8話 落ちるところまで落ちて
柏木寛子は家出少女だ。
不仲な両親に嫌気が差し、ある日家の金を持って家を飛び出し電車でそこそこ大きな都市部へ向かった。
しばらくは適当に遊んで、ビジネスホテルやネットカフェに宿泊していたが、段々金も少なくなってきた。
なので、思い切って、売春を働く事にした、そして相手に選んだのは、濃い灰色と白の毛皮を持つ人狼種の男。
「5万でどうだ?」
いきなり諭吉の書かれた紙を五枚、その人狼は寛子に見せた。
更に一瞬見たが人狼の持つ財布には大量の札が入っている。
自分の気の利かせ方次第では料金を上乗せしてくれるかもしれない。
「……イイよ」
寛子は承諾した。
しかし、結局寛子は金は貰えなかった。
彼女はその日以降、稲葉憲悦の肉便器としての生活を送る事となったのだから。
人狼の自宅に監禁され、三食、風呂、最低限の衣類を提供される代わりに、毎日のように犯される。
肉の竿をしゃぶらされ、白濁汁を飲み込まされ、膣は愚か肛門さえ弄ばれ、危険日などお構いなしに注ぎ込まれ、
全身を体液塗れにされ、時には人狼や自分の排泄物を掛けられ飲まされ、時には殴られ首を絞められ爪で傷付けられ。
正に生き地獄であった、何度脱走を試みたか、そして失敗して報復を受けたか、涙を流したのか分からない。
そんな地獄なのに、行為で気持ち良くなっている自分も嫌だった。
だが、もう自宅に戻りたいと言う気持ちも無かった。
両親は捜索願すら出していないのだろうか、たまに見られるテレビや新聞に自分の事は載っていない。
元々両親に嫌気が差して飛び出してこうなったのだ。
寛子はいつからか逃げるのでは無く、死ぬ事を考え始めた。
森の中の神社。
よれよれのシャツにスカート姿の茶髪少女、柏木寛子は、ここで自分の命を終えようとしていた。
近くの管理小屋から持ってきたロープで適当な高さの木の枝に、首吊りのロープを作り、
これまた管理小屋から持ってきたパイプ椅子に上って、そのロープの輪に自分の首を通した。
これでパイプ椅子を蹴れば、自分の命は終わる。
怖くは無い、殺し合いに巻き込まれ、どの道生き残る事など出来やしないし、生き残るつもりもない。
自分を飼い殺ししている稲葉憲悦もこの殺し合いにいるらしいが、もうどうでも良い。会いたくない。
会った所でろくな目には合わない。
「……生まれ変わったら、もっとマシな人生だと良いなぁ」
乾いた笑いを浮かべながら、寛子は椅子を蹴った。
寛子の身体が椅子から落ち、ロープで首が絞まり、宙に浮く。
「あ゛ぅっ……」
呼吸と脳への血流が止まる。
苦しい。
無意識の内に寛子は足をばたつかせていた。
だがこの苦しみも一時だろう、後少し耐えれば、自分は――――。
「うぎっ!?」
だが思いもよらない事が起きる。
自分の身体が下から持ち上げられたのだ。
僅かではあるが気道と血流が戻り、苦しみが和らいだ。
「げほっ、ごほっ!」
咳き込みながら下に目をやると、女性らしき頭が見えた。
狐の耳があるので狐系の獣人だろうか。
「じっとして、今、ロープ切るから……!」
女性は右手にナイフか何かを持っており、それを左手と一緒に寛子の首の後ろに回し、ロープを切り始める。
数秒も経たずにロープは切れ、寛子と女性は地面に倒れ込んだ。
「はぁ、はぁ……ねえ、大丈夫?」
狐の女性――狐閉レイナはまだ咳き込んでいる少女の首のロープを解きながら話し掛ける。
神社の社の陰から、少女の様子を伺っていたが、首を吊って自殺を図るとは。
気づいた時には身体が動き少女の身体を下から支えていた。
見ず知らずではあるが目の前で死なれるのを放ってはおけなかった。
「……助けてくれなくても、良かったのに」
「ええ?」
思いも寄らない言葉に一瞬レイナは驚くが、良く考えてみれば自分で死のうとしていたのだから当然だろう。
「いや、まあ、気付いたら身体が勝手に動いてたって言うか」
「……」
「……私、狐閉レイナって言うんだけど、あんたは?」
「柏木寛子」
「そう、柏木さん……何があったのか、何を思ったのか知らないけど、その、死んだらいかんよ」
「……良いのよ、どうせ死んだって誰も悲しまないよ」
「いやいやいや……」
「生きて帰ったって……帰る場所も無いし」
「……」
俯き加減で震えた声で話す寛子。
とてもでは無いがこのまま放っておける状態では無い。
「と、とりあえず、さ、そこの社の中にでも入って話しよ?」
「……」
レイナの提案に、寛子は無言で頷いた。
【D-4/神社/早朝】
【柏木寛子】
[状態]首にロープの跡
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???
[思考]
基本:死にたい。
1:憲悦には会いたく無い。死んで欲しい。
【狐閉レイナ】
[状態]健康
[装備]コンバットナイフ
[持物]基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いから脱出したい。
1:柏木さんと話をする。
《人物紹介》
【柏木寛子】 読み:かしわぎ・ひろこ
17歳。両親が毎日のように喧嘩をし自分への態度も冷たいのに嫌気が差し家出。
家出先の地方都市にて生活費稼ぎのため、人狼・稲葉憲悦に売春を申し出るがそのまま拉致監禁され、
毎日のように性的暴行を受ける事になる。人生に絶望しており自殺を考えている。
高校には通っていたが家出する数週間前から不登校になっていた。
茶髪のセミロングで、グラマラスな体型。
【狐閉レイナ】 読み:ことじ・れいな
商社に務めるOL。25歳。やや人間寄りの狐獣人でオレンジ色の髪と毛皮。
快活で世話焼きな性格。実家が修理店だったので良く手伝わされ、機械に詳しい。
胸は余り無いがウエストやヒップは魅力的。
ゲーム開始 |
柏木寛子 |
027:暗澹の心 |
ゲーム開始 |
狐閉レイナ |
027:暗澹の心 |
最終更新:2013年03月20日 17:08