「チョコレート・ダウン」2
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せま苦しい掛け布団の下で、少女たちが身体を縮めるようにして向き合っていた。
二人分の体温がこもって逃げ場がないため、息苦しさも上乗せされてしまうが、ラブもせつなも、ここから出たいとは思わなかった。
全ての光がシャットアウトされて視覚は役に立たない。いや、必要なかった。相手の甘い声を捉える聴覚と、カラダのやわらかさを味わうための触覚さえあれば充分なのだから。
くちびるとくちびるの接触。最初のくちづけから数分が過ぎているけれど、何度繰り返しても、せつなはくすぐったがって、すぐにくちびるを離してしまう。キスというよりも、むしろスキンシップに近い感覚だった。
クスクス笑ってしまう彼女の腰に手を伸ばす。すべらかな肌の感触。ラブの指をくすぐったがるせつなが、暗闇の中でもぞもぞと裸身をくねらせた。
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――― 「おしえて。ラブは、どんなお詫びがほしいの?」
――― 「せつなの着ているもの全部欲しい」
ゾクッ・・・。
ラブの答えを聞いた瞬間、高いガケの端っこで足を滑らせたみたいに鳥肌が立った。恐怖ではない、別な何かを感じて。
二人して掛け布団をかぶっているために、視界は真っ暗に閉ざされている。だから見られてしまうことはない。それでも、少し動けば身体同士がぶつかりそうなほど近くで ――― 。
恥ずかしさに締め付けられる胸の内側で、運動もしていないのに鼓動が速くなった。
(そう・・・・・・興奮しているのね、私は)
ラブの前でイケナイ事をする ――― その背徳的な誘惑に、あえて逆らわない。
激しい羞恥に神経がパニックを起こしてしまったらしく、腕がガクガク震えて、指も自由に動かない。そんな状態で、着ているパジャマをたどたどしく脱ぎ、それをラブに渡す。
もちろん、パジャマだけではなく下着も。
最後にショーツを手渡した時、せつなは真っ赤になった顔を伏せ、両目の端に涙ににじませていた。自分の体温が染み付いた生ぬるい生地の感触を、ラブがどう思うか ――― 一糸まとわぬ姿になったことよりも、そちらのほうが恥ずかしかった。
「今、どんな気分?」と、ラブがたずねてきた。
せつなが答えられないでいると、もう一度同じ事をたずねられた。
恥ずかしさをこらえて口を開こうとはするものの、やっぱり答えられないでいると、くちびるをお仕置きされてしまった。何よりも愛おしい、やわらかな感触に固くふさがれるいうペナルティ。
敏感なせつなが、びくっ、と身をすくめて顔を離してしまったせいで、二人にとってのファーストキスはたった数秒間だけだったが、そのおかげでようやくラブの問いに答えることが出来た。
「今は・・・・・・夢みたいにしあわせな気分」
くすぐったいキスの責めでいじめられつつ、カラダのいたる所をさわられていく。
ラビリンスで培った兵士としての肉体。ひんやりするような白い肌に包み隠された筋肉は、戦闘性を秘めた美しい武装だ。それが、ラブの手や指を感じただけで甘美に喘ぎながら震え、降伏を宣言するかのごとくチカラが入らなくなってしまう。
「ああ・・・あっ、ラブっ・・・」
「せつなの身体って、すごくきれい。肌もすべすべだね。ふふっ」
二の腕を這い上がってきたラブの指先が、ほっそりした肩の丸みをなぞって背中へと回りこむ。なめらかな白い肌をツツツ・・・と這い下りてくる指の感触。そのくすぐったさに、思わず背筋が弓反った。
「ラブ、駄目なの・・・・・・」
普段のせつなからは考えられないくらい弱々しい声の響き。母を求める迷子みたいに持ち上がった手が、きゅっ・・・とラブの肩につかまる。
許して ――― そう続けようとしたくちびるが、「チュッ、チュッ」と、こまやかな音を鳴らすキスで封じられてしまった。ラブのいじわるっ!と心の中で叫んで目尻に涙を溜める。くやしいと感じても、キスしてもらえたり、カラダをさわってもらえたりするのが気持ちよくて、抵抗する気が一切湧いてこない。
(こんな感覚、私・・・知らないの・・・・・・。ラブ、私にもっと・・・・・・)
せつなのラビリンス時代、肉体同士の接触とは徒手戦闘の過程であり、そこにあったのは痛みの感覚だ。こちらの世界でキュアパッションとして生まれ変わったのちは、身体と身体のふれ合いは、お互いの心に安らぎやぬくもりを与えるものであると学んだ。
これは後者の延長 ――― 。
しかし、ラブ以外の相手に同じ行為をされても、ここまで『女の子らしい』反応は見せないだろう。
触れられた部分が感じているのは、甘ったるく味付けされた微弱電流の刺激。そのくすぐったさにさらされると、せつなの意識の針が一瞬、興奮状態の方向へビクッ!とぶれる。それが何度も繰り返されると、ついには意識の針がずっと興奮状態の領域を指したままビクビクと振れ続けるようなる。
言葉として覚える前に、カラダで覚えてしまった<快楽>という単語。
せつなの全身が快感を欲しがって、ぶるるっ・・・となまめかしく身震いした。
素肌を直接なぞられるたび、自分が全裸という恥ずかしい姿にあるコトを否応なく自覚させられ、その羞恥は、せつなの心を倒錯した悦びでうずかせた。
掛け布団に閉ざされた暗闇の中とはいえ、ラブの前で、カラダも、声も、反応も、すべてをさらけ出して ――― 。
腰の後ろをねっとりとまさぐっていたラブの手が、わき腹へと移動してきた。びくんっ、と身をすくめるせつなの反応を愉しんでから、ゆっくりと指を動かし始める。
いいようにカラダをもてあそばれているのに、ラブへの愛おしさが心の中で高まっていく。
「ん゛っ、ラブは・・・あっ、ラブは私の・・・、はあっっ、私の『居場所』なの」
――― びくっ、びくっ。
腹筋が不規則に引くついて、どうしても声が震えてしまう。
クルクルと小さな円を描く指先が、わき腹のやわらかさを意地悪く刺激している。でも、せつなにとってそれは、もう『くすぐったい』だけではない。きもちいいという悦びの感覚だ。
ラブの次のキスを待ちきれず、裸身をくねらせて自分から彼女のくちびるを求める。
「 ――― ンンッ・・・」と、ラブの喉がうめいた。せつなの濡れたくちびると、軟らかに結ばれる感触。熱く溶けた官能的なキス。
(ん、これって・・・・・・おねだりのつもり?)
こんな可愛いせつなは初めてだ。もっと、いじめてあげたくなる。
こしょこしょとわき腹をくすぐっていた指が胸のほうへ這い上がっても、せつなの身体は逃げようとしなかった。ジリジリと迫ってきた指で、なだらかな曲線を描くふくらみの稜線に触れる。
「あっ・・・ん・・・」と、キスを解いたせつなの口が可愛らしく喘いでから、言葉を再開した。
「故郷のラビリンスも、この家も私の居場所だけど、ラブはそれ以上に私の特別な『居場所』なの」
「ふふっ、うれしいなぁ」
せつなのまっすぐな言葉が心に届いて、くすぐったくなってしまう。ちょっとじんわりきたラブが軽くうつむいて照れをこらえる。
(・・・・・・じゃあ、あたしはせつなの一生の『居場所』になっちゃってもいいのかな?)
――― ウン、いいよねっ。
分かりきった答えを聞く必要もない。ラブがクスクスと笑い出す。
「ずいぶんとふつつかな『居場所』ではございますが、これからも末永く、いつまでも・・・・・・」
「こ・・・こらぁっ、胸を撫でまわしながら言うセリフじゃないでしょっ」
裸身をあだっぽく悶えさせたせつなが、「はあ・・・」と苦笑まじりの溜め息をついた。
「もお、照れ隠しにこういうコトするんだから。ふふっ」
胸を這っていた手を両手で掴んで、せつなが自分の口元まで運ぶ。お仕置きとして、かぷっ、とラブの指先を甘噛みしてから、いじらしい声でおねだりした。
「ラブにいっぱいさわられたせいで、カラダが熱いの。・・・・・・おねがい、最後まで面倒をみて」
最終更新:2014年02月25日 22:35