10話 バスターソウル
バウンティハンター、ザガート・マキシムは別荘地を歩いていた。
右手には支給されたショートソードを持っている。
殺し合いをするつもりは無かったが、自分に襲い掛かる者がいれば容赦無く切り捨てるつもりではいた。
そして突然、銃声が響きザガートの耳元の空気が切り裂かれる。
前方に、自分に向けて拳銃らしき物を向けるサキュバスらしき少女の姿。
舌打ちをし、すぐ近くの別荘敷地内に逃げ込むザガート。
ザガートを銃撃したサキュバス少女――深魅瑠維は追い打ちを掛けるべく、軽装鎧姿の男を追い掛ける。
だが。
「あれ?」
いない。
男が逃げ込んだ筈の別荘敷地内に男の姿は無い。
別荘の建物の扉が開いたような形跡も無い。
塀と建物の間の細い道を通って行ったのだろうか。
ザシュッ。
背中に衝撃と熱を感じた。
その熱は耐え難い激痛へと変わり瑠維を襲う。
「あっ……がっ?」
突然の事に何が起きたか理解出来ない瑠維は、激痛に震えながら背後を振り向く。
自分がさっき銃を向けた男が、剣を自分に向けて突き出すのが見えた。
見えたのと同時に身体の、腹部の辺りに衝撃が走り、熱とも痛覚とも取れない感覚が瑠維を襲う。
喉の奥から鉄錆の味のする熱い液体が込み上げ、口から溢れる。
身体中の感覚が休息に失われていく、意識が消えていく。
「嫌だ、死に、たく……」
どれだけ意識をはっきり保とうとしてももはやどうにもならず。
深魅瑠維は呆気無く息絶えた。
「悪ぃな、俺もまだ死にたくねぇんだわ」
瑠維の衣服の端でショートソードに付着した血液を拭うザガート・マキシム。
彼は、瑠維に銃撃された直後、すぐに敷地内の、正門脇の辺りに隠れ瑠維を待ち受けた。
そしてザガートの思惑通り瑠維はやって来た。そこを背後から襲ったのだった。
非常に単純な作戦である、しかしこの作戦によりザガートは勝利し瑠維は死んだ。
ザガートは瑠維の持っていたリボルバー拳銃、二六年式拳銃を拾い、彼女の衣服やデイパックを漁り予備弾も手に入れた。
「銃は得意じゃねぇけど、持っておけば役に立つだろ……移動するか」
ザガートは別荘地から移動しようと考え、歩き始めた。
【深魅瑠維 死亡】
【残り44人】
【C-2/別荘地/早朝】
【ザガート・マキシム】
[状態]健康
[装備]ショートソード
[持物]基本支給品一式、二六年式拳銃(5/6)、9mm×22R弾(12)
[思考]
基本:殺し合う気は無いが襲われたら容赦しない。
1:別荘地から出る。
《人物紹介》
【ザガート・マキシム】
24歳のバウンティハンター。ツンツン頭の金髪。剣を得意としている。
戦闘能力は高く討伐関連の依頼をされる事も多いが金に汚く女癖も悪い。
但し、彼なりの行動規範があるようで女を卑下したり、
道具のように扱う男は嫌っている(とは言っても自分に危害を加える女にも容赦しない)。
【深魅瑠維】 読み:ふかみ・るい
サキュバスだが色々偽って高校生活を送っている。外見は16~17歳の紫髪の美少女。
基本的に明るい性格ではあるが根元までは親しくしないようにしている。
最終更新:2013年03月20日 17:09