Recube Vigorish

Recube Vigorishとは (by 矢澤広伸)



 マネーゲームでのテイクポイントは25%であることは一般に良く知られてします。しかし、Recube Vigorishを考慮に入れると22%位でもテイクできるということを、聞いたことや見たことがあるのではないかと思います。Vigorishとは辞書で調べると「力・効力」という意味があります。つまり、リダブルの効力があるので25%より若干不利でもテイクできるわけです。

マネーゲームの場合



 マネーゲームでは完全なRecube vigorishがあるときのテイクポイントは20%になります。まず、この20%という数字がどこから得られるのか説明しましょう。ひとまずバックギャモンのことは忘れて、綱引きのようなゲームを考えてみましょう。つまり、勝率が連続的に変化して行くようなゲームのことです。キューブがないときは完全に勝ちきるまでゲームを進めなくてはいけませんが、キューブがある場合には相手のテイクポイントまで優勢になれば勝ちと同等になります(なぜならば、テイク・パスのボーダーではこちらのイクイティーはちょうど+1になっており、キューブレベル1でゲームに勝つことと等しいから)。





 キューブを考慮に入れたときのこちらのテイクポイントをX、相手のをX'とすると、明らかに対照なのでX'=1-Xとなります。ダブルしたあと相手は完全に勝つまでゲームを進めなければならないので、あとXだけの勝率が必要です。しかし、こちら側は相手のテイクポイントまでの勝率を稼げば勝ち(と等しく)なるので、X'-X=1-2Xの勝率が得られればよいわけです。ここで、X:1-2X=1:3とすれば、X=20%が得られます。

マッチゲームの場合


 今度はマッチゲームの場合です。ここではギャモンを無視する上にこちらのリダブルに対する相手のリ・リダブルのrecube vigorishを無視します。例として4-away, 3-awayでのリーダーからのダブルについて考えてみます。まず、リーダーからのイニシャルダブルのテイクポイントをリダブルを考えないで求めると35%(TPとします)となります。次に、テイクしてこちらがリダブルした場合の相手のテイクポイントは40%(TOとします)です。

 リダブルを考慮に入れれば、トレイラーは60%まで勝率を稼げば勝ちです。リーダーはやはり完全に勝ちきらなければいけません。





 リダブルを考慮に入れたテイクポイントをTとすると、T:1-TO=TP:1でTを求めることができます。つまりT=TP*(1-TO)となります。recube vigorishによるぶんはTP-T=TP-TP*(1-TO)=TP*TOとなります。つまり、

Recube Vigorish = (こちらのテイクポイント)*(リダブルに対する相手のテイクポイント)

 で求められることが分かります。今の場合の具体的な数字を書きますと、Recube vigorish=0.35*0.40=0.14となり、T=0.21となります。

 ここでの仮定には、相手のリ・リダブルのrecube vigorishは入っていないことに注意してください(まあ、7ポイントマッチくらいまでなら、8キューブへのリダブルは、負けていればオートマチックだし、リードしていればそう簡単にはダブルできないので、あまり考える必要はないでしょうが)。また、ギャモンも考慮に入れていません。マネーゲームの場合だと単純にテイクポイントをギャモンを考慮に入れたものに変えてやればいいだけですが、マッチゲームで(-5,-3)のようにリダブルによって相手のギャモンの意味が無くなる場合などは不明です。

実戦への適用


 さて、Recube vigorishの求め方が分かりましたが、実戦に応用できないと意味がありません。これまでは、テイクした側は(勝つときは)常に最も有効なキューブの使い方ができる(つまり、相手のテイク・パスのボーダーでダブルをかけられる)という仮定をしていましたが、実際にはそうでないことは明らかです。したがって、実際のrecube vigorishは理想的なものよりも下がります。あくまで経験的なものですが、0.5前後になります。ただし、局面の性質によっても変化します。レースの場合だと、逆転する場合は徐々に勝率が上がっていくので理想的なリダブルがかけやすい状況です。一方ホールディングゲームの場合は、逆転はヒットしたときに起こりこの場合一気に相手のテイクポイントを上回ってしまい、あまり有効なリダブルはできなくなります。つまり、レースではrecube vigorishが大きいのに対してホールディングゲームでは小さいと言えます。あくまで推測ですが、レースでは理想の0.6,ホールディングゲームでは0.4程度が適当ではないかと思います。

 少し趣旨ははずれますが、私たちがテイク・パスを考える上で無意識のうちにrecube vigorishを考えています。たとえば、(-3,-2)のスコアでリーダーがダブルしたとすると、テイクポイントは25%です。したがってマネーゲームと同じ、と考えると失敗します。マネーゲームのテイクポイントは約22%なのです。だから、ピップが12%負けているレース(いわゆる、マネーゲームでのmarginal take/pass)は(-3,-2)ではパスになります。

おまけ


 最後に一つ例を挙げておきます。マネーゲームとします。(もちろん、このような局面が実戦で現れたら、recube vigorishがいくらでとか計算はしませんが。。。)


 必ず2ロールであがれるので8キューブへのリダブルは考える必要がありません。したがって、「マッチプレイの場合」での仮定が当てはまります。

 まずcubelessの勝率を求めると、1ロールであがれる確率は3/4なので、3/4+1/4*1/4=13/16=81.25%です。テイクする側の勝率は18.75%で25%を大きく下回っていますし、理想のrecubeを考慮に入れたテイクポイントの20%をも下回っています。

 「マッチプレイの場合」の方法に従ってrecube vigorishを求めると1/4*1/4=1/16=0.625%となり、ちょうど25-18.75と等しくなります。そしてテイクする側は、もし相手が上がれなかったら、勝率75%という理想的なダブルがかけられるので、ここでのキューブアクションはテイク・パスのボーダーライン上にいることが予想できます。

 実際にダブルする側のイクイティーを計算すると(上がれなかったときはキューブが4になる)、(+2)*3/4+(-4)*1/4*3/4+(+4)*1/4*1/4=+1となり、まさしくテイク・パスのボーダーとなります。

 このポジションが20%以下でもテイクになるのは、相手のrecube vigorishがないためです。



少し(かなり?)分かりづらい説明かもしれませんがご容赦を。指摘・感想等歓迎します。

2000/08/01
Hironobu Yazawa


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最終更新:2012年02月28日 18:23
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