29話 爆裂スル恐怖
給油所の事務所にはロリ系の成年向け雑誌や漫画、ビデオが多数置かれていた。
ここで働いていた者が趣味で集めていたのだろうか。
マンティコアの青年ウラジーミルは、そう言う趣味は無いが興味本位でそれらを読んだり視聴したりする。
「ウラジーミル君、そう言うのが好きなの?」
「え!? い、いや、そういう趣味は無いですけど、たまにはこういうのも良いかな、って」
「へえ……」
趣味は無いと言っても、幼い裸体には成熟した裸体とは違う魅力を放ち、
ウラジーミルは自分の気持ちが昂っていくのを否定出来なかった。
その昂りは彼の股間にぶら下がるそれの体積を否が応無しに大きくしていく。
「ごめん、福島さん、ちょっとトイレ」
「……行ってらっしゃい」
ウラジーミルがトイレに行く理由を愛沙は察する事が出来た。
ロリ系成人向け漫画を一冊持っていったからだ。
トイレの扉が閉まる。
しばらくして。
「あっ……あっ……ああ……ああ……あぁああっ」
トイレの中から雄の喘ぎ声が響いた。
水を流す音の後、ウラジーミルが出てくる。
その表情は何かを悟ったようなそんな感じであった。
「……手、洗った?」
「洗いました」
一応それだけは愛沙はウラジーミルに尋ねた。
ガシャンッ!!
不意に、ガラスが割れ中に何か投げ入れられた。
投げ入れられたそれは、床で一回バウンドした。
二人共、一瞬それが何なのか理解出来なかった、理解出来た時には。
ドガアアァアン!!
それは轟音と共に炸裂し、ウラジーミルと愛沙は爆風と破片によって身体を吹き飛ばされていた。
事務所内は一瞬にして瓦礫の山と化し、煙が立ち込める。
窓ガラスは全て粉々に吹き飛んだ。
「凄い威力……」
給油所事務所の中に、自分の持っていたRGD-33柄付手榴弾を投げ入れた銀髪犬耳の女性、マリアは、
手榴弾の威力に惚れ込んだ。
事務所の中に入って中にいたであろう人物の生死を確認しようとしたが、
建物が崩落する恐れもあるし、何より煙が立ち込め、コンクリート製の建家が歪む程の爆発なら、
誰も生きてはいないだろうと中には入らなかった。
爆発の音を聞き付けて誰か来るかもしれないと、マリアはさっさと給油所から立ち去った。
だが、マリアは思い違いをしていた。
「う……う」
ウラジーミルはまだ生きていた。
身体中に破片が刺さり、左腕と右目を失っていたが、辛うじて命は取り留めていたのである。
全身の激痛に耐えウラジーミルは立ち上がる。
「右目が……見えない……左腕が……無い……」
右目の視力が完全に消えている事、左腕の肘から先が無くなっている事にショックを受けながらも、
ウラジーミルは一緒にいた筈の愛沙の姿を残った左目で必死に探した。
「福島さんっ、ふくし、ま、……!」
程無く愛沙は見付かった。
うつ伏せに倒れ、腹から臓物が丸ごと飛び出している。
顔はとても綺麗だったが、開いたままの目はどこも見ておらず光は消え失せていた。
恐らく、何が起きたのか分からないままだっただろう。
周囲の状況や自分の怪我、愛沙の状態から、爆発物、恐らく手榴弾か何かを投げ入れられたのだろう。
「何て事だ……くそっ、誰だ! 誰がこんな事を! ウグッ! ……つぅ」
襲撃者を今すぐにでも探したかったが、全身の痛みに目眩がする。
せめて失った左腕の止血だけでもしなければ遅かれ早かれ失血で死んでしまうだろう。
「手当……しないと……ごめん、福島さん……」
同行者を守れなかった事を悔いながら、ウラジーミルは手当するための道具を探し始めた。
【福島愛沙 死亡】
【残り34人】
【D-2/給油所周辺/朝】
【マリア・ベーラヤ】
[状態]健康
[装備]スナイドル銃(0/1)
[持物]基本支給品一式、.577スナイドル弾(10)、RGD-33柄付手榴弾(2)
[思考]
基本:優勝狙い。
[備考]
※ウラジーミルが生きている事には気付いていません。給油所からは離れています。
【D-2/給油所/朝】
【ウラジーミル・コスイギン】
[状態]右目失明、左腕肘から先喪失(出血多し)、全身に細かい破片による傷
[装備]クロスボウ(0/1)
[持物]基本支給品一式、クロスボウ予備矢(10)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:手当をしなければ……。
[備考]
※福島愛沙を襲っていた男(鐘上真生)の容姿を記憶しました。
最終更新:2013年03月26日 20:13