朽ちた集落抜けた先

44話 朽ちた集落抜けた先

有翼獅子獣人ウラジーミルと、小学生の少女和歌子は、廃村から脱出すべく草が生い茂ったかつての村の生活道路を南下する。
何年も使われていない故の荒廃ぶりに悩まされつつも、どうにか二人は村の外へと出る事に成功した。

「ふぅ、ようやく抜けられたね……」
「ウラジーミルさんの翼が使えればもっと早く出れた気もしますけど」
「いや、流石に人一人抱えて長時間飛ぶのは無理だよ……」

もし廃村からウラジーミルが和歌子を抱えるか背負うなりして飛翔出来れば更に楽に村を脱出出来たであろうが、
普段飛翔をあまりしないウラジーミルにはそれは無茶な相談であった。

「それよりほら、あそこに建物が有るよ」

ウラジーミルが話題の切替も兼ねて前方に見える小規模の建物を指差す。
正面に回って見るとその建物は武器屋らしかった。
地図のC-3エリアに表示されている物だろう。
放送の時刻も近付いている為、武器の調達も兼ねて二人は中に入る。
しかし、二人はある物を目にして入口から数歩もしない内に立ち止まった。

「ZZZ……」

カウンターの向こう、事務スペースの椅子に座って寝息を立てている狼獣人の青年。
完全に眠っているらしくウラジーミルと和歌子の扉を開ける音や足音にも気付く様子は無い。
しかしこの時点で二人は武器屋の中を探索したり休めるかどうか調べると言う選択肢が消えた事を悟った。
狼の青年が殺し合いに乗っているのかどうか分からない状態で彼を起こすような真似は危険である為だ。
ウラジーミルが小声で和歌子に言う。

「和歌子ちゃん、別の所を探そう……あの狼の人、乗っているかどうか分からないし、起こさない方が良い」
「分かりました……」

放送の時刻が近付いていると言ってもまだ休憩場所を探す位の時間は有るだろう。
最悪、道端で聞く事になるかもしれないが。それもやむを得まい。
ウラジーミルと和歌子は狼の青年を起こさないよう静かに武器屋から出た。

一方、惰眠をこいている青い狼獣人青年、ウォラゴ。
椅子に座って一息付いている内に眠ってしまった彼は、二人の訪問者に気付く事無く、尚も眠り続けていた。


【昼前/C-3武器屋】
【ウラジーミル・コスイギン】
状態:やや疲労
持物:基本支給品一式、拾った木材、作業用ロープと切断用カッターナイフ
現状:殺し合いには乗らない。和歌子ちゃんと行動。彼女を守り、友達である彩愛ちゃんを捜す。どこかで放送を聞く。

【長嶺和歌子】
状態:やや疲労
装備:基本支給品一式、コルト ポリスポジティブ(6/6)、.32コルトニューポリス弾(12)
現状:死にたくない。あやちゃん(籠彩愛)と会いたい。ウラジーミルさんと行動する。放送を聞く。

【ウォラゴ】
状態:睡眠中、ウラジーミルと和歌子には全く気付かず
持物:基本支給品一式、ハンティングナイフ、消毒用エタノール(500ml)、リボルバーと弾薬(現時点ではモデル不明
現状:優勝狙い。


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最終更新:2016年08月15日 19:56