41話 森を抜けると
森の中を彷徨い歩いていた黒牙とウォラゴであったがどうにか森を抜ける事に成功した。
疲弊しつつ喜びを顕にする二人。目の前に広がる草原と道路の広々とした風景は二人を大いに癒す。
「うおお! やっと出れたぜ……黒牙さまさまだな」
「俺を道具みたいに言うな……」
「ありがとうな。んじゃ、俺は行くわ」
「あ、そう」
早々に黒牙と別れるウォラゴ。もうこれ以上黒牙と居る理由は無い。森を抜けた後始末してしまおうとも思ったが疲労でそれどころでは無かった。
対する黒牙も去って行くウォラゴを見送るに留まる。
(今は疲れてるから見逃すが、次会ったら容赦無く殺らせて貰うぜ黒牙)
(もう疲れたから今は放っておくけど、次に会ったら殺っちゃおう)
互いに心の中で殆ど同じような思考をしながら、ウォラゴと黒牙は離れた。
ウォラゴはしばらく歩いてC-3エリアの武器屋に到着する。
休んでいくついでに武器を入手しようと考えウォラゴは扉を開け入店した。
様々な武器が陳列された店内、だが物色した跡も有り先客が居た事を物語る。しかしそれは然程気にする事でも無い。
「んじゃ、こいつ貰っちゃおうかねぇ」
ウォラゴはリボルバー拳銃とその予備弾薬を幾つか手に入れ、カウンターの椅子に座り一息ついた。
黒牙は展望台を訪れる。
見た目で廃墟だと分かるこの高層建築物にやって来たのは何となく目を引いた為であるが、近付くと異臭を嗅ぎ取った。
その異臭を辿り展望台の外周部を周り裏手に行くと、臭いの元を見付ける。
「うっ、これは」
それは脳漿を撒き散らした人間の少女の死体。
全裸で、性的暴行の痕跡も見られた。
展望台から墜落死したと思われるが、自殺なのか他殺なのか。
(犯されて殺されたのか、ショックで自殺したのか分からないけど、可哀想に……)
何れにせよ、この少女の最期が悲惨であっただろう事は疑いようは無く、黒牙は憐れんで黙祷を捧げた。
螺旋階段を上り、展望室へと上がったが、少女の物らしい引き裂かれた衣類と基本支給品しか入っていないデイパックの他は、
特に何も見当たらなかった。強いて言うなら青い海を眺める事が出来る位である。
「休むか……弓那、どこに居るんだろ。無事だと良いけど」
どこに居るのか分からないパートナーの少女を心配しつつ、黒牙は古びたベンチに座って休息する。
【昼前/C-3武器屋】
【ウォラゴ】
状態:疲労(大)
所持品:基本支給品一式、ハンティングナイフ、消毒用エタノール(500ml)、リボルバーと弾薬(現時点ではモデル不明)
現状:優勝狙い。取り敢えず休む。
備考:黒牙を警戒している。
【昼前/B-4展望台】
【黒牙】
状態:疲労(大)
所持品:基本支給品一式、薪割り斧
現状:殺し合いには乗らないが襲い掛かってきた者や危険と判断した者は排除する。
弓那や殺し合いに乗っていない者の捜索。ビデオテープの内容を確認したい。
備考:ウォラゴを警戒している。
最終更新:2016年08月02日 19:49