『クローバーの二月』/夏希 ◆JIBDaXNP.g




【二月ってどんなことをするの?】

ラブ 「急にどうしたの? せつな」
せつな「私って、一昨年の今頃はイースだったし、昨年はラビリンスに帰ってたでしょ?」
美希 「そっか、せつなとしてはこの街で初めて迎える月度なのね」
祈里 「二月の代表的な季節行事なら、三日の節分と、十四日のバレンタインよ」

【節分】

ラブ 「でも、節分は終わっちゃったね」
せつな「おとうさんやおかあさんと豆まきしたわね。楽しかったわ」
美希 「懐かしいわね。アタシのところは、今はもうやってないわ」
祈里 「わたしの家もよ。動物さん達に豆をご馳走したくらいかな」

ラブ 「え~っ! 楽しいのにやめちゃうのもったいないよ。特に今年はせつながねー」
せつな「ちょっと、ラブ! それは言わない約束でしょ?」

ラブ 「いいじゃない。せつなったら、歳の数だけ豆を食べるってのを真に受けちゃって、真剣な表情でお父さんとお母さんに大量の豆を差し出すの」
美希 「その光景は想像できるわ。拒めなかったおばさんとおじさんが、必死になって食べたわけね」
祈里 「思い浮かべるだけで楽しそう」
せつな「もう……」

【バレンタイン】

ラブ 「次はバレンタインだね。せつなはあげたい人いるの?」
せつな「異性なら、やっぱりおとうさんね。後は、お世話になってるパン屋のおじさんとか、お蕎麦屋のお兄さんかしら?」
美希 「それは義理チョコでしょ? 本命の男性に渡してこそバレンタインの醍醐味よ」
祈里 「そういう美希ちゃんは、誰にあげるの?」

美希 「アタシは、やっぱり和希かしら?」
ラブ 「美希たんも他人のこと言えないじゃない……」
祈里 「せつなちゃんなら、ウエスターさんとかは?」
せつな「よしてよ。『チョコでホホエミーナ作れば食べ放題!』とか言ってるバカなのよ」

祈里 「じゃ、サウラーさんは?」
せつな「一応、聞いてみたけど、『もう甘いものなんて見たくもないよ』って言ってたわ」
ラブ 「あはは……」
美希 「この世界の食べ物に、壮大な誤解がありそうね……」

【雪】

美希 「あっ、雪が降ってきたわ!」
ラブ 「わは~、ホントだ。雪合戦とか出来ないかな?」
祈里 「ラブちゃん気が早い。まだ降り始めたばかりよ」
せつな「だけど、綺麗……。降り始めの雪は、ほんとうに空を“舞う”のね」

美希 「ラビリンスに雪はないの?」
せつな「自然には降らないわ。もう、色々とおかしくなってるから。でも、人口降雪機による散布は試しているの」
ラブ 「へぇ~、この世界でも、スキー場なんかではよく使ってるよね」
祈里 「ラビリンスの科学力なら、一台で世界中に降らせることも出来そう」

せつな「それは可能なんだけど、私たち三人の間で意見が割れていて……」
美希 「どういうこと?」
せつな「チラチラ降る程度にして目で楽しむだけにするのか、たくさん降らせて雪遊びをするのか」
祈里 「それは……ウエスターさんとサウラーさんで揉めそうな話題ね」
ラブ 「どうせなら、いっぱい降った方が楽しいじゃない!」
せつな「そうだけど、生活や仕事の妨げにもなるわ」

美希 「場所によって降雪量を変えることもできるんじゃない?」
せつな「もちろんできるけど、それでいいのかって気がして……」
ラブ 「どうして?」
せつな「雪は適度に降れば楽しいけど、過度に降れば災害にもなるわ。でも、それをコントロールできないこの世界が、ラビリンスより不幸だとは思えない」

美希 「せつなは、ラビリンスに大自然の営みを復活させたいのね?」
せつな「わからないの。今は、この世界の良い所しか見えてないのかもしれないし……」
ラブ 「あたしに難しい問題の答えは出せないけれど、一緒に考えていこうよ」
祈里 「そうだ! せつなちゃん、みんなも、これから家に来ない?」
せつな「ブッキーの家に?」

せつな「お邪魔します」
ラブ 「ブッキーの部屋なんて久しぶりー」
美希 「見せたいのは……その顕微鏡?」
祈里 「そうなの。これを見て」

せつな「綺麗……。話には聞いていたけど、これが“雪の結晶”なのね」
ラブ 「わぁー、直接見るのは初めて! 氷細工のアクセサリーみたい」
美希 「大自然の神秘ね。これ、一つとして同じ形はないんでしょう?」
祈里 「うん。六角形の雪の結晶の形から雪の花に例えて、“六花”とも呼ばれているの。“天花”と書いて天界の花と神聖視されたり、風に乗って舞う様子から“風花”と呼ばれることもあるわ」
せつな「昔から、この世界では愛されてきたのね」
祈里 「ううん。必ずしもそうでもなくて、雪の災害を起こす“白魔”なんて呼ばれることもあるの。ただ――これだけ綺麗な形をしていることが、偶然だなんてあると思う?」
せつな「雪の結晶が綺麗な形をしているのは、ちゃんと『意味』があるってこと?」
祈里 「そうよ。世の中の全ての物には意味があるって、わたし信じてる。たとえば動物さんの姿が美しいのも、果物が甘くて美味しいのも、生きるためなの。同じように、雪が美しいのにもきっと意味があるはずよ」

せつな「わかったわ、ブッキー。私は……ううん。私たちはその意味を考えて、見つけていかなければならないのね」
ラブ 「そうだよ、幸せはみんなでゲットしなきゃ!」
美希 「せつなは一人じゃない。アタシたちもついてるわ!」
祈里 「みんな外を見て! 本格的に降り始めたわ。明日は童心に返って、雪遊びしようか」

ラ美せ「「「賛成っ!!!」」」



競作11「一六 ◆6/pMjwqUTk」さんによる続編(三次創作)へ
最終更新:2014年02月13日 05:42