お馬さんが落ちていくよ

6話 お馬さんが落ちていくよ

山岳地帯の山道に、馬が蹲っていた。
牡馬、カルステンは、懐中電灯を取り出したくても蹄のためデイパックが開けられず、
かと言ってこの夜の山道を暗いまま歩くと滑落する恐れがあるため動こうに動けずにいたのである。

「月明かりだけじゃなあ……早く朝にならないかな」

時計も取り出せないため、今が何時なのかも分からない。
夜明けまであとどれくらいの時間がかかるかが見れないのだ。
それがカルステンを更に不安にさせる。

「こんな所さっさとおさらばした……ん?」

愚痴を言っていると、気配を感じた。
気配のする方向に恐る恐る視線を向けると、月明かりに照らされて人影が確認出来た。
着物のようなデザインの衣服を纏った、半獣人の若い女性のようだ。
獣の耳と尻尾があるのが見える。

「……誰?」

カルステンはその女性に声をかけてみる。

「〈……馬? 参加者?〉」
「え?」

女性はカルステンには理解出来無い言語で喋った。
それがどうやら中国語らしい事は分かったが意味までは理解出来無い。

「〈参加者みたいね……ああそう言えば開催式の時にも馬がいたような〉」
「何て言ってるんだ……逃げた方が良いのかな……」
「〈喋る馬なんだ……〉」
「に、逃げようかな……」
「〈さっさと殺して荷物奪っちゃおうか〉」

女性が腰の辺りから何かを取り出しそれをカルステンに向ける。

「えっ!!」

やっぱりすぐに逃げておくべきだったとカルステンは後悔したが最早後の祭り。
二発の破裂音が響き、カルステンは胴体に刺すような痛みを感じる。

「ひいい!!」

恐慌したカルステンは立ち上がり脇目も降らず逃げ出した。
ここが夜の暗く視界が利かない山岳地帯の山道だと言う事を失念して。
十数メートル走った所で、カルステンは足を踏み外した。

「う!? うわぁああああぁあぁああああぁあああああああ!!!!?」

山岳地帯に悲鳴が響き渡った。
崖下から酷く鈍い音が聞こえ、女性は懐中電灯を取り出して点灯させ、
最新の注意を払いつつ崖下を覗き込む。
数十メートル下の地面に馬が横たわっていた。
ビクビクと身体を痙攣させ、血が広がっていく。恐らく既に死んでいるか、
生きていたとしても長くは持たないだろう。
荷物を漁るためにどうにか下に降りられないかと思ったがどうやら無理のようなので断念した。
自分まで転落しては元も子も無い。

女性――劉恵晶、字を正宇は中国風国家生まれの傭兵である。
世界各地の紛争や、異世界に赴く事もある。
今回の殺し合いには、日本風国家に所用で滞在していた時に巻き込まれた。

「〈旧式の小口径リボルバー二丁じゃ心許無いから、もっと武器欲しいのだけれど〉」

劉恵晶は先程馬を撃つのに使った大昔のシングルアクションリボルバー、S&WM1を眺めながら呟く。
もう一丁、M1の口径を大きくした後継モデルのM2がある。
この二丁とそれぞれの予備弾薬が恵晶の支給品だった。
どちらも黒色火薬を使用する旧式で、威力も弱い。弱いと言っても、普通の人を殺傷する事は出来るレベルだが。

「〈殺し合いに乗る奴もきっと出てくるだろうし、生き残るにはそれなりに良い武器も必要。
後は上手く他人を利用するか……〉」

恵晶は積極的に殺し合う気は無かったが、自分が生き残るためには、
他人を殺傷し所持品を強奪する事も厭わない姿勢であった。
時には他人を利用し捨てる事もあるだろう。自分の身体を使う事も。
だが、何をしても自分は生き残ると恵晶は心に決めていた。


【カルステン  死亡】
【残り60人】


【深夜/D-3/山岳地帯】

【劉恵晶】
[状態]健康
[装備]S&W M1(5/7)
[持物]基本支給品一式、.22ショート弾(14)、S&W M2(6/6)、.32リムファイア弾(12)
[思考]1:自分が生き残る事を優先する。
    2:弱そうな参加者は脅して装備を奪うか、場合によっては殺害してしまおう。
[備考]※特に無し。


《参加者紹介》

【名前】カルステン
【年齢】人間で言うと20代半ば
【性別】♂
【職業】無職
【性格】のんびり屋
【身体的特徴】茶色のアラブ馬、引き締まった身体
【服装】無し
【趣味】人間が捨てたエロ本を漁る事
【特技】特に無し
【経歴】特筆事項無し
【備考】たまに物好きな男の尻を掘ってあげている

【名前】劉恵晶(りゅう けいしょう)
【年齢】19歳
【性別】女
【職業】傭兵
【性格】冷静沈着、無愛想
【身体的特徴】身長高め(167センチ)、茶色の長髪に犬の耳と尻尾がある美女。赤と青のオッドアイ。豊乳
【服装】着物のようなデザインの丈の長い赤っぽいコート、その下は黒いTシャツ、灰色のミニスカートにブーツ
【趣味】不明
【特技】剣術、射撃、若干の妖術、英語とドイツ語を話せる
【経歴】中国風国家出身で、11歳の時から傭兵として生きてきた
【備考】字は「正宇(せいう)」。劉正宇と名乗る事もある。
    幼女の頃から戦いに身を投じてきた。
    剣と銃の腕に優れ、多少の攻撃妖術、回復妖術も扱える。
    様々な過酷な状況を切り抜け、多くの人の死を見てきたためか年齢の割に肝が座っている。
    何回か捕虜になり強姦された事もあるので処女では無い、自分の身体を利用する事も。
    性行為に対して躊躇は無いが淫乱と言う訳でも無い
    母国語は中国語、それ以外に英語とドイツ語をマスターしている。日本語は片言




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最終更新:2013年07月01日 22:19