舞たちもってこと?」
「それ良くない? 誰が誰かわからないけど、とにかく手当たり次第に声かけてみよっか!」

 三人の声が期待と高揚に弾んだ。


 ――丁度その頃、ここねが入れ替わった先では……。

「この杖、確か『魔法使いだ』って言ってた女の子の物……」

 彼女は自分の手に収まっている魔法の杖をまじまじと見つめる。

「朝日奈みらいさんって言っていたかしら」

 日光を反射させて輝く、ガラス質のハート形のヘッド。
 造りがどことなく神秘的で、確かに魔法っぽさを感じるわね――みらい(ここね)は微笑んだ。

「あっ! やっほー!」

 そこへ、桃色の髪をハーフアップにした少女が、こちらへと走ってやってくる。

「相田……マナさん?」
「うーん、確かに今はマナちゃんなんだけど――私、朝日奈みらい! 私の体の中に入った人と、魔法についてお話ししたいなーって思って、来ちゃった」

 えへへ、とマナ(みらい)は可愛らしく笑う。

「私は芙羽ここね。えっと、その、み――みらい。ほんとに魔法について話してくれるの? 教えてくれたりとか、する?」
「もっちろんだよ――ここね!」

 勇気を出して呼び捨てにしてみたら、相手は快く応じてくれた。
 しかも、魔法を教えてくれると言う。

 みらい(ここね)が頬を染めながら歓喜していると、もう一つの人影が二人の所へ近寄ってきた。

「おーい! あたしの中に入ってる、みらいちゃーん!」

 マナ(みらい)が声の主を見やって、目を丸くする。

「今の言葉……もしかしてマナちゃん!? まどかちゃんの所に入ってるんだ!」
「そうそう! みらいちゃんとは入れ替われなかったけど、やっぱりあたしも、魔法のコツを習ってみたいなーって思って」

 まどか(マナ)が、綺麗な歯をちらりと見せて眩しく愛らしく笑う。

「今、魔法を習いたいって言いました!? 勿論OKだよー!」

 本当に嬉しそうに、マナ(みらい)が指でOKサインを作る。

「――それなら、私も知りたーい!」
「あたしも!」

 そんな三人の元へ、咲(はるか)と、さんご(響)がやってくる。

「はーい、私も教わってみたーい! メインイベントを始めるのはまだ先みたいだし、その間だけでも!」

 華麗な長距離スライディングをズサーッと決めながら、のぞみ(いちか)も土下座の勢いで頼みに来る。


 つい先日までは孤高を貫いていた、ここね。
 しかし、プリキュアの活動やこの新人研修を通して、また新たな友達が、ここねに出来つつあった。

「ねぇ、みらい。魔法が成功しやすい心構えとかあるの?」

 ここねの楽しげな声が、大勢の少女の声に混じって、薄青に透き通る空に響いた。


【後半へ続く】
最終更新:2022年05月09日 21:28