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プリキュア VS ディケイド(V)




 四つ葉町の街中を、士は一人、小走りに駈けていた。

 商店街から学校のまわり、緑道公園、オフィス街、駅前…。

 やがて河川敷まで来たところで、左右を見渡しながら足を止める。

「…おい、海東っ!」

 中空に向かってそう声を挙げるが、返ってくる返事はない。

(やっぱりもう、この世界にはいないのか…?)

 苛立たしげに、河川橋のコンクリート柱に拳を打ちつける。

「誰か、人を捜しているの?」

 顔をあげたそこに一人の少女が立っていた。 清楚な白のワンピースに白いつば広の帽子。 胸元には四つ葉のクローバーのペンダントを下げている。

「こんにちは。 公園のドーナツ屋さんの人ですよね?」

「…ああ」

「やっぱり。 ラブたちと話しているのを見かけたから。 私、ラブの友達なんです」

「友達、ね…」

 士は少女から目を離さず、変身ベルト“ディケイドライバー”のバックルを構える。

「確かに仲が良さそうだな。 “管理国家ラビリンス”さん」

 少女は一瞬驚いた後、偽りの笑顔を捨てて敵意に満ちた視線を向けた。

「お見通しと言うわけね。 いいわ」

 脱ぎ捨てられた帽子が宙を舞い、紺色の髪がぱっと広がる。

 少女は奇妙な仕草を始めた。 広げた両手の指を折り、左右の爪と爪を合わせ両手を擦り合わせる。

「スイッチ・オーバー」

 声と共に再び両手を広げた時、少女の姿は一転していた。

 先程の清楚なイメージとは正反対の、身体のラインが露になった黒いレザーの衣装。 ヘアバンドで止めた灰色の髪。 そして呪殺の力さえ秘めていそうな、紅玉の瞳…。

「我が名はイース。 ラビリンス総統、メビウス様が僕(しもべ)!」



 少女が姿を現す間に、士もベルトを装着しカードを構えていた。

「変身」


 “KAMEN RIDE ....  DECADE !!”


「我が名はディケイド。 あいにく、誰の僕(しもべ)でもないがな」

 ディケイドの皮肉を聞き流して、イースはジュエルを構える。

「ディケイド…。 その力、どれほどの物か確かめてやる」

 放ったジュエルの切っ先が、ディケイド横のコンクリート柱に突き刺さった。

「なにっ?」

 煙を吹き上げ、不気味な鳴動を始める河川橋。 その下からディケイドが走り出て振り返った先で…、煙が晴れ、河川橋が再び姿を現す。

 河川橋の側面につり上がった目のような形の光が灯る。 イースの投げたジュエルは、その額の位置に貼り付いていた。

『トオリャーンセ!』

 河川橋が“動き出した” 川の両岸を足場に、ディケイド目掛けて前進を始める。

「“ナケワメーケ”かっ!?」

 ディケイドを踏み潰さんと、ナケワメーケが地響きを上げて前進速度を早めた。


 “ATTACK RIDE ....  BLAST!”


 拳銃型になったライドブッカーを抜いてトリガーを引く。

 その周囲にライドブッカーの分身がいくつか現れ、同時に弾丸を発射した。

 連射された弾丸がナケワメーケに命中するが…、全て弾き返される。

「ふん。 アンデッドどもが恐れる“世界の破壊者”…。 どれだけのものかと思えば、その程度か!」

 ナケワメーケと化した河川橋の上に立ち、イースは眼下のディケイドを見下す。

「ナケワメーケ! 奴を踏み潰せ!」

『ワタリャーンセ!』

 ディケイドの頭上に、ちょっとした家ほどの面積のある柱の足が振り下ろされる。

「おわあっ!?」

 飛び退いて下敷きになるのだけは避けたディケイドだが、衝撃で吹き飛ばされ、河に落ちた。

 やがて静まりかえる水面…。 ディケイドは浮いて来ない。

(倒した? …いや、逃げたか)

「大したものだな。 ラビリンスの力…」

 イースの横に、“アンデッドの王”が立つ。 イースは冷めた視線だけを向けた。

「だが、ディケイドには逃げられたな」

「それも筋書きの内だ。 次はお前たちにも手を貸してもらおうか」

 口元をゆがめ、イースは川下に広がる街に目を向けた。

「“最強のナケワメーケ”と共に、な」



 …………

 河川橋から1キロほど下った下流。 その岩場になった岸辺へ、士は這い上がるようにして身体を引き上げた。

「“ナケワメーケ”か…。 ふざけた化け物だが、いざ相手にするとなるとキツいな…」

 既にディケイドへの変身は解け、ずぶ濡れの黒いコート姿で荒い息を吐いている。

「まったく、不死生物(アンデッド)だけでもやっかいだってのに…」

『アンデッドどもが恐れる“世界の破壊者”…。 どれだけのものかと思えば…』

 イースの言葉を思い出して、ふと士は動きを止めた。

「あいつ…、アンデッドの事を知ってた? …まさかっ!」

 プリキュアたちが危ない!

 士は立ち上がると、痛む身体を抑えて歩き出した。


「ツカサちゃん、今日はどうしたんだろ?」

 昨日と同じ公園で、スポーツウェア姿で待っているラブたち3人。

 しかしカフェワゴンはいつもの位置に停まっているものの、店は閉まったままだ。

 ふと公園の入り口に目をやったラブは…、そこに士の姿を見つけて声を挙げた。

「ツカサちゃん!?」

 美希と祈里も、士の様子がおかしいのに気付いた。 3人して士の元へ駆け寄る。

「お前たち…、大丈夫だったか?」

「ツカサちゃんこそ、どうしちゃったの?」

 まだ濡れた服と傷ついた身体の士を、ラブが支える。

「大丈夫だ。 大したことはない」

「アンデッド? それともまさか、ラビリンスが?」

「たぶん、両方だ」

 肩を貸そうとするラブを制して、険しい表情の美希に答える。

「いいか、お前ら。 おそらくラビリンスはアンデッドと」

「手を組んだ、という事だよ」

 その声は士やラブたちとは違う方向から聞こえてきた。

 公園の中。 カフェワゴンの近くに立っているのは…。

「海東っ!」
「あーっ! リンクルンどろぼう!」

 士とラブが同時に声を挙げる。 いつの間に公園に入って来たのか、反対方向から姿を現したのは行方をくらましていた海東だった。



「士の考えている通りだ。 ラビリンスとアンデッドは手を組んでいる。 プリキュアとディケイド。 キミたちを倒すためにね」

 歩を進めながら、海東が種明かしのように語る。

「それよりも、ブッキーのリンクルンを返しなさいっ」

「ああ、その事なんだけどね」

 息まく美希に、海東が答える。

「これでも僕はフェミニストのつもりだから。 女性から無理に譲ってもらうのは性に合わなくてね。 公正な取り引きを用意して来たんだ」

「ふざけるなっ」

「まぁ聞けよ。 士」

 海東は指を追って勘定を始める。

「アンデッドの軍勢が約50体に、ラビリンスの幹部とナケワメーケ。 対してこっちは、ディケイドとプリキュアのお嬢さん3人…。 いや、今は2人か」

 絶望的な戦力差を突きつけられて、ラブたちは表情を曇らせる。 が…。

「けど、そこに僕が加われば、結構いい勝負になるんじゃないかな」

「どういうこと?」

「アンデッドとラビリンスに対抗するのに、力を貸すよ。 その代わり…」

 祈里の黄色いリンクルンを手にして見せる。

「これは正式に僕に譲って欲しい。 悪い話じゃないよね?」

「そんな条件のめるわけないだろ」

 ラブと美希もそれは同感だった。 それぞれ自分のリンクルンを手に取る。

「いくわよラブ。 今度こそ、あいつを捕まえるのよ」

「待って、美希ちゃん」

 祈里がそんな美希を止める。

「ブッキー? まさか、あいつの言うことを聞くつもりなの!?」

「ここは私に任せて」

 祈里は海東の方へと一歩、足を踏み出す。

 すかさず海東が“ディエンドライバー”の銃口を祈里に向けた。



最終更新:2013年02月24日 15:47