1-184 - (2006/12/03 (日) 18:03:44) の1つ前との変更点
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あの無口娘三人組が我が家に昼メシをタカりに来た。
正確に言うと、アキト兄さんの作るラーメンを、だが。
昨日はシンジの勉強を見てやった後に夜遅くまでゲームをして、寝たのが十二時半。翌日ずるずるとベッドから這い出して、時計を見たらもう十時だった。なんとか部屋着に着替えて、半分寝たままコップに麦茶を注ぎ、妹がテレビの児童番組に張り付いてきゃっきゃと喜んでいるのを平和にぼけーっと眺めていたらピンポーンとチャイムが鳴った。シンジはせっかくの休日をネルフとかいう正体不明の謎の組織への出頭で潰しており(どうやら古泉の『機関』と関わりがあるとかないとかいう話だが、もちろんそんなもん俺は知りたくもない)、アキト兄さんはラーメンのスープにかかりっきり、妹はテレビに釘付け。しょうがないので俺が寝惚け眼をこすって、玄関に行きドアを開けてみたら、そこには無口無表情無感動の三拍子揃った三人娘がまるで長槍を構えたギリシャの重装歩兵のようにずらりと横並びに並んでいた。
超絶に嫌な予感がしたが、俺はなんとか口を開いた。
「……よう。こんな朝っぱらからどうした?」
「……」
「……」
「……」
三人は黙ったまま、じっと俺のほうを見つめる。
……正直、ちょっと、いやかなり怖い。
「黙ってたんじゃわからん、なんか言ってくれ」
そしてそのまま三十秒ほどにらみ合いが続き、俺は何だかローマ艦隊に包囲されたシラクサ市の市民のような気分になっていたが、末っ子のルリちゃんが水を向けるように少しばかり顔を長門の方に傾けたので、やっと長門が口を開いた。
「現在、我が家の経済状態は極めて危険な水準にある」
「……」
「このままでは翌々日の給料日までに現金が底を突く。食料面での協力を要請する」
俺は頭が痛くなった。ていうか、給料日って何だ?俺の知る限り長門はバイトなんかしていない筈だし、他の二人は就労年齢に達してすらいないんじゃないのかと突っ込みたくなったが、もちろんそんなヤブをつついてヘビを出すようなマネはしない。俺はこれでもいろいろ学習しているんだ。いろいろとな。
で、なんでうちなんだ?うちだってそんなに家計が余裕ある方じゃないし、メシをタカるならお姉さんズの方が確実なんじゃないのか?ミサトさんはともかく、ミナトさんと朝比奈さんは結構料理上手そうだぞ。
と聞いたら、長女の綾波さんがまっすぐ俺のほうを見つめ、はっきりと言った。
「私、ニンニクラーメンチャーシュー抜き」
……わかった。もういい。どうにでもしてくれ。俺は観念して、三人を家の中に迎え入れた。
「おじゃまします」
「……」
「……」
ちなみに、ちゃんと挨拶をしたのはルリちゃんだけだ。
その後、三人は無感動にずるずるずるとラーメンをすすり無感動にごくごくごくとスープを飲み干し「「「ごちそうさま」」」と完全に同じタイミングで言って丼をテーブルに置いただけで特に感想を言うこともなく来た時の勢いのまま無感動に帰っていったが、それでもアキト兄さんは結構嬉しそうだった。
妹は綾波さんに懐いていたので名残惜しそうだったが、大人しくお姉さんたちを送り出し、そのまま三人の姿が見えなくなるまで手を振って見送っていた。
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