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404 - (2007/05/06 (日) 12:28:42) のソース

<p><dt><a href="menu:404" target="_top" name="404"><font color="#0000ff">404</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 00:42:11 <a href="id:404" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>vYFA5ojZ </dt><dd>(Sick Bay) <br />
<br />
 初夏の日差しが、学校の壁沿いに植えられた樹木を包む濃緑色の葉達を鮮やかに <br />
照らしている頃、温厚そうな雰囲気を纏う女性が、校舎の出入り口から校庭へ出よう <br />
と歩いていた。 <br />
 同じ時刻、肩のあたりまで黒髪を伸ばした少女が、セーラーの裾を翻しながら、 <br />
校庭から出入り口に駆け込んでくる。 <br />
 急速に近づく両者だったが、林立する下駄箱が死角になって、お互いの存在に <br />
気づかないまま、校舎と校庭の境界線でまともに衝突した。 <br />
<br />
「うう…… 」 <br />
「う」 <br />
 ダメージが比較的少なかった少女が、頭をかかえながらなんとか立ち上がる。 <br />
そして、倒れこんだままの女性の掌を取ると、相手も腰をあげることができた。 <br />
「だいじょうぶですかー あっ」 <br />
「ありがとう」 <br />
 ゆるいウエーブがかかっている長髪を、僅かに揺らしながら礼を述べた。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:405" target="_top" name="405"><font color="#0000ff">405</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 00:43:29 <a href="id:405" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>vYFA5ojZ </dt><dd>「あの~ 木村先生の奥さんです?」 <br />
「そうよ。ごめんなさいね。貴方痛くなかった? 」 <br />
「私は大丈夫なんですけど。奥さんはどうなんですか」 <br />
 丁寧な言葉遣いのまま、木村先生の奥さんの瞳を覗きこんだ。 <br />
「大丈夫。心配しないで。それから私に敬語を使わなくてもいいのよ」 <br />
 子持ちの女性とは思えないほどの、鈴の鳴るような可愛らしい声が <br />
少女の耳に届いた。 <br />
<br />
 しかし、大阪と呼ばれる少女は、気がかりな事を見つけて心配げに尋ねる。 <br />
「ちょっと顔色が良くないと思うんやけど」 <br />
「そうかしら…… 」 <br />
 幾分、火照った顔に頬をあてて、困った表情を浮かべる。 <br />
「少し休んでいくとええよ」 <br />
「でも…… 」 <br />
 軽く首を振ろうとしたが、自分の調子の悪さは自覚していたようで、彼女は <br />
素直に少女の後に従った。 <br />
<br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:406" target="_top" name="406"><font color="#0000ff">406</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 00:44:30 <a href="id:406" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>vYFA5ojZ </dt><dd> 灰色がかった白を基調とした、学校では特別な空間、保健室。 <br />
 木製の扉を軋んだ音を立てながら開けて、頭を抑えた女性を椅子に座らせると、 <br />
大阪は戸棚から慣れた手付きで市販薬を取り出した。 <br />
<br />
「半分が優しさでできているのにするでー 」 <br />
<br />
 大阪は、水を満たしたコップと錠剤を渡す。 <br />
「ありがとう」 <br />
 頬にかかった髪を軽くかきあげながら、彼女はやや大きめな錠剤を、水と一緒に <br />
飲み込んだ。 <br />
「しばらく、やすんでいくとええよ」 <br />
「ごめんなさいね。でも、貴方はだいじょうなの? 」 <br />
 時間は九時半をまわっていた。当然、学校の授業は始まっているのだけど、 <br />
大阪は軽く首を振った。 <br />
<br />
「困っている人がおったら、助けなあかん 」 <br />
 遅刻という、多くの生徒が動揺する事態には、大阪はあまり頓着していない。 <br />
 もっとも、真面目そうな雰囲気を持っている少女ではあるが、実は寝坊による <br />
遅刻が結構多い。ある意味で開き直っているといえるかもしれない。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:407" target="_top" name="407"><font color="#0000ff">407</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 00:45:39 <a href="id:407" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>vYFA5ojZ </dt><dd> 木村先生の奥さんは、暫くの間、時々眉をしかめながら横になっていた。 <br />
 しかし、渡された市販薬はかなりの即効性があり、三十分もしないうちに <br />
ずいぶんと具合が良くなってくる。 <br />
 そして、時計の針が十時を回る頃にはベッドから身体を起こした。 <br />
「ありがとう。だいぶ落ち着いたわ」 <br />
「よかったで。ほんでも…… 」 <br />
「どうしたのかしら? 」 <br />
 大阪は指先をあごに当てたまま首を捻ると、真剣な顔つきで尋ねる。 <br />
「なんか心配事でもあるのん? 」 <br />
<br />
「あっ、あの、大した事ないわ」 <br />
 何故か、顔を真っ赤にして木村先生の奥さんは大きく首を振った。 <br />
「どないしたん? 」 <br />
 動揺をはっきりみせてしまい、更に心配そうにみつめてくる。 <br />
「えっと、その、あのね」 <br />
 その場しのぎの言葉でごまかすことは簡単だ。しかし、とても優しくしてくれた <br />
少女に嘘をつくことに対して、猛烈な罪悪感がわきあがってしまう。 <br />
 最終的には、この子なら誰にも言わないだろうという、確信めいた直感が彼女の <br />
背中を押した。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:408" target="_top" name="408"><font color="#0000ff">408</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 00:46:36 <a href="id:408" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>vYFA5ojZ </dt><dd>「他の子には内緒にしてくれる? 」 <br />
「ええよ」 <br />
 あっさりと大阪は頷き、余計な言葉を挟まずに静かに待つ。 <br />
 木村先生は大きく息を吸うと、ゆっくりと話し始めた。 <br />
<br />
「私ったら駄目ね。またお寝坊しちゃって、主人にお弁当を届けにきたんだけど」 <br />
 てへっと、小さく舌を出す仕草は、少女のような可憐な雰囲気すら垣間見える。 <br />
「お弁当は渡せたん? 」 <br />
「ええ。あの人、職員室にいたわ」 <br />
 なおも逡巡していたが、ついに決心して重い言葉が紡がれる。 <br />
「最近、夜がご無沙汰なの…… 」 <br />
<br />
「え!? 」 <br />
 きょとんとしている少女を傍目に、奥さんはぽつりと語りだす。 <br />
「あの人、最近帰りがとても遅いのよ。帰ってもいろいろと、お仕事を持ち帰って <br />
いてね。ほら、新年度になって三年生の担任になったでしょう。だから生徒さん <br />
たちの進路の事とかいろいろ忙しくって、だから…… 」 <br />
「あー そうゆうことなんや」 <br />
<br />
 ようやく納得することができて、腕を組みながら何度も頷く。 <br />
「木村先生も大変やなあ」 <br />
「あの人の事、大好きなのに。何もしてあげられなくて。それなのにこんなエッチ <br />
ことばっかり考えている自分が情け無くって」 <br />
 辛そうな表情で告白すると同時に深いため息をつく。憂色が濃くなった彼女の顔は <br />
かなり艶かしい。 <br />
 大阪には、『あの』木村先生を愛する奥さんの心情は良く分からなかったが、 <br />
深く悩んでいる事は、正しく理解することができた。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:409" target="_top" name="409"><font color="#0000ff">409</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 00:47:38 <a href="id:409" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>vYFA5ojZ </dt><dd> なおも暫くの間、大阪は沈黙を保っていたが、急にぽんっと両手を叩いた。 <br />
「そや! ええこと思いついたで! 」 <br />
 黒曜石のような瞳を爛々と輝かす。 <br />
「えっ? 」  <br />
 戸惑っている奥さんにむけて、満面の笑みを浮かべながら近づくと、白い <br />
ベッドに腰掛ける。 <br />
「私がかわりに、なぐさめたる! 」 <br />
「あ、あの? 」 <br />
 戸惑った表情を浮かべて、小首をかしげた女性の首筋に腕をのばして絡めると、 <br />
温かい体温が直に伝わる。 <br />
<br />
「キス…… してもいいのん? 」 <br />
 上目遣いであどけない表情に、少しだけ期待を込めた表情で見つめる。 <br />
「ええ…… 」 <br />
 何か不思議な魔法をかけられたように、反射的に頷いてしまう。 <br />
<br />
「ほな、いくでー 」 <br />
 大阪はゆっくりと小ぶりな唇を閉ざして、木村先生の奥さんの口元を塞ぐ。 <br />
「ん…… 」 <br />
 微かにくぐもった声が漏れる。小さな息遣いとともに、柔らかい唇が少しずつ <br />
動いていき、むずがゆい感触が身体を震わす。 <br />
 大阪は、暫くは軽い口付けを愉しんでいたが、やがて満足できなくなって、 <br />
ゆっくりと唇の間に短い舌を割り込ませる。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:410" target="_top" name="410"><font color="#0000ff">410</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 00:48:44 <a href="id:410" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>vYFA5ojZ </dt><dd>「んんっ! 」 <br />
 木村先生の奥さんは、驚いて大きく瞼を開いたが、少女の舌の動きは絶妙で <br />
蕩ける様な快感が、彼女の理性を痺れさせる。 <br />
「ん…… んあっ…… 」 <br />
 シーツの裾をぎゅっと握り締め、深いディープキスをなんとか受け入れる。 <br />
 相手が同性で、もしかしたら、愛する夫の教え子かもしれないという、 <br />
かなり倒錯した状況に戸惑い、混乱し、身をまかせるままになってしまっている。 <br />
 一方、大阪の舌は確実に、頬の裏側や歯茎のあたりまでを丹念に舐め取っていく。 <br />
<br />
「くう…… んあっ」 <br />
 大阪は十分に愉しんだ後、ゆっくりと顔を離して、小さく舌を出した。 <br />
「残念やけど…… これ以上はあかんねん」 <br />
<br />
 キスだけで身を引いた少女にほっと胸をなでおろしながら、彼女は少しだけ <br />
寂しさも感じてしまい。思いがけない言葉が口から漏れる。 <br />
「私から、貴方にお願いがあるわ」 <br />
「なんや? 」 <br />
「少しだけ一緒にベッドに入って欲しいの」 <br />
「ええよ」 <br />
 快諾した大阪が、木村先生の奥さんが横になっていたシーツにもぐりこむと、 <br />
体温で既に温かくなっている。 <br />
 少女が掌をのばして手を握ると、軽く握り返された。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:411" target="_top" name="411"><font color="#0000ff">411</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 00:49:59 <a href="id:411" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>vYFA5ojZ </dt><dd>「なあなあ。奥さんってやー いつも木村先生とこんな感じで寝てるん? 」 <br />
「ええ、そうね。でも最近はあのひと、疲れてすぐ眠ってしまうの 」 <br />
「結婚して良かったとおもてるん? 」 <br />
 大阪は、白い天井に嵌め込まれた蛍光灯を見上げながら尋ねる。 <br />
「もちろんよ。すごく幸せで怖いくらい」 <br />
<br />
 新婚さんみたいな言い方に、大阪は羨ましそうな表情で呟いた。 <br />
「私も、いつか結婚できるんやろか」 <br />
「あなたはとっても魅力的だから、きっといい人があらわれるわ」 <br />
 制服姿の少女を横目でみながら、木村先生の奥さんはやんわりと微笑む。 <br />
<br />
「ごめんなさいね。申し訳ないけど、ちょっと疲れたから、少しお休みさせて <br />
いただくわ」 <br />
「ええで。私がつきそったるねん」 <br />
 のんびりとした声に安心したのか、穏やかな微笑を浮かべたまま、彼女は <br />
ゆっくりと瞼を閉じた。 <br />
<br />
 三時間目の終了後、保険体育を担当する黒沢教諭が、保健室のベッドで隣の <br />
クラスの女子生徒と古文を担当する教師の妻が、手を繋いだまま熟睡している <br />
姿を発見して、しばし呆然とした後、頭をかかえながら起こした。 <br />
 目を覚ました木村先生の奥さんに、大阪への感謝と絶賛を、熱い口調で語られた <br />
為に、連絡を受けて来た担任の谷崎教諭も、遅刻と無断欠席という二重の <br />
違反を犯した少女を責める事はできなくなってしまった。 <br />
<br />
 教師二人がその夜飲みに行った居酒屋で、あの倒錯的な状況の分析に二時間を <br />
費やした挙句、納得のいく答えが見つからずに酷い悪酔いしたのは余談である。 <br />
<br />
(終わり) <br />
</dd></p>
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