「やぁ、おそろいで」
そう彼が言うなり、「あんたが最後だよ」、「遅かったじゃないか」といったほろ酔い加減の声がくる。
彼を含めて四人。
老いが忍び寄る体を窮屈そうに椅子にのっけて、みな楽しそうにやっていた。
彼を含めて四人。
老いが忍び寄る体を窮屈そうに椅子にのっけて、みな楽しそうにやっていた。
「しかし、まぁ今日は珍しいじゃないか、あんたが主催なんて」
遅れてきちゃ意味無いが、とからかい混じりに殊更大柄な男が言う。
その顔に刻まれた皺は、年齢相応に深かった。
その顔に刻まれた皺は、年齢相応に深かった。
「いや、ね、今日はホラ」男はそう言いながらファイティングポーズらしきものをとる。
すると、みな揃って納得したように笑った。
その笑いにも、悲喜こもごも。
色々な感情が滲んだ、歳月の生んだ笑みだ。
すると、みな揃って納得したように笑った。
その笑いにも、悲喜こもごも。
色々な感情が滲んだ、歳月の生んだ笑みだ。
「あっという間だねぇ・・・。あれからもう三十年もたつんだねぇ」
しわがれた声で痩せた男がつぶやく。
しわがれた声で痩せた男がつぶやく。
「あんたにもらったあの一撃!堪えたなぁ」と、大柄な男が遅れてきた男の背をばしばしと叩く。
大仰にむせて見せるが、往年の力など見るべくもない事に、男は淋しさを覚えもした。
大仰にむせて見せるが、往年の力など見るべくもない事に、男は淋しさを覚えもした。
「連戦連勝!破竹の快進撃!そうして迎えた最後の一戦!
いやぁ、手に汗握ったねぇ」色黒の男は面白おかしく過去を語る。
彼の語り口調に、男は恥ずかしげに笑いながら、酒をあおった。
「三十年前、俺も若かったからねぇ。
…青かったんだよ」
いやぁ、手に汗握ったねぇ」色黒の男は面白おかしく過去を語る。
彼の語り口調に、男は恥ずかしげに笑いながら、酒をあおった。
「三十年前、俺も若かったからねぇ。
…青かったんだよ」
苦いものを混じらせた男の声音だったが、皆それに気がつかないフリをしてくれた。
あの一戦はいまでも思い出す。
もっとも思いで深いのは、最後の一撃だ。
痛かった。
今まで食らったことがない程に痛く、堪えた一撃だった。
私利私欲に沈んでいた自分を、目覚めさせてくれた一撃だった。
この人には敵わないな、そう素直に自覚できた一撃だった。
だいぶ出来上がっているここにいる皆、それを深く理解している。
あの一撃、あの組技、すべてが懐かしい痛みだった。
あの一戦はいまでも思い出す。
もっとも思いで深いのは、最後の一撃だ。
痛かった。
今まで食らったことがない程に痛く、堪えた一撃だった。
私利私欲に沈んでいた自分を、目覚めさせてくれた一撃だった。
この人には敵わないな、そう素直に自覚できた一撃だった。
だいぶ出来上がっているここにいる皆、それを深く理解している。
あの一撃、あの組技、すべてが懐かしい痛みだった。
「それじゃ、おそくなっちまったが」
そう、前置きして遅れてきた男が音頭をとる。
そう、前置きして遅れてきた男が音頭をとる。
「われらがスグル大王とそのご子息万太郎さまに、乾杯!」
男の名は、フェニックス。
かつてキン肉星王位継承戦にてキン肉スグルと壮絶な戦いを繰り広げた男だった。
この場にいる者すべてがそうだ。
大柄な男はビッグボディとして、色黒の男はマリポーサとして、痩せた男はゼブラとして、
偉大な男と戦い、敗れた男たちだった。
飲み屋のテレビには、満面の笑みで歓声に応える万太郎とスグルが映っていた。
かつてキン肉星王位継承戦にてキン肉スグルと壮絶な戦いを繰り広げた男だった。
この場にいる者すべてがそうだ。
大柄な男はビッグボディとして、色黒の男はマリポーサとして、痩せた男はゼブラとして、
偉大な男と戦い、敗れた男たちだった。
飲み屋のテレビには、満面の笑みで歓声に応える万太郎とスグルが映っていた。