咎の六:極寒の邂逅!迫り来る脅威!

〜ティーダ大陸・内陸寄りのとある拠点〜
雪が降り止むことのないこの大陸において、太陽が空を彩ることは年に数日だ。
植物たちはわずかな日光を糧としてその身を寄せ合って生息している。葉緑体はほとんど抜け落ち、真っ白な葉を風に振るわせている。

凍える大地にも命が芽生える。どうやら季節が移り変わっているようだ。

フォウ「さーて、そろそろ出発しましょうか」
彼女の言葉を受けて、次々に立ち上がる咎人たち。大剣や斧、弓矢はお手製だ。様々な国や地域から集まった咎人が共に知恵を出し合い、限られた資源の中で見繕った武器の類。これを使って食料を調達することが彼らの任務だ。
アルム「今日は西の方を開拓したいと思うんだ」
了の声が続く。近場の雪原にも小型の動物はいるのだが数は多くない。拠点に住まう人員の数を計算すると釣り合う数ではない。長期的な生存計画のために新たな狩場の開拓は必須なのだ。
フォウ「今回は大型の原生生物を見つけたいの。だからね、ちょっとしたアイデアがあるの」
これまで咎人らは隊列を組んで探索を行なってきた。どんな危険性があるかわからないからだ。
そして今、およそこの大地が孕む危険性を把握することができた。経験を積んだ彼らは次のステップに進もうとしている。
アルム「少数のウォーバンド(チーム)を編成するんだよ。それぞれが別の場所を探索すれば原生生物を発見しやすくなるはずだからね」
フォウ「今までと違って危険性は上がる。でも私たちはそれに対処する術を手にしつつあるからね」
咎人らは自身の武器を手に取って咆哮する。うん、士気は高まっているようだ。
アルム「ウォーバンドの編成を発表するね。まずオクター、あなたには・・・」

こうして彼らは雪の大地を相手どり、戦う決心を固めたのであった。


〜ウォーバンド「P」の動向〜
ウォーバンド「P」 こと、にろくたちは拠点から南西の方角に向かうことにした。
このウォーバンドは全員がZENith所属である唯一の部隊だ。当初、アルムとエルプリメとの間で交わされた合意では、ZENithは拠点保守の分担となっていたのだが、にろくの一存で探索任務に従事することとなったのだ。
ポートロ「隊長、大型原生生物は本当に存在するのでしょうか?」
にろく「十中八九間違いない」
ポートロ「その根拠を教えていただきたいのです。そうでないとあまりの寒さに脳みそまで凍ってしまいそうなので!」
リート「安心して、あなたの空っぽの頭の中には凍るほどの脳は蓄えられていないわ」
ポートロ「辛辣すぎる!」
ストラトス「大型生物の存在証明ね。生物学的に検討するなら、生態ピラミッドを考えてみたらどうかな」
動植物の生態系において、植物を小型生物が食べ、小型生物らを中型生物が捕食し、中型生物らを大型生物が平らげるピラミッド型の層が存在している。どんな環境においても自然とこの構造になるのだ。
デヴァイ「まずは生産者。これは群生している植物類が当たるわね」
リート「小型生物は拠点の近くに群れをなしていたわ。そのどれもが草食性だった」
ストラトス「小型を獲っている中型生物としては、肉食の獣や大きめの鳥類がいるね。とはいえ個体の大きさは1〜2m程度だった」
ポートロ「でもさ、さらに大型の生物がいるとは限らないんじゃない?その中型生物とやらがここの頂点なのかもしれないでしょう?」
にろく「その可能性もなくはない。だが、生物群の個体数調査の結果からすると中型生物群以下の数が“少なすぎる”」
ポートロ「それってつまり、誰かに食べられているから数が増えないってことですか?」
にろく「ああ。この氷の大地では無差別に繁殖する術を取らない生物が多いのも確かだろう、だがそれにしても生存適応している動植物が多すぎるのも根拠の一つだな」
ストラトス「なるほど。保護色ですね」
デヴァイ「確かに!ここの生物はみんな氷や雪に近しい体色をしている種が多いものね」
リート「中型生物もそれにもれず白い姿をしているのは、大型生物に捕食されないようにするため、合点がいきますね」

ポートロ「だったらどうして俺たちはこんな赤い武装に身を包んで目立つように行動しているのさ」
その疑問は「今すぐ拠点に戻り白色の鎧に身を包み静かにそっと探索しよう」との意思表示だったのだが。
にろく「大型生物の方から捕食に来てくれたら都合がいいだろう?探す手間が省けるからな」

この発言は流石にポートロ以外の隊員も受け止めきれなかった。私たちは囮なのか?

にろく「ま冗談さ」
いや、きっと本気だろう。

体だけでなく肝が冷えたところで、彼らはとある崩れ落ちた集落にたどり着いたのであった。


〜朽ちた集落「ナンマドール」の入り口で〜
その集落は、かつて人が死活していた痕跡を色濃く残していた。崩れかけた石造りの家々、風雪にさらされて朽ち果てた木製の家具、そして地面にうっすらと残る生活の跡。

ポートロ「ここにかつて人が住んでいたんですね」
誰もが目の前の光景に言葉を失っていた。これまでの探索で見つかったのは数千年以上前の遺物ばかり。自分たちとは関係のない遠い世界だと思っていた。
ここにあるのは現代からそう離れていない時代に、この凍てつく大地で人が生活していたという事実だった。

にろく「おそらくは俺たちと同じようにこの地で生き延びようとした者たちだろう」
にろくは冷静な口調で答えた。彼の視線は、集落全体をゆっくりと捉えていた。

リート「しかしなぜ、彼らはここにいなくなったのでしょうか」
その問いかけににろくは思案する。
にろく「……それはわからない。だが」
わずかに目を細めてから言葉を続ける
にろく「何かがあったのは確かだ。この痕跡は、ただの自然現象では説明がつかない」

今にも倒れそうな建物の壁には、何か鋭利なもので引っ掻いたような痕、丸く抉り取られたような窪みが残っていた。それはまるで、何かに怯え逃げ惑った人々の悲鳴の残響のようにも思えた。

デヴァイ「大型原生生物の襲撃、があったのでしょうか?」
にろく「…可能性はある」
肯定も否定もせず、ただそう答えた。

するとストラトスが足元に落ちている何かを拾い上げた。くぐもった表面の奥に消えない輝きを湛えた鉱石の破片だった。

にろく「これは…」
破片を拾い上げてじっと見つめる。
にろく「輝鉱石の破片、か」

かつてティーダ大陸の西部は、輝鉱石の発掘拠点として長らく開発が進んでいたことを思い出す。大陸の北側にあたるこの一帯も同じような土性なのかもしれない。
しかしこの輝鉱石からは何かを感じる。かつて、モゴラ大陸のある都市で感じた身も震えるような得体の知れない畏怖するマナの気配が。

にろく「この集落、ただの鉱石採掘のための集落ではないのかもしれない」
ポートロ「どういう意味でありますか?」
にろく「いや、まだ判然としないのだが」
口ごもる彼にポートロは続ける。
ポートロ「その輝鉱石から感じられる気味の悪いオーラがあやしいであります!」
にろく「!?」

リート「また始まった。ポートロのオーラ診断」
デヴァイ「隊長気にしないでください。小さい頃からの癖なんです。見える感じるって」
ストラトス「…隊長、いかがしましたか?」
囃し立てる彼らとは違い、にろくは確信に迫っていた。
にろく「ポートロ、お前はマナ知覚の才があるようだな」
ポートロ「おお!理解者がおられた!」
どうやらこれまで誰からも認められなかったのだろう。ポートロは最大の笑顔でにろくの手を握りながら振り回す。喜びが爆発しているのだ。

他の隊員との温度差を感じながら、にろくは再び集落全体を見渡した。
にろく「今夜はここで野営しよう。交代で見張を立てて周囲の警戒を怠らないように」
にろくの指示に従い、隊員たちは野営の準備を始めた。

にろくは一人、懐から緋色の魔導書を取り出してこの大地に手をかざす。
そこには一つ、雪の隙間からプラグが現れていた。


〜ウォーバンド「A」の動向〜
ウォーバンド「A」こと、アルムたちはというと、こちらも朽ちた廃村を見つけ、今宵の借宿を決めていた。石造の教会らしき建物には屋根がかかっていたのは幸いだった。

アルム「よし!やっと火がついた」
焚き火を囲みながら安堵の息を漏らした。暖かな炎が彼らの凍えた体をゆっくりと温めていく。食事の準備を進めながら、フォウは壁面の絵が気になった。様々な色の小さな石で細かく丁寧に描かれている。そこには彼らが見たこともない生物の姿を描いたものもあった。
フォウ「それにしても、この生物はなんなんでしょうね」
アルム「ん〜周りの人の大きさと比べると10mいや20mはあるね。こんなに大きな生き物がいるのかなぁ」
頭に疑問符が浮かぶアルムに「龍王信仰だろう」と教えてくれたのは、咎人のバルタザールだった。
アルム「龍王って?」
バルタザール「この世界で最強の生物、頂点に君臨するもの、それが龍王だ。様々な国や地域で伝承されていてな、あるところでは龍王に祈りを捧げて恩恵を受けようとする信仰があるんだよ」
アルム「へ〜最強の生物かぁ。会ってみたいな〜」
フォウ「なるほどこの絵はドラゴンなのですね。でもねアルム、ドラゴンは“伝説上”の生き物だから実際に会えるかどうかはわからないわ」
アルム「え、存在しないの?存在しないものを信仰しているってこと?」
バルタザール「はっはっは、信仰とはそいういうものさ。目に見えないものであっても信ずれば在るって考えもあるんだ」
アルム「そうなんだ知らなかった。それにしてもバルタザールさん詳しいですね」
バルタザール「ああ外では考古学者として世界を駆け回っていたからな。詳しくもなるさ」
アルムはじっと彼の顔を見つめる。咎人としてこの地に投獄されたのだから、バルタザールも何らかの咎を背負っているはずだ。だが、今この瞬間にはそんな背景を窺い知ることはできない。彼から感じられるのは厳かで優しげな空気だけだった。

その視線に気付いたのか、彼は快く教えてくれた。
バルタザール「俺が犯した咎は「歴史改変罪」だ。その地に伝わる伝承とは異なる過去の遺物や書籍を発見し論文にしたところで捕まってしまったんだよ」
フォウ「え!歴史的発見をしたのなら表彰されることはあっても投獄されるなんて酷いです!」
バルタザール「さっきも話した伝承を重んじる人々にとっては都合が悪い真実もあるんだ。彼らの思いに寄り添わず軽率に発表してしまった俺にも落ち度があるんだが」

その地のルールによっては、有罪にも、無罪にもなることがある。
バルタザールの告白を皮切りに、他の咎人も一人ずつ、自分の過去について語り始めた。
カイン「俺は力試しにバトルグランプリに出場したんだ。でも二回戦敗退。優勝できなかったから刑務所送り。ああ、俺の国では国家的な恥をかいたら終身刑なんだよ。だけど後悔してないぜ。やっぱり世界は広かったんだ」

ここでは誰もお互いに彼らを咎めることはない。だから皆、正直に言葉を紡ぐことができたようだ。そして、それはZENith隊員の彼らも同じだった。

ルカ「俺たちZENithに志願した者たちも同じようなものさ。大義のために殺めた人の数は数え切れないわけだし。だけど俺たちは罪に問われることはない」
ゼニス隊員である看守の一人はこう話してくれた。確かにその行為は国によれば極刑になるものだ。理由があれば許されるということなのだろうか。許される…とはいったい誰に?ここにいる彼らは誰に咎められたのだろうか?

アルムのウォーバンドは他のチームと違って咎人とZENith隊のメンバーが混成されている。咎人と看守、お互いの立場から話を聞くことができた今、アルムの心は少しだけ溶け出した。ついにようやく、誰にも話すことができなかったことを、アルムは自らの過去と向き合う準備が整ったと感じることができた。

アルム「俺は怪異と人間のハーフだ。それが紛れものの俺の咎なんだ」

 ***

ルカ「…ハーフ?」
アルムの告白をウォーバンドの面々は静かに聴いていた。驚きの表情を浮かべるものもいたが、アルムに注がれる視線は受容に満ちていた。

アルム「うん。俺の父親は人間で、母親は怪異。生まれたその瞬間から、俺は人間と怪異、二つの血を受け継いでいたんだ」
アルムは自分の過去について語り始めた。彼が生まれた村は人里離れた山奥にある静かで閉鎖的な場所だったという。古くからの因習が根深く、固く揺るがない村の掟が全てを縛っていた。少しでも“普通じゃない”だけで村八分にされるそんな場所に、人間と怪異の混血、言わば半妖で紛れもののアルムに居場所はなかった。
アルム「生まれてすぐに俺は牢に入れられた。窓もない檻だった。それからずっと、咎人の街にくるまでずっと、俺はその檻の中で生きてきたんだ。永遠の投獄、それが俺に課せられた咎だった」
彼は人間と怪異、どちらの世界にも居場所がなく、孤独な日々を送っていたのだ。
E.G.Oが行った咎人の街計画により、彼は檻から外に出ることが叶った。自由を知ったのだ。
アルム「檻から出てからもずっと考えていたんだ。この世界に生まれたことが罪だとしたら、外に出た俺はどうやってそれを償うんだろうって」

フォウ「…話してくれてありがとう…アルム、ここでは“それ“は罪にはならないわ」
優しさに満ちた目でフォウが言った。
フォウ「ここでは誰もが自由なのよ……人間が作った、くだらない理(コトワリ)に縛られる必要はないわ」
アルムの方に手を置いて、フォウは「もう安心していいのよ」と続ける。

アルム「…そうか。ああ、みんなの話を聞いていて何だか腑に落ちたんた。この世界に生まれた俺が悪いわけじゃないってこと。それに村の人たちも掟に従っていただけで、悪い人ではなかったんだと思う。今ならそう思える、気がする」
アルムは安堵の息を漏らした。

バルタザール「世界は広い。ここではそれが自然の姿なんだ。色々な種族が交わり合い、共に生きている」
世界を見てきた彼の言葉もまたアルムを優しく包み込むような感触をしていた。
アルムは初めて、自分の居場所を見つけたような気がした。


〜朽ちた集落「ナンマドール」の協会跡地〜
一方にろくたちのウォーバンドは、夕食を済ませた後、交代で見張りの番をしていた。
遺跡の夜は、昼間とは異なる顔を見せた。風が止み、静寂が訪れると、遠くから微かな音が聞こえてくるのだ。それは、人の話し声とも、動物の鳴き声ともつかない、不気味な音だった。

リート「何か、聞こえる」
耳を澄ませてじっと注意を払う。他のメンバーも目を覚まし臨戦体制に構えている。
にろく「ああ、警戒しろ」
にろくは、短く指示を出し、緋色の魔導書を構えた。隊員たちも武器を手に取り、周囲を見渡している。

やがて音は次第に大きくなり、近づいてくるのがわかった。そして遺跡の入り口に、異形の影が現れる。それは人間のような姿をしていたが、その顔は歪み、目は異様な光を放っていた。

にろく「この感じ…妖怪異だ!」
ポートロ「あれが変異した咎人ですか!?」
驚きの声が上がる。妖怪異は一人二人ではなかったからだ。
にろく「ああ、ここしばらく行方知らずになっていた咎人だ……戦闘準備」

にろくの指示に応と答え、隊員たちは戦闘態勢に入った。
妖怪異たちは、奇声を上げながら、彼らに襲いかかってきた。

激しい戦闘が始まった。にろくたちは、鍛えられた技と武器で、妖怪異たちに応戦した。しかし、妖怪異たちは数も多く、執拗に襲いかかってきた。「DEAM-ON」を発現した咎人らの力は、常人の数倍に達しており、あつらえた武器では歯が立たないのだ。
だが不思議なことに、妖怪異らから殺意は感じられなかった。その代わりに、この場を去れと言う強い意志がひしひしと感じられたという。

戦闘が長引くにつれ、にろくたちは次第に疲弊していった。緋色の魔導書の力「万人の闘争」の加護によりかろうじて意識を保っている状態だ。
後少しで意識の糸が切れかけたその時、廃墟群の奥から、轟音が響き渡った。

ストラトス「…なんの音だ!?」
轟音と共に、教会の後ろから巨大な影が現れた。それは、彼らがみたこともない、巨大な原生生物だった。目視で30mは超える巨体だ。その体は、夜の闇に溶けこみ、目は赤く光っていた。


原生生物は、咆哮を上げ、妖怪異たちに襲いかかった。妖怪異たちは悲鳴をあげながら逃げ惑っていった。
にろくたちも隙を見計らってその場から離れ、村の外の瓦礫の影へと避難した。

にろく「あれは“魔導生物”だ」
息も絶え絶えになりながら、隊員たちは驚きの声を上げる。
デヴァイ「魔導生物!?」
にろく「ああ、魔導を使う、特殊な生物だ……この地にかつていた魔導の民の置き土産だろう」
ポートロ「もしかして先ほど見つけた、この輝鉱石がヒントだったりしますか?」
ポケットから鉱石を取り出してみる。拾った時よりも少しだけ輝きが増しているのは気のせいだろうか。
にろく「ああそうだ。この地に住まうた民は、輝鉱石と魔導を組み合わせた技術を持っていた。マナを吸収した輝鉱石だな、それがこの一帯に散らばり原生生物にも影響を与えた結果、魔導を扱える生物がここの生態系を構成することになったんだ」

確信めいた言い方が気になったリートは思わず疑念を浮かべる。
リート「まるで見て聞いたような言い方ですね。最初から知っていたのではないですか?」
おっと、また言葉足らずだ、ツバメの言葉を思い出す。
にろく「ああすまない。先刻、こいつに土地の記憶を読み取ってもらったんだ」
にろくの胸ポケットから赤いトカゲが顔を出す。だが寒さに震えてすぐに顔を引っ込めてしまった。
デヴァイ「かわいいです!」
ストラトス「隊長のペットですか?」
にろく「(正確には召喚獣だが)まぁそんなところだ。こいつはアーカル、土地の記憶を読む力を持っているんだ」

リート「それで過去の出来事を把握していたのですね」
デヴァイ「でも、確か魔導とはとても高度で難解な技法と聞きました」
ストラトス「私の理解もそうです。複雑な知識を複雑な術式で組み合わせて、能力でそれを補助しながら扱うものだと。いくら何でも原生生物が扱えるとは思えませんが」
にろく「現代の魔導はそうだな。あまりに高度すぎて常人には扱えない。だがここにあるのは原始の魔導というのか、実に基本的で実直なもののようだ。ある程度の知能があれば使えるのだろう」

かつてこの地にいた魔導の民とは、現代の魔法都市に住まう彼らの先人なのだろうか。少なくともマナを使い、特別な力を扱っていたことは共通と言える。

ポートロ「…何だか隊長って万能すぎて怖い。さっきだってしれっと魔導?の本?を使って俺たちのサポートしてくれてましたよね?ずるいです!俺も魔導使いたいです!ビャーって緑色の閃光を放ちたいのに!」
駄々をこねるポートロの対応には慣れたもので、少し褒めればすぐに落ち着く。だがこの時だけは落ち着いていられなかった。ポートロだけでなく、リートも、デヴァイも、ストラトスも、興奮と驚きを隠すことができない一言。にろくはにべもなく告げる。

にろく「お前らもじきに魔導を使えるようになるはずだ。この土地のものを食べてしまったからな」

 ***

生物濃縮。
それは自然界で起きる圧縮現象だ。生物ピラミッドの底辺にいる植物群が環境の影響を受けて微量の変異を蓄えたなら、植物を喰む昆虫が変異を若干蓄え、昆虫を捕食する中型生物が変異を帯び、中型生物を食らう大型生物は最も多くの変異を抱え込む。
生物ピラミッドの上段に進むにつれて、その変異は濃縮されて毒々しく溜まっていくのだ。
その変異とは、時に毒であり、時にマナである。

この凍てつく大地にはマナを帯びた輝鉱石が散らばった。生物濃縮が進む中、この地に暮らす生物は、この土地のものを口にしたのなら、いずれも例外なく“体内にマナを蓄えて”生きることを強いられたのだ。

彼らは望まずとも魔導の素養を獲得してしまったのだった。

 ***

かくして、この凍てつく大地フローズングレイブに住まうものには魔導の素地が整ったことを咎人たちは知る。
生存競争激しいこの大地で、自由を得た彼らは厳しい自然と相対することは避けられない。
袂をわかち妖怪異となった元・咎人たちの動向も気がかりだ。彼らにはなんらかの意図を感じざるを得ない。

だが、居場所を得たアルムにとってはそれほどの障壁にはならないだろう。
ここで彼は、多くの仲間と共に生活をしていく。
この極寒の氷の大地と空の間で。



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最終更新:2025年02月27日 21:29
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