占い師、妖狐、賞金稼ぎ

24話 占い師、妖狐、賞金稼ぎ

鼠獣人、川西栞は占い師である。
相手の手を握る事で脳内に、ぼんやりとではあるが握った相手の近い未来が映し出される超能力を、
生まれ付き持っておりそれを利用して占い師をやっていた。
自分の未来は予知出来ず、また、時には予知したく無い未来も予知してしまう時があるため、
栞自身はこの能力に対して複雑な気持ちを抱いていた。
完全に「嫌」と言い切れないのは、この能力のお陰で生活の糧を得られていると言う面もあるためである。

「占い師をやっているのか」
「うん……手を握れば近い未来が、ぼんやりと見えるから」
「超能力って事か?」
「有り体に言えばそうね、信じてくれなくても良いけれど」
「……じゃあ、俺の未来を占ってくれよ」

別荘地にある別荘の一つ。
居間で、栞はこの殺し合いで出会った妖狐・イェレミアスに占いを求められた。
イェレミアスは座って右前脚を「お手」をするように栞に差し出す。

「……」
「どうした?」
「やめた方が良いと思うけど」

しかし栞はその求めを断る。

「何でだよ、やっぱ超能力なんて嘘かぁ~?」

からかい気味にイェレミアスが栞に言う。
本気で超能力を否定している訳では無かったが。
栞は少し神妙な面持ちを浮かべていた。

「……この能力、見たくない未来も見えるのよ」
「ん?」
「ずっと前、小学生の時、仲の良い友達がいたんだけれど、
ある日その子の手を握ったら、大型トラックが迫ってくる映像が見えたの。
それで、次の日、その子、トラックに轢かれて死んじゃった……」
「……」
「高校の時も、似たような事があった。
占い師始めてからも、何回か……生活するために、占い師続けているけど」

人が死ぬ未来を見せられると言うのは、気分の良いものであるはずが無い。
無論見えた相手に対して栞は助言は行ってきた。
未来が変わった者も何人かはいたが、未来が現実になった者もそれと同じくらいいた。
結局は本人がどうにかするしか無いと言う事。
栞の「占い」とは、要するに「見えたその人の未来への助言」である。

「ましてや殺し合いよ?
ろくな未来見えないだろうし……やめといた方が」
「……」

イェレミアスはふさふさの尻尾を振りながら沈黙する。
そしてしばらくして口を開いた。

「ネタバレしちゃ、つまらないか」
「……」
「良いや。分かったよ」

イェレミアスは結局占ってもらう事はやめにした。

(いや、別に怖くなった訳じゃないぞ。未来どうなるか分かったらつまらないだろ。うん)

そうこうしている時、二人は玄関の方から物音がするのを聞く。
隠れようとも思ったが隠れられそうな場所も無いので、
栞はベルグマンMP18、イェレミアスは苗刀と、それぞれの支給品を構えて侵入者を待つ事にした。
やがて、二人のいる居間に軽装鎧姿の金髪男が現れた。

「動かないで、武器を捨てて両手を上に!」
「ああ?」
「言う通りにしてくれ、そうすれば何もしない」
「お邪魔だったかい、じゃあ失礼するよ」
「ちょっ……人の話聞いてた!?」

去ろうとした男を栞は思わず引き止めた。

「はいはい言う通りにしますがな」

男は栞に言われた通りに持っていた剣とデイパックを床に置き両手を上げた。

「これで良いかよ」
「う、うん……じゃあ、単刀直入に。あなたは殺し合いに乗っているの?」
「んな質問されて『はい』なんて答える奴はいねえと思うがな。
まあ、俺は殺し合う気はねぇよ? マジで。襲ってくる奴には容赦するつもりはねぇけど」

栞に銃口、イェレミアスに刀の切っ先を向けられながらもそれを物ともせず、
軽い口調で自分の考えを話した。
しばらく栞とイェレミアスは無言で武器を突き付けていたが、
やがて構えを解く。

「ごめんなさい……」
「謝る事はねぇ、警戒心を持つのは良い事だ」
「私は川西栞、こっちが同行して貰っているイェレミアス」
「俺はザガート・マキシムだ。ザガートで良い。
別荘地から出ようと思って歩いてたら、ガラス割られた家あったから入ったら、お前らがいたって訳だ」
「成程な……ザガート、俺らと一緒に来ないか? 仲間は多い方が良いだろ?」

ザガートを仲間に勧誘するイェレミアス。
栞も特に反対は無いようだ。

「そうだなぁ、別に断る理由もねぇし、良いぜ」

ザガートは誘いに乗った。
そして三人は支給品を見せ合う。
ここで、栞とイェレミアスはザガートの持っていた拳銃が気になった。
支給品は一人に一つの筈だが、ザガートは剣と拳銃を持っているのである。

「ザガートの支給品ってその剣なのよね?」
「おう、あ、この銃の事か?」
「どうしたんだ、それ」
「俺を殺そうと襲ってきた女がいてな、始末ついでに拾った」
「し、始末……」
「殺したのか……」
「襲ってくる奴には容赦しねぇって、さっき話したろ?」
「そ、そうね……」
「別に責めるつもりは無いぞ、すまん」

二人は否定はしたが、ザガートは確かに二人が一瞬、自分に対し非難の視線を向けていたのを見た。
もっとも、ザガートはそんな事を気にするような男では無かったが。

三人は別荘地から出る事に決め、荷物を纏めて出発した。



【C-2/別荘地/早朝】
【川西栞】
[状態]健康
[装備]ベルグマンMP18(20/20)
[持物]基本支給品一式、ベルグマンMP18の弾倉(3)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:イェレミアス、ザガートと行動。

【イェレミアス】
[状態]健康
[装備]苗刀
[持物]基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:栞、ザガートと行動。

【ザガート・マキシム】
[状態]健康
[装備]ショートソード
[持物]基本支給品一式、二六年式拳銃(5/6)、9mm×22R弾(12)
[思考]
基本:殺し合う気は無いが襲われたら容赦しない。
1:栞、イェレミアスと行動。
2:別荘地から出る。


《人物紹介》
【川西栞】 読み:かわにし・しおり
21歳、灰色の鼠獣人。相手の手を握ると近い未来が予知出来ると言う超能力を持ちそれを使って占い師をやっている。
能力によって生活の糧を得ているのでこれを大切に思う反面、
見たくない未来(その人の死など)も見える時があるので、実際は能力に対し複雑な思いを抱いている。
手袋をしていると能力は発動出来無い。予知出来る範囲は最大でも一ヶ月先まで。
細身だが胸だけかなり大きい。

【イェレミアス】
22歳、妖狐。狼に近い風貌で成人男性程の体躯を持ち、顔や身体に赤い隈取のような模様がある。
陽気な性格で、子供好き。良く住んでいる森の近くにある街で子供の相手をしたりする。
手先も器用だが妖力を使って物を操る方が得意。
最近、夢精に悩んでいる。


023:過程とかそういうのは吹っ飛ばしたい 目次順 025:秘められたる欲求
ゲーム開始 川西栞 028:崩壊は唐突にやってくる
ゲーム開始 イェレミアス 028:崩壊は唐突にやってくる
010:バスターソウル ザガート・マキシム 028:崩壊は唐突にやってくる
最終更新:2013年03月20日 17:21