Juvenile(6)
「亜久里ちゃん!」
キュアエコーの体も後を追いかけるように落下していく。だが、どれだけ手を伸ばしても、亜久里には手が届かなかった。
「プリキュア ハートフル・エコー、コルティーナ!!」
光のカーテンがブランケットのように亜久里の体を包む。それがクッションになってくれれば。
亜久里は、体が暖かなぬくもりで包まれている、と感じた。
一瞬、転落の恐怖を忘れそうになる。―直線に落下していた体がゆっくりと回転し、仰向けになったとき、光のカーテンの向こうに見えたキュアエコーの姿に亜久里は息をのんだ。
キュアエコーは目を閉じている。腕や足に力が感じられない。そして胸元の宝石の光が弱い。
「エコー!」
「あいつ…加減を考えろよ」
「エコー、目を覚まして!」
グレルもエンエンも叫ぶ。だが、声は届かない。キュアエコーも答えない。
「グレル! エンエン!」
「え…?」
「私に力を貸してください」
「どうしたの?」
「キュアエコーの光を分けてもらって、今、私の中に力がみなぎっています。
後は、妖精の力があれば」
「俺たちに、アイちゃんの代わりをやれって言うのか?」
「疲れていますか」
「そんなことないよ。でも」
「できるのかよ?!」
わからない。キュアエースは、ほかのプリキュアとは違う。アンの魂である亜久里が、アンの肉体であるアイの力によって変身するのだ。
それに、グレルとエンエンはキュアエコーの妖精である。だが、初めからキュアエコーの妖精だったのではない。ほかのプリキュアに力を貸すことはできないか。
「お願いします」
「無茶だろう」
「助けたいのです!」
亜久里が叫んだ。それは悲鳴だった。
「あゆみと!
あゆみの友達と!
子どもたちを、助けたいのです!」
「亜久里ちゃん…」
「こんな、なにもできない子どものまま終わるのは嫌です!
私をプリキュアにしてください! お願い!」
グレルとエンエンは、カーディガンのポケットから這い出してきた。力強くうなずきあい、手をつなぐ。
そして、グレルの右手は亜久里の左手に、エンエンの左手は亜久里の右手に。
「!」
その新たなトライアングルを新たな光が駆け巡る。三人の胸に確信が生まれた。
「行けるぞ」
「変身だ!」
「プリキュア ドレスアップ!」
いつもとは異なる純白の光をまとう亜久里。まばゆく輝くドレスに、真紅の髪の毛が重なった。
「愛の切り札、
キュアエース!」
落ちてくる岩を足掛かりにジャンプする。
「エコー!」
キュアエースはキュアエコーの体を抱きしめた。息はある。
(よかった…)
再び、岩の急流を渡り、ドリーミアがあった場所に降り立つ。中央部は大きな沼になっていた。浜にあたる場所に、キュアエースはキュアエコーの体をゆっくりとおろした。
「エコー」
「…。
あ」
キュアエースに触れていた短い時間で、力を取り戻したらしい。キュアエコーはすぐに目を覚ました。
「エース!」
「ありがとう。助かりましたわ」
「変身できたの?!」
「はい。
グレルとエンエンが力を貸してくれました」
横でグレルとエンエンが胸を張っている。
最終更新:2023年01月22日 21:17