【29】賽は投げられた
ウェアウルフの編集者の青年、ファビアンはこれから自分がするであろう事に神に許しを乞いたい気分であった。
担当している作家のアダルブレヒトは、殺し合いゲームに巻き込まれた事に憤慨していたが、
ゲームに乗る事自体は否定せず、自分に手伝えと、つまり同じように殺し合いに乗れと言ってきた。
断ればショットガンで身体に大穴を空けられるであろうから断る事は出来ず、彼はアダルブレヒトの猟犬となったのだ。
「{期待しているよ、ファビアン君、ウェアウルフとしての君の実力をね}」
「{余り戦った事は無いですがね……}」
森を出て草枯た手入れのされていない古い舗装路を歩く二人。
その背後から、全裸の竜人の少年が茂みから飛び出し二人に向けて発砲する。
「{うおっ、……何だ全裸の竜人の子供だと?}」
「{どういう経緯なのかは知りませんが……}」
「う、う」
竜人少年、信喜はいざ他参加者を見付け、襲ってはみたものの、怖そうな壮年の男性と強そうな長身のウェアウルフに、
怖気づいてしまい腰が引ける。
「{ファビアン君、小手調べだ。あの子供は任せる}」
「{……はい}」
ファビアンが信喜に近づいていく。
その双眸は普段の振り回される優しい彼の色は無く、獲物を捉えた獣の色。
それに見据えられた信喜は戦意など消え失せ、逃げようとした。
「ウガァウッ!」
獣の咆哮を発しながらファビアンは鋭い爪を信喜に振り下ろす。
信喜の背中が引き裂かれ、鮮血が古びたアスファルトの上に飛び散った。
痛い、痛い、痛いと泣き叫ぶ信喜。
しかしファビアンは手を緩めず、その細い首に食らいつき激しく左右に振り回した。肉が裂け骨が砕け、竜人の少年の命の火は消える。
「{上出来だ、やれば出来るじゃないかファビアン君}」
「{……こんな事、出来たくないんですよ?}」
「{服が血塗れだな、もう脱いだ方がいいんじゃないか?}」
「{……そうですね}」
血塗れになった衣服をファビアンは脱ぎ捨てる。
銀色の毛皮に覆われた引き締まった人狼の肉体が顕になる。
股間の逸物は何故かそそり立ち透明な粘液を垂らしていた。
「{ははは、獲物を仕留められて興奮してるのかな? 息子さんが元気になってるぞ}」
{{……認めたくないですけどねぇ……ふぅ……}」
自分が獲物を仕留めて性的な興奮まで感じているという現実に、ファビアンは少なからず落胆する。
だが、確かに満更でも無いとも思っていた。
【隆信喜 死亡】
【明朝/E-5道路】
【アダルブレヒト・ゲルデラー】
[状態]健康
[所持品]基本支給品一式、ウィンチェスターM1897(0/5、12ゲージショットシェル×10)
[行動指針]殺し合いに乗る。ファビアン君は使えるな。
【ファビアン・グライスナー】
[状態]健康、全裸、軽い性的興奮、口元血塗れ
[所持品]基本支給品一式、不明支給品
[行動指針]先生(アダルブレヒト・ゲルデラー)に従う。
最終更新:2016年10月25日 21:15