第2惑星「リリク」での戦闘から数日後。
 次元戦闘機の被害が想定よりも多かったことを除くと、対時空管理局の戦闘はスムーズに進行した。第1衛星「リリン」基地付近に待機していた迎撃艦隊の陽電子砲による一斉射撃によって、時空管理局後発部隊に74%を与えることに成功したわけだ。正直な話をすると、ここまで綺麗にキマったのは何か裏があるんじゃないかと思ったんがね……。
 惑星間戦争を潜り抜けてきた歴戦のエルス国際宇宙軍と、圧倒的な彼我戦力差のあるなかでしか戦闘をしたことがない時空管理局艦隊。
 使用する兵器は「アルカンシェル」といったT-N1特殊粒子使用の空間兵器などを除けばエルスの方が優性。
 それでもなお、時空管理局は「法律」「平和の為」「正義」という言葉を振りかざして、戦争を行いたい。
 この神経を理解することは出来ないが、我々軍人がやるべきことは一つしかない。
 祖国――いや、母星を護るために戦う。それだけだ。


 とある軍人へのインタビュー記録より。





 【宇宙暦3208年 6月1日】
 時空管理局の動きは今の所沈静化。
 ミッドチルダおよび本局などに対して潜次元偵察艦による強行偵察を行うも、反応無し。
 軍上層部はこれを危険な兆候として判断。次元戦闘機による警備を強化。

 【宇宙暦3208年 6月28日】
 時空管理局が管理する様々な世界にて動きあり。
 第97管理外世界にて複数の時空管理局艦艇の次元潜行状態での停泊を確認。

 【宇宙暦3208年 7月3日】
 時空管理局の部隊編制などの組織の把握や、情報を得るために潜次元偵察艦によって接近、工作員による隠密潜入任務が実施された。作戦名「アマゾネス」。
 時空管理局の警備艇に発見され、潜次元偵察艦が攻撃を受けるも工作員は潜入。

 【宇宙暦3208年 7月10日】
 管理局主力と思われる艦隊の存在を確認。
 潜入部隊により、汎用T-N1特殊粒子変換装置の初期版を入手。
 潜入部隊により解析開始。

 【宇宙暦3208年 7月15日】
 S級超高速次元戦艦「オスグル」の修理・改良を完了。
 汎用T-N1特殊粒子変換装置の名称は「ストレージデバイス」ということが判明。以降デバイスとする。
 潜入部隊に工作を指示。

 【宇宙暦3208年 7月18日】
 次元戦闘機の補充率が90%を超える。
 「エルス」星 アグストン大陸の中央にて収納されている、「ネークンカル」の組み立て・再起動が決定する。
 「ネークンカル」とは、超高電圧によって発生するローレンツ力で火薬の代わりをさせて、硬化されたエネルギー粒子を射出する超大型の砲、電磁投射砲の一種である。その威力は凄まじく、第1次惑星間戦争にて敵の戦艦を一撃にて没せしめた。

 【宇宙暦3208年 7月19日】
 潜入部隊からミッドチルダの近況報告が入る。
 ほとんどの戦闘艦、魔導師を導入しての「強制執行」が再度行われるとのこと。
 ミッドチルダの変電所などに小型の爆弾を設置することに成功する。

 【宇宙暦3208年 7月23日】
 エルス世界政府上層部で「打倒時空管理局」の考えが優勢に。
 エルス国際宇宙軍の全軍を戦闘に動員することが決定。
 防衛用大型人工衛星を複数を迎撃モードへと移行。防衛線の構築を開始。

 第1防衛線 偵察機による早期警戒システム
 第2防衛線 防衛用大型人工衛星による迎撃
 第3防衛線 エルス国際宇宙軍艦隊による迎撃および攻撃
 最終防衛線 地上火器

 が、大体の内容である。(正確な線引きは無し。正確にし過ぎにすると対応への遅れがでるとの実戦データがある)


 【宇宙暦3208年 8月1日】
 「対宇宙用電磁投射粒子砲 ネークンカル」の組み立て作業完了。
 攻撃用特殊粒子の発生装置が不調の為に新たに新型へ切り替えることが決定される。(ただし改良された程度なので対して時間はかからないと推測される)
 専用の常温核融合炉の試運転開始。

 【宇宙暦3208年 8月8日】
 極秘で交渉にあたっていた政府上層の一部と時空管理局本局との和解が決裂。

 【宇宙暦3208年 8月10日】
 惑星間戦争の最優秀艦隊であるエルス国際宇宙軍第12艦隊が対管理局の主力を担うことが決定される。ミッドチルダそのものを制圧するために強襲揚陸艦の参戦が決定。
 対T-N1特殊粒子用の結合防止弾頭を全軍に配備することが決定。
 対時空管理局作戦の概要が決定される。
 なお、プランA・Bの第1段階は同時進行である。


 【プランA】 ①「時空管理局全艦隊の殲滅」
 第2防衛線地点までは艦隊は積極的な攻撃をせずに、防衛用大型人工衛星をもって敵戦力の把握、情報の収集を行う。ただし、次元戦闘機は第1防衛線の段階で出撃させる。
 第1衛星「リリン」、第2衛星「リリク」基地は攻撃用火器に乏しいのでいずれも防御用フィールドを展開。積極的な攻撃は禁止とする。
 主力は第12機動艦隊。
      ②降伏勧告
      ③終戦

 【プランB】 ①「ミッドチルダの攻略」
 新造次元戦闘艦で構成される第22艦隊率いる陸戦部隊は、プランAにて時空管理局艦隊を引きつけている間に突撃を敢行し、次元潜行してミッドチルダに接近する。
 接近中、作戦名「アマゾネス」にて任務についている潜入部隊がミッドチルダ各部の電気に関する設備を爆破。さらに南部にある教育施設とおぼしき所に陽動攻撃を敢行。
 陽動成功後、第22艦隊は揚陸作戦を援護。
 陸戦部隊の半数はミッドチルダ北部にある放棄された空港を制圧。ある程度の戦力を有すると思われる聖王教会を制圧せよ。
 さらに半数はミッドチルダの首都クラナガンにある港湾地区を制圧。中央区画にある時空管理局地上本部へと進撃後、制圧せよ。
      ②「降伏勧告」
      ③「終戦」

 【プランC】①「上記以外の不測の事態発生」
      ・降伏せずに徹底抗戦
      ・他の世界へ逃げ込む   など
      ②時空管理局の保有戦力を完全に殲滅する(不可能であれば退却して防戦)
      ③終戦



 報告書終了
最終更新:2009年02月07日 18:40