探索(たんさく)

~ミストラルシティ・治安維持委員(セキュリティ)第4支部~
ミストラルシティのビル街にある建物。その2階の一部屋を拠点とする治安維持委員第4支部。治安維持委員の運営資金はミストラルシティ内の学校およびEGOからの支援金により成り立っている。
この部屋もその支援金により家賃が払われ、運営されている。

カタカタカタ!

パソコンを弾く少女。今月の第4支部の経費状況を入力しているようだ。

コトッ!

少女のデスクに置かれるコーヒー。
十一(ともろ)「美天(みそら)はブラックでよかった?」
経費状況を入力している少女へと声をかける十一。
美天(みそら)「はい。ありがとうございます千百(ちはく)さん」
にへらっと笑いながら十一に笑いかける彼女は美天有然(みそらありさ)。継応(つぎおう)高校1年。第4支部の情報統括をほぼ一人で行っている少女。
治安維持委員の中でパソコンの操作で彼女の右に出るものはいないと思われるほどのパソコン操作の実力を持っている。
美天「はぁ~」
コーヒーを飲みながら一息つく美天。
美天「そういえば千百さん。EGOからの情報協力要請が来てましたよ」
十一「なにかあったの?」
美天「ミストラルシティ内の無人ロボットの挙動不良を確認した場合速やかにEGOへ報告してくれと」
十一「無人ロボットの挙動不良…?そういえばこの間先輩が商店街の警備ロボが暴走したっていってたわ。このEGOからの協力要請となにか関係が…あっ!」
無人ロボットの暴走と言えば最近起きた大きな事件を思い出す十一。それを見越したように美天が口を出す。
美天「ミストラル号の暴走事件。あれが関係あるんじゃないかと連想させられますよね」
十一「えぇ。最新鋭の移動車両ミストラル号の暴走事件。ミストラル号に搭載されていた無人の駆動鎧が誤作動を起こしたせいで起きた事件。それと今回の協力要請は関係しているのかも」
美天「それが…なにやらあの事件。原因は駆動鎧の誤作動ではないみたいなんです」
十一「誤作動じゃない?」
美天「はい。私が入手した情報では駆動鎧に何らかのウイルスが仕掛けられていたと」
美天はパソコン操作の技術を生かし、普通では入手できないルートの裏情報をどこからかたびたび入手してくる。その出どころは教えてはもらえない。だがその情報は毎回確かな結果を物語っている。
そのことを知っている十一は美天の情報源について言及することもない。そしてその情報の真偽も詮索する必要がないと思っている。それだけ美天のことを信頼しているのだ。
十一「ウイルス…ということは何者かによる作為的な事件だった可能性があるということね」
その犯人を捜すためにEGOは怪しい無人ロボットの挙動不良の情報を集めているのかもしれない。
美天「はい。もし本当に何者かがあのミストラル号の事件を起こしたならば…」
十一「あれは発端にすぎない…まだ事件は終わっていない」
美天「そうです」

カチッ!

パソコンのモニターに表示されるミストラルシティの地図。その地図の各所に赤い点が打たれている。
美天「ミストラル号の事件後にミストラルシティ内で無人ロボットの挙動不良が確認された地点です」
十一「こんなに…」
美天「挙動不良の内容は故障や誤作動などの物も含まれていますが、そのなかに人に対して襲い掛かってきたというものが複数ありました。それをピックアップすると…」

タン!

パソコンのキーボードを叩く美天。すると地図の赤い点の数ヵ所が青く表示される。
美天「この青い箇所が人に襲い掛かってきた無人ロボットが報告された地点です」
十一「第4区域に集中している…」
ミストラルシティはその都市の区域が大きく6つに分けられている。十一と美天の所属する治安維持委員第4支部が警備担当している第4区域。そこに集中している暴走ロボットの報告。
美天「この暴走がウイルスによるものと仮定すると導き出される答えは」
十一「第4区域にウイルスをばら撒いている犯人がいる可能性が高い」
美天「そして今もその犯人はウイルスを使って無人ロボットを暴走させている」
十一「その仮説をまとめてEGOにも伝えたほうがいいわね」
美天「はい。今送ります。あとは…」
十一「えぇ。私たちは私たちでできることをやりましょう。第4区域で無人ロボットの暴走があったところを当たってみましょう」

~ミストラルシティ某所~

カタカタカタ!!

暗い部屋の中でパソコンを操作する男。

「調子はどうかな?」

男の前に現れる少年。
???「お前か。おかげさまであれはだいぶ完成してきているよ。ミストラル号の駆動鎧に使った際もうまくいった」
少年「僕があげたデータが約に立っているみたいだね」
???「あぁ。しかしあんなデータいったいどこで手に入れたんだ?」
男が少年から渡されたデータ。それには今まで見たこともないプログラムデータが入っていた。そんなものをこの少年がどこで手に入れたのか疑問だ。
少年「君の知らない未来」
???「ん?」
少年「…なんてね」
冗談にしては真に入っていたがと思う男。
???「それでお前は僕にデータを与えて、あれを造らせて何をしようとしてるのかな?」
少年「なにも…あれが完成したら君の好きに使ってくれて構わないよ。ぼくはあれがどう挙動するのかをみたいだけだから」
???「欲がないのか?あれがあれば人を支配し、その上に立つことだってできる。僕のような無能力者にも」
少年「欲ね…そんなものはないよ(僕にあるのは使命だけ…抑制の名を持つ僕に他はない)」
???「じゃああれが完成したら僕の好きに使わせてもらうよリミット」
抑制のリミット「あぁ。構わない」
そういうとリミットは姿を消した。
???(リミットの意思は読めないが…好きにしていいというのなら好きにさせてもらう。あれの完成を急ぐか…そのためにもまだ検証が必要だ。次はどこで試すか…)

ピピピ!

男のパソコンに表示されるメール。それは何者かがEGOに向けて送ったメール。男はEGOにハッキングし、そこに送られるメールの中の特定の言葉を含むメールをEGOに送られる前に自身のパソコンに送信するように改ざんしていた。
???「これは…」
そのメールの内容は…

『治安維持委員第4支部より。挙動不良の無人ロボットについて。第4支部で調査した結果、無人ロボットの暴走は第4区域に集中していると思われます。
そのことから第4区域になんらかの原因となる要因があるのではないかと思われます。第4支部はその要因の調査を行っていく予定です。進捗があれば追加の報告を行います。よろしくお願いします。治安維持委員第4支部所属美天有然(みそらありさ)』

???「治安維持委員(セキュリティ)…学生が嗅ぎ付けるとは」

カタカタカタ!

パソコンを操作する男。
???「メールは消去する。EGOには気取らせない。さて、治安維持委員第4支部…僕の障害になる前に排除しないとな。この美天有然というやつ…ちょうどいい。次の検証の場は決まりだ」

カタカタカタ!

男がパソコンを操作するとパソコンの画面にミストラルシティ内の監視カメラの映像がリアルタイムで映し出される。その中の映像の一つが目に留まる。
???「商店街…聞き込みをしている学生が二人」
その学生二人をアップにする男。学生の顔をスキャニングするパソコン。

ピコン!

パソコンに表示される二人の学生情報。
???「裳丹(もにわ)高校1年千百 十一(ちはく ともろ)。継応(つぎおう)高校1年美天有然(みそらありさ)。どちらも治安維持委員(セキュリティ)第4支部所属。見つけたぞ」
男はパソコンを操作する。
???「近くの無人ロボットは…これか。僕を嗅ぎまわったことへの警告だ。この件から手を引かないとどうなるか身をもって知れ!」
キーボードを叩く男。

タン!

~ミストラルシティ商店街~
商店街で聞き込みをする十一と美天。だが暴走ロボットをみたという人々はいるが、なんらかの予兆などを感じたような人物は一人もいなかった。聞き込みのかいなく、暴走ロボットの原因は全くつかめなかった。二人は商店街を出て、治安維持委員第4支部へとその歩みを進めようとしていた。

ゴゴゴゴ!!

十一「何の音?」
大きな音が二人の元に近づいてくる。
美天「なにか…近づいてくる?」

わぁー!きゃー!

商店街の中から聞こえる悲鳴。
十一「なに!?」

ゴゴゴ!!!

先ほどよりも近づいてくる音。その音の正体が二人の眼前に聳え立つ。
美天「わっ!」

ドッ!

目の前に現れた巨体に尻餅をつく美天。
十一「これは…清掃用ロボット」
巨大な清掃用ロボット。商店街を一体ですべて清掃しこなす巨大なロボット。それがなぜか二人の前に立ちはだかる。
美天「な、なんで清掃ロボが!」
慌てふためく美天。
十一「しっかりしなさい美天!無人ロボットの暴走…このタイミングで」

ガキン!

清掃ロボの体から巨大なモップが何本も展開される。

ブン!

モップを棒のように二人に振り下ろす清掃ロボ。
十一「くっ!」
美天「あわわ…!」
なんとかモップを避ける二人。モップといえど商店街の通路を一回で掃除するほどの巨大なモップ。当たれば一溜まりもない。
美天「ど、どうしましょう千百(ちはく)さん!」
十一「やるしかないでしょ!」

バッ!

スカートをめくりその中の短パンに装着したホルダーに手を入れる十一。ホルダーの中から取り出す単語帳のようなもの。
十一「治安維持委員(セキュリティ)第4支部所属千百十一(ちはくともろ)。暴走した清掃用ロボットを制圧します!」

パラララ!!

単語帳のようなものをめくる十一。

ビッ!

その1ページを口で加え、引きちぎる十一。
十一「『即席魔導(インスタントマジック)』!」

ボッ!

口に加えた紙が燃えると同時に火の玉が清掃ロボに向けて放たれる。

ガキン!

清掃ロボの体から噴射孔が展開する。

バシャァァ!!

噴射孔から放たれる大量の水。それは十一の放った火の玉を容易く打ち消してしまう。そのままふたりへと放たれる大量の水。
十一「なっ!」
美天「うぶっ!」
全身水浸しになる二人。
美天「私の携帯パソコンが…」
十一「魔導帳(まどうちょう)が…」
美天の持つ携帯パソコン、十一のもつ単語帳のようなものが水浸しになる。

ウィィン!!

巨大なモップを掲げる清掃ロボ。
美天「ま、また来ますよ千百さん!」
十一「これで私の『即席魔導(インスタントマジック)』をつぶした気なら甘いですよ」

ピッ!
ずぶぬれになった魔導帳(まどうちょう)の一ページを切り取る十一。すると…

パサッ!

魔導帳と十一、美天の体が一瞬にして乾く。
美天「携帯パソコンも動きます!」
十一「私の魔導帳が水に弱いのはわかっています。その対策をしないはずがないでしょう」

パラララ!!

魔導帳を指で弾きめくる十一。
十一「水を放ってくるなら、これで!」

ビッ!

魔導帳の1ページを口で破る十一。

ビシビシ!

破られたページが電気を放つように消滅する。
十一「はぁ!」
口を大きく開く十一。

ボッ!

その口から雷が清掃ロボに放たれる。

バシュ!

清掃ロボは噴射孔から水を放つ。

バリバリバリ!

雷が清掃ロボが放った水を伝い、清掃ロボへと伝わる。

ババババ!!

清掃ロボが感電し、煙を上げる。
美天「千百さん!この清掃ロボの制御コンソールは頭部です!」
携帯パソコンで清掃ロボの情報を調べた美天。
十一「わかった!ならこれで!」

ビッ!

魔導帳の1ページを破る十一。破られたページが燃え尽きると同時に…

ボゴン!

清掃ロボの頭部が大きくへこむ。
十一「空気を圧縮したハンマー。くらいなさい!」

ギギギギ…

煙を上げ頭部が潰された清掃ロボ。その巨体が地面へと倒れこむ。

ドゴン!

十一「これで一件落着ですか」
美天「さすが千百さん!やりましたね」
十一「美天!事後処理が残っているわ。至急第4支部へ応援を」
美天「はい!」
商店街の清掃ロボの暴走は十一と美天により制圧された。しかしこれは始まりに過ぎない。
治安維持委員(セキュリティ)第4支部へと狙いを定めた謎の男。男の目的は一体…

~ミストラルシティ某所~

ダン!

机を手で打つ男。
???「くそっ!学生ごときに迎撃されるなんて!やはり能力者か…」

ワシャワシャ!

自身の髪を掻き毟る男。
???「これで第4支部からEGOへ直接連絡がいくだろう…EGOに気取られるか…もうなりふりを構っている余裕はないな。急いでアレを完成させなければ…」

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最終更新:2020年08月27日 21:04