ひとりぼっちだと色々考えてしまう

47話 ひとりぼっちだと色々考えてしまう

変電所のすぐ近くにある民家の一室で、マンティコアの青年ウラジーミルは横になっていた。
片目と片腕を失い、全身は傷だらけ。
放送前に、何者かによる手榴弾の攻撃を受けた結果である。
一応、民家内にあった包帯などで処置はしたのだが、身体に刺さった破片を取り除く作業は凄まじい苦痛を伴い、
大粒の涙を流して泣いてしまった程だった。

「もう少し……ここにいよう……」

畳の上に横になり天井をぼんやりと見詰めながらウラジーミルが言う。
身体中がまだ痛く、片目も潰れ片腕も無くなり、この状態で無理に動く気にはなれない。
変電所のあるエリアは禁止エリアには指定されていない筈なので、その点では心配は無いだろう。

「……生きて帰っても、なぁ」

ゆっくり考える余裕が出来たためか、仮定として、生きて帰った後の事を考える。
右目が見えなくなり、左腕が無くなり、帰国したら家族や友人は驚くだろう。
いや、今勤めている仕事もやめなければならなくなるかもしれない。
そもそも右目失明、左腕の無い者を雇ってくれる職場などあるのだろうか。
そういった者も出来る仕事となると、ろくなものが思いつかない。
最悪、身体を売るような職業に就くしかなくなるかもしれない、そう思うと、ウラジーミルは未来に希望が持てなくなる。

「こんな中途半端に生き残るなら、いっそあの時死んどけば良かったんじゃ……。
……いや、やめようこんな事言うのは……生きてれば何とかなるさ」

この殺し合いの中で折角命があるのだから、それを悪く言うのは、
放送で呼ばれた17人の死者、その内の一人で同行していた福島愛沙に申し訳無いと、ウラジーミルは思う。
生きていれば何とかなると自分に言い聞かせ、ネガティブ思考を切り上げた。



【E-3/変電所周辺の市街地/午前】
【ウラジーミル・コスイギン】
[状態]右目失明及び左腕肘から先喪失さらに全身に細かい破片による傷(全て応急処置済)、疲労(大)
[装備]クロスボウ(0/1)
[持物]基本支給品一式、クロスボウ予備矢(10)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:生きていれば良い事はある、きっと……。
[備考]
※福島愛沙を襲っていた男(鐘上真生)の容姿を記憶しました。


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最終更新:2013年04月04日 11:32