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キュアハニーのKIKI/一六◆6/pMjwqUTk




「どうしよう! これ、ヤバヤバいよぉ!」
 ブルースカイ王国大使館のリビングで、ひめがそう叫んで頭を抱える。その様子を見つめるのは、キョトンとしためぐみ、怪訝そうないおな、半ば呆れ顔の誠司の三人だ。
 事の起こりは、さっきめぐみに届いた一通のメールだ。送り主はプリキュア仲間の相田マナで、新しいプリキュアが誕生したという知らせだった。四葉財閥の情報網のなせる業なのかどうかは定かではないが、それを知ったマナが大喜びで全チームにメールしたらしいというのは、文面から一目でわかった。
 めぐみはそれをキュアラインで仲間たちに転送したのだが、それを読んだ途端、ひめが騒ぎ出したというわけだった。

「ひめ、いったい何がヤバいの?」
「まったく。新しい仲間が増えることなんて、これが初めてじゃないでしょう?」
 めぐみといおなの言葉に、ひめが口を尖らせる。
「ただの新しい仲間じゃないよぉ! なんたって、“ご飯のプリキュア”なんだよ? それってゆうこの……キュアハニーの危機じゃん!」
「なんで大森の危機なんだよ」
「だってぇ! ご飯って言ったら、キュアハニーのアイデンティティそのものじゃない!」
「あいでん……何?」
 誠司の問いかけにひめが叫び、めぐみが首を傾げるのと同時に、玄関のチャイムが鳴った。

「きっと噂のゆうこですわ」
 リボンに促されるまでもなく、ひめが急いでドアを開ける。だがそこに立っていたのは、人間の姿で配達用のキャリーボックスを肩にかけたファンファンだった。
「あれ? ファンファン一人? ゆうこは?」
「後から来る。何だか時間がかかりそうだったから、俺が出来立てのうちに持ってきた」
 そう言ってファンファンがテーブルに並べるのは、まだホカホカと湯気を立てている“おおもりごはん”特製のお弁当だ。

「それで、ゆうゆうはどうしたの?」
「……まあ、じきに来る。だから先に食べててくれ」
 めぐみに答えるファンファンの口調は、いつもと同じく生真面目で淡々としている。が、ひめは見逃さなかった――ほんの一瞬だけど、ファンファンが困ったように目を泳がせたのを。心配がピークに達し、ひめはファンファンにグイっと詰め寄る。
「うそぉ! ゆうこ、やっぱりショック受けてる? やっぱり、キュアハニーの危機だからっ?」
「お、おい……危機って、何のことだ?」
 ファンファンが思わず後ずさった、その時。玄関のチャイムが再び、高らかに鳴った。

「みんな、ごめんね~。遅くなっちゃった」
「ゆうこぉ!」
 ようやく登場したゆうこに、ひめが涙目で駆け寄り、ガシッとその手を掴む。
「心配なんかしなくていいよっ。新しいプリキュアがどんなに凄くっても、わたしたちにとってはキュアハニーが、ずーっと世界一の“ご飯のプリキュア”だからねっ!」
「……えーっと、何だかよくわからないけど、ありがとう、ひめちゃん。さぁ、お弁当食べよう?」
 ゆうこがひめの勢いにたじたじとなりながら、少し困った笑顔でお礼を言う。
 こうしてようやく全員がお弁当に舌鼓を打ち、あらかた食べ終わったところで、ゆうこがこう切り出した。

「実はね。ここへ来るのが遅くなった理由は、その新しいプリキュアのことでなの。せっかくだから新しい仲間に会いに、みんなで“おいしーなタウン”に行ってみない? さっき、いちかちゃんから電話もらってね。何でも和洋中の食事からスイーツまで、ありとあらゆる食べ物屋さんがずらりと軒を連ねているんですって! いちかちゃんたちも大興奮で、六人が代わる代わる出て来て喋ってくれたから、それで時間かかっちゃって……。それに、途中でなぎささんからも『新しい仲間と一緒に、おいしーなタウンのチョコを食べ尽くそう!』って電話があったし、奏ちゃんからも『気合のレシピ、見つけに行くわよ!』ってメールが入ってて……」
 そう言いながら、ゆうこが満面の笑顔で仲間たちを見回す。

「“おいしーなタウン”なんて、聞いただけでお腹も心も踊っちゃうくらい素敵な名前の街だよね。ねえ、みんなで行こうよ!」
「もっちろん! も~、名前だけで幸せハピネスだね!」
「食べ物屋がずらりと軒を連ねてるのか……なんか想像しただけで燃えるな」
「そんなにたくさんお店があるなら、安くて美味しいお惣菜も見つけられそうね!」
「これは是非、新たなお料理のヒントを頂きたいですわ」
「珍しい食べ物もたくさんあるんだろうな。何だか凄い冒険だぜ!」
「“おおもりごはん”以外の美味しいご飯……少し興味があるな」
 いつも以上にワイワイと盛り上がる仲間たちを一瞬ポカンと見つめてから、ひめも目をキラキラさせる。

(そうよね。先輩も後輩も、まずはゆうこに声をかけてくるんだもの。やっぱりキュアハニーは世界一の“ご飯のプリキュア”なんだよね!)

「ひめちゃんも勿論、行くでしょう?」
 黙っているひめを心配したのか、当のゆうこに笑顔で声をかけられ、ひめもビシッと親指を立ててウィンクする。
「モチロンだよぉ! 新しい仲間にキュアハニーの凄さ、バッチリ見せつけるんだからぁ!」
 一人だけ違う方向に鼻息の荒いひめに、ゆうこが苦笑いしながら頭を掻いたとき、彼女のキュアラインが着信を告げた。

「はぁい。あ、ラブちゃん。え? 新しい仲間と、きららちゃんとひかるちゃんと一緒に“おいしーなタウン”で“第四のドーナツ”を発見する? いいね! わたしも混ぜて」
「もしもし、ララちゃん? ああ、ドーナツの話なら……え? ドーナツじゃなくておにぎりルン? 確かにいろんな具材があるかも……楽しみだね!」
「あ、なぎささん、またまたどうしたんですか? え? チョコよりタコ焼き屋を偵察して来いってアカネさんが? あかねちゃんからも、お好み焼き屋は外せへんって電話が? ええ、全部行きましょう!」
「まなつちゃん、どうしたの? そうだね~、初めて後輩が出来るんだもん。そりゃあトロピカってるよね! どんな子たちなのか、楽しみね」
「もしもし、はーちゃん? え? 新しい仲間と、満ちゃんとあすかさんと一緒に“おいしーなタウン”で“第四のメロンパン”を発見する? いいね! って、あれ? なんかさっき似たような話を聞いたような……」
「はいはい、のぞみちゃん? とにかくみ~んな一緒に美味しいものをい~っぱい食べたい? うんっ、一緒に食べ尽くしちゃおう!」

「キュアハニー、すごごごーい……」
 ひっきりなしにかかってくる通話に、終始笑顔で答え続けるゆうこ。その姿と、途中から目が点になっている仲間たちの姿を見比べながら、ひめが半ば呆然と呟く。
 でも、“危機”ならぬ嬉々として楽しい計画について話しているゆうこを見ていると、何だかウキウキしてきて――ひめは隣に座る親友にそっと囁く。
「ねえ、めぐみ。新しい仲間ってどんな子たちかな。仲良くなれるかな」
「大丈夫! みんなで一緒に美味しいものを食べたら、あっという間に仲良くなれるって。ゆうゆうを見てたらわかるでしょ?」
 めぐみの言葉にコクリと頷いて、ひめはようやく新しい仲間たちの姿を楽しみに想像し始めた。


~おしまい~
最終更新:2022年06月08日 00:09