ズンズン! ネガトーンが大きくなっちゃったニャ!
「あれだ」
「本当だ」
「俺は嘘はつかねぇよ」
その森をさらに奥に入る。わずかに開けた場所にハタネガトーンがいた。その足元にファルセットたち。
「音符の匂いがするニャ」
「町で騒ぎを起こしてる間に集めたんだ」
「ノイズは?」
「ここにはいねぇ」
「場所知ってるって言ったじゃん!」
「ゴーカイガレオンでキャッチできたのは、ノイズの気配を持ってるあいつらだけだ」
「嘘つき」
「ノイズ自体は、この世界にはいねぇ」
「本当なのぉ?」
「俺は嘘は」
「それが嘘っぽい」
後ろでは、奏が、漫才みたい、と呟いた。エレンも声を殺して笑った。
「あの…」
「あぁ」
アコはジョーに上着を差し出した。森の中をドレスで歩くことになったので、ジョーが着せたのである。どちらの言葉も短かった。こちらでは、アイムとルカが笑っていた。ハカセが、テレ屋さん、と言ってガイと含み笑いをした。
「俺たちはあの化け物をやる。
旗は頼んだぞ」
「わかった」
「よし」
「レッツ プレイ、プリキュア モジュレーション!」
飛び出した響達の周りに光があふれる。
「つまびくは、荒ぶる調べ。
キュアメロディ!」
「つまびくは、たおやかな調べ。
キュアリズム!」
「つまびくは、魂の調べ。
キュアビート!」
「つまびくは、女神の調べ。
キュアミューズ!」
「届け、四人の組曲!
スイートプリキュア!!」
「ゴーカイチェンジ」
森の外に飛び出すプリキュアとゴーカイジャー。
「音符を取り返しに来たよ、ファルセット!」
「プリキュアか。
そいつらはなんだ」
「本物の海賊よ」
「本物の海賊?」
「ゴーカイレッド」
「ゴーカイブルー」
「ゴーカイイエロー」
「ゴーカイグリーン」
「ゴーカイピンク」
「ゴーーーカイシルバー」
「海賊戦隊、ゴーカイジャー!」
「この世界には色んな奴がいるものだな。
お近づきの印に音符を一つ分けてやろう」
ファルセットはさっきと同じように一もめした後、バリトンの瓶から音符を一つ取り出し、指ではじいた。ふわふわとゴーカイシルバーのもとに進んでいく。
「え、僕にくれるんですか?」
「ガイ、それを捨てろ!」
「いでよ、ネガトーン!」
遅かった。ゴーカイスピアにくっついた音符が邪悪な表情になったかと思うと、それはネガトーンとなった。
「僕のゴーカイスピアが!」
「何やってる!」
「いでよ、ネガトーン!」
二体のネガトーンが揃って声を上げた。
「ネェガァァァ!!」
「どうするの、マーベラス」
「プリキュア、計画通り、お前たちは旗だ。
俺たちはゴーカイスピアをやる」
「その分担でいいの?」
「俺たちは、ネガトーンの事はよく知らねぇ。お前たちのほうが扱いは巧いはずだ」
「うん」
「そういうことだ。
行くぞ」
「ちょっとマーベラスさん、それってゴーカイスピアに何かあってもいい、ってことですか?」
「骨を狙え」
「みなさん、よろしくお願いしますよ!」
「レンジャーキー、セット」
《ファーーーイナルウェィブ!》
「ゴーカイブラスト&スラッシュ」
轟音とともに爆発、高々と煙が上がった。
「え」
「効かない」
「アーハッハッハ!」
ファルセットの笑い声が響き、それにバスドラとバリトンの声が重なった。そしてさらにもう一声。
「誰?」
聞き覚えのない声にプリキュアも振り向いた。
「バスコ…」
ザンギャックと裏で取引をし、私掠船を駆る男、バスコ・ダ・ジャロキアである。
「やぁ、マベちゃん。
面白いところで会うねえ」
「なんの真似だ、バスコ!」
「いや、僕の知らない『
大いなる力』があるって聞いたからさ。
探しに来たら彼らと意気投合しちゃって、ネガトーン強化のお手伝いをしたってわけ」
「これ以上、低い声の奴を増やすのは不本意だったのだが、目的が一致したのでな」
ファルセットがまた笑った。
「ちょうどいいや。
ここで死んでくれる?」
「バスコ!」
スピアネガトーンが飛んだ。ゴーカイジャーがあっという間になぎ倒される。
「助太刀いる? ファルセット君。
お安くしとくよ」
「いらん」
「そう。
スコアロイドのハオン君とかうってつけだと思うんだけど」
「今度にしよう。
それから、何度も言わせるな。『ファルセット様』だ」
「ゴーカイジャー、そっち任せていい?」
「あぁ!」
「みんな、行くよ!」
プリキュアも同じように骨を狙った。しかし、バスコがもたらした技術によって強化された骨はプリキュアのキックもパンチも全く受け付けなかった。
「プリキュア スパークリング・シャワー!」
ハタネガトーンには全く堪える様子がない。
「ミューズの技でもダメか。
リズム、ビート!」
「プリキュア パッショナート・ハーモニー!」
「これも効かない!」
ハタネガトーンは雄たけびを上げた。巨大な旗で巻き起こされる風で足元をすくわれ、ミューズが飛ばされる。
「ミューズ!」
ビートがギリギリのところで手をつかんだ。メロディにもリズムにも二人を助ける余裕はなかった。
バスコが笑う。
「ほらほら。
諦めて僕に『大いなる力』を渡してよ。
本当は女の子相手に乱暴な真似はしたくないんだからさ」
どこかで聞いたような台詞を言う。
それを見たゴーカイレッドがジャンプ一閃、プリキュアの前に立った。
「バスコ、お前、ガセネタに引っかかったんじゃねぇか」
「おや、何を言い出すの。新しい攻撃方法?」
「いつものお前なら、そのラッパで力を持っていくはずだ。なんでそれをしない」
「だって、か弱い女の子じゃない」
「お前がそんなご立派なタマか!」
バスコは怒ったようだった。
「じゃあ、そうさせてもらうよ。
ファルセット、ネガトーンを止めろ」
「相手にするな、バスコ」
「止めろ」
聞く耳を持たない。ファルセットは手を振り、ネガトーンに攻撃をやめさせた。
「一緒にマベちゃんの力ももらっちゃうけどいいよね」
「やってみろ」
右手のラッパを口につける。甲高いメロディーが山に響き渡った。
「ぐ」
ゴーカイレッドが膝をついた。苦しげにうめく。
「プリキュア、気をしっかり持て」
「これ、なに?」
ゴーカイレッドは警告してくれたが、プリキュアには何も起こらない。四人はお互いに顔を見合わせるだけだった。
「…。
そういうことか」
「ねぇ、ゴーカイレッド、あの人、何をしてるの?」
「絶賛恥かき中だ」
バスコの顔が真っ赤に染まった。
「ファルセット、騙したな!」
「何のことだ」
「『プリキュア』が『大いなる力』を持っている。そう言った!」
「奴らは、長きに渡って我々の妨害をし続けてきた。
実に『大いなる力』だ」
ファルセットは涼しい顔で、むしろ笑みを浮かべながら言った。
「まぁ、それが君の言う『大いなる力』と食い違うことがあったとしても、そこまでの責任は持てんな」
「ファルセット!」
「『ファルセット様』だ!」
ファルセットが突き出した拳からどす黒い波動が飛び、バスコは吹き飛ばされた。
「海賊崩れが。
私の隣に立つことができただけでも栄誉だと思うのだな」
バスコはゆっくりと立ち上がった。それでもまだ笑っている。
「後悔することになるよ、ファルちゃん。
はっ!」
バスは再び真っ赤になった。全身が赤く、黒い鎧をまとっている。それがバスコの真の姿だった。ゴーカイジャーが構える。しかし、そこに一瞬の躊躇があることにキュアメロディが気づいた。
「どうしたの」
「なんでもねぇ」
「あいつのこと、苦手なの?」
「んだと?」
キュアメロディにズバリと言い当てられて、ゴーカイレッドはいきり立ったが、それは事実だった。あの姿になったバスコに歯が立った事は一度もない。
「あたしたちに任せて」
「寝ぼけんな。ガキになにができる」
「あのラッパの音、あたし達には効かなかった。
きれいな音だったとは言わないけど、何も恐さを感じない」
「音…?」
「だからあたし達に任せて」
四人がバスコに向かって走り出す。バスコが鞭を振ると火花が飛び散ったが、それはすべてよけることができた。
前後する中、キュアミューズが後ろに下がり、姿が見えなくなったかと思うと、三人の背後から高く飛び上がった。
「シ! の音符のシャイニング メロディ!
プリキュア スパークリング・シャワー」
「なに」
バスコが上げる火花はすべて、キュアミューズの光の泡に吸収されてしまった。
「プリキュア ミュージック・ロンド!」
「うわぁっ!」
三色の輪に取り込まれてバスコは動けなくなった。
「やった」
ゴーカイグリーンが手を叩き、ゴーカイブルーが身を乗り出した。
「三拍――」
その瞬間、草むらの中から大きなサルが現れ、バスコに体当たりをした。
「なに」
「サリーか」
その勢いで輪から逃れたバスコは、サリーの肩を借りて立ち上がった。
「中々やるね、お嬢さんたち。
今度はもっと静かなところで会おうか」
そう言い残すと消えてしまった。
「よし。
後は旗だ」
「手はあるの?」
「ある。
ゴーカイガレオン・バスター!」
「え、マーベラスさん、ひょっとして」
「あとでハカセに新しいのを作ってもらえ」
「ちょっと待ってくださいよ」
「うるせぇ!」
ゴーカイガレオン・バスターはスピアネガトーンの鉾の部分にあった顔面に命中した。
「やったか?!」
確かに顔面に焦げたような痕は見える。しかし、倒せたわけではなかった。
「殿下、海賊どもがまたなにかやっているようです」
「今日は奴らの話は聞きたくない」
「これをご覧ください」
ダマラスはスクリーンにゴーカイジャーとプリキュアの様子を映し出した。
「なんだこれは」
「私にも分かりませんが」
インサーンも首をひねる。バリゾーグはいつもと同じで無言だった。
ゴーカイジャーが、旗や槍と戦っている。その隣には女性とおぼしき一団。しかも子供のようである。
「あんなもの俺の兵力に含まれてはいないぞ」
「はい。
私には地球人の兵器の様にも思えるのですが」
「バカを言うな。地球にそんな科学力があるはずはない」
「しかし、現に…」
「うむ…」
ワルズ・ギルはしばらくスクリーンを睨んでいたが、やがて顔を上げた。
「インサーン」
「はい」
「あれを巨大化させろ」
「ゴーカイジャーをですか?」
「馬鹿者!」
興奮して立ち上がるワルズギル。
「海賊どもを大きくしてどうする。あの変な槍と変な旗だ」
「なるほど。
それで海賊どもを始末すると」
「我々の手をかけずに奴らが倒されてくれれば、儲け物と言うわけだ」
「流石です、殿下」
それをお世辞だとでも思ったのか、何も答えずに、ワルズギルはインサーンに指で命令した。
最終更新:2013年03月10日 22:54