カール王国は数千の被害を被ったがアバンとラーハルトの活躍によって壊滅は免れていた。
しかし、アバン達は倒壊した家の影に隠れているとても大きな扇子を持った少女を見逃さなかった。
「貴女は誰ですか?」
普通の人間ならばこの少女も戦禍に巻き込まれるのを恐れて隠れていたのだと思うだろう。
だがアバンとラーハルトはどう見ても不気味な気配を発していた様に見えたのだ。
何故ならこの少女は先程の戦いを監視していたのだから。
「なかなかやるね、私はテマリっていうんだけど。」
「お前がこの国にモンスターを嗾けたのか?」
「待ってくださいラーハルトさん、もしもそうならそう簡単に私達には話さないでしょう。」
しかしテマリは驚くほど簡単に秘密を洩らした。
「そうだよ。別にこの国を攻めること自体は大した目的じゃない、あんた達がバーンを倒した勇者の一味かどうか探りに来たんだ。」
その言葉を聞いたアバンの顔に憤怒の表情が浮かび上がった。
「そんなことの為に、この国の人々を殺したのですか?彼等にはそれぞれの夢や希望、それぞれの人生があった。
貴女は私達の正体を見破る為だけにそんな彼等を殺したのか!!」
アバンは鞘に収めていた剣を再び振りかざした。
「どうせヴェルザー様に支配されるんだ。この地上の生物に夢や希望なんてあの方は与えないよ。」
「ヴェルザー・・・キルバーンが仕えていた真の主。つまり貴様等がダイ様を連れ去ったのか!!」
ラーハルトはダイが消えたあの日からキルバーンを従えていたヴェルザーこそ諸悪の根源だと確信していた。
「貴様がヴェルザーの部下と知ったからには女だからとて容赦はしない、
全力で貴様を葬りヴェルザーも殺す!」
ラーハルトはテマリにハーケンディストールを放った。
「ま、地上の連中じゃこんなものね。」
突然突風がラーハルトに襲い掛かった。
「カマイタチの術。」
テマリは持っていた巨大な扇子を振り回しラーハルトを遠ざけ、なおかつ物理的なダメージを与えた。
ラーハルトは突風に巻き込まれ建物に衝突し気を失った。
「まあ今はいいわ。ヴェルザー様復活しが地上を制圧するのも時間の問題、
精々残りの余生を楽しむのね。」
「待て!」
アバンの声も虚しくテマリは次元の穴を開け
笑いながらアバンの元から去って行った。
アバンは急いでラーハルトの元へ向かい介抱した。
二人はその足でパプニカへ向かった。
一方ヒュンケルは既にパプニカに着き、マァムやメルルに状況を聞いた。
「まさかポップが簡単にやられるとは、一体敵はどのような戦い方をしてきたんだ?」
「それが、ポップがメドローアを撃ったまでは良かったんだけど・・・」
ポップの完全な敗北にヒュンケル、そして既に目を覚ましていたフローラ姫は驚いた。
フローラ姫は急いでポップの治療に向かった。
マァムとメルルもやはりポップの様子を見に行った。
メルルはポップの姿を見るなり顔を隠し泣いてしまった。
その時リリルーラでアバンとラーハルトの二人が病室に到着した。
「アバン、生きていたのね。良かった。」
フローラ姫はアバンに飛びついて行った。
「フローラ姫、ポップ君の治療がまだ終わってません。放していただけますか?」
フローラ姫は余りの恥ずかしさに赤面してしまった。
ポップの治療には五日掛かった。あらゆる回復のアイテム、呪文を使っても骨の再生は容易に出来ることではなかった。
例えであるが、ポップの治療がもう少し遅ければ、彼は死んでいただろう。それ程深刻な容体だった。
この五日間で二つの国で起きた事件は既に世界に知れ渡っていた。
一つはパプニカ王女、レオナの失踪、そしてカール王国の襲撃である。
「くそ、ヴェルザーが動き出したのか。」
まだ完治したとは言えない体を引きずってポップは魔界へ行こうとしていた。
しかし、アバン達は倒壊した家の影に隠れているとても大きな扇子を持った少女を見逃さなかった。
「貴女は誰ですか?」
普通の人間ならばこの少女も戦禍に巻き込まれるのを恐れて隠れていたのだと思うだろう。
だがアバンとラーハルトはどう見ても不気味な気配を発していた様に見えたのだ。
何故ならこの少女は先程の戦いを監視していたのだから。
「なかなかやるね、私はテマリっていうんだけど。」
「お前がこの国にモンスターを嗾けたのか?」
「待ってくださいラーハルトさん、もしもそうならそう簡単に私達には話さないでしょう。」
しかしテマリは驚くほど簡単に秘密を洩らした。
「そうだよ。別にこの国を攻めること自体は大した目的じゃない、あんた達がバーンを倒した勇者の一味かどうか探りに来たんだ。」
その言葉を聞いたアバンの顔に憤怒の表情が浮かび上がった。
「そんなことの為に、この国の人々を殺したのですか?彼等にはそれぞれの夢や希望、それぞれの人生があった。
貴女は私達の正体を見破る為だけにそんな彼等を殺したのか!!」
アバンは鞘に収めていた剣を再び振りかざした。
「どうせヴェルザー様に支配されるんだ。この地上の生物に夢や希望なんてあの方は与えないよ。」
「ヴェルザー・・・キルバーンが仕えていた真の主。つまり貴様等がダイ様を連れ去ったのか!!」
ラーハルトはダイが消えたあの日からキルバーンを従えていたヴェルザーこそ諸悪の根源だと確信していた。
「貴様がヴェルザーの部下と知ったからには女だからとて容赦はしない、
全力で貴様を葬りヴェルザーも殺す!」
ラーハルトはテマリにハーケンディストールを放った。
「ま、地上の連中じゃこんなものね。」
突然突風がラーハルトに襲い掛かった。
「カマイタチの術。」
テマリは持っていた巨大な扇子を振り回しラーハルトを遠ざけ、なおかつ物理的なダメージを与えた。
ラーハルトは突風に巻き込まれ建物に衝突し気を失った。
「まあ今はいいわ。ヴェルザー様復活しが地上を制圧するのも時間の問題、
精々残りの余生を楽しむのね。」
「待て!」
アバンの声も虚しくテマリは次元の穴を開け
笑いながらアバンの元から去って行った。
アバンは急いでラーハルトの元へ向かい介抱した。
二人はその足でパプニカへ向かった。
一方ヒュンケルは既にパプニカに着き、マァムやメルルに状況を聞いた。
「まさかポップが簡単にやられるとは、一体敵はどのような戦い方をしてきたんだ?」
「それが、ポップがメドローアを撃ったまでは良かったんだけど・・・」
ポップの完全な敗北にヒュンケル、そして既に目を覚ましていたフローラ姫は驚いた。
フローラ姫は急いでポップの治療に向かった。
マァムとメルルもやはりポップの様子を見に行った。
メルルはポップの姿を見るなり顔を隠し泣いてしまった。
その時リリルーラでアバンとラーハルトの二人が病室に到着した。
「アバン、生きていたのね。良かった。」
フローラ姫はアバンに飛びついて行った。
「フローラ姫、ポップ君の治療がまだ終わってません。放していただけますか?」
フローラ姫は余りの恥ずかしさに赤面してしまった。
ポップの治療には五日掛かった。あらゆる回復のアイテム、呪文を使っても骨の再生は容易に出来ることではなかった。
例えであるが、ポップの治療がもう少し遅ければ、彼は死んでいただろう。それ程深刻な容体だった。
この五日間で二つの国で起きた事件は既に世界に知れ渡っていた。
一つはパプニカ王女、レオナの失踪、そしてカール王国の襲撃である。
「くそ、ヴェルザーが動き出したのか。」
まだ完治したとは言えない体を引きずってポップは魔界へ行こうとしていた。
~天界~
かつて冥竜王ヴェルザーを封印した精霊の一人、アルテミスは天界に迫る邪悪な気配を察知した。
「来る、ヴェルザーにも劣らない力を持った者が。」
アルテミスはヴェルザーの本体が封印されている牢の監視役に任命されそれからは牢の番人として暮らしていた。
そして邪悪な気配を持った者は封印を守るアルテミスの前に立った。
「一体誰なの?ヴェルザーの封印を解こうとしているの?」
アルテミスの質問に男は答えない。その男のプレッシャーにアルテミスは押されていた。
その男は体も小さいが、眼の下のクマ、やたらと大きい瓢箪、額の愛の文字が恐怖の対象となった。
その男はヴェルザーの肉体が封印された檻の前に立ち、ヴェルザーの肉体の前に立った。
「貴方はやはりヴェルザーの部下ね。絶対に封印は解かせない。バーンが倒れた今、ヴェルザーがここにいれば平和を脅かす者はいなくなる。
貴方達にどんな事情があろうとこの檻は外さないわ。」
しかし、アルテミスの声が届いていないかのようにその男は立ち尽くしていた。
アルテミスはこの男の不気味さを感じ取りすぐにでも逃げ出したい気持ちになった。
『もう…いや。』
アルテミスは逃げ出す訳にもいかずとった行動は、メラゾーマだった。
アルテミスのメラゾーマは確実に決まった…筈だった。
「う、嘘。」
男の体には傷一つ無く、まるで何事も無かった様な無表情な顔をアルテミスに見せた。
このとき、男は口元に少し笑みをこぼし始めていた。
その瞬間爆発が起き、ヴェルザーの檻は粉々に砕かれ、男とヴェルザーの肉体だけがその場に残った。
アルテミスは体に巨大な爪で引き裂かれた跡がある無残な死体と化していた。
かつて冥竜王ヴェルザーを封印した精霊の一人、アルテミスは天界に迫る邪悪な気配を察知した。
「来る、ヴェルザーにも劣らない力を持った者が。」
アルテミスはヴェルザーの本体が封印されている牢の監視役に任命されそれからは牢の番人として暮らしていた。
そして邪悪な気配を持った者は封印を守るアルテミスの前に立った。
「一体誰なの?ヴェルザーの封印を解こうとしているの?」
アルテミスの質問に男は答えない。その男のプレッシャーにアルテミスは押されていた。
その男は体も小さいが、眼の下のクマ、やたらと大きい瓢箪、額の愛の文字が恐怖の対象となった。
その男はヴェルザーの肉体が封印された檻の前に立ち、ヴェルザーの肉体の前に立った。
「貴方はやはりヴェルザーの部下ね。絶対に封印は解かせない。バーンが倒れた今、ヴェルザーがここにいれば平和を脅かす者はいなくなる。
貴方達にどんな事情があろうとこの檻は外さないわ。」
しかし、アルテミスの声が届いていないかのようにその男は立ち尽くしていた。
アルテミスはこの男の不気味さを感じ取りすぐにでも逃げ出したい気持ちになった。
『もう…いや。』
アルテミスは逃げ出す訳にもいかずとった行動は、メラゾーマだった。
アルテミスのメラゾーマは確実に決まった…筈だった。
「う、嘘。」
男の体には傷一つ無く、まるで何事も無かった様な無表情な顔をアルテミスに見せた。
このとき、男は口元に少し笑みをこぼし始めていた。
その瞬間爆発が起き、ヴェルザーの檻は粉々に砕かれ、男とヴェルザーの肉体だけがその場に残った。
アルテミスは体に巨大な爪で引き裂かれた跡がある無残な死体と化していた。
「う、体が動かねえ。」
ポップは魔界に行く道を探すためにパプニカを出ようとしていた。
少なくともレオナが連れ去られたのは自分の責任だと実感していたからだ。
しかし、半病人が国を出ようと思っても不可能な話であった。ポップはそのまま道に倒れこんでしまった。
「あ、良かった。目を覚ましました。」
ポップが起きた場所は王宮の寝室であった。
隣にメルル、マァム、ヒュンケル、そしてパプニカ三賢者の一人、エイミがいた。
「まったく、無茶するんだから!もう二度と勝手な真似はしないで。」
ポップはこの日マァムの態度が少し違うことに気づいた。いつもならここでビンタの一つや二つ横面に叩かれるものだがそれがなかった。
『おいおい、これってひょっとして俺の事を本気で心配してたのか。」
ポップはマァムに対しての申し訳なさと内心とても嬉しい気持ちとが同居している様な顔になったが、そんな顔をマァムに見せる訳にもいかなかった。
それから数週間経ち、ポップの体も完治していた。
その頃、ロンベルク、ノヴァ、マトリフがパプニカに来ていた。
「師匠にロンベルク、ノヴァまで、どうしたんだよ?」
「ど、どうしたんだよって姫は失踪してお前は死にかけたっていうからこうして来たんじゃないか。」
「それにお前が一人で魔界に行こうとしていることもこの男から聞いた。」
ロンベルクの後ろからバダックが顔を出した。
「ポップ、わしは姫が失踪したのはお前だけの責任ではない!あの夜に侵入者の存在に気付けなかったわしも同じじゃ。」
「だが俺は、傍にいたのに守ってやれなかった。」
ポップは魔界に行く道を探すためにパプニカを出ようとしていた。
少なくともレオナが連れ去られたのは自分の責任だと実感していたからだ。
しかし、半病人が国を出ようと思っても不可能な話であった。ポップはそのまま道に倒れこんでしまった。
「あ、良かった。目を覚ましました。」
ポップが起きた場所は王宮の寝室であった。
隣にメルル、マァム、ヒュンケル、そしてパプニカ三賢者の一人、エイミがいた。
「まったく、無茶するんだから!もう二度と勝手な真似はしないで。」
ポップはこの日マァムの態度が少し違うことに気づいた。いつもならここでビンタの一つや二つ横面に叩かれるものだがそれがなかった。
『おいおい、これってひょっとして俺の事を本気で心配してたのか。」
ポップはマァムに対しての申し訳なさと内心とても嬉しい気持ちとが同居している様な顔になったが、そんな顔をマァムに見せる訳にもいかなかった。
それから数週間経ち、ポップの体も完治していた。
その頃、ロンベルク、ノヴァ、マトリフがパプニカに来ていた。
「師匠にロンベルク、ノヴァまで、どうしたんだよ?」
「ど、どうしたんだよって姫は失踪してお前は死にかけたっていうからこうして来たんじゃないか。」
「それにお前が一人で魔界に行こうとしていることもこの男から聞いた。」
ロンベルクの後ろからバダックが顔を出した。
「ポップ、わしは姫が失踪したのはお前だけの責任ではない!あの夜に侵入者の存在に気付けなかったわしも同じじゃ。」
「だが俺は、傍にいたのに守ってやれなかった。」
「ポップ。」
師匠マトリフに呼び止められたポップは申し訳なさそうに師の表情を伺う。
「おめえは今までダイに頼り過ぎていたこともあった、お前のその油断が姫さんを拉致させちまったんじゃねえか?」
「それは・・・」
ポップは反論することが出来なかった。
「いつかお前は言ったよな、『あんたのできることは全部俺が覚えてみせる』と、
だが俺はアバンと一緒にハドラーと戦った時、俺は奴には細心の注意を払い絶対に奴を一人にしなかった。
ところがお前はみすみす姫さんを捕られちまった。そんな事で俺のできることをすべて覚えるだと?のぼせ上がるのもいいかげんにしやがれ!!!!」
「そんな、ポップさんはとても・・・」
「いいんだ、メルル。」
ポップはメルルを止めた。
「確かに俺はのぼせ上がってたな…」
ポップは全身に力が入らなくなった。思えばポップは前にもダイを危険にさらしてしまったこともあった。
二度と繰り返さないと誓っていたことを二度目にしてしまったのである。
「ポップ、もし本当に仲間を守りたいという気持ちがあるなら一人で勝ち目のない戦をしかけるな。
助けてやりたい仲間がお前の不注意で死んじまうかもしれねえ、少し頭を冷やせ。」
このときポップは常日頃から言われていた『魔法使いはクールでなければならないという言葉を思い返していた。
ポップは自分の責任で犯してしまった事で一人で熱くなり過ぎていたのだ。
ポップはこの日、マトリフに頭が上がらなかった。
翌日パプニカで会議が執り行われた。ポップは先走って魔界へ行こうとしていたが魔界へ行く手掛かりは何一つ無かった。
よって今回の議題は捕らわれたレオナを救出する為にどのようにして魔界へ行くかということだった。
「一人でも穴を開けられる奴はいねえのかよ。」
ポップはロンベルクを見ながら言った。
「残念だが俺はその手の能力はない、だがキルバーン等が使っている穴はあくまでも魔界への裏口にすぎない。
本当の入り口はお前等もよく知っているあの場所にある。」
「本当の入り口ってそんなものどこに?」
マァムの質問に答えるようにロンベルクは説明した。
「魔界への入り口、それは破邪の洞窟だ。」
一同は驚きを隠せなかった。
特にフローラ姫は自分の治めているカールの領土に魔界への入り口があることなど信じたくなかった。
「かつてバラン様も破邪の洞窟を降り、魔界に辿り着いたと仰られた。」
ラーハルトがロンベルクの後に続くように言った。
「どういうことだよ、破邪の洞窟ってその名の通り光の特技や呪文を手に入れる場所じゃないのか?」
ポップの質問にラーハルトが答えた。
「本来破邪の洞窟とは魔界へ挑む冒険者達の為に神々が遺した最後の砦だという説もある。
つまり破邪の洞窟で力を蓄えながら魔界へと向かっていくシステムだったんだ。」
その言葉は意外と自然に理解することが出来た。
「でもよ、地下何階なんだ?魔界に出られるのは。」
マトリフの質問にはロンベルクが答えた。
「地下百五十階だ。」
「てことは先生は既に最下層までいったんですね。」
「まさか最下層まで下りて行ってたとは、しかし魔界の入り口等見つけられませんでしたが?」
「最下層はとても難解な造りになってる、一人で見つけ出すのは不可能に近い。だから奴らは穴で出入りしているのさ。」
会議は夜まで続き、翌日は魔界にいくメンバーを決めようとしていたところで重大な事件が発生した。
「会議中失礼します!!!しかし大変なことが起こったんです!」
城の兵士達が息を切らせて伝えてきたこと、余程のことでも起きない限りあり得ないことだった。
「ゆ、勇者ダイ様の剣がどこにも見当たらないのです!!!」
部屋にいた者全員が耳を疑った。
師匠マトリフに呼び止められたポップは申し訳なさそうに師の表情を伺う。
「おめえは今までダイに頼り過ぎていたこともあった、お前のその油断が姫さんを拉致させちまったんじゃねえか?」
「それは・・・」
ポップは反論することが出来なかった。
「いつかお前は言ったよな、『あんたのできることは全部俺が覚えてみせる』と、
だが俺はアバンと一緒にハドラーと戦った時、俺は奴には細心の注意を払い絶対に奴を一人にしなかった。
ところがお前はみすみす姫さんを捕られちまった。そんな事で俺のできることをすべて覚えるだと?のぼせ上がるのもいいかげんにしやがれ!!!!」
「そんな、ポップさんはとても・・・」
「いいんだ、メルル。」
ポップはメルルを止めた。
「確かに俺はのぼせ上がってたな…」
ポップは全身に力が入らなくなった。思えばポップは前にもダイを危険にさらしてしまったこともあった。
二度と繰り返さないと誓っていたことを二度目にしてしまったのである。
「ポップ、もし本当に仲間を守りたいという気持ちがあるなら一人で勝ち目のない戦をしかけるな。
助けてやりたい仲間がお前の不注意で死んじまうかもしれねえ、少し頭を冷やせ。」
このときポップは常日頃から言われていた『魔法使いはクールでなければならないという言葉を思い返していた。
ポップは自分の責任で犯してしまった事で一人で熱くなり過ぎていたのだ。
ポップはこの日、マトリフに頭が上がらなかった。
翌日パプニカで会議が執り行われた。ポップは先走って魔界へ行こうとしていたが魔界へ行く手掛かりは何一つ無かった。
よって今回の議題は捕らわれたレオナを救出する為にどのようにして魔界へ行くかということだった。
「一人でも穴を開けられる奴はいねえのかよ。」
ポップはロンベルクを見ながら言った。
「残念だが俺はその手の能力はない、だがキルバーン等が使っている穴はあくまでも魔界への裏口にすぎない。
本当の入り口はお前等もよく知っているあの場所にある。」
「本当の入り口ってそんなものどこに?」
マァムの質問に答えるようにロンベルクは説明した。
「魔界への入り口、それは破邪の洞窟だ。」
一同は驚きを隠せなかった。
特にフローラ姫は自分の治めているカールの領土に魔界への入り口があることなど信じたくなかった。
「かつてバラン様も破邪の洞窟を降り、魔界に辿り着いたと仰られた。」
ラーハルトがロンベルクの後に続くように言った。
「どういうことだよ、破邪の洞窟ってその名の通り光の特技や呪文を手に入れる場所じゃないのか?」
ポップの質問にラーハルトが答えた。
「本来破邪の洞窟とは魔界へ挑む冒険者達の為に神々が遺した最後の砦だという説もある。
つまり破邪の洞窟で力を蓄えながら魔界へと向かっていくシステムだったんだ。」
その言葉は意外と自然に理解することが出来た。
「でもよ、地下何階なんだ?魔界に出られるのは。」
マトリフの質問にはロンベルクが答えた。
「地下百五十階だ。」
「てことは先生は既に最下層までいったんですね。」
「まさか最下層まで下りて行ってたとは、しかし魔界の入り口等見つけられませんでしたが?」
「最下層はとても難解な造りになってる、一人で見つけ出すのは不可能に近い。だから奴らは穴で出入りしているのさ。」
会議は夜まで続き、翌日は魔界にいくメンバーを決めようとしていたところで重大な事件が発生した。
「会議中失礼します!!!しかし大変なことが起こったんです!」
城の兵士達が息を切らせて伝えてきたこと、余程のことでも起きない限りあり得ないことだった。
「ゆ、勇者ダイ様の剣がどこにも見当たらないのです!!!」
部屋にいた者全員が耳を疑った。