混迷する世界

十也の目の前に突如現れた謎の人物。それは…
???『ここが始まりの地…』
白い髪の少女だった。十也に声は聞こえるが少女の口は動いていない。少女は口を動かすことなく言葉を発しているのだろうか。
十也「女の子…?うっ!」
十也の頭が痛む。
十也「なんだ…俺はこの子を知っている気がする…」
だがそれ以上は思い出せない。十也の平行世界での記憶が関係しているのだろうか。
???『あなたは…』
十也のほうに目をやる少女。
???『そう…あなたもこちらに来るべき存在ですの。私とともに』
少女は十也に向かって手を伸ばす。
十也「どういう意味だ?何を言っている?」
相手の意図が分からない。
???『あなたも私と同じ存在。虚(うつ)ろざる器(うつわ)。それは生命の源(みなもと)。その器。さぁ、行きましょう』
少女の言っている言葉の意味が理解できない十也。
十也「わけのわからないことを!お前についていく気はない!今はみんなを助けないといけないんだ!」
???『私についてきてはくれないんですの…あなたなら新たな生命になれるかもしれないのに…』
十也「新たな生命?」
???『しょうがありませんの。だったら…』
鎧人形たちが少女の前に集まる。
???『力づくで連れていきますの』
鎧人形たちが十也に襲い掛かる。

ガキン!

ブレオナクで鎧人形の攻撃を防ぐ十也。
十也「この数…俺1人では」

にろく「十也!」
にろく、きゅっぱ、結利が十也のもとに駆け付ける。
十也「にろく!結利!」
きゅっぱ「こっちにもこいつらが沸いていたのか…なんなんだいこいつらは」
にろく「それにあの少女は?」
???『邪魔が入りましたの。またあなたを迎えに来ますの。では』
十也「まて!お前は…お前らはいったい…」
???『私たちはレーヴェンズ。始まりの生命』

ギュゥゥン!!

空間が歪む。その歪みに少女と鎧人形たちは姿を消した。
十也「レーヴェンズ…」
結利「今の女の子は…?」
十也「レーヴェンズと名乗っていたな」
にろく「俺たちが来る前に奴と会話したのか?」
十也「えっ?今あいつが言っていただろ?」
きゅっぱ「あいつは一言も発せず逃げたぞ」
十也「結利も聞いていないのか?」
結利「なにも聞こえなかったよ」
十也「おれにしか奴の声が聞こえていなかったってことか…でもなんで…」
少女との会話を思い出す十也。
十也(そういえばあいつは俺のことを同じ存在と言っていた…虚ろざる器…まったくわからない…でもそれが関係しているのか?)
考え込む十也を見て結利が声をかける。
結利「十也!倒れているナルたちを早く助けないと!」
十也「あ、あぁ!そうだな(今はみんなを助けるのが最優先だ!)」
十也たちは倒れたナル、スライトニーメルトを抱えカリナン公国を目指すのであった。

~アイラッド村~
ダグザ「まったくどうなっていやがるんだ!」
ダグザの目の前に立ちはだかる鎧人形たち。
ダグザ「俺の大釜で造り出した木偶(でく)人形たちがなんで俺たちに歯向かって来やがる!」
ブリギット「ダグザの大釜に何者かが干渉してきたのか?」
ダーナ「いえ違うわね。これは…」
鎧人形たちを見るダーナ。
ダーナ「大釜から造り出された人形を器として何者かが魂を入れ込んだ…というあたりが妥当みたいですね」
ダグザ「俺の人形を媒介に利用したってことか」
ブリギット「これも能力者の力ということですか?」
ダーナ「どうでしょう。これはまた別のものにも感じるけれども。なんにしても今はヌアザとルー。彼らの魂を回収するのが先決」
ダグザ「そうだな。」
ブリギット「では…」
ダーナ「えぇ。この地を離れましょう。目指すべきは…」

~???~
ゲイン「ちっ!なんだったんだあの人形たちは…」
フリアーデス「ヘレティス2は始末し損ねたようね」
ゲイン「ふん。思わぬ邪魔が入ってな」
フリアーデス「そう。だったら今度は…」
???「俺もでよう」
ゲインとフリアーデスの話に1人の男が割って入る。
ゲイン「ケビン…」
それはケビン・ロダスだった。
ケビン「俺のクローンたちではあいつらには通用しなかった。こちら側の戦力をなめていたかもしれんな」
フリアーデス「あなたもミストラルシティへの潜入任務では手痛い目にあったんではなくて?」
ケビン「そうだな。能力者の力があれほどとは思わなかったからな。あのにろくとかいうやつらにはしてやられたよ」
ゲイン「だがお前の武器の修復も完了したのだろう?」
ケビン「あぁ。もう問題ない」
ゲイン「ならばいくぞ!今度こそヘレティス2を始末する!」

~カリナン公国~
にろく「全員命に別状はなさそうだ」
ベッドに横たわるスライ、トニー、ナル、メルトの4人。
結利「よかった~」
安堵する一同。
きゅっぱ「スライとメルトが無事だったのはよかったが…」
にろく「あの鎧人形と白髪の少女…十也の話ではレーヴェンズといったか」
十也「あぁ。そう名乗っていた。」
にろく「カリナン公国を襲撃してきたトゥアハ・デ・ダナンとは別の組織のようだな」
きゅっぱ「ケビン・ロダスがいたアサルト・シャドーってやつらともね」
今までに自身らが得た情報をお互いに交換し合った十也たちとにろくたち。死んだはずのケビン・ロダスから始まった今回の事件。その情報を整理する一同。
にろく「始まりはミストラルシティだった。俺の経営する喫茶店に現れたケビン・ロダス。それは死んだはずのEGO隊員だった。」
きゅっぱ「そいつを取り逃してしまったあたしたちは手掛かりを求め、このグリフ大陸にやってきたんだったね」
にろく「そうだ。そして判明したのはケビンをネオの手筈により以前のグリフ大陸支部前長官であるネルティアのもとに送り込み、アイラッド村の調査を行っていたということ」
きゅっぱ「あたしたちはアイラッド村の調査を行った。その帰りにあいつら…トゥアハ・デ・ダナンの襲撃を受けたんだったね」
にろく「そうだ。そしてそいつらはここカリナン公国へも現れた。撃退には成功したがスライとメルトが奴らにさらわれてしまったんだ」
きゅっぱ「2人を助けるため、あたしたちはアイラッド村へと向かったというわけだ。これがあたしたちの身に起きたすべてさ」
十也「そうだったのか。俺たちの始まりはEGO本部からミストラルシティ支部に戻る時だ」
EGO本部でクリュセルスでの戦いについて事情聴取を受けた十也。
結利「その帰り道にケビン・ロダスと名乗る奴が私たちに攻撃を仕掛けてきたんだよ」
十也「そいつは自爆して最期を迎えた…はずなんだが」
結利「うん。私たちの前で自爆した後、グリフ大陸支部にも現れているみたいなんだよね」
にろく「ケビン・ロダスはなんらかの能力者なのかもしれないな」
十也「あぁ。自爆して死んだはずのケビンが生きているのはおかしい。能力者の可能性は高いな。」
結利「そうだね。でもあたしたちの前に現れた敵はケビンだけじゃあなかったんだよね」
十也「あぁ、ゲイン・ブレイズ。あいつがミストラルシティへと戻ろうとする俺たちの前に立ちはだかった」
ミストラルシティとEGO本部のある大陸をつなぐ橋で十也とゲインは激闘を繰り広げた。
十也「あいつらは撤退して俺はミストラルシティへと帰ったんだが…そこでにろくたちが死んだはずのケビン・ロダスを追い、グリフ大陸へと向かったことを知ったんだ」
にろく「そうして今があるということか…」
きゅっぱ「ネオの部下であったケビン・ロダスが所属しているアサルト・シャドー。それとトゥアハ・デ・ダナンと名乗る連中。そして今回現れた鎧人形たちを率いる少女…十也の話ではレーヴェンズといったか…。」
結利「少なくともその3つの組織が絡んでいるみたいだね」
にろく「そうだな。だがわからないことが多すぎるのが今の現状だ」
十也「わからないこと?」
にろく「あぁ。まずはアサルト・シャドー。奴らについてだ。十也のもとに現れたやつらはEGO特殊部隊と名乗っていた。俺の知る限りEGOにそのような特殊部隊は存在しない」
きゅっぱ「そうだね。あたしも聞いたことがないよ」
にろく「そして奴らの使用していた武器だ。」
アサルト・シャドーはアージ・アレジェーネが使用していたD・Eブレードのようなエネルギーの剣とエネルギーの盾を使用していた。
結利「あの武器はなんなの?」
にろく「わからない。あんな武器は見たことがない」
きゅっぱ「現代の技術を超える武器を使用するEGOを名乗る部隊…それがあいつらアサルト・シャドーってことかい」
十也「奴らの正体を暴くカギはケビン・ロダスか…」
エネルギーの剣を使っていたアレジェーネたちとケビンはともにネオとつながりを持っていた。
にろく「ネオに関係する奴ら…あいつ…ケビンを捕まえればアサルト・シャドーの正体がわかるかもしれないな」
死んでもそのたびに再び現れるケビン・ロダス。ネオとつながっていたと思われる彼がアサルト・シャドーの正体を掴むカギになるのだろうか。
十也(ゲイン…奴は俺のことをヘレティス2と呼んでいた。それを知っているということはやはりネオに関係のある可能性が高いな)
にろく「アイラッド村近くの山中で現れたトゥアハ・デ・ダナン…奴らも正体がつかめないな」
アイラッド村を調査しに行ったにろくたちがその帰り道で襲われた連中。トゥアハ・デ・ダナンはカリナン公国にも進撃してきた。
きゅっぱ「あいつらはいったいなんのためにここを襲撃してきたんだろうね」
にろく「さあな。まったくわからない」
十也「あいつらの狙い…それは」

ブォン!

ブレオナクを取り出す十也。
結利「十也の槍?」
十也「このブレオナクはラウズレイ王国で譲り受けたものなんだがルーとかいうやつはこの槍を奪おうとしてきた。」
にろく「それはつまり…」
十也「奴ら全体の狙いはわからないが少なくともルーというやつはブレオナクを狙っていた」
きゅっぱ「槍をねぇ…その槍はなんか不思議な力でもあるのかい?」
十也「不思議な力?う~ん…」
ブレオナクは十也の力の影響か様々な形に姿を変えるがその他に思い当たる節はない。
十也「ブレオナクにこれといって不思議な点は…」
ブレオナク『普通槍が喋ったらおかしいと思うだろう!』
きゅっぱ「なっ!?」
にろく「槍が喋った!?」
結利「嘘!?」
驚く一同。
ブレオナク『これが正しい反応だ』
十也「そういえば普通の槍は喋らないもんな。ずっとお前といるからすっかり忘れていたよ」
きゅっぱ「飛んだボケをかましてくれるな」
にろく「だがブレオナク自体が言葉を話すなら、話は早い。ブレオナク」
ブレオナクへと問いかけるにろく。
ブレオナク『頭の切り替えが早い奴だ。槍が話すことにこうも早く順応するとは。私の主(あるじ)とは大違いだな』
十也「それってどういう意味だ?」
ブレオナク『お前とは違い状況を瞬時に理解し、それに適応するということだ』
十也「なっ!?おれだってお前が喋ってもすぐに仲良くなっただろ!」
ブレオナク『それはおまえがそういうことについて深く考えず、まぁいいかと思うからだ。』
十也「なにをぅ!」
いがみ合う十也とブレオナク。
ブレオナク『とはいえお前には感謝している。ルーに私を奪わせず、守り切ってくれたからな。』
十也「そ、そうか!こっちこそ、いつも助かっているぜ!」
にろく(さすが十也と常にいっしょにいるだけのことはある。十也の扱いを熟知しているのか)
にろく「さて本題だブレオナク。あいつらはいったい何者なんだ?」
ブレオナク『奴らはトゥアハ・デ・ダナン…というのはお前たちも知っているな』
きゅっぱ「あいつらが名乗っていたからな」
ブレオナク『トゥアハ・デ・ダナン。それは今の時代から数百年前に地球に存在していた民族だ』
結利「数百年!?じゃああいつらはそんな昔から生きていたの?」
ブレオナク『いやそうじゃあない。あいつらはこの時代に復活したんだ』
きゅっぱ「復活?」
ブレオナク『おそらくアイラッド村はトゥアハ・デ・ダナンの血を引く者たちの住んでいた村なのだろう。その村民たちが奴らを復活させたと思われる』
十也「でもなんで数百年も前の時代に生きていた奴らが今になって出てきたんだ?何のために?」
ブレオナク『それはやつらの目的…それが関係している』
にろく「その目的とはなんだ?」
ブレオナク『世界を支配すること』
ブレオナクから語られたトゥアハ・デ・ダナンの目的。それはあまりに突拍子もないことだった。
きゅっぱ「世界の支配?そんなことをできると思っているのか?あんな少人数で」
ブレオナク『ふつうは無理だと思うな。だが奴らにはそれを達成できるほどの力があった』
にろく「強力な能力者の集まりということか?」
ブレオナク『いや。奴らのいた時代に能力者は存在しなかった』
十也「能力者のいない時代…それってシャカイナによって能力者が造られるよりも前ってことか」
ブレオナク『シャカイナか…あれが現れる少し前までトゥアハ・デ・ダナンは存在していた』
にろく「…その点についても聞きたいところだがまずは奴らについてだな」
ブレオナク『あぁ。トゥアハ・デ・ダナンは強力な至宝を持っていたんだ。』
きゅっぱ「至宝?」
ブレオナク『四至宝(ししほう)。奴らの持つ4つの武器。その力によりトゥアハ・デ・ダナンは世界を支配する寸前までいった』
十也「もしかしてルーがお前を奪おうとしていたのって…」
ブレオナク『そうだ。俺も四至宝の一つだからだ。奴らに四至宝が揃えばそれを止める術は今の時代にはないかもしれない…』
きゅっぱ「それだけの力を持つって事かい…」
結利「何としてもそれを阻止しなきゃね!」
十也「そうだな!」
にろく「だが気になる点がある」
ブレオナク『なんだ?』
にろく「シャカイナが現れる少し前までは存在していた。そしてそれだけの力を持ちながら世界の支配を成しえなかった。ということは奴らを止めたものがあったのだろう?」
今の時代には止める術がないという発言からも過去にはそれがあったということを示している。
ブレオナク『あぁ。メサイア…彼がトゥアハ・デ・ダナンを止めたんだ』
十也「その名前どこかで…」
にろく「アポロン…たしかあいつの祖先。それがメサイアだったはず」
きゅっぱ「たった1人でトゥアハ・デ・ダナンを止めたっていうのかい?」
ブレオナク『いや。トゥアハ・デ・ダナンを止めたのはメサイア1人ではない。彼とその仲間たちだ』
にろく「メサイアの仲間だと?初耳だな」
ブレオナク『ちなみに私はメサイアの仲間の1人であるダリウス・ラウズレイによってルーから奪われたのだ』
結利「ラウズレイ?それって…」
十也「ディサイブたちの…」
ブレオナク『そうだ。ラウズレイ王国。あれはダリウスが築いたものだ』
十也「だからお前はラウズレイ王国の宝物庫にいたのか!」
ブレオナク『あぁ。話を戻すぞ。メサイアたちはトゥアハ・デ・ダナンを大陸の北方の海近くの山頂へと追い込めた。私を奪われ敗北を覚悟したトゥアハ・デ・ダナンはその身を海へと投げ入れた。それで奴らは死んだと思っていたが…』
にろく「その残党が生きていたというわけか」
きゅっぱ「そして肉体の枷を外れた存在としてトゥアハ・デ・ダナンが今復活したってことだな」
ブレオナク『そういうことだ』
にろく「お前はダリウス・ラウズレイとともにいたからその後のシャカイナの件についても知っていたというわけか」
ブレオナク『あぁ。だがそれ以降についてはあまり記憶がないがな。シャカイナとの戦いの後、私はラウズレイ王国の宝物庫へと入れられてしまったからな』
きゅっぱ「これだけ情報を得られれば十分だ。あいつらの正体もわかったしな」
にろく「しいて言えばあいつらの使う術などについて聞きたいところだな」
ブレオナク『すまない…そこまで私の記憶では思い返すことができない』
結利「しょうがないよ!数百年前のことだし!」
十也「能力は持たないが魔導のような術を使う可能性は高い。次に奴らと戦うときそこらへんは気を付けないとな」
にろく「スライとメルトに取りついたことからも気を付けないとな。今回はナルの魔導でなんとかなったみたいだが…」
きゅっぱ「いまのナルの様態からしてそうやすやすとあいつらを肉体から引き離せるわけでもなさそうだからね」
ブレオナク『私もできる限りの協力はさせてもらう』
十也「頼んだぜブレオナク!」
にろく「奴らの狙いがブレオナクと分かった以上俺たちは全力でブレオナクを守るだけだ」
きゅっぱ「トゥアハ・デ・ダナンの正体はわかった。あとは…」
十也「あの鎧人形たちか」
きゅっぱ「アサルト・シャドーとトゥアハ・デ・ダナン両方に敵対しているようだが…」
にろく「鎧人形たちのリーダーと思われる少女、あの少女の声…十也にだけは聞こえていたらしい」
十也「あぁ。レーヴェンズと名乗っていた」
にろく「レーヴェンズ…生命か。あいつらに至ってはその正体も目的も待ったく読めない。いつ現れるのかもわからない以上静観するしかないかもな」
結利「目下の敵はアサルト・シャドーとトゥアハ・デ・ダナンだね」
にろく「そうだな。だがこちらも戦力的に疲弊している」
きゅっぱ「じゃあどうするんだい?」
にろく「ナル、メルト、スライ、トニーの四人はここカリナン公国でロンとルージュに任せて俺たちはいったんミストラルシティに戻るべきだ」
結利「そこで戦力を整えるんだね」
にろく「そうだ」
十也「そうと決まればいこうぜ!」

こうして十也、結利、にろく、きゅっぱの四人はミストラルシティへと戻るのであった。
アサルト・シャドーにトゥアハ・デ・ダナン。
そしてレーヴェンズ。

多くの敵を相手に十也たちはどう戦っていくのだろうか。

to be continued

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最終更新:2017年09月12日 21:52