心を覆う闇!幻影の恐怖!

シャカイナの塔~
窓もない暗闇が部屋一面を覆う。その部屋の中を一つの小さな光が照らす。
スライ「奴の姿が見えないな」
ナル「この暗闇の中のどこかにいるはずだね」
にろく「暗闇に潜む敵か…」
3人は暗闇の中に潜む敵に警戒する。
スライ「十也の話では奴は相手にトラウマをみせるらしいが…」
トラウマ。それはすなわちその人物の過去の思い出したくないような記憶。
にろく「…」
ナル「どうしたの?にろく?」
にろくの表情の変化に気づくナル。
にろく「…いや。なんでもない」
気丈にふるまうにろく。しかしその言葉からナルはにろくが不安になっているのを感じ取る。
ナル(にろく…)
2人の付き合いは長い。公私ともにパートナーとして生活してきた二人だ。互いにそのパートナーの気持ちを汲み取ることは容易なのだ。
ナル(トラウマか…。人間ならば誰しもが持つ心の壁。僕らはそれを乗り越えることができたのだろうか…)

ゾワッッ!!

3人の体を悪寒が包む。
スライ「気を付けろ!何か来る!」
にろく「これは!」
3人の体を闇が包み込む。
ナル「これが…奴の能力か。みんな自分を信じて!僕たちなら乗り越えられるはずだ!必ず!」
あたり一面が闇に包まれる。3人は目がうつろになり、放心状態のようだ。闇の中から彼が姿を現す。
ビシオン「天十也…奴には破られたが、俺の能力『闇怯(あんきょう)』。お前たちに乗り越えることができるかな?」
ビシオンの能力によりトラウマを見せられる3人。彼らはトラウマを無事乗り越えられるのか。

~~~

トニー「ライトニングボルト!」
トニーの雷が目の前の少年を襲う。
少年「うわ~~!!」
雷を受けた少年は膝をつき倒れる。よく見るとトニーも今の姿よりもだいぶ幼く見える。
スライ「これは…俺の記憶…」
幼少期のスライの記憶。それが彼のトラウマなのだろうか。
トニーに駆け寄るスライ。その姿もやはり子供のように見える。
スライ「さすがだな、トニー!」
トニーの頭をなでるスライ。
スライ(これはおれが国にいたころの記憶。これが俺のトラウマなのか…?)
突如スライの周りの景色が変わる。
スライ(これは…)
トニーとスライの姿がさっきよりも成長している。二人は山賊のような男と対峙している。
山賊「げへへへ!お前らを捕えてたっぷり身代金をいただくとするぜ!」
トニー「ど、どうしようスライ…」
スライ(この男…確か俺とトニーが山に遊びに行ったときだ。)
2人は山に遊びに行ったとき、山賊に襲われたことがあった。山賊の狙いは身代金であった。
スライ「俺に任せろ!くらえー!シャイニーマジック!」
スライは光の結晶を作り出す。その結晶を山賊目がけて飛ばす。
山賊「なんだぁ?こんなもの!」
スライ「あっ…」
山賊は手に持った斧で結晶を弾き飛ばす。
山賊「このガキ。能力者か!めんどくせえ!もう片方を残してお前はお陀仏だ!」
山賊は斧をスライ目がけてふりおろす。
スライ「うわぁぁ!!」
トニー「やらせません!ライトニングボルト!」
山賊目がけて雷が降り注ぐ。
山賊「あぎゃぁぁぁ!!」
雷が直撃した山賊は倒れる。トニーの能力により難を逃れた二人。
トニー「大丈夫ですか、スライ?」
スライ「あ、あぁ」
そして再び場面が変わる。そこは…
スライ(ミストラルシティ…!)
ミストラルシティの街中だ。そこには今と大して変わらない姿のスライとトニーがいた。
スライ「シャイニーマジック!」
スライは光の結晶を飛ばす。それはガラの悪い男たちを攻撃する。
スライ「トニー!」
トニー「はい!ライトニングボルト!」
トニーの雷がガラの悪い男たちに直撃する。男たちはその場に倒れた。
スライ(この記憶は俺たちがミストラルシティについたころの…)
スライとトニーは自らたちが住んでいた国を離れ、修行のため各地を放浪していた。そしてたどり着いたのがここ、ミストラルシティである。
スライ(ミストラルシティについた俺たちはたまたまガラの悪い男たちにからまれたんだったな…)
倒れた男たちを背にスライとトニーはその場を離れようとする。しかしガラの悪い男のうちの1人が背を向けているスライにナイフを投げつけた。
トニー「!危ない!」
それに気づいたトニーはその身を呈してスライに向けられたナイフを受け止めた。
スライ「トニー!」
トニー「…なんとか急所は外れているので大丈夫です」
その後トニーは傷が浅かったためすぐに回復することができた。
スライ(俺が!もっとしっかりしていれば…トニーにナイフが刺さることはなかった…)
自らの行いを悔やむスライ。
スライ(そうだ…山賊の時も俺はトニーに助けられた…俺はトニーの兄だ。俺がトニーを守らなければ…いけないのに」
双子のスライとトニー。しかし生まれたのはスライのほうが少し速かった。スライは自分が兄として弟を引っ張っていかなければならない…その意思に捕らわれているのだ。
スライ(どんなことがあろうとトニーを守る…俺は兄なのだから…当たり前だ。そう、そうでないといけないんだ…)
兄で居続けなければならない…それが…彼の…
スライ(俺は…トニーの兄だ…兄で居続けなければ…)


~~~

少年「ガツガツ!!」
少年は人通りのない路地裏でなにかを食べている。
少年「うっ!」
少年はたまらず今食べたものをすべて吐き出す。
少年「これも…食べられない…」
少年が食べていたもの、それは段ボールだった。
少年「なにか…食べるもの…」
しばらく何も食べていない様子の少年。少年の服装はただのひろった布きれを着ているようだ。
にろく(これは…俺の…)
そうこれはにろくの記憶。彼は気が付いたらこの状況にあった。なぜこのような状況になっていたのかも彼自身分からない。
これ以前の記憶が彼にはないのだ。何か食べられるものを探す生活を続けて数日…彼の前に1人の女性が現れる。
女性「君…よかったら私のところにこない?こんなところで一人ではさみしいでしょう?」
女性はこの街で孤児たちを引き取って世話をしているシスターだった。彼女に引き取られ施設で生活を始めるにろく。施設には彼のように親も生まれもわからない子供たちが何人も生活していた。
にろく(そうだ。おれはシスターに拾われ、この孤児院で生活を始めた。だがあの時の俺は世界への不信であふれていた)
なぜこの世界はこんなにも不平等なのだろか。自分のように毎日の食事を探さなければならないものもいれば、食事はでるのが当たり前のように生活しているものもいる。
この孤児院のほかの子供たちはどうだろうか。自分が何者かなんてまるで気にしていない。シスターたちに食事を与えられ、温かい寝床で眠るのが当たり前だと思っている。
こいつらは俺とは違う。世の中が当たり前だと思っている。
にろく(俺はだれにも心を開かなかった…そしてあの事件が起きた…)
ある日、孤児院の子供たちとシスターでピクニックにいった。そこで一人の子供が崖から落ちそうになってしまった。その子供の近くにはにろくを除いてだれもいなかった。
子供「助けて―!!」
にろく「…」
崖から落ちそうになっている少年をジ―と見つめるにろく。彼は考えていた。世界とは理不尽なものだと。この少年はここで死ぬかもしれない。もし助かったとすればそれは運がよかったのだと。
そして…
シスター「危ない!」
少年の手をつかみ引き上げるシスター。少年は運がよかったのだと思うにろく。
シスターがにろくのもとへ歩み寄ってくる。シスターの平手がにろくの頬を叩く。
にろく「ッ!!」
シスター「どうして!もうちょっとでこの子は崖から落ちるところだったのよ!」
なにもせず立ち尽くしていたにろくに対し怒りをあらわにするシスター。
にろく「なんで?その子を助けたら僕が代わりに崖に落ちるかもしれない。それに僕は彼とそんなに仲がよくないよ」
シスター「…」
にろくの答えに唖然とするシスター。
にろく(そして…これがきっかけで俺は…)
翌日、シスターに呼び出されるにろく。
シスター「あなたのことをほしいという方が来てくださったわ。これからはこの方たちの言うことをよく聞いていくのよ」
部屋には黒い服に身を包んだ2人の男が立っていた。
男「これからよろしく頼むよ。さぁいこうか」
1人の男がにろくを連れて施設から出ていく。
シスター「これでよかったのでしょうか…?」
もう1人の男「あなたたちの話を聞いた限り彼は特殊なこどものようです。ご安心ください、我々が責任をもって彼を育てます」
シスター「申し訳ありません。どうにも私たちの手には負えない子でして…。EGOの方々にここまでしていただくなんて」
もう1人の男「いえいえ。EGOでは身寄りのない子供たちに施設の斡旋も行っております。大丈夫ですよ」

にろく(EGOに引き取られた俺はどこか他の施設には預けられることはなかった。俺が引き取らた場所それは…)

EGOの黒服「お前がこれから生きていく場所だ。」
にろく「ここが…新しい家…」
幼きにろくが目にした部屋。そこには数々の機材が並べられていた。
黒服「お前にはこれからEGOの諜報部として訓練を積んでもらう。おまえのようにみよりのいない人間は諜報部に最適だ。もしなにかあっても身元が判明する恐れがないからな」
にろく「…」
にろくは部屋の様々な機材を使わされ、諜報員としての能力を身に着けていった。たった1人で何年もの学習を重ね、様々な場所で若き諜報員として活動していった。
そして彼に与えられた新たな場所での諜報活動それは…
にろく(ミストラルシティでの諜報活動…)
そして今に至るわけである。
にろく(おれにあたえられた名前…26(にろく)。コードネームナンバー26。これが今の俺だ。おれはずっと1人で生きてきた。誰も俺には見向きもしない。俺は…1人だ…)
幼少期の記憶…周りと違う考えをもつ彼はだれともなじむことはできなかった。そしてEGO諜報部としての活動。それも1人でずっとこなしてきた。だから俺は1人で生きていくんだ。
にろく(これまで通り…そしてこれからも…俺は1人だ…)


~~~

ビシオン「さてまずはどいつから始末しようか」
3人の目に立つビシオン。3人は心ここにあらずの状態でその場に突っ立っている。ビシオンはにろくに狙いを定め、手に持った剣を振り上げる。
ビシオン「まずは1人!」
振り下ろされる剣。
ビシオン「なに!?」
ビシオンの体が吹き飛ばされる。何者かがビシオンに攻撃を加えたのだ。
ビシオン「くっ!」
ナル「にろくはやらせないよ!」
ナルだ。
ビシオン「俺の『闇怯』を打ち破ったか…。だが残りの2人はどうかな?トラウマはそう簡単に乗り越えられはしない」
ナル「2人なら必ずお前の能力を打ち破れる!」
ビシオン「ふん。お前の能力でも使うつもりか?」
ナル「いいや。僕の能力『マスタープルーフ』では今の2人の助けにはなれない。でも…
不敵に笑うナル。
ナル「それだけが僕の力じゃあない!彼らの手助けをすることはできる!」

~~~

自分はトニーの兄であり続けなければならないと思うスライ。彼を様々な感情が襲う。

嫌悪感や焦燥感、それに押しつぶされそうになるスライ。
スライ(なんだ…?)
スライの体を光が包み込む。
スライ(暖かい。そうだ…おれは!トニーの兄で居続ければならない…けど!今は!それよりもやるべきことがあった!)

~~~

にろく(俺は1人だ…ずっと…)
にろくの体を光が包み込む。
にろく(これは…?)
この暖かさは…俺は知っている気がする。
にろく(今の俺は1人じゃない!そうだ!俺には仲間がいる!そうだろ、ナル!そして俺たちならできる!)

にろく&スライ「オリジネイターを倒す!!」

~~~

にろく「オリジネイター!」
スライ「お前たちの好きにはさせないぜ!シャイニーマジック!『フォース・キャリア』!」
無数の光の結晶を飛ばすスライ。
ビシオン「クッ!」
ビシオンは間合いを取りその攻撃をかわす。
ビシオン「まさか!お前たち3人とも我が『闇怯』を乗り越えたというのか!?」
ナル「お前たちが思っているよりも僕たちはずっと強いのさ!これが人の力だよ!」
ビシオン「くっ!ならば!」
腕のブレスレットを外すビシオン。
ビシオン「我が真の能力『幻影』の前にちりと消えろ!」
あたり一面を闇で覆い尽くそうとするビシオン。
にろく「まずい!奴の姿が見えなくなる!」
スライ「そうはさせるかよ!シャイニーマジック!『ライトライン』!」
光の線が部屋を駆け巡る。よくみるとその線はビシオンを取り囲むようにひかれている。
ビシオン「なんだ!?」
スライ「続けて!シャイニーマジック!『ロック・ルーム』!」
光の線から壁が出現する。その壁はビシオンを完全に取り囲む。
ナル「すごい!奴の動きを完全に封じた!」
にろく「これなら!」
ビシオン「これほどまでとはな…。」
スライ「おれたちがいる限りこのミストラルシティは好きにはさせないぜ!」
ビシオン「ふっ。おまえたちならば…もしかしたら…」
にろく「なに?」
ビシオン「ぐっ!」
ビシオンの体が黒い霧となっていく。
ナル「なんだ!?」
ビシオン「そうか…もう…」
なにかに気づいたビシオン。
ビシオン「この街を守るというのならばやって見せろ!お前たちにそれができるというのならな!」
消滅するビシオン。
スライ「やった…のか?」
にろく「みたいだな」
ナル「奴の言っていた言葉…」
ビシオンの散り際の言葉が気になるナル。だがその真実を知るためには塔を登らなくては。
ナル「いこう!」
にろく「そうだな」
スライ「あぁ!」

3人は上の階を目指し駆けあがっていった。残るオリジネイターは2人。ミストラルシティを守るため、戦え戦士たちよ!

to be continued

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最終更新:2016年10月28日 22:34