【16】危険な領域
※「{}」はドイツ語。
アダルブレヒト・ゲルデラーはそれなりに有名な小説作家である。
この度、日本へ取材旅行と言う名の観光旅行へ行く運びとなった。
「{先生、私も行きますので}」
「{えっ}」
担当編集であるウェアウルフ族のファビアン・グライスナーが無理矢理ついてきた。
当然監視の為である。遊ぼうと思っていたアダルブレヒトは死んだ目付きになった。
元はと言えばしょっちゅう原稿を落として編集部に迷惑をかけているのが悪いのかもしれないが。
そして日本に着いて、ロワへと巻き込まれたのでした。
「{ファビアン君、この度のこの事態をどう思う?}」
E-5の森林地帯。その中でアダルブレヒトはたまたまスタート地点が一緒だったファビアンに支給されたショットガンを突き付けていた。
「{あああああの先生それを下ろして下さい何でそんなもの突き付けられなきゃいけないんですか}」
ホールドアップの体勢で完全に萎縮しているファビアン。尻尾も丸まってしまい耳も伏せてしまっていた。
体格だけならアダルブレヒトより遥かに良く強そうなのだが。
「{私の質問を聞いていたかね? この状況をどう思うと訊いたのだ。君が銃を下ろして欲しいかどうかなんて思考の外なのだよ}」
「{ひ、ひいい、あ、あの、非常にまずい状況だと、思います}」
「{まあ、そうとも言えるな。だが、それ以上に……最悪だ!!}」
叫ぶなり、アダルブレヒトは空に向けて一発ショットガンを発砲した。
「{ひぃぃぃ!}」
「{ああ最悪だ! 最低だ! 無理矢理着いてきた君にも腹立たしいが、こんなふざけたゲームに参加させられ事が一番最悪だ!!
ふ・ざ・け・る・な!! 休暇を返せ!! あぁあああぁあ!!}」
怒鳴り散らしながらアダルブレヒトは弾倉に入っていた散弾を全て空へとぶちまけた。銃声が何発も辺りに響く。
ファビアンはもうどうにも出来ず震えて縮こまっていた。
「ハァ、ハァ、ハァ……!」
「{せ、先生……?}」
「{ファビアン君}」
「{ハイ!?}」
「{私を手伝ってくれるな?}」
ファビアンに問いかけるアダルブレヒトの表情は、狂気とも怒りとも取れぬ歪んだ笑みで満たされていた。
正しく蛇に睨まれた蛙と化したファビアンは、手伝う以外の選択肢を取る事など出来なかった。
【明朝/E-5森】
【アダルブレヒト・ゲルデラー】
[状態]健康、怒り
[所持品]基本支給品一式、ウィンチェスターM1897(0/5、12ゲージショットシェル×10)
[行動指針]どうしてやろうかな!?
【ファビアン・グライスナー】
[状態]健康、恐怖
[所持品]基本支給品一式、不明支給品
[行動指針]先生(アダルブレヒト・ゲルデラー)に従う。
《キャラ紹介》
【アダルブレヒト・ゲルデラー】
それなりに売れている小説作家。45歳。妻子も居たが色々有って別居中。しょっちゅう原稿を落とす為編集部からマークされている。
紳士ぶっているがキレやすい。大人気無い。一応日本語話せる。過去ロワのアルソンズ・ベイルと作家繋がりで面識あり。
【ファビアン・グライスナー】
ドイツのとある出版社に務めるウェアウルフの編集者。23歳。まだまだ若手。アダルブレヒト・ゲルデラーの担当だが彼に振り回されている。
銀色の美しい毛皮に引き締まった身体と中々美狼で人間の彼女も居る。ただ少しビビリ。日本語話せます。
最終更新:2016年10月25日 21:16