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幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(第4話 赤黒い闇の底で)




 ピーチ、ベリー、パインの三人とソレワターセが、そして、せつなとイースと名乗る謎の少女が、それぞれ対峙する。
 シフォンがインフィニティ化していないのに、ラビリンスから狙われるのは初めてのことだった。

「生憎だけど、私の力はパッションだけじゃないわ。あなたの正体、確かめさせてもらう!」


“スイッチ・オーバー”


 せつなは、握った拳を胸の中央で合わせて――開く!
 人体の究極の管理。全身の細胞を、戦うための配列に切り替える。
 イメージするのは、大空を翔ける自由なる翼。友の愛を剣に変え、鋼の檻を切り裂く刃。

 しかし――
 確かにキーワードを唱えたにも関わらず、一向に身体が変化しない。

 もう一度! さらに、もう一度!! せつなは変身のポーズと合言葉を繰り返す。

「そんなっ! こんなことって……」

 変身に失敗し、狼狽するせつな。ローブ姿の少女は構わず闘気を高めていく。
 少女の足元からから小さなつむじ風が発生し、やがて、大きく渦巻く旋風となる。
 気を大気と同化させ、風を意のままに操る。ラビリンスの幹部だけが使える力の一つだった。
 風は、彼女の身体に纏わりつくように天を目指す。その力を利用して、少女は優雅にローブを脱ぎ捨てた。

 陽の光を浴びて白銀に輝く髪。その中央で存在感を放つ黒のカチューシャ。赤いダイヤをあしらった漆黒の闘衣。
 まるで、数か月の時が遡ったかのようだった。それは、かつての彼女の姿。ラビリンスの幹部であった頃の、イースそのものだった。

「お前が望んだのは、この姿か? 可哀想だが、諦めるがいい。今はもう――この私がイースなのだからな」
「私が変身できないのを知っていたってこと? そう……。ノーザは、ただ私を拷問しただけじゃないのね」

「そうなるな。ラビリンスに居場所を失い、この世界でも役立たずとは。お前はもう、誰からも必要とされぬ不良品に過ぎん」
「偽者が知ったような口を……。ラビリンスはともかく、この街の人たちは、そんな目で私を見てはいないわっ!」

 決して、言葉通りに激昂したわけではない。せつなは適度に少女――ここからはもうイースと呼ぼう――イースを挑発しつつ、彼女の関心を自分に向けようとしていた。
 パッションに変身できず、スイッチオーバーまで封じられた今となっては、せつなに出来ることはほとんど残っていない。
 せめて、一分一秒でも長くイースを引き付けておくことが、シフォンとタルトの安全を図り、ピーチたちの戦闘の助けにもなると判断したのだ。

「大人しくラビリンスに戻るなら、手荒なことはしない。ノーザさんのおもちゃとして、惨めに生きるがいい」
「誰がっ! たとえ変身できなくたって、偽者なんかに負けはしない!」

「ならば――試してみるがいい!」






『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(赤黒い闇の底で)――』






 強がりを言ったものの、せつなは圧倒的な戦力差を感じて、一歩も動けずにいた。この敵は、外見だけ真似た出来損ないではない。
 構え一つ取っても、イースのクセまで完全にトレースしている。恐らく技量は同等。身体能力においては、数百倍かそれ以上の開きがあるだろう。
 救いがあるとすれば、彼女には自分を始末する気が無いことだった。威力を加減すれば動きの切れも鈍る。回避に徹すれば、時間稼ぎくらいはできるかもしれない。

(考えろ――もし自分なら、この局面でどう攻めるのかを!)

「ハアッ!」

 イースが軽く石畳を蹴って、間合いを詰めてくる。
 せつなはイースの動きを注視して、次の攻撃を瞬時に予測する。
 踏み込みの強さから行動範囲を。重心の移動から攻撃手段を。筋肉の動きから打撃部位を。そして極限の集中力で、イースの連打をギリギリで避けていく。
 もっとも、相手がその気になれば、動きなどいくらでも変化させられる。あくまでも敵の油断が前提であり、運任せで綱渡りの防戦だった。

「逃げるだけか? まあ、その姿でよくやっていると誉めてやりたいが――そろそろ決めさせてもらう!」

 せつなは息が上がって、満足に受け答えもできない。
 ただですらダンスレッスンで疲労していたところに、肉体の限界を超えた動きで戦い続けてきたのだ。もう、足も思うように動かなくなってきていた。

(何か――何か手はないの? この戦況をひっくり返せるほどの、何か――)

 そんな都合の良い何かなんて、あるはずがない。それでも、何か――せつなは必死でなけなしの希望に縋り、あがき続ける。
 更に数合、イースの攻撃を辛くもかわし続けて、遂に発見した。イースの上着が翻ったほんの一瞬、ショートパンツに白い『何か』が装着されているのが、確かに見えたのだ。

 だが、チラリと覗いたそれが期待通りの物であったとしても、回避が精一杯のこの状況では、奪うなんて出来るはずがない。
 せつなは懸命に考える。今の自分の生命線は何か? それは、脆すぎる自分をイースが扱いかねていること。壊さないように、捕らえるために。
 ならば、それを逆手に取って――

 せつなが意を決して、わずかに体勢を変える。その時、最悪のタイミングで、もう一つの戦いに変化が起こった。
 いつかのように、一か八かで零距離からの必殺技を放ったピーチたち。だが、彼女たちの技が決まった瞬間、ソレワターセは苦しみながらもそれを跳ね除け、三人を蔦で拘束したのだ。

「みんなっ!」

 せつなの意識が、一瞬だけ彼女たちの方に反れる。圧倒的なまでに、戦力で劣る状況での余所見だった。
 イースはその隙を逃さず、一気に踏み込んでせつなの腹部を殴りつけた。

「がふっ!」

 まるで身体が爆発したかのような衝撃だった。想像を絶する痛みにせつなが悶絶する。イースはその場に立ったまま、冷めた目つきでその様子を見下ろしている。
 吐瀉物が喉までせり上がり、苦痛で意識が闇に落ちそうになる。それを懸命に堪えて、せつなはイースにすがりついた。
 地面に倒れ込まないための、最後の抵抗。そう思ったイースは気が付かなかった。
 自分の服を掴む腕が、滑るように腰に伸びたことに――

「なにっ!」

 気力を振り絞って、せつなは地面を蹴って後ろに飛びのく。その手に握られているのは、白に赤いストライプの携帯ホルダー。もうすっかりこの手に馴染んだ、せつなの新しい力の源だ。

(生身で戦うのが、こんなにキツイなんてね……。だけど、ピーチたちが動けないなら、私がなんとかするしかない!)

 胸に沸き上がる不快感を、胃液と一緒にゴクリと飲み下し、せつなはリンクルンを掲げて叫ぶ!


“チェインジ・プリキュア・ビートアップ”


 銀の四つ葉の鍵でリンクルンの扉を開き、想いを込めてホイールを回す。
 だが――
 いつもなら眩い赤い光が溢れ出すディスプレイは、何故か真っ暗なまま。いくらホイールを回しても、何の反応も見せない。

(まさか、偽物!?)

 一瞬そう疑ったが、全身の感覚が、『これは本物である』と告げている。
 せつなの顔から、すっと血の気が引いた。
 まるで、悪い夢でも見ているようだ。いや、ノーザに掴まってからというもの、悪夢はずっと続いている。

 イースがニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。そして、ツカツカとせつなの方に歩み寄る。
 せつなはただ呆然と、目前に迫るイースを見上げる。同じ背丈なのに、何故――ぼんやりとそう思って初めて、自分の身体が崩れ落ちそうになっているのが分かった。

「貴様には過ぎたものだ。寄越せっ!」

 イースの白い指が、リンクルンに伸びる。
 せつなの期待に反して、彼女はそれを無造作に掴むと、ホルダーに収納して、元あった場所に――ショートパンツに再装着した。

(どうして……リンクルンを掴んで平気なの? かつての私ですら、触れられなかったのに……)

 問いただしてみたかったが、その言葉を口にする事はできなかった。
 代わりに喉から零れたのは、ゴフッという吐息と苦悶の声だった。リンクルンを取り戻したイースが、すぐさませつなの首を締め上げたのだ。

「殺しはしないが、面倒なのでな。――眠れ」

 今度こそ、意識が闇に呑まれていく。もう、抵抗する気力も体力も残っていなかった。
 目が覚めたら、またノーザの部屋なのだろうか? この間と同じことを繰り返して、仲間にも家族にも心配をかけて……。
 絶望に苛まれるせつなの耳に、高く切なげな声が届く。

「せつなぁ――!!」

 ピーチが、ソレワターセの拘束を解こうともがきながら、懸命にこちらに手を伸ばしていた。
 ベリーとパインも、それぞれ必死の抵抗をしながら、その目は食い入るように、心配そうにこちらを見つめていた。
 その光景にだぶるように、せつなの脳裏に、彼女たちと出会ってからの――四つ葉町で過ごした日々の記憶が映像となって浮かんだ。

 偽りの友情から始まったラブ。
 正体を明かしても、敵として現れても、別れを告げて目の前から消えても、ずっと自分を見つめ続けてくれた、大切な友だち。

 はじめは命のやり取りまでする仲だった、美希と祈里。
 互いの気持ちをぶつけ合った果てに、自分を信じ、受け入れ、絆を結んでくれた、かけがえのない仲間。

 サウラーの前に立ちはだかって、自分を守ろうとしてくれた、あゆみと圭太郎。
 素性も分からぬ自分に居場所を作ってくれ、家族にしてくれた、おかあさんとおとうさん。

 ダンスコンサートの会場で、そして街中で響いた、「イース!」の大合唱。
 幸せを奪ってきた自分に、楽しいって気持ちを、幸せな想いを教えてくれた人たち――

 混濁した意識の中で、悲しげなラブとあゆみの声が聞こえて来る。

『もういい加減にして! どれだけ……どれだけ心配したと思ってるの?』
『わたしね、心配なの。いつか、せっちゃんがどこか遠い所に行ってしまうんじゃないかって……』

(――やめてっ!)

 せつなはギュッと目を閉じ、力の入らない手で耳を塞ごうとする。しかし、映像は消えない。声は止まない。自らの記憶から――心の中から生まれているのだから。
 大切な人たちに、そんな顔なんてさせたくない。愛する人たちに、そんな声なんか出してほしくない。
 ずっと、幸せでいてほしいのに。いつだって、笑っていてほしいのに……。

(力が――欲しい)

 赤黒い闇に沈みかけた意識の中に、その言葉が熱を持って浮かび上がった、その瞬間。


 ドクン!


 せつなの身体が震えた。


“欲しいなら――奪え”


 頭の中から、“声”が響いてくる。
 せつなの両手がゆっくりと上がり、自分の首を締めるイースの手首を、がっちりと掴む。
 折れた心の代わりに、“声”が脳に直接命令を下す。壊れかけた身体から、“力”が湧き上ってくる。

 せつなは薄れゆく意識の中で、その“声”の出所と、“力”の源泉を探った。
 深層意識の奥の奥。彼女自身、まだ手を伸ばしたことの無い、未知の領域へと――

「なっ!? まだ抵抗するのか? 痛ッ!? この力は――!」


“スイッチ・オーバー”


 せつなはイースの腕を掴んだまま、自分の首を絞める手首を引き千切るかのように、力づくで左右に広げた。
 それは、再び試みるイースへの変身のポーズ。やはり変身はできなかったが、にも関わらず、彼女が自分の両手を引き剥がしたことに、イースは驚愕した。

「まさかっ!? その身体のままで――!」

 せつなは、じっとイースに目を据えたまま、答えない。
 黒い瞳が、怒りと悲しみを湛えて、徐々に赤く染まっていく。まるでイースのように、そしてパッションのように。
 それだけが、せつなの外見に表れた唯一の変化だった。

 イースは本能的に危機を感じ取り、距離を取って、ギチリと拳を握り直す。そのとき初めて、掌がじっとりと濡れていることに気付いた。
 さっきまでの戦いでは、一滴たりとも汗などかいていなかったというのに……。

(冷や汗? 恐れているというのか、この私が……)

 一方、せつなは自然体で立っていた。これまでのダメージなど、まるで感じられない佇まい。
 構えを取らないのは、正気を失っているためなのか。あるいは、取る必要がないからなのか――
 ただ、射抜くような目でイースを見据え、殺気だけを際限なく膨らませていく。

(調子に乗らせる前に、こちらから叩く!)

 イースが動こうとした時だった。まるで背景を繰り抜いたのように、せつなの姿が消失した。

「――うぐっ!!」

 その途端、激しい衝撃を感じて、イースがその場に崩れ落ちる。
 十分に警戒していたつもりだったのに、まるで反応できなかった。
 気が付けば、せつなの拳が深々とイースのみぞおちに突き刺さっていたのだ。
 イースは何とか顔を上げて、混乱した頭で目の前の少女を見やる。
 たった一撃で、全身の機能の大半を奪われる。こんな攻撃は考えられない。ノーザですら可能とは思えなかった。

「ゴボッ! さっきの……お返しのつもり?」

 イースは回復の時間稼ぎのため、そして情報収集のため、苦痛を堪えて問いかける。
 しかし、せつなは返答どころか、反応すらしなかった。

 ヒュンと風を捲いて、せつなの拳が奔る。
 重心を移動させず、手首のスナップだけで放つ。ほんの牽制の一撃だろう。
 それだけに疾く、とうてい回避できる速度ではない。イースはほぼ直感に頼ってガードする。

 防御に使った左手が、“ミシリ”と嫌な音を立てた。

「――――ッ!」

 辛うじて悲鳴を上げるのは堪えたものの、恐ろしい激痛が腕に走る。

(受けただけで、片腕が――!)

 続く渾身の一撃を、イースは身体を捻ってギリギリで交わした。これを直撃で受けたら、それこそどうなるかわからない。
 先ほどと、完全に立場が逆転していた。イースは自分の持てる全ての技術を駆使して、せつなの猛攻をいなす。紙一重の際どさで防戦を続ける。

(もう少し……あと少しで、足が――動く!)

 3――2――1――
 最初に受けた腹部のダメージが、ようやく抜けた。今が一度きりの――反撃のチャンス!
 イースは、大きく深く息を吸い込んで、体内の全ての機能を覚醒させる。

 ユラリ、とイースの身体が揺らぎ、次の瞬間には姿を失った。目前まで迫ったせつなの蹴りが、目標を失って空振りする。
 それは、体重を消して一瞬の内にトップスピードに乗せる、神技と呼べるイースの体術だった。

(後ろッ――獲った! これで決める!)

 加速した時間の中、わずかコンマ数秒でイースはせつなの背後に回り込む。
 後頭部の、首筋の神経網に狙いを定める。今のせつながどれだけの耐久力を持っていようと、ここを叩けば――
 イースの手刀がせつなの頭部に迫り――そして、すり抜けた。

(な……に?)

 インパクトの瞬間、再びせつなの姿を見失う。

(避けられた? いや、そんなはずはない!)

 今は、運動能力と思考能力が極限まで高まっているのだ。この状態で知覚すらできないなんて、絶対に有り得ないはずだった。
 イースは右後方に強烈な殺気を感じて、唯一動く右腕でガードを固める。
 まるで、近距離で爆弾が炸裂したかのような衝撃が走る。どんな攻撃を受けたのか、それすらわからない。気付いた時には、十数メートル先まで跳ばされていた。

(これで両手の自由が利かなくなった。仕方がない――!)

「ソレワターセ!」

 イースはたまらず、ソレワターセを招き寄せる。ソレワターセはピーチたちを放り出すと、イースを庇うように間に入る。
 そのまま、巨木の幹のような両手を振り回して、上空高くからせつなに振り下ろした。
 丸太のような腕が、容赦なく叩き付けられる。衝撃で、彼女の足元の石畳が砕ける。しかし――起こったことは、ただそれだけだった。

「そんなっ!」

 直径一メートルはあるソレワターセの腕が、少女の細腕に受け止められている。全身を捻りつつ、数トンもある体重を乗せて、ソレワターセは彼女を押し潰そうとする。
 しかし、せつなは微動だにしない。相変わらずイースを見つめたまま、あまりにも無造作に、ソレワターセを押しとどめている。

「クッ、ソレワターセ! 押してダメなら、引き上げろ。足が地面から離れれば、奴とて何もできまい」

 ソレワターセはイースの指示に従い、蔦を伸ばしてせつなの腕を絡め取る。そして、彼女の身体を上空に持ち上げようとして――逆に、ソレワターセが地面に倒れるように沈み込んだ。

「まさか――“崩し”たのか? 私でも実戦では使いこなせない、高度な技までを……」

 イースが驚きのあまり気を逸らした一瞬の間に、せつなはソレワターセの拘束を解いていた。彼女を捕らえていた三本の蔦が、根元から叩き折られている。
 今、せつなはソレワターセに捕まれているのではない――せつながソレワターセの蔦をむんずと掴んでいた。残る最後の蔦を、綱引きの要領で力いっぱい引き寄せる。
 そして、体勢を崩して前のめりになるソレワターセに、猛然とせつなが迫る。狙いは化け物の一つ目、唯一の急所である赤い光だ。
 辛くも枝状の両腕でガードするソレワターセ。が、せつなの一撃が、その両腕を文字通り木っ端微塵にした。


“グオォォ――!”


 ソレワターセが苦悶の声を上げてのたうちまわる。だがそれも束の間。せつなは流れるような連続攻撃で、ついにソレワターセの一つ目を打ち砕いた。

 パン! パン! パン!

 乾いた音を立てて、ソレワターセが消失する。

《イース、そこまでよ》

 イースの耳に、ノーザの指示が聞こえた。

「ノーザさん! 奴は一体?」
《さあて、私にもよくわからないわね。いずれにしても今回の任務は終了よ。撤退しなさい》

「申し訳ありません。何もできず――」
《構わないわ。あなたの役目は、せつなを追い詰めてプリキュアの本気を引き出すこと。勝敗に意味なんて無いのだから》

「承知しました」

 退くならば、これが最後のタイミングだった。
 見れば、自由になったピーチたちが、ようやくせつなと合流しようとしている。
 ソレワターセに解放されてすぐ駆けつけたものの、あまりの出来事を前に圧倒され、どう動いていいかわからなかったのだろう。
 せつなは、プリキュアが三人がかりでも倒せない化け物を相手に、変身もせずに対抗し、打ち破ってしまったのだから。

「勝負はひとまず預ける!」

 イースはそう言い残して、飛ぶようにその場を後にした。
 標的を失ったせつなが、次の敵を求めて視線を走らせている。そしてイースを追いかけようとしたところで、ピーチに抱き止められた。

「せつな、もう大丈夫だよ。お疲れ様」
「……ラブ?」

 ピーチの腕の中で、ようやくせつなは正気を取り戻した。
 ぼんやりとした表情で、一言だけそうつぶやくと、やがて安心したかのように目を閉じ、今度こそ全身の力を抜いた。



最終更新:2014年01月26日 13:03