……ゴン。
ゴン
ゴン……
どこからか鈍い音がした。
装甲が叩かれているようだった。
装甲が叩かれているようだった。
よく耳を澄ますと「よくも言ってくれたわね許さない許さない許さない」的な呪詛が流れているような気さえした。
カリカリカリ カリカリカリ カリカリカリ カリカリカリ カリカリカリ ガリッ ガリガリ ゴリゴリ ズゾカリガリゴリカリゴギギ……
殴る音はひっかくような音に変わってもいる。
思わず後ずさる。するとブォンという音が鳴り。
眼前いっぱいに青空がきた。
「ひィ!!!?」
後ずさったとき、誤って、予備のカメラのスイッチを押してしまった。……気付いたのは後だからクライマックスは青空が
巨大化して突入してきたのだと本気で信じた。青空。相変わらずの目でケタケタ笑っている。笑いながら列車の壁に張り
付いてモゴモゴ動いているのはやはり引っ掻いているからだ。
巨大化して突入してきたのだと本気で信じた。青空。相変わらずの目でケタケタ笑っている。笑いながら列車の壁に張り
付いてモゴモゴ動いているのはやはり引っ掻いているからだ。
蟲のような動きだった。なまじ美しい少女だからこそますます地獄のようなおぞましさがある。
予備ながら高性能のカメラは捉えた。爪の剥がれた指を。
関節のシワさえない綺麗な掌はいまや血まみれだ。この辺りでやっとまだ青空が外にいるのを確認したクライマックス、つ
いつい余計な好奇心を催し
いつい余計な好奇心を催し
(やっぱ引っ掻いてる? 何か描いてるんでしょうか? あ! アニメのキャラとかでしょーか! 内向的な人だし!)
カメラを切り替えそして後悔。なぜなら青空、乱れ狂った字で
「光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
と、描いていたからだ。
「光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃ
ん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん
光ちゃん光ちゃん光ちゃん光ちゃん逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰ってきて帰って
きてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
と、描いていたからだ。
「駆逐ぅーーーーーーーーーーー!! この上なく全・力でええええええええええええ! 駆逐ぅーーーーーーーーーーー!! 」
クライマックスを貫いた衝撃はとてもスゴかった。眼鏡の奥から涙を噴出し絶叫する彼女の精神のどこかで新しい扉が開
く。武装錬金が進化した。増援を繰り出す速度が3倍になりものすごい数の自動人形が青空をつつみどこかへ流れていく。
く。武装錬金が進化した。増援を繰り出す速度が3倍になりものすごい数の自動人形が青空をつつみどこかへ流れていく。
(いやあああああああああああああああああ!! 怖いいいいいイイイイイイイイイイイイイ!! こわいいいいいいいい!!)
壁に背を預ける。うっかり寝坊した朝、慌てて2キロ先の駅まで全力疾走したような消耗がクライマックスを襲う。彼女はただ
ただゼエハアゼエハアと息をした。震えが止まらない。怖気も。狭い運転室は一段と息苦しさを増したようだった。
ただゼエハアゼエハアと息をした。震えが止まらない。怖気も。狭い運転室は一段と息苦しさを増したようだった。
(ななななななにをこの上なく怯えているんですかあ私! というか怯えさせるコトこそあのコの狙い、迂闊に動く方が危な……
だってそうじゃないですかあ! 私は武装錬金の性質と特性を十分に活かしています! リバースちゃんもそれは同じ! も
う武装錬金の性質も特性も出し尽くしている以上、勝負はどう考えても私の勝ち。勝ちに……え? 勝……ち……?)
だってそうじゃないですかあ! 私は武装錬金の性質と特性を十分に活かしています! リバースちゃんもそれは同じ! も
う武装錬金の性質も特性も出し尽くしている以上、勝負はどう考えても私の勝ち。勝ちに……え? 勝……ち……?)
顎に汗が溜まっている。運転室の居住性が悪いせいだろう。自分1人の体温が籠るだけで不快指数が外界とは段違いだ。
そういう愚痴にも似た。思考を渦巻かせながら顎に手をやり……そして止まる。何か、見落しているような気がした。
そういう愚痴にも似た。思考を渦巻かせながら顎に手をやり……そして止まる。何か、見落しているような気がした。
(い、いえ! そんな筈は──…)
意識の明るい部分はつくづく自分の正当性を主張しているが、本当にそうだろうかという疑問が浮かぶ。
息を吸い、大きく吐く。
濁った酸素でも横隔膜を刺激して副交感神経に働きかけるぐらいはできるらしい。思考に幾分落着きが戻ってきた。床に
腰掛け思考をなぞり直す。
腰掛け思考をなぞり直す。
A.サブマシンガンじゃ列車の装甲破れない?
Q.はい。
A.出入口突破の可能性は?
Q.ゼロ。
A.自動人形を出し続けた場合、先に参るのはリバース?
Q.イエス。
(私は武装錬金の性質も特性も十分に活かしています。その結果、相性的には負ける筈がありません。ただ)
女教師としての成長。声優として貯め込んだ社会的経験値。
それらが告げている。様々な正解を紡いできた回路が、決して悪くない頭脳が……警鐘を鳴らす。
自分は本当に理解しているのか?
リバース(青空)の武装錬金特性を……
本当に本当に、理解しているのか?
気付いた瞬間、クライマックスは「ぅあ」と立ち上がった。
──(私は武装錬金の性質と特性を十分に活かしています!
──(リバースちゃんもそれは同じ!)
──(もう武装錬金の性質も特性も出し尽くしている以上、勝負はどう考えても私の勝ち)
息を呑む。襲いくるはおぞましい予感。
(私はこの上なく思い込んでいました!!)
(あの武装錬金の特性が「空気を使った無限弾丸」と!!
(でも、本当は……本当はこの上なく違うんじゃあ!?)
クライマックスがひとり立ち尽くしているそのとき青空は、
『先に教えてあげる。あなたの敗因……それは』
何百体めかの自動人形を撃墜し、そして唇を尖らせた。
『……スピーカー越しにベラベラベラベラ悪口いいまくったコトよ』
いよいよベールを脱ぐサブマシンガンの武装錬金『マシーン』。その銃身はただ冷たく輝く。
青白い煌きは静かにすすり泣くように……。