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Eas to Eas 第2章 戦士たちよ




 出撃から戻ったイースが館の自室に戻ると、目の前に手紙が現れた。

「クラインの手紙?」

 手に取って開く。

“国民番号ES-4043651 イース様 貴方は明日から一般国民です。
本日中に不要な記憶を抹消します”

「やはりそうなるか……所詮私は普通の国民なのか……」

 ラビリンスは国民を直接コントロールしている国家であり、
そもそも警察や軍隊のようなものは必要でない。
 その中でイース、ウエスター、サウラーのような戦士を作ったのは、
全パラレルワールドをコントロール下に置くために必要となる無限メモリー
『インフィニティ』を、ラビリンス外において捜索・確保するためである。
 外世界においては、現地の生命体と交戦することもしばしばある。
そのときに必要となるのが臨機応変な判断を行うための自主性、攻撃性。
故に一般国民に対して抑制していた自我と攻撃性の発現を戦士に対しては
部分的に許容していた。

 そのような自我を持つ戦士を必要以上に擁しておくのは支配者たるメビウスにとっても
諸刃の剣となるため、実際に運用するのは3人だけとしていた。
とはいえ、戦士である以上は死と隣り合わせであり補充は必要。
 よって、戦士のデータを常に収集しておき、
死亡時には別の国民にデータと能力を引き継ぐシステムを用いていた。
 この方法によって本来はイース(今のキュアパッション)絶命の後に
新しく選んだラビリンス国民の一人に引き次ぎ、慣熟の後に投入の予定だった。
 ところが、イースがキュアパッションとして転生するという、システムとしては
想定外の事象が発生したため、新しいイースの交代そのものが不完全とならざるを
得なかったのが実態であった。

 そのこともあり、完了が困難なイースの交代に見切りをつけ、メビウスは
『あれ』の起用を命じるに至ったのであった。

 手紙を読んだイースは、かつてイースの力を与えられた部屋に向かって歩いていた。
この部屋で今度は一般国民に戻るための処置が行われるのである。

 元は国民番号しか持たなかった名もない少女。所詮はいくらでもいる『代わり』。
一度はイースのバックアップされた能力と自我とアップグレードされた力を
与えられた。
 しかし完全にイースになることは叶わず、メビウスからも見切りをつけられた。
明日からは一般国民に戻る。発現した自我も元通り抑制される。

 途中でサウラーとすれ違う。
「君はやはりイースにはなれなかったんだね。ウエスターはイースにまだ
拘っているようだけど……」

 その言葉にイースは内心思った。
「私は完全体になってメビウス様のお役に立たねばならぬ……
お前たちとは違うのだ……」

 部屋に入ろうとしたイースの前にクラインが現れた。

「クライン、用済みの私に何の用だ」
「あなたは、まだイースとしての力をすべては発揮できていないはずです。
このまま処置を施すには惜しい、これをお預けしましょう」

 かつて、メビウスがイースに与えた『ナキサケーベ』のカードであった。
但しピースは2回分であった。

「もし、これでイース……キュアパッションを始末すればあの手紙は取り消される
のだな」
「そうなればメビウス様もさぞお喜びでしょう・・・使えますか?」
「無論だ」

 ナキサケーベのカードを携えたイースが四ツ葉町へと向かった。

 その後姿を見送ったクラインが思う。
「前のイース殿のデータを必要以上に引き継いでしまったようですね。
やはりあの御方にお任せするしかありません。ただ、あの御方のお戻りには
時間が必要。その間、ES-4043651には最後にゲージを貯めていただきましょう、
あのカードの力で」



 せつなは学校帰りに商店街で食材を買っていた。

「あ、桃園さんちのせつなちゃんだね?買い物かい?」
「今日は私たちが食事当番なんです」
「そうかい、えらいねえ!あれ、今日はラブちゃんは?」
「ラブは……補習なんです。それで先に私が買い物を頼まれて」
「そうかい。ラブちゃんは昔から勉強はイマイチだからなあ……」
「(苦笑)そのじゃがいもと玉ねぎください!」
「まいどあり!今日は特別におまけしてあげるよ」
「え、そんな……いいんですか?」
「せつなちゃんいい子だからね!かわいいし」
「(顔を真っ赤にして)ありがとうございます!」

 オマケがラブの苦手なニンジンであったというのは何とも皮肉で
あったが、
「うーん、今日は精一杯頑張ってラブにもちゃんと食べてもらうわ」

 残りの買い物も済ませ、家路に急ぐ。
なるべく家に早く帰って、普段からよくしてくれている桃園家のためにカレーを作ろう!

 そこにイースが現れた。
「わが名はイース、ラビリンス総統メビウス様が僕!。
イース!私は今度こそお前を倒して完全体になり、メビウス様のお役に立つ!」
「やめて!もう私はイースじゃない!私を倒しても貴女はイースにはなれないわ」
「うるさい!私はお前を倒さないと本物になれないのだ!」
イースがせつなに蹴りを入れようとした。

 避けようとして、落とした買い物かごから買った野菜がこぼれる。

「あっ!」

 イースがその中の玉ねぎに真紅のダイヤを投げつけた。
「ナケワメーケ!我に仕えよ!」
「ナーケワメーケー ナケルデー!」

 ナケワメーケの体が自らスライスされて、玉ねぎの成分が周りの人々を襲う。

「目が痛い!」
「前が見えない!」
「涙が止まらない……」
 人々がパニックに陥る。

「ふふふ、不幸のゲージもたまっていくぞ!」

 せつなもリンクルンをかざし、プリキュアに変身した。
「真っ赤なハートは幸せの証!熟れたてフレッシュ、キュアパッション! 
レッツ・プリキュア!」

 イースはナキサケーベのカードをかざす。

「これが何かわかるな?」
「それは! 貴女はそのカードの意味をわかっているの?」
「ふん、お前はこのカードの力を使いこなせずボロボロになったようだが、
私なら使いこなせる。えいっ!」

 カードがナケワメーケに融合し、ナキサケーベと化した。
イースの手の甲に禍々しい目が現れ、体中に触手が巻きつく。
 痛みに耐えながらも笑みを浮かべ
「これだ、この力だ、行け!ナキサケーベ! あいつを倒せ!」
「ウォー!」

「プリキュア・キック」
 キュアパッションが放ったキックを自らスライスして受け流し、
すかさずスライスオニオン弾を浴びせる。

「キャーッ」

 スライスオニオン弾はさらに雨あられのように襲い掛かり、猛攻は苛烈を極めた。

「つ、強い……」

 このまま市街地でナキサケーベを暴れさせては、街の被害が拡大する。
ナキサケーベのスライスから発生する成分が、人々の目を見えなくなることに
よる二次災害も無視できない。
スライスオニオン弾を無数に浴びながらも人の少ない森のほうに誘導した。

 さらに、キュアパッションは自分のみを付け狙うイースとの戦いに仲間を巻き込む
ことをためらっていた。

「今日は他のプリキュアはどうした?」

「私一人で十分よ!」

「そうは思えないがな……」

 更に玉ねぎの先から伸びた青ねぎが蔓のようになり、傷だらけのキュアパッションを
さらに締め上げた。

「う……うう」

「いいぞ、ナキサケーベ、このまま倒してしまえ……」

 まさに気を失いかけていた時に、頭に桃園家の家族の笑顔が浮かんだ。
見ず知らずの自分を受け入れてくれたあゆみと圭太郎。
そして、戦いに傷ついた自分を包み込んでくれたラブ……

「おばさま……おじさま……ラブ……
今日はみんなのためにカレーを作るの……だから……
負けるわけにはいかない!」

キュアパッションは渾身の力でナキサケーベの蔓をはねのけた。

「何!」

 すかさず、アカルンを召喚。

「歌え!幸せのラプソディ!パッションハープ」

 高速移動しながらパッションハーブから光弾を連続してナキサケーベに
浴びせた。

 最後はプリキュア・ハピネス・ハリケーンを放ちナキサケーベを浄化、
玉ねぎに戻るとともに、ピースが一つ消えていった。

 キュアパッションも一人でダメージを受け続けたため、もはや立つのがやっとで
あった。

 イースはそんなキュアパッションに対して、自ら攻撃をしかけようとしたが、
「うっ……力が入らん。ならば、ナキサケーベ!」

 回収したナキサケーベのカードを手近にあった樹木に投げつけたものの
はね返されてしまった。

「どういうことだ? 私にも力が残っていないということか……」

 イースはいずこへと去って行った。

 変身を解除したせつなはアカルンの力を借り、
「買い物かごのある場所へ……」
 飛び散った野菜を集め、最後の力を振り絞って家に向かった。
「夕ごはん……みんなでおうちで夕ごはん……」


 その頃、やっと補習から解放されたラブが家路を急いでいた。

「はあ~やっと補習が終わったよ~ せつなもううちに帰ってるよね~」

 家が見えてきた。さらに急ぐ。

「たっだいま~ ごめんね~ せつな……!?」

 そこで見たのは、玄関の前で倒れているせつなであった。

「せつな! どうしたの!?」



最終更新:2013年02月16日 23:03