『人魚の食感』5
「ねえ、みのり、メガネ外さないの? キスするたび顔に当たるんだけど」
「外さない」
「……ふーん」
マリンブルーの瞳に、一瞬、悪戯好きの子供みたいな色を閃かせたローラ。
みのりに気取られないよう、普段と変わらぬ表情のままでささやく。
「ちょっとだけ、手、離すわね」
右手をツボに伸ばして、すくった粘水をいったん口に含む。
そして、くちびるをすぼめ、つー…っとメガネのレンズの上に垂らす。
「やっ…ちょっとローラっ!」
とっさに両目をつむって、みのりが顔を背けようとする。
でも、クスクス笑うローラが反対側のレンズにも、つーっ…と粘水を垂らしてくる。
なんとか逃げようと顔を動かすせいで、レンズ以外の場所にも垂らされてしまう。
「何するの、もう……」
「メガネ外さないからよ」
両目を開いたみのりが、軽くローラを睨む。
「だからって、ひどい」
「怒った? フフッ。ていうか、怒っても、あんまり表情変わんないわねー」
「すごく怒ってる。メガネも顔もベタベタ……」
「シャワーあるんだし、あとで洗えばいいでしょ。 ―― じゃあ、今からお詫びに気持ちいいことしてあげるから」
上体を起こし、再び粘水をすくって両手をすり合わせたローラが、その手を左右の胸に被せてくる。
「んっ」と小さく喘いでカラダをこわばらせるみのり。
ローラの両手が小ぶり乳房のカタチに沿ってヌルッとすべりながら撫であげてくる。
同時に、ほそやかな五本の指が、女子中学生の乳房を優しく掴むように何度も揉む。
「あっ…、ローラ……」
「何? ―― 自分の気持ち、正直に言えるようになったんでしょ? ほら、ちゃんと言葉で言いなさいよ」
「胸……気持ちいい。……やめないで……」
「ふふっ、もちろん、まだまだやめないわよ」
「先っぽ、気持ちよくして欲しい……」
か細い声でお願いすると、ローラが微笑を浮かべてうなずいた。
そっと持ち上がった両手のひらが、かろうじて乳首の先に触れているぐらいの距離を保ちつつ、ゆっくりと円を描くみたいに動く。
―― ふたつの柔らかな手のひらで、甘やかに擦られて、快感を募らせる乳頭。
こそばゆさが先っぽを責め喘がせる。
「あっ…ああ……、これ、好き……気持ちいい……」
胸を愛撫する両手の甲に、静かに両手を重ねる。
粘水でスベリが良くなった手のひらが、乳首を丁寧に撫で転がし、甘く溶かすみたいに刺激。「あぁああっ」と、みのりがあられもない声を上げて悶える。
「本当にみのりは先っぽをいじめられるのが好きね。……じゃあ、これはどう?」
左の乳房を撫でて、揉み ―― 愛撫を続けたまま上半身を倒し、自分の左手をどけて、みのりの右乳房の先っぽを、チュッ、とついばむ。
くちびるの軟らかさで優しく締め付けて、チュッ…チュチュチュッ……と、こまやかに吸引。
「ひっっ…あっ……、あっ、あっ……」
初めて胸先を吸われたみのりが裸身をわななかせた。
ローラはみのりの反応を愉しむみたいに、吸い方、吸う強さを変えて、ゆっくりしたペースで何度も乳首を吸いしゃぶってくる。時には舌先で、ちろり、と舐めあげる動きも交えて。むろん、左の乳房をいらう手の動きも止まっていない。
「ああ゛ぁぁ…だめ……、ローラ、そのまま続けられたら、私、変になっちゃう……」
「ふーん。やめてほしいの?」
「ダメッ…、だめ……やめちゃ……駄目」
「ふふふっ、安心して。みのりが泣くまで続けてあげるわ」
ちゅるっ…と乳輪ごと吸い上げられた可愛らしい突起が、上下の歯に優しく咥えられて、ちろちろちろっ…と舌先でこまかく舐め洗われる。
「あっっ…ローラっ、それっ、すごいっ……だめっ、あああ……あぁっ……!」
みのりが激しく身を震わせて、右手でローラの頭部を抱きしめる。
甘美な悦びで、乳房の先っぽが淫らに痺れてしまう。
これ以上がまんできなくて、変になりそうで、しかし、そんな快感と一緒にローラへの切ないほどの感情も湧きあがってくる。カラダの気持ちよさと共に、胸がきゅっと締め付けられる。
撫でるようにすべらせた指先が、頭から肩へと下りて、さらに背中へと続く。
―― 陶器を思わす白い肌、そのなめらかな柔らかさ。
すべらせた指先で味わう感触にゾクッ…と心が震える。彼女への想いが抑えきれなくなる。
「ローラ……、私もローラを気持ちよくしてあげたい……」
「へぇ、今度はみのりがマッサージしてくれるの? じゃ、おねがいね」
マッサージじゃない…と、いい加減ツッコミたかったが、その言葉を呑み込む。
代わりに、自分のカラダの上から降りたローラにうつ伏せになって寝てもらうように頼んだ。
「これでいいの?」
両腕を枕にして寝そべるローラが、きれいな背中を無防備に晒す。
みのりがツボの中に、チャプッ…と両手をつけて粘水をすくい、自分の胸にたっぷりと塗りつける。そして、ローラの下半身をまたいで、彼女の背中に覆いかぶさるみたいに、上半身を倒した。
ギリギリで、胸の先っぽが当たる程度に ―― 。
粘水をローションにして、にゅるうっ、と裸身を滑らせる。
「ンッッ…!」
上擦った声を洩らして、みのりが両目をつむった。
いやらしい悦びに染まった乳頭と、ぬめらせた柔肌との摩擦感。
敏感な胸先にこそばゆい快感が響く。
カラダをヌルヌルと前後に動かし、小ぶりな乳房の先端でローラの背中を何度もなぞり上げる。
ローラも気持ちいいのか、「んっ…んっ……」と目を閉じたまま声を洩らしていた。
「ごめん、ローラ…、気持ちよくしてあげなきゃいけないのに、私のほうが気持ちよくなってる……」
「んっ…、わたしも……ちゃんと気持ちよくなってるわよ……」
ローラが、くすっ…と微笑んで答えた。
真っ白な背中の上を、淫らなヌメリを帯びた双乳がすべり続ける。
軟らかな乳肉の重みがヌルヌルと背中を行き来して、それを感じているうちに、妙にもどかしいような気分になってくる。
「……………………」
両目をうっすらと開いて、顔を赤らめる。
背後で裸身が動くたび、ローラの首筋に、みのりの口から熱い息がこぼれてくる。わざわざ訊ねなくとも、彼女が興奮していることぐらい分かる。
(わたしも、みのりと一緒にもっと興奮したい……かな。
―― いやいや、何考えてるのよ、わたし……)
心の中で激しくかぶりを振ったみのりが数秒後、自身の感情を素直に認めた。
(……したい。ていうか、興奮する以上のコトもやってみたい。みのりと一緒に)
ローラが「ねえ…」とみのりに呼びかけた。
「それ…続けたままで、胸のほうもマッサージしてくれる?」
そして、少し恥ずかしげに睫毛を震わせてから言葉を付け加えた。
「……す、好きにさわってくれてかまわないから」
「わかった」
最終更新:2022年06月08日 21:19