One Step Beyond ―キュアエコーの方法― (終)
春の空が戻ってきた。
人々は自分がどういう状態だったのかわかっていないようで、何人かは首をひねっていた。しかしそれもしばらくのことで、やがてみな歩き出した。みゆきたちはほっと息をついた。
「あゆみ殿」
ポップは広場のベンチに立った。
「プリキュアとして戦う覚悟はお持ちか」
「プリキュアとして戦う覚悟…」
「もし、あゆみ殿がそういう気持ちをお持ちであれば、拙者、メルヘンランドに戻り、あゆみ殿がスマイルパクトを使えるようになる方法があるものかどうか、調べてみようと思う」
あゆみはしばらくうつむいていた。みゆきたちが心配そうな顔で見ている。
「勿論、無理にとは」
「私…。
違うような気がする」
「違うクル?」
顔を見合わせるみゆきたち。
「キュアエコーは、戦うプリキュアじゃないような気がするの」
「戦うプリキュアじゃない、でござるか」
顔を上げるあゆみ。笑顔が戻っている。
「恐いのもある。
それは正直に思う。
でも、やっぱり、エコーは戦うプリキュアじゃない。
『思いを届ける』プリキュアだから」
「バッドエンド王国の幹部たちが耳を貸さない以上、キュアエコーの力は活かせない、ということですね」
「そやけど、便利なんやけどなあ。技が二回、使えるっちゅーのは」
「でも、もっと疲れちゃうんだよ」
「エコーが上手く使いこなせたらいいんじゃないの?」
ポップは、あかねたちの話を黙って聞いていた。確かに、彼女たちの発言は、「戦うプリキュア」としてのものだった。あゆみが言った事は、別の意味で正しいのかもしれなかった。
「みゆきはどう思う?」
「私は、あゆみちゃんが正しいと思う」
「そうか…」
「だって、あゆみちゃんがキュアエコーなんだもん。
あゆみちゃんが正しいに決まってる」
「そんな」
恐縮するあゆみ。
「私ね。
狼さんがエコーのことを悪く言ったとき、すごく腹が立った。
エコーは頑張ったのに、あんなこと言って」
あゆみが、みゆきの顔をじっと見つめる。
「みんな、それぞれのことをするんだもん。
あかねちゃんも、やよいちゃんも、なおちゃんも、れいかちゃんも、自分がやれることを精―杯頑張ってる。あゆみちゃんも、あゆみちゃんのやることを頑張ったんだもん」
「そうですね」
「だから、あゆみちゃんがやることは、あゆみちゃんが決めるのが正しいと思う。
私たちは、それを応援するし、なんでも手伝うよ」
「ありがとう…。
みゆきちゃん、ありがとう」
〈ありがとう〉
「え?」
「フーちゃん」
〈みんな、あゆみの
ともだち?〉
「うん。
ずっと、初めて会ったあのときからずっと友達だと思ってたよ」
〈フーちゃん、あゆみのともだち。
だからみんな、フーちゃんのともだち!〉
「もちろん!」
春の日差しが一瞬、金色に染まって揺れた。あゆみには、フーちゃんの笑顔が見えた様な気がした。
「友達、言うてもなぁ」
あかねが難しい顔で言った。
「なに?」
「私…」
「その割に、誰も連絡先、知らんねんで」
「あ」
そうだった。
そのためにこの街に来たようなものだったのに、すっかり忘れていた。誰ともなしに笑い始める。
あゆみちゃーん、という声。
「まりちゃん、みなちゃん、めいちゃん!」
「ひょっとして、あゆみちゃんの友達?」
「そう。
今日、一緒に遊びに来てたの。
紹介するね!」
あゆみは三人の元へ駆け出して言った。そして、その手を引っ張って戻ってくる。
自己紹介の後、連絡先の交換大会となった。たくさんの言葉が行きかう。
ぬいぐるみとなっていたキャンディとポップはそれを笑顔で見ていた。やがてポップがつぶやく。
「プリキュアとは一体、何なのであろうなぁ」
「クル…?」
キャンディはポップの顔を見上げたが、ポップはその答を待っているようではなかった。あゆみたちを見つめる笑顔に変わりはなかった。
最終更新:2014年04月05日 18:36