H1のチョーカーが振動する。
H1「ん?きたか!」
にろく「次はお前の番か…」
H1「あぁ。準備が整ったみたいだ」
きゅっぱ「死ぬ準備か?」
H1「いいや」
H1は自分の首に着けられたチョーカーを外す。
きゅっぱ「おい!おまえ何を…」
彼らの予想に反し、H1のチョーカーは爆発しない。
にろく「なんで…」
H1「俺のチョーカーは偽物だ。あいつからのゴーサインを受け取るためのな!」
にろく「ゴーサイン?」
H1「にろく!きゅっぱ!首のチョーカーを外せ!」
にろく「だが…」
H1「急げ!死にたいのか!」
きゅっぱ「どうせ死ぬなら!」
にろく「くっ!」
にろくときゅっぱは首のチョーカーを引きちぎり放り投げる。直後チョーカーは爆発する。
H1「
シュウのやろう、うまくやったみたいだな」
にろく「助かったのか…」
きゅっぱ「でもなんで…」
H1「それはな…おれにも詳しくはわからないんだよな」
にろく「俺たちを助けたお前にもわからないっていうのはどういう意味だ?」
H1「俺はシュウの指示でここに来た。奴からの合図が来たら残っているもののチョーカーを投げ捨てろってな」
にろく「シュウ?誰なんだそいつは?」
H1「俺にも詳しくはわからない。悪い奴ではなさそうなんだが…」
にろく「あいまいな返答だな…だが助けてくれたことは礼を言う」
よくはわからないがこいつのおかげで命が救われたのは事実。安堵するにろく。
きゅっぱ「ちょっとまてよ!今の話からするとそのシュウってやつはこの事態が起きるのを知っていたってことか」
H1「結果からみればそうなるな」
きゅっぱ「未然に防ぐことはできなかったのかよ!」
H1「できるならそうしていたかもな。だが奴はそうしなかった。つまりはそういうことなんじゃないか」
きゅっぱ「…」
そんなことはきゅっぱにもわかっているはずだ。彼女はあたりどころのない怒りをぶつける相手がほしいだけなのだ。
H1(っていっても俺にも奴の心理はわかりかねるがな。できればそうだと思いたいものだが)
にろく「そもそもなんで俺たちはここに集められ始末されることになったんだ」
きゅっぱ「あたしの推測ではたぶんあのNっていう奴の仕業だ」
H1「N…」
きゅっぱ「あたしが以前受けた任務からして各支部の秘密諜報部はそれぞれ独立して活動していたはず」
きゅっぱは所属している支部からミストラルシティの調査を命じられていた。秘密諜報部が1つの大きな組織であればそのような指令はくだらないはずだ。
にろく「ということは各支部ごとにその支部の秘密諜報部をまとめる人物がいるということか」
きゅっぱ「そうね。でも正確にはいたという方が正しいわ」
にろく「いた?」
いるではなくいた。わざわざ過去形にするその意味。それが示すものは…
H1「なんらかの手段によりNは各支部の秘密諜報部を乗っ取ったということか」
それはすなわち各支部の秘密諜報部のリーダーは殺害されている可能性が高いということだ。
きゅっぱ「そうね。だからあたしたちはNの指示によってここに集められたっていうことね」
にろく「そうか。それなら各支部の秘密諜報部の人間が集められたのも納得だ。だが奴は何故…」
H1「お前たちを殺そうとしたのか…か?」
にろく「そうだ」
その点についてはまったく見当がつかないにろく。
きゅっぱ「にろく。あんたはこの街の諜報員だから知らないかもしれない。でもあたしにはわかる」
にろく「それはどういう…」
きゅっぱ「集められたものの共通点。それはあたしと同じ任務をうけてたものたちだよ」
にろく「お前と同じ任務…それって!」
H1「ミストラルシティの暗部か…」
きゅっぱ「そう。それを調べてた者たちがここで一斉に始末されたってことだよ」
にろく「そういうことだったのか…」
そしてこの街の諜報員として活動するにろくすらも始末しようとしていた。
H1「お前らを始末しようとしていたのはNってやつだろ。そしてそいつはこの街を調べられるのをよく思っていなかった…」
きゅっぱ「そこから導き出されるのは…」
にろく「Nはこの街にかかわりのある人物ってことか」
きゅっぱ「そうなるね」
にろくは今まで得た情報から答えを探る。Nとミストラルシティ。それを結ぶ線があるはず。
にろく「
カレン・ネティス…」
最近得た情報では彼女は仮面をつけ未元獣を引き連れていたという。そして彼女はここミストラルシティの副長官だ。
にろく「未元獣を引き連れ各支部を襲撃していたのはこのためだったのか…」
きゅっぱ「たしかにその可能性は高いかもな」
H1「カレン・ネティスがN…未元獣を操る存在か…」
きゅっぱ「その線で考えていた方がいいかもね。さ~て一番の問題はここからなんだけど」
にろく「…」
にろくときゅっぱの2人にとって一番の問題。それはこれからの動向だ。EGOの秘密諜報部にNの手がかかっている以上EGOに戻るわけにはいかない。2人が生きているとわかればその命が狙われるのは明白だ。
にろく(かざぐるまにもいくわけにはいかない。ナルたちの命まで危険にさらされてしまう)
きゅっぱ「どうしたものかね」
H1「行く当てがないなら俺とこないか?」
にろく「お前と?」
H1「そうだ」
きゅっぱ「あんたもどっかの支部の諜報員なんだろ?どこに行くつもり?」
H1「ん?そういえばいってなかったな。俺は秘密諜報部の人間じゃあない」
にろく「なっ!」
H1「なに驚いてんだよにろく?一緒に戦った仲だろ?」
にろく「お前が俺と…?」
H1と共に戦った記憶なんてにろくにはまったくない。
H1「あぁ!そうか!」
なにかを思い出したH1。
H1「この姿は見せたことがなかったな。ならこれでどうだ?」
H1は腕に付けた端末に向かって合言葉を言う。
H1「コード・チェンジ!」
H1の体を炎が包み込む。
きゅっぱ「なんだ!?」
炎の中から現れた姿。黒いスーツを身に着け、顔には龍を模した仮面を被っている。
にろく「おまえは!」
ウルズ「よう!これで思い出したか?」
コード・ウルズだ。彼はシュウの頼みでミストラルシティへと訪れていた。そこで行われるであろう非道の虐殺を防ぐために。結果的にはにろくときゅっぱの2人しか救うことはできなかったわけだが…。
ウルズ「変装していたからわからなかったよな?悪かったな」
にろく「変装…」
きゅっぱ(普通は逆じゃないのか…)
仮面をつけた姿が素の姿なのだろうかと疑問に思ってしまうにろくときゅっぱ。
ウルズ「それでどうする?」
にろく「お前を信じてみることにするよ。どうせ他に行く当てもないからな」
きゅっぱ「そうね。あたしもついていくわ」
ウルズ「オッケーだ!それじゃあ2人とも俺がエスコートさせてもらうぜ」
にろく(待っていてくれナル、
ディック。俺は必ずこの街に戻ってくる。そのためにも…)