5話 闇夜の急降下刺突
使われなくなり朽ちた展望台から燕鳥人の青年、
池島高貞は海を眺めていた。
と言っても、夜なので何も見えなかった。
波の音が聞こえ潮風が高貞の羽毛をなびかせる。
「ああ、飛んで逃げたい。でも地図の外に逃げたら首輪が作動するらしいし。
陸地も見えない状態で飛んで行ったら疲れて海に墜落するだろうし。
……ダメだ、どうやったって逃げられないんだ……」
頭を抱える高貞。
デイパックの中身を漁ると、出てきたランダム支給品は二種類。
アウトドアナイフと、パーティーの時に使われるクラッカーが三つ。
クラッカーはともかくナイフは武器として有用だ。
(殺し合うしか無いのか……)
殺し合いなどしたくはなかったが、しなくとも何れ死ぬようにルールは決められている。
名簿を見た限りでは知り合いらしい知り合いもいない。
自分は一人きり。
(……僕は……)
高貞は決断を迫られる。
一方、展望台の下では懐中電灯の光が動いていた。
懐中電灯の主は、牛の耳に角、尻尾を持った美少女。
少女、
牛原アヤノは自慢の爆乳を揺らしながら展望台を目指し歩いていた。
「暗くて怖いなぁ……」
暗い夜道を懐中電灯で照らしながら歩く。
その行為は殺し合いにおいて自身の居場所を明確にする危険行為と言う事にアヤノは気付いていない。
「ん?」
空に何か黒い影が見えた。
次の瞬間、アヤノは仰向けに力強く押し倒される。
「がはっ! ああ……!」
背中を地面に強か打ち付けたため呼吸困難に陥るアヤノ。
そのアヤノに向け、押し倒した影――――燕鳥人の青年は両手で持ったナイフを一気に振り下ろした。
ザクッ
ナイフの鋭く大きな刃はアヤノの喉笛と脊椎を刺し貫いた。
アヤノはしばらく目を見開いて口をぱくぱくとさせていたが、程無く動きを止める。
「……」
燕青年、池島高貞は自分の下の半牛獣人少女が完全に動かなくなったのを確認し、
ナイフを引き抜いた。
死亡した後であるためか血液はそれ程高く噴出さず、高貞もすぐに離れたため、
彼の手と衣服が血で汚れる事は無かった。
展望台から見えた懐中電灯の光に向かって飛翔し、急降下したら、ドンピシャであった。
「……意外と平気なものなんだな」
初めて殺人を犯したが高貞の精神は本人が心配していたよりも遥かに平静であった。
自分はもしかしたらもうおかしくなってしまってるのかもしれないと、高貞は思う。
初めて人を殺したのに平静でいられると言うのはどう考えても異常だからだ。
異常と思ったとて特にどうしようと言う訳でも無かったのだが。
高貞は少女の所持品を漁り、鉄粉入り防刃グローブと、黒いノートを見付ける。
ノートは開いてみたが何も書かれていない。
取り敢えずグローブを両手に装着し、黒いノートは放置した。
「行こう……」
もうここには用は無いと、高貞は歩き始める。
その目には決意の光が宿っていた。
【牛原アヤノ 死亡】
【残り61人】
【深夜/F-1/廃展望台周辺】
【池島高貞】
[状態]健康
[装備]アウトドアナイフ、鉄粉入り防刃グローブ
[持物]基本支給品一式、パーティークラッカー(3)
[思考]1:死にたくないので殺し合いに乗る。
[備考]※特に無し。
《参加者紹介》
【名前】池島高貞(いけじま たかさだ)
【年齢】17歳
【性別】男
【職業】高校生
【性格】少し気弱
【身体的特徴】燕の鳥人。翼を持っている
【服装】学校制服の黒い学ラン
【趣味】本屋巡り、あやとり
【特技】ある程度空を飛べる
【経歴】特筆事項無し
【備考】気弱で大人しくクラスの悪ガキにからかわれたりしている
【名前】牛原アヤノ(うしはら-)
【年齢】18歳
【性別】女
【職業】高校生
【性格】おっとり
【身体的特徴】紫がかった青髪に牛の角と耳、尻尾のある少女。爆乳
【服装】学校制服の茶色と白基調のセーラー服
【趣味】昼寝
【特技】特に無し
【経歴】特筆事項無し
【備考】母乳は出ない。良くセクハラを受ける
最終更新:2013年07月08日 21:44