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“バイド”それは、邪悪な生命体……

自己増殖機能を備えた粒子で構成された生命体。

質量のある物体でありながら、波動としての性質も併せ持ち、

あらゆるものに伝播する。

時には人の思念にさえも干渉し、そして貪る。

22世紀後半

バイドとの初の戦闘から

すでに20年近くの年月が経過していた。

過去大規模なものだけでも4度に渡ったバイドとの戦闘は、

その都度人類の勝利で終わった。

しかし、バイドは4度現れ、4度葬られ、そして4度復活したのだ。

 人類は、作戦名“Last Dance”を発令。バイド殲滅の為に動き始めた。

 地球国連宇宙軍 第1333試験部隊所属 ヨルムンガンド級輸送艦を旗艦とする部隊「サクラ」は、新型人型変形機動兵器の実戦を兼ねた試験を行うために宇宙空間を航行していた――――。


 「クソッ! ダメージコントロールが間に合わん!」
 「シールド発生装置がヤレれました!」

 迂闊だった。
 艦長であるフリードリヒ=ハーンは歯を食いしばった。
 本来戦闘を行うために出来ていないヨルムンガンド級輸送艦は、ニーズヘッグ級駆逐艦に付き添う形で戦闘に参加することになっていたのだが、小惑星に潜んでいた人型機動兵器「ゲインズ2」の陽電子砲に中心部を撃ち抜かれてあえなく大破。今は動かぬミサイル砲台と化している。
 ニーズヘッグ級駆逐艦の護衛のR戦闘機がなんとか反撃に出ているが、明らかに捨て身の機動兵器群を撃退するに至らず、徐々にその数を減らされていた。
 そう、捨て身。燃料うんぬんを、自己保身の一切を放棄した攻撃。
 さすがのバイドでも、燃料切れでもいいという攻撃はしないだろう、という油断が今の状況を作った。
 複数取り付けられたバーニアによる優れた機動性能と姿勢制御。重装甲、極めつけは戦術級の大型砲。陽電子砲を肩に担ぐ感じで突撃してくる狂気の鉄塊。
 ヨルムンガンド級輸送艦、部隊名でもあり艦の名前でもある「サクラ」、彼女は、必死に身をよじってビームバルカンによる弾幕を展開させていた。
 宇宙空間に幾つもの閃光が飛んでいくが、ゲインズの重装甲を貫通するにいたらない。
 「R」の血を引くものと同等の力を、がゲインズの設計理念である。たかが輸送艦のビームバルカンで、それを停止させることはできない。
 量産型生体兵器が発射したその攻撃は、戦艦と比較して薄い防壁を破り、「サクラ」に致命傷とは至らないまでも、既にその力を喪失させていた。
 ゲインズと小型兵器の群れ。
 輸送艦が相手となれば、正に鬼と化す。

 そう、それが輸送艦であれば。

 「こちらハーキュリー2、なるべく急いでハーキュリー1を発進させてくれ」

 R戦闘機だ。
 否、それは「R」の系譜を継ぐモノとしては「少し」異端ともいえる変形型兵器。
 戦闘機型において遠距離戦闘、人型において近距離戦闘を制する機体。
 「TL-2B2 HYLLOS」、それがこの兵器の名前だ。
 ひょろりとした全身、極端に小さい頭部パーツ、機体中央にはラウンドキャノピー、両肩部に「目」のようなものが描かれた装甲板らしきパーツ。極めつけは両腕の三本の可動式の「ロケットエンジンのノズル」に近い機構。全身は薄紫に塗装され、白い直線が数本機体の上から下まで塗られている。
 その「ノズル」から、極限まで収束されたエネルギーが三本の「刃」となって形成された。
 ビームクロー。
 名前の呑気さに反して、上級のエネルギー装甲すら一撃で穿つそれを両腕に宿したヒュロスは、肩から延びる、余りに大きいブースターに青い光を宿し、次の瞬間、陽電子砲を構えていたゲインズに一瞬で肉薄していた。
 一撃。
 なんとかかわそうとする赤い塗装のゲインズだったが、すでに発射体勢になっていたのが仇となり、光を宿していた陽電子砲そのものを両断、更に振るわれた青い爪に上から下までをざっくりと切り裂かれて爆発した。
 さらにヒュロス――ハーキュリー1の攻撃は続く。
 ブーストの下に背負われたミサイルポッドから超高速のミサイルが同時に6発発射された。
 爆発。
 数十体の生体兵器群が四散した。

 「クッ」

 衝撃がヒュロスを襲う。攻撃を喰らったらしい。
 AIが、その正体を表示し、敵の兵装や性能を示す。
 あれは――バイドシステムαという機体だ。
 地球軍の「アロー・ヘッド」を取り込んだ結果として製造された「量産機」。追尾型の、波動砲に匹敵する火器を備えた機体。無感情な瞳、それに近いモノが機体表面についていて、どことなく人間の筋繊維を思わせるモノが「装甲」として機体を構築している。
応援か。なんということ。ゲインズと、チビ兵器と、さらにコイツまで相手にするだと?
 畜生。俺はここで死ぬわけにいかない。
 彼は、被弾した右腕の修復を急がせながら、襲来する光学兵器をすんでのところで回避した。
 バイドシステムα、フォースシュート。追加に目玉型ミサイル射出。さらにゲインズがビームバルカンを乱射して弾幕を形成して彼を撃破せんとする。
 ――――爆発。



 「クソ」

 試験部隊所属の「御鞍衣メイゼ」は、少しだけ憤っていた。そして、半ば諦めてもいた。
 敵の攻撃があまりに激しく、味方の援護すらほとんど受けられず、しかも外に出れたのは一人だけ。
 パイロットの彼が、今できることは特にない。
 電子化、機械化によって今の船は、人員が極端に少なくなっている。
 R戦闘機の操縦以外に特に技能のない彼が手を出すべきことは何もない。
 剣がなければ騎士は戦えない。
 矢がなければ弓兵は弓を射ることはできない。
 衝撃が艦を襲う。いかなる衝撃も内部に伝わることが無いというのに、これはシステムがやられたな、とメイゼは存外冷静に思考する。
 脱出、なんてことを彼らは考えない。なぜか?
 小型の脱出ポッドで脱出したところで、バイドに撃墜されるか、「材料」になるか、餓死か、それともどこともしれない空間に入り込むことは目に見えている。第一、敵がわんさかいる中を脱出できる保証はどこにもない。
 ここで彼らが取るべきは「自爆」。それ以外に「助かる」道はない。
 万が一汚染されれば、自らが気がつかないまま味方に銃を向けることとなる。

 それも、唯の肉塊と化して。

 『艦長』
 『分かっている』

 艦内の通信がインターフェースを通じて聞こえてくる。
 メイゼは丁度ヒュロスの格納庫で待機していたところだ。腕時計型パーソナルコンピューターで艦長の言葉を聞くべく通信をつないでいるのだ。

 『総員――これより本艦は自爆する』
 『わかりました』

 異層次元潜行しようにも、この空間が不安定な中で潜行するのは自殺行為。したら最後、どこに飛ばされるかなんて、誰も知らない。
 だから彼らは選ぶのだ。バイドと敵対する者にとって「正しき」選択を。そして「最良」にして「最善」の選択を。
 大量のエネルギー弾が艦を掠めるように通過していく。その方向に艦のビームバルカンが大量の弾を吐き出す。必死の抵抗空しく、数機の小型兵器しか破壊できなかった。敵の攻勢がさらに強まる。

 「まさかここで終わるとは思ってもみなかった」
 「オレもさ」

 偵察機ミッドナイト・アイの操縦士であるヴァジルカ=ハウゼルは、傍らでボソボソ呟くメイゼに同意する。
 しかし彼らの顔に恐怖は浮かんでいない。超高温の核兵器によって完膚無きままに溶かされるのは、そう遠くないにも関わらず、だ。

 通信。ヒュロスの損傷率が危険領域に到達。これより特攻、自爆する。

 「ああ逝っちまったか、アイツ。こんどコーヒー淹れてもらう予定がパーだ」
 「そうだな」

 既に艦長の言葉は耳に入っていない。艦がまた大きく動揺する。ミサイルが着弾したらしい。シールドはとうの昔に消滅してしまっている。

 そして―――彼らの乗った船を中心に、莫大な量の熱が放出され、同時に不気味な白い光が空間を支配し――――すべて消えうせた。




 俺、御鞍衣メイゼが目を覚ましたのは、いつだったのか分からない。
 こんなことを言うと不自然だが、とにかく分からない。
 俺は体をとりあえず起してみる。静かだ。あの戦いがあった形跡すら残っていない。
 俺は――死んだはずだ。
 あの核の熱を覚えている。では、これはなんなのだ?
 俺はバイドによる精神汚染を疑った。しかし、いくらバイドとはいえ欠片も残らない生物の復元が出来るとは思えない。ひょっとすると、これは俗に言う「天国」という下らない王国なのか?

 バカな。
 何を言っている。
 天国に行きたいと思ったことは無いし、神なんて居ないなんてことは知っていることだ。ならなんで平然と照明がついている? 分からない。


 「ここは、どこだ?」
 「よぅヴァジルカ。俺たちはクソ面白くない天国に来たのかね、どうなんだ?」

 ヴァジルカは答えずに携帯端末を操作し始めた。
 俺もつられて操作してみる。システム起動。
 現在の状況を述べよ、と入力する。答えはものの数秒で空間に投影、表示された。

 現在の座標――不明。
 現在の次元――不明。
 現在の時代――不明。
 バイド係数異常なし。
 バイタルサイン異常なし。
 体内のナノマシン稼働率誤差の範囲内。
 システムエラーの可能性――0.21%
 状況の把握ができません。

 俺たちは「サクラ」の機体保管庫の通路にて沈黙せざるを得なかった。

 「………」
 「………なぁメイゼ」
 「なんだ」

 ヴァジルカが俺に目を向けてくる。失敗したケーキを食ったみたいな顔だ。

 「汚染か? 俺たちは今バイドに汚染されてこんな幻覚を見せられていて、現実ではすでに内臓から銃を生やしたモンスターになっているとかってことか?」
 「さぁな。俺も判断が出来ない」

 俺は腕時計型端末から目を離すと、床に転がっていた自分のドックタグが拾って首にかける。

 「とりあえず艦長に指示を仰ごう」



 結局、何が起こったのかを、正確に理解している人間は一人も居ないようだった。
 当然だ。自爆したと思ったら、ぜんぜん違う次元にいたのだから。
 しかし、自爆用の核兵器にそんな機能は付いていない。
 そして、主機関を崩壊させても次元を超えることはない。正規の手段を踏まなければ、次元を超えることはできないのだ。
 しかもだ、ここは見知らぬ次元で、国連宇宙艦隊との通信すらできない状況に「サクラ」隊は陥っている。こういった状況では、すべてが艦長の指揮下に入ることになっている。
 艦長であるハーンは、艦長帽をかぶり直し、デッキに集まった面々の前に姿を現した。

 「諸君。無事か?」

 面々は、といっても全員で10人しかいないのだが、全員元気に無事を報告した。
 メイゼとヴァジルカは既にリラックスした様子で携帯食に口をつけている。

 「我々は――どういうことか、船外にて迎撃に当たっていたジャック君を除いた全員が無事のようだ。しかも船体には傷一つついていない。我々の所有する戦力はヒュロスとミッドナイト・アイ、そして工作機と補給機にこの艦、サクラだけだ。この状況での戦闘は死を意味することになる。諸君の意見を聞かせてもらいたい」

 「一ついいか?」

 ヴァジルカだ。緩く挙手をして、パック式の携帯食を目の前の鉄製の机の上に置いて、これまたのんびりした動作で両脚を組んでみせる。

 「ここは何処なんだ?」
 「信じられんだろうが、地球だ。何故か海底付近だがな」

 一同がざわめいたが、それもものの数秒で静かになった。
 太陽系の木星付近で戦闘していたはずなのに、いつの間にか地球の、しかも海の中にいる――という異常性。さすがの彼らでも動揺せざるをえなかった。
 遠距離の空間跳躍には、ある程度の時間を必要とする。
 それが本の一瞬で?

 そしてこれを見ていただきたい、と艦長がいうと、空間にとある映像が投影される。それは、酷く歪んだ生命たちがあげる、唸り声だった。
最初、全員がごく当たり前のように「なんだ、バイドか」と思った。
 大きな目玉らしき器官に甲虫のような、ムカデのような体に、人間にも似た足が生えた異形。
 形だけならサソリにも似た、針があるべきところに歯を食いしばった何かがある異形。
 サイにも似た(形状だけ)意味不明な生命体、大きく長い足で地上を闊歩するこれまた異形――。
 耐性のない人間なら吐き気でも催しそうだが、彼ら彼女らはそんな事を感じたりはしない。今まで戦ってきた連中も、似たようなグロテスクさを持っていたからだ。
 似ている。
 だからこそ「バイドか」と思ったのだ。
 そしてこれは、22世紀後半の地球――彼らの世界ではごく当たり前の反応なのだ。小学生から老人まで、今の映像を見せられたら、嫌な顔で「バイド」と口にすることだろう。

 「驚くべきことに、コイツらはバイドではない」

 艦長の言葉に場に再度ざわめきが広がる。
 そんなワケない、などといった言葉が聞こえてくる。

 「バイド係数が検出されない。一切も、だ。と、なるとあいつ等はバイドではない生命体ということになる。そして、とんでもない数でもって、この世界の地球軍に戦争を仕掛けている。現に今、戦闘がおこなわれている」

 艦長はそういった。これらは、バイドではないと。

 「どうやら我々は――今まで観測することしか出来ていなかった並行世界に飛ばされてしまったようだ。しかも確率でいうなら道に落ちている小石をプールに投げて一等の宝くじに構造が変化するほどで、だ」

 「で、艦長殿。どうするんだ? 我々はどう動く? アンタの指示で俺たちは地獄でも攻略してやる」

 不敵なセリフが投げかけられる。
 脚を組んで話を聞いていたメイゼが、パック式携帯食を机に置く。
 全て食べ終えたからだ。チャリンとドックタグが鳴り、長い頭髪が揺れる。鋭い眼光が、その言葉を聞くために艦長に向けられる。

 「言うまでもない。傍観に徹する、と言いたいが、この世界の地球軍に交渉しなくてはいずれ燃料や食糧などの物資が枯渇する」
 「だから?」
 「出撃。そしてこの世界の地球軍とコンタクトをとる。総員準備にかかれ」



 その戦いは絶望的であった。
 圧倒的な物量で押し寄せる死の群れ達。
 彼女たちは、その群れに徐々に浸食され始めていた。

 時は2004年 1月1日。
 お正月であろうと、彼女たちは常に変わらない生活を送っている。
 BETE――人類に敵対的な地球外起源種。
 それらから自分たちの世界を守るために彼女たちは「戦術歩行戦闘機」を駆る。

 BETE。

 その登場は全世界の歴史を様々な面で塗り替えた。
 まず、軍事面で言うならば「航空機が役に立たなくなった」ということである。
 鉄を一撃で溶かし穿つレーザーを放つ光線級の登場。それは、航空機の接近を許さない絶対的な射程距離から、超高威力、しかも殆ど外すことのない光を放ち、ミサイルすら撃墜する。
 だからこそ、人類は新たな「牙」を欲した。
 そして、「戦術機」を造り出したのだ。

 日本には「ハイヴ」というBETEの巣が二つある。
 横浜ハイヴは、2003年の9月に行われた作戦により、大きな被害をこうむりながらも大きな損害を与え、しばらくの間BETEは侵攻してこないという判断が下された。
 しかし、佐渡島ハイヴ。それの異常なBETEの増殖が観測された。
 BETEは一定の数を超すと、人間がやるように「引っ越し」を行う。そして、引っ越し先で新しい「家」を造る。さらに、そこで「家族」を増やす。
 ハイヴとは、すなわち「要塞」だ。
 しかもそれはただの要塞ではない。
 鉄壁の、死の軍勢を永延と生み出し続ける悪性の病気だ。
 だからこそこの日、佐渡島のBETEの数を減らす、間引き作戦が実行されたのだ。
 度重なる戦闘によって、日本の戦力は減ってきており、とてもハイヴを攻略することは出来ない。そこにBETEが本格的に攻めてきた場合、日本は焦土と化すことになる。
否、焦土ではない。何の意味もない、土の島国と化す。

 間引き作戦――そのはずだった。
 しかし、予期せぬ数のBETEの迎撃により、部隊はバラバラに引き裂かれていた。
 ここまで増えていたのかと、ナイトメア隊の隊長「富士 キサラギ」は唇を噛んだ。

 「喰らえッ!」

 ドドドドン。
 ひたすらに36mm突撃機関銃を撃ちまくる。
 被弾した要撃級は、そのまま動きを止め、味方が放った掃射で完全に息絶えた。
 突撃機関銃で後退するなんて、実に皮肉な話だ。
 しかし彼女らにそんなことに脳みその能力を使っている暇はない。
 味方の戦術機が厚い鉄の弾幕を張り巡らせながら、後退する。
 どんなにどんなに撃っても撃っても、完全に防ぎきることは不可能だ。圧倒的な質量の前に、人間は無力な生命体でしかない。
 今彼女らが相手にしているのは、数万ものBETE。
 兵士級から要塞級まで、まさにBETEのデパート状態。
 そして、そのデパードで売られているのは「死」だ。

 『ナイトメア隊へ! フェンリル隊の損害が酷く、只今撤退中! 援護出来るか!』
 『こっちも撤退中! 無茶言わないで下さい!』

 無線に叫び返す。
 幸いなことに、彼女の隊「ナイトメア隊」は一人も脱落することなく戦闘を続行していた。 否、戦闘ではない。これは撤退戦だ。
 このままBETEが増え続ければ、いずれ包囲される。そうなった場合、後は弾切れを待つだけだ。
 私、死ぬのかな、なんて思考した脳に鞭をうち、キサラギは突撃機関銃を撃ちまくる。銃身の加熱なんてどうでもいい。撃てればいいのだ。壁のようにいるBETEは、撃てばどれかに当たる。

 「弾、がッ?!」

 弾切れ。それは死刑宣告にも似ていた。
 とっさにマウントされていた74式近接戦闘長刀を手元に呼び寄せ、突っ込んできていた要撃級の背中を一気に切り抜く。
 しかし――。

 「隊長ぉ!!」

 弾幕を潜り抜けた突撃級が彼女の戦術機に突撃してきていた。
 既に36mmは売り切れ。味方の滑空砲弾が数発突撃級に放たれるが、速度を殺す為にはあまりに非力だった。外殻を吹き飛ばされながら、唸りを上げて突撃級が、彼女に迫った。

 「あ」

 私―――死んだんだ。
 思わず全身の力を抜き、あろうことか操縦桿から手を離してしまったキサラギは、おもちゃのように倒され、装甲を剥がされ、食われる、その瞬間を待った。

 『危なかったな』
 「え?」

 目を開ける。
 そこには、いつの間にやら乱入した見覚えのない戦術機がいた。
 120mmでも完全には撃ち抜けない外殻を撃ち抜いた右腕の火器で、迫りくるBETEの群れを次々と屠る薄紫の機械の巨兵。
 僅かに宙に浮き、巨大なバーニアを持った「力」の証。

 『こちら第1333試験部隊所属、御鞍衣メイゼ。勝手に名乗って悪いが、コールサイン「ハーキュリー1」。――これより殲滅作業を開始する』

 そして戦場に力天使が舞い降りた。



 あとがき。

 どうも。R-TYPE大好きのN式です。
変態技術が好きなので、結果的に変態技術で構成されたR-TYPEに行き着きました。忠実では、ヒュロスは輸送途中で撃墜され、一機だけが活躍したということになっています。
 「サクラ」の面々の容姿についての描写が殆どないのは、あんまり戦闘には必要ないかな? と思ったからです。
 ちなみに、ヒュロスは戦闘機の形体にもなれますが、今は人型で、ということで。
最終更新:2008年11月09日 18:19