~時は少しさかのぼり、静寂機関ビル地下警備室~
ドッ!
警備員「がはっ…」
ドサッ!
首元に手刀を放たれ気絶する警備員。その背後には黒いローブを着た少女が立っていた。
きゅっぱ(あいつのおかげでここまで侵入はできた。ここからは本来の任務に戻るとするよ。あたしはこの街の暗部を探りに来た。ここ…静寂機関にそれにつながるなにかがあるというのなら調べつくさせてもらう)
警備室のモニターを確認するきゅっぱ。その違和感にすぐに気づく。
きゅっぱ(モニターの映像は改ざんされているな、ハッキングか…あたしとあいつ以外にも侵入者がいる。例の
治安維持委員(セキュリティ)ってやつかい)
映像を改ざんし、侵入を悟らせないようにしているのだろう。
きゅっぱ「んっ?」
3階の映像が映し出されている。学生のような女性3人とスーツの男が対峙しているようだ。
きゅっぱ(映像に映し出されているということは…ハッキングしている奴とは別ということ。この学生ぐらいの奴らは…構成員か?相手のスーツの奴は何者だ?)
きゅっぱが知っている情報では治安維持委員と構成員および静寂機関の戦いが今起きているはず。となればスーツの奴は静寂機関の人間か…だがそうなるとつじつまが合わない。
きゅっぱ「監視カメラの映像を改ざんする必要があるのは治安維持委員側。このモニターの女たちが治安維持委員ならば写っているのはおかしい…となると彼女らは構成員だろう」
そうなるともう一つの疑問が生じる。
きゅっぱ「あの男…何者だ…」
構成員と対峙しているのなら治安維持委員の人間のはず…。いや違う…となると考えられるのは…
きゅっぱ「構成員と対峙しているのはどういうわけかわからないが…暗部の人間か」
だとすればきゅっぱにとってはまたとないチャンスだ。
きゅっぱ「私の任務はこの街ミストラルシティの暗部を探ること…暗部に繋がるこの機を逃しはしない!」
~静寂機関ビル・3階~
にろく「おまえは俺のターゲットではない。おとなしく見過ごしてくれるなら何もしはしない」
涅尤「そういうわけにもいかない。僕はビル内の侵入者を排除するのが仕事だからな」
にろく「そうか…ならば仕方がない!」
バッ!
涅尤へと走り寄るにろく。
涅尤「接近戦か」
にろく「いや!」
ボッ!
地面へと何かを投げつける
にろく。あたりに白煙が立ち込める。にろくの姿が白煙に包まれ視認できない。
涅尤「どこにいった…」
にろくの気配が感じられない…。白煙が晴れるとにろくの姿はどこにも見当たらない。
涅尤「逃げられたか…いや」
相手の目的は静寂静峰。となれば向かうのは最上階だ。
涅尤「逃がしはしない」
涅尤はにろくを追い上階へと向かおうとするが…
リヴィエラ「くそっ…このままじゃ…すまさねぇぞ」
スカイ「うぅ…」
アンダー「痛い…」
全身にやけどを負い、負傷した3人の少女たちがその目に留まる。
涅尤「このままにはしておけないか…」
№25「そいつらは俺に任せてもらおう」
涅尤「…だれだ」
涅尤の前に現れたのは先ほどのにろくと同じ黒いスーツを着た男№25。
涅尤「さっきの奴の仲間か…」
№25「さっきのやつだと?」
涅尤「お前と同じような恰好をした男だ」
№25「男…?」
自分と同じ格好ならば諜報員だと思ったが、協力関係の№27は女だ。となると他の諜報員がここにいるのだろうか。
№25(そんな話はSから聞いてはいない…こいつの勘違いならば問題はないが…なにやらきな臭くなってきたな)
№25の長年の感からくる一抹の不安。
涅尤「おまえは敵なのか?」
№25「いや、俺は№25。構成員の管理を任されているものだ。上から話は聞いているだろう」
涅尤「そういえばそんな話をしていたな。構成員の他にふたりほど外部の協力者が来ると」
№25「そういうことだ。お前は先に行け。こいつらは大丈夫だ」
涅尤「そうさせてもらう」
涅尤はにろくを追いその場を後にする。
№25「さて…」
ザッ!
リヴィエラたちの前に立つ№25。
リヴィエラ「…おまえがわざわざ現場にくるとは…ね」
弱弱しい声で№25に話しかけるリヴィエラ。
№25「もう戦えるほどの力はなさそうだなリヴィエラ」
リヴィエラ「…まだ私は!」
グッ!
腕をつき立ち上がろうとするリヴィエラ。だが腕に力が入らずたちあがることができない。
リヴィエラ「くそっ…」
№25「他の二人も同じか。残念だが…」
スッ…
スーツの懐から銃を取り出す№25。
№25「上の方針は変わった。使い物にならない構成員は不要だそうだ」
スカイ「なにそれ…私たちはお払い箱ってわけ…」
アンダー「そんな…」
リヴィエラ「くそが…」
№25「苦しまないように一発で終わらせてやる」
ジャキ!
銃をリヴィエラに向ける№25。
№25「じゃあなリヴィエラ」
パン!
~静寂機関ビル・6階~
一凛「だれもいないようね」
十一「このまま上階を目指しましょう」
美天「そうですね」
№27(ニーナ)「治安維持委員がここまで来るとはね」
一凛たちのまえスーツを着た女性が現れる。
一凛「だれ?」
身構える一凛たち。
美天「構成員ですか」
№27「あなたたちをこのまま先に行かせるわけにはいかないの。おとなしく下がるなら…」
十一「治安維持委員として下がるわけにはいきません!」
№27「そう。なら…」
シュン!
№27の姿が消える。
一凛「消えた!?」
十一「どこへ…」
スッ…
美天の首筋に手が添えられる。
美天「えっ…」
№27「まずは一人」
ドサッ!
意識を失い倒れる美天。
一凛「美天さん!」
十一「美天!」
美天に駆け寄る二人。美天は意識は失っているだけのようだ。
№27「あなたたちもすぐに眠らせてあげるわ」
十一「そうはさせません!」
ビッ!
魔導帳のページを引きちぎり地面へと投げる十一。
ボシュゥゥ!!
地面へと放たれた魔導帳のページから舞い上がる白煙が辺りを覆う。
№27「目くらましか」
十一「ここは私が引き受けます!今のうちに先輩は美天を連れて上へ!」
一凛「十一、一人で大丈夫なの?」
十一「任せてください!行ってください先輩!」
一凛「わかった。まかせるよ十一!」
十一「はい!」
気を失った美天を背負い、上階へと向かう一凛。
№27「お仲間は先に行ったようね」
十一「抜かれたというのに随分余裕ですね」
№27「そりゃあね。すぐにあなたを倒して追えば済むことだから」
十一「ずいぶんと舐められたものですね」
№27「舐めてはいないわ。それがあなたの実力を適正に判断した結果よ千百十一(ちはくともろ)さん」
十一「私の名前を知って…」
№27「構成員と接触したあなたは要注意人物に指定されていたからデータは見させてもらったわ。戦闘スタイルは魔導を用いたインファイトを得意とする。多彩な魔導を用い、どんな相手でも対応することができる治安維持委員の中でも指折りの一人」
十一「よくリサーチされていますね。気持ち悪いくらいですが」
№27「戦う相手の情報を知るのは基本さ。そしてその相手の弱点を知るのも」
十一「弱点?」
№27「そう」
フッ…
№27の姿が消える。
十一「また消えた…」
バッ!
突如十一の背後に現れた№27によって十一の手に持っていた魔導帳が奪われる。
十一「魔導帳が!」
№27「これがなければあなたは魔導を使えない。違うかしら?」
十一「くっ…」
№27「いままでの戦闘データからそれは明白。戦うための武器が奪われたあなたは無力」
十一「そんなことはわかっています。対策をしていないとでも」
スッ!
スカートの中から魔導帳を取り出す十一。
№27「一冊だけじゃないのね」
十一「そういうことです!」
ビッ!
魔導帳のページを破る十一。
ボゥ!!
破ったページが燃え、火の玉が№27に放たれる。
№27「そんなもの!」
フッ…
№27の姿が消える。
十一「消えた!奴の能力はいったい…」
№27「気にする必要はないわ。その答えがわかる前に決着はつくのだから」
またしてもいつのまにか十一の後ろにいる№27。その手に握られたナイフが十一に振り下ろされる。
ズッ!
十一の右肩に突き刺さるナイフ。
№27「とっさに躱したか。一撃で仕留めてあげようと思ったんだけどね」
十一「ぐっ…」
右肩を抑える十一。
№27「もうこれ以上は無駄だと思うけど…まだやるの?」
十一「あきらめるわけには…いきません!」
十一の眼の光は消えない。どんなに困難な状況でもあきらめるわけにはいかない。彼女のためにも。
十一「先輩がわたしにここを任せてくれたのだから!」
№27「ったく子供はあきらめが悪くて面倒くさい。本気で終わらせるわ『シャドーオン』」
ズッ…
自身の影のなかに姿を消す№27。
十一「影に消えた!?これがこいつの能力…」
瞬時に姿を消していたのは影へと姿を消していたのだ。
ズズズ…
十一の頭上の天井から姿を現す№27。
№27「おしまいよ」
バラララ!!
無数のナイフを天井から十一に向かって落とす。
十一「上!?くっ!」
魔導帳をめくる十一。
ズズ…
だが今度は地面の影から姿を現した№27に魔導帳を盗られてしまう。
№27「反撃はさせないわ」
十一「そんな…」
№27は再び影のなかに姿を消す。両腕を頭上に向け構え防御する十一。
ザシュ!ザシュ!
天井から降り注ぐナイフが十一の体を容赦なく傷つける。
ボタ…ボタ…
体から流れおちる血。服は裂け、体には多数のナイフが突き刺さり、全身から多量の血が流れている。立っているのも辛いであろう。だが彼女は倒れない。
№27「そんな状態でどうするつもり?」
十一「倒れる…わけには」
№27「立っていたって勝てるわけじゃないのよ。もうあなたに勝機はない…ん?」
敗れた服の中から除く十一の体。そこに感じる違和感。それは…
№27(なにあれ…文字が入っている?刺青?)
十一の体、その上半身には無数の文字が刺青のように入っていた。
№27「学生が刺青なんて…治安維持委員も案外真面目じゃないのね」
十一「仕方がないですね…見られてしまったならもう隠す必要もありませんか」
バッ!
十一は服を脱ぎ、その半身が露わになる。その体には模様と無数の文字が刺青として書き込まれている。
コォォォ!!
十一の体の模様と文字の刺青が青く光る。
№27「なんだそれは…」
十一「とっておきです。人体魔導術式『千百款染(スィンバイクァンラン)』!!」
最終更新:2020年12月20日 23:56