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プリキュア VS ディケイド(VII)




「この子たちの言う通りだ…」

 士が前に出る。

 擦り傷を作った顔に、土埃で白く汚れたコート。 しかし、その威風堂々とした様は、まさに世界を超越した者の姿だった。

「俺は今まで、いろんな世界を巡り、そこで戦う奴らと出会って来た。 姿も、力も、技も違う奴らだったが、戦う気持ちは皆同じだった」

 そしてラブたち3人を見る。

「愛と、希望と、平和への祈り。 …この子たちの事だ」

 きょとんとするラブたち。

 士は“ディケイドライバー”のバックルを構える。

「そういうの別に嫌いじゃない。 俺も少しだけ、そんなビートにノってみたくなった」

「フン。 くだらない」

「やめておけ」

 今度は士が、イースを指差す。

「何だかんだ言っても、お前も悪にはなりきれない奴だ。 こういうのは向いてない」

「分かったふうな事を言うなっ!」

 苛立たしげにイースが吐き捨てる。

 あるいは、本当に分かっているのか?

「貴様…。 いったい何者だっ!」

 ラブたちも、はっとして士を見た。

(言われてみれば…、ツカサちゃんって、いったい何者なの?)

 世界から世界へと渡り、すべてを見知り、すべてを繋ぎ、そしてすべてを破壊する?

 もしもこの世に“神さま”というものがいるとしたら、そんな存在のことを言うんじゃないだろうか。

 士がバックルを腹部に押し当てた。 伸びたベルトが腰を巻いて装着され、側部にライド・ブッカーが現れる。 その蓋を開いてディケイドのカードを引いた。

 ゆっくりと…。 ゆっくりと、士がカードを目前に構える。

 カードを持つ士と、カードの中の“ディケイド”

 二人の士の目が、イースを見据えた。

 誰もが次の言葉を待つ前で、士が口を開く。

「通りすがりの“仮面ライダー”だ。 覚えておけっ!」

「美希たん! ブッキー! 私たちも」

「ええ!」「うんっ!」

 リンクルンにクローバー・キーを差し込み捻る。 携帯手帳が開き、メロディーが軽やかに流れた。

 士が手にしたカードを弾いて裏返す。

 ラブたちがリンクルンのローラーを指先で回す。

「変身!」
「チェインジ! プリキュア・ビートアーップ!」



“KAMEN RIDE ....  DECADE !!”


 ディケイドに変身する士。

 一方、ラブたちはリンクルンから溢れた光に包まれ、異相空間に誘(いざな)われた。

 髪はとけ、まばゆい光のスーツに包まれた姿で、ラブが宙を飛び、美希が地面を滑走し、祈里が自由落下する。

 その加速するスピードが最高速に達した時、時空の狭間は繋がり、伝説の力がその身に宿っていった。

 まず胸元に4色ハートのエンブレムが花開く。 ボリュームアップした髪が結い上がり、鮮やかな戦闘衣装がその身にまとわれる。

 足先のブーツ。 手元のリストバンド。 リンクルンのキャリー・ポーチ。 首元のチョーカー。 ハートのイヤリングと髪留め。

 変身プロセスを終え、宙を舞い降り立ったプリキュアたちが靴音を響かせた。

 順にハートマークをつくった両手を打ち鳴らし、名乗りをあげる。


「ピンクのハートは“愛”あるしるし…。 “もぎたてフレッシュ!” キュア・ピーチ!」

 桃園ラブ…。 “キュア・ピーチ”


「ブルーのハートは“希望”のしるし…。 “つみたてフレッシュ!” キュア・ベリー!」

 蒼乃美希…。 “キュア・ベリー”


「イエローハートは“祈り”のしるし…。 “とれたてフレッシュ!” キュア・パイン!」

 山吹祈里…。 “キュア・パイン”


「たて線マークは“旅”するしるし…」

 そして。

「“通りたてフレッシュ!” 仮面ライダー・ディケイド!」

 門矢 士…。 “仮面ライダー・ディケイド”


「レッツ!」
「“プリキュア・アンド・ディケイド”!」


「やれ! “アンデッド・ナケワメーケ”っ!」

『ア~ンデッドォ!』

 ラビリンスとアンデッド。 プリキュアとディケイド。

 パラレル・ワールドを越え、この“プリキュアの世界”の存亡を掛けた最終決戦の火蓋が切って落とされた。

「変身」

 “KAMEN RIDE ....  DIEND !!”

 海東もディエンドに変身すると、銃を構えディケイドと背中を合わせる。 しかし。

「おい海東! お前も力を貸せっ!」

「おいおい。 それは君たちの方で選択拒否しただろ? それに、お宝の手に入らない世界に、もう興味はない」


 “KAMEN RIDE ....  BLADE !!”


「餞別だよ。 それじゃあ、お先に」

 ディエンドは大きく跳躍すると、公園の外へと消えていく。 そしてディエンドの召喚した“仮面ライダー・ブレイド”は、アンデッドの軍勢へと果敢に斬りかかって行った。

「ちっ。 ノリの悪い奴め」

「数が多すぎるよ…。 どうする? ディケイド」

 背中合わせに陣形をとる4人。

 ディケイドとパインの前には、イースを肩に乗せた巨大な“アンデッド・ナケワメーケ”

 ピーチとベリーの前には、ブレイドを押し退けて迫るアンデッドの群れ。

「何てことはない。 今の俺たちならな」



ディケイドのライド・ブッカーが自然に開き、4枚のカードが宙に飛び出す。

 腕のひと振りで、キャッチする。 それはこの世界に来た時現れた4枚のブランク・カードだった。

 ディケイドがその世界の戦士と共鳴し合った時…、“新たなる力”が発現する。

 暗転していた4枚のカードの表に、次々と絵柄が浮かび上がった。


 キュア・スティック“ピーチ・ロッド”を描いた、“ATTACK RIDE”カード。

  キュア・ピーチの姿を描いた、“PRECURE RIDE”カード。

   キュア・パインと“パイン・フルート”を描いた、“FINAL FORM RIDE”カード。

    そして、四つ葉のクローバーマークを描いた、“FINAL ATTACK RIDE”カード。


「悪くない手札だ。 …いくぞっ!」


 “FINAL FORM RIDE ....  BLADE !!”


 アンデッドの群れに翻弄されていたブレイドが、突然、ふわりと宙に浮かぶ。 ざわめくアンデッドの頭上で奇妙な変形が始まった。

 逆立ちの格好で宙吊りになるブレイド。 持っていた剣が足先に来て、背中に翼のようにカードが広がり、全身が刀身と化す。

 剣王の剣“ブレイド・ブレード”…。 現れた大剣はディケイドの手に収まると、ピーチとベリーに迫っていたアンデッドの先陣をひと振りでなぎ払った。

「すごい…」

「感心している場合じゃないぞ」

 大剣を片手に、ディケイドが1枚目の新カードを振って見せる。


 “ATTACK RIDE ....  PEACH ROD !!”


 ピーチのリンクルン・キャリーが淡い光を放つ。 次の瞬間、そこからキュア・スティック“ピーチ・ロッド”が勝手に飛び出し、ゆっくり回転しながらディケイドの空いた手に収まった。

「あ―っ! 私のピーチ・ロッド!」

「ちょっと借りるだけだ。 代わりに、ほら」

 ディケイドは、反対の手にあるブレイド・ブレードを、無造作にピーチの方へ放り投げる。

「え…。 きゃあああああああああっ!」

 ピーチの頭上に重量何100キロはあろうかという大剣が落ちてくる。

 とっさに我が身を庇って突き出した手に…ブレイド・ブレードは握られた。

「あれ…?」

 身の丈を超える刀身を持つ巨大な剣を、ピーチは軽々と片手で持っている。

「何、この剣? 軽い…」

「ピーチ、後ろっ!」

 キュア・ベリーの声に振り返り、ピーチが青ざめる。

 二人を取り囲もうと、総勢50体近くのアンデッドが迫って来ていた。



最終更新:2013年02月24日 15:52