「そんなこともあったかな。」
合同練習のあと、駐輪場で防具を自転車の荷台にくくりつけながら一人つぶやいた。
一年前は三人の女の子に取り囲まれたこの場所に、今は俺一人だけ。
「さて、待ちかねているだろうな。」
ようやく荷台にセットし終えると、自転車を押しだす。道場の脇を抜けて、
噴水の前を通り抜け、「総合運動公園」と書かれた門まできた。
「ユージくん。遅かったね…」
タマちゃんが待っていた。少し頬を膨らませている。
「ゴメン、ゴメン、ちょっと忘れ物をして。じゃ、帰ろっか。」
「その前に…」
「ああ、そうだったね。ウン。その前に花屋によらなきゃ。」
「…そうね。」
「じゃ、今度こそ。」
そう言って自転車を走らせる。一年前も、彼女を待たせていたっけ。
自転車を走らせながら、一年前を思い出す………
一年前のあの日、俺は這々の体で彼女たち三人にはお引き取りを願った。
三人は、とりあえず一ヶ月後の合同練習まで休戦にして、お互い抜け駆けを
しないという協定を結んでいた。
「なんでこんなことになったかな…」
ため息をついて、自転車を押し出す。体力的な疲れだけでなく、精神的な疲れのせいか、
やけに自転車が重く感じる。道場の脇を抜けて、噴水の前を通り抜け、「総合運動公園」と
書かれた門まできた。
「ユージくん。遅かったね…」
タマちゃんが待っていた。あいかわらず表情にあまり出さないけれども、心配と非難が
織り混ざったような感じが見て取れた。
「ゴメン、ゴメン、ちょっと忘れ物をして。」
「そう?心配したよ?」
俺の言い訳を素直に信じてくれた。少し罪悪感を感じつつ、
「じゃ、帰ろっか。」
といって自転車をこぎ出した。
「ただいま。」
「遅かったね、ユージ。お風呂が沸いているから入りなさい。あ、バッグの中の
洗濯物も出してね。」
母さんの声に返事する気力もなく、居間にカバンを置いて着替えを取り出すと、
そのまま風呂場に向かった。頭をゴシゴシと洗ってまずさっぱりした気分になる。
それから石鹸を泡立て、隅から隅まであらう。一心不乱に、考えないように。
よく洗い流した後、湯船につかる。ふーっと、一息ついて落ち着いたとたんに、
考えないように、考えないようにとしていたことが頭の中にわき出てくる。
(三人とも何で、俺に目を付けたのかなぁ。そりゃあ、女の子にもてるのは
男として誇りに思うことだけども…三人とはほとんど面識がないし。小川さん…
タマちゃんとも違う感じの、小さな可愛い女の子という感じだったかな。
青木さん…ポニーテールが印象的な、明るいお姉さんと言った感じかな。
近本さん…ちょっとキツめの美人系の、しっかり者のお姉さんと言った感じか。
三人とも素敵な女の子なんだけども…)
脳裏には一人の女性の姿が浮かんでいた。きれいな長い黒髪。娘に対する
あふれんばかりの愛情のこもった笑顔。胴衣をまとい竹刀を手にしたときの
しゃんとした姿勢に、凛とした表情…彼女が剣を振るう姿を久しく見ていない。
いや、もう見られないものの、俺の心には強烈なイメージとして残っている。
かっこいい女性であり、その…まぁ、いわゆる…初恋…
考えすぎたせいか、少しのぼせてきたようだ。湯船から飛び出る。
「やめよう!考えるのは!」
そう叫ぶと、火照った身体をさますべく、シャワーをひねる。「冷」だけを。
「わっ、ちべてっ!」
冷たさのおかげでよけいなことを考えずに済んだ。シャワーを止めると、
タオルで水分を拭き取り、風呂を出た。
晩ご飯を食べているときも、ボロボロだった。お茶を湯飲みに注ぐつもりで、
机の上に注いでいたり、キリノ先輩が持たせてくれたメンチカツを落っことしたり…
母さんは、
「よっぽど疲れているのね。」
と笑っていたけど、俺は曖昧な笑顔を浮かべるしかなかった。
次の日からは、意識して剣道や勉強に打ち込むことにした。考えないように、
考えないように…そんな姿を見て、コジロー先生は、
「合同練習がいい刺激になったかな?えらくやる気じゃないか。」
と言っていたけど、そんなんじゃないんです。
このまま初恋を上書きして、好きだといってくれる誰かとつきあうのか、
でもそれじゃあ、一人を選ぶことでほかの女の子の気持ちを台無しにするわけだし、
かといって、彼女たちの真剣な目を見ると、邪険に断るわけには行かないし、
でも俺の理想はやはり瞼の奥のあの女性であって、彼女たちではないし、
だから初恋を大事にして理想の女性が現れるのを待つのか、でもその場合は、
一生女の子とつきあうなんてことは無理なわけで、いいじゃないか、せっかく
鴨が葱をしょってやってきたんだから、つまみ食いすればいいじゃないか、
いやいや、それはとても失礼な話し…といったことが胸の奥を渦巻いているから、
その雑念を振り払うために剣を振るっているんです。
結局、なんの進歩もないまま、合同練習の前日を迎えてしまった。
練習を終えて着替えを済ませる。部長になった栄花くんは、宮崎さんと
明日の合同練習のためにポカリやスナックバーを買い出しにいってくれる
ということなので、俺がカギを閉めて職員室へ返しに行った。
駐輪場に来ると、タマちゃんが待っていた。
「先に帰ってくれてもよかったのに。」
「うん…でも…」
彼女が言いよどむ。珍しいことだと思いながらも、荷台に防具を乗せて、セットする。
それから彼女に声をかける。
「ゴメンね、待っていてくれて、ありがとう。じゃあ、帰ろっか。」
そう言って自転車をこぎ出す。
いつもの道を通って帰る。他愛もない話をしながら。彼女と別れる角に来た。
さよならをいって別れようとすると、珍しく彼女の方から声がかかった。
「ユージくん。最近おかしい。」
図星を指されて、ドキッとしたけど、平静を装って答える。
「そうかな?いつもの通りだよ。」
「ううん。なんか違う…最近ものすごく動いてばかり。勉強も、剣道も…」
「そりゃ、文武両道、両立させるためだよ。」
「でも、この一週間は、あたしの知っているユージくんじゃない…」
「気のせいだよ。」
「そんなことない!」
大きな声だった。一瞬周りが静かになる。タマちゃんが口を開く。
「ねぇ、ユージくん。これからうちの道場に来て。」
「えっ?何で…」
「直接あたしと語って欲しいな。竹刀で。」
彼女も武道家の端くれ。俺の心の動きを剣道で見極めようというのか。
ちょうど俺も、明日のことを考えるとげんなりするから、竹刀をふるって忘れたかった。
「わかったよ、タマちゃん。行こうか。」
そう言って自転車の向きを変えた。
川添道場に来ると、電気が消えて真っ暗だった。
「あれ?今日の練習は?」
「お父さんが地区連盟の人たちと温泉に行っているから、お休みなの。」
そうタマちゃんはいうと、カギをがちゃがちゃとやって道場の扉を開いた。
彼女はいったん自宅の方へ引っ込んだ。そこで着替えて来るつもりだろう。
俺はたった一人なので、道場の片隅に荷物を置くとそのままそこで着替えた。
着替えを終えて正座して待つ。一人で静かな環境にいると、また瞼に
あの女性が浮かんでくる。黙想の時のいい姿勢。素振りのかけ声。
そんなことを考えているとタマちゃんがあらわれた。
が、いつもの道場での紺色の胴衣ではなく、白の胴衣に白の袴だった。
これは、椿さんの…
「おまたせ。すぐに防具をつけるね。」
彼女はそう言うと、呆気にとられている俺を差し置いて防具をつけ始めた。
あわてて俺も防具をつけ始める。
(なんで…今日に限って…)
動揺が隠せないのか、籠手をつけるのに手間取る。ようやくつけ終わると
立ち上がり、彼女と向かい合う。まず正面へ礼。そして互いに礼。そして
前に進んで竹刀を抜き蹲踞する。
「ユージくんが合図して。」
「わかった。じゃ、始め!」
その合図で立ち上がる。まずかけ声をだしながら間合いを取る。まずはこっちから
仕掛ける。面をねらったもののあっさり交わされる。逆に胴をねらわれるが、
接近しすぎていたために有効打にはならなかった。
こんな感じで一進一退の攻防になった。どれくらい続けていたのか、お互い
何本とったのかわからなくなった。俺も疲れてきたから、タマちゃんに声をかけた。
「次の一本で最後にしようよ。」
「わかった。じゃ、仕切直しね。」
そう言って中央線に戻る。彼女が先に中段に構える。次いで俺が構えると同時に叫ぶ。
「よし、始め!」
その言葉を合図に、彼女は上段に構えた。
(えっ…それは…)
小さい彼女が上段に構えても不利なのに…いやいやそんなことではなく、
この構えは椿さん…
「ユージくん!」
彼女の声が飛ぶ。イカン、こんなことで気を取られては。タマちゃんも本気なんだな。
それじゃ、こっちも本気で行きますか。えーと、六○四の剣によると、上段に対しての
セオリーは平青眼だよな、でもタマちゃんは小さいから意味あるのかな…などと考えながら、
気合いを入れて構える。そして逃げるのではなく、攻めるために体重を前へ…
それっきり、二人は動かなかった。たぶんどちらかが動いたときに勝負は
決するのだろう。張りつめた空気が高まっていく。
「にゃー」
どこかでねこの声がした。それ合図に彼女の『中段の構えの小手』をねらう
素振りを見せる。その動きにつられて、彼女は小手を防ごうと、一瞬上段の
構えが崩れる。そのままがら空きになった彼女の面をねらう。
バシィンっ…道場に音が響いた。
「強いね…ユージくん…」
「そんなことないよ、タマちゃん。」
そう言って礼を交わし、面を外す。
「タマちゃん上段で構えるなんて…さすがだね、格好良かったよ。」
「でも、本物の、練習を重ねた形じゃないから…簡単にユージくんの作戦に
引っかかっちゃった。」
「何言っているの。これから練習すれば、椿さんみたいになれるよ…」
「お母さんの…」
そう言うと、彼女は黙ってしまった。
そのまま、俺は防具を片づける。全部袋に入れ終わった後で、彼女に尋ねる。
「どう?タマちゃん。俺と竹刀で語ってみてどうだった?まだおかしいかな?」
「うん、真面目に、真剣に取り組むところは、いつものユージくんだと思うけど…」
「けど?」
「なにかがちがう…」
「どこが?」
「いつものユージくんは、何か困ったことがあったら、世間話みたいに軽くでも、
あたしに話してくれた。でも、今のユージくんは、あたしに隠している。」
「えっ、な何も隠すことなんて…」
「ユージくん。明日は誰を選ぶの?」
そのものズバリ突かれて、俺は息を呑んだ。
「あたしね、見ていたんだ…」
「そうなんだ…」
「ユージくんやさしいから、きっとその場ではすぐに断ることはないと思っていた。
そして真剣に考えてお返事するんだろうなと思っていた。」
「う、うん…」
「でも、最後はきっと全員にお断りするんだろうなとも思っていたんだ。
「なんで?」
「だって、あたし知っているもん…ユージくんの中には、あ、あたしの、お母さんが…」
そうか、胸の奥に隠していたつもりなんだろうけど、タマちゃんにはわかっていたのか。
「だから、お母さんみたいに白袴をつけて、お母さんみたいに上段で戦えば、きっと…」
「きっと?」
「ユージくんはあたしを意識してくれるかなと思ったんだ…」
「それって…」
「ユージくん…行かないで。昔から、やさしくて、力強くて、あたしのことを支えてくれる
あなたが、あたしの目の前からいなくなるなんて考えられないの…」
そう言うと、彼女の瞳から静かに涙がこぼれた。しゃくり上げながら、彼女は続ける。
「でも、仕方がないよね…あたしは小川さんみたいに女の子らしくないし、
青木さんみたいに明るくないし、近本さんみたいにしっかりしていないし。
そしてなにより…グスッ…あたしは…お母さんじゃない…」
俺は呆然としてしまっていた。ここまで彼女が俺のことを想ってくれていたなんて。
いままで彼女と過ごしてきた日が思い出されてくる。そうだね、いつも俺たちは一緒
だったよね。もしかしたら、俺は…瞼の裏から椿さんの姿が薄れる。泣いている彼女の
姿が強烈に焼き付く。いとおしさがこみ上げてくる。
俺は静かに立ち上がると、彼女のそばへ行き、やさしく抱きかかえる。
「あ、ユージくん…」
「ごめんね、タマちゃん。泣かせてしまって。」
「ううん。あたしこそ、ゴメン、ユージくんを困らせるようなこと…」
「ううん。いいんだ、こっちこそゴメン。もう泣かないで。」
そう言うと人差し指で彼女の涙を拭う。
「タマちゃん。俺はね、確かに椿さんに憧れていたのかも知れない。」
彼女は黙ったまま、おとなしく俺に抱きかかえられている。
「でも、それはあくまでも憧れであって、『守りたい、大切にしたい』って
想うのは、タマちゃんだけだよ。」
「ウソ…」
彼女は小さくつぶやく。
「ウソじゃないよ、今気づかされたんだ。俺が今まで剣道をがんばってきたのは、
タマちゃんに釣り合う男になるためなんだろうと。ホラ、男だから、女の子より
弱いのは恥だからっていう面もあったんだろうけど。」
「ユージくん…」
新たに涙があふれてきたようだ。
「だから、タマちゃん。共に歩んでいこう。俺がついているから、もっと
自分に自信を持って。タマちゃんはタマちゃんでいいんだ。二人で、
二人らしく大人になろうよ。」
「ありがとう。ユージくん…」
その声を合図に、俺たちは唇を重ねた。
最初はやさしく唇を重ねるだけだったものが、次第にお互いの唇を軽く咬んだり、
舌をさしいれたりと、激しいものになってきた。やがて、どちらからともなく離れる。
真っ赤になった彼女がいう。
「ユージくん。部屋まで連れていって欲しいな…」
「それって…」
「証が欲しいの。」
そう言うと彼女は身を縮こまらせた。
俺は抱きかかえた手をずらし、いわゆるお姫様だっこにして、彼女を抱き上げた。
「あっ」
彼女は声をあげたけど、真っ赤になったまま、おとなしく抱きかかえられている。
そのまま、何とか道場の扉を閉め、川添家の玄関を開け、彼女の部屋に入った。
何年ぶりに見るのだろう。相変わらずブレイバーシリーズのDVDなどが並んでいて、
女の子らしさには若干欠けるものの、きれいに片づいた部屋だ。俺は静かに彼女を
ベッドの上に下ろす。そして、彼女の胴衣を脱がしだす。
彼女が可愛く抗議の声をあげる。
「ね、ねぇ、シャワーを…」
「タマちゃん。俺は一瞬でも離れたくないんだ。それに、汗も含めて
タマちゃんのすべてが欲しい。」
そう言って、彼女の瞳を見つめると、真っ赤になって固まった。その隙に、袴や
胴衣の紐をほどいていく。やがて、彼女のうすい胸が現れた。
「恥ずかしい…あんまり見ないで…」
彼女が恥じらって顔を背ける。
「きれいだよ、とっても。」
そう言うと、小振りな胸をもみしだくというか、なで回す。
「あん」
軽く彼女が声をあげる。俺はそのまま手を、舌を這わす。次第に、小さな乳首が
自己主張を始めた。
「タマちゃん、感じているの?立ってきたよ。」
そう言うと、可愛く喘ぎながら答える。
「あん、くふっ…これが、感じているの?」
「そうだよ、だからここを…」
その乳首をコリッと咬んでみる。
「きゃうん!いきなり…」
彼女はビクッと震えた。
「可愛いよ、タマちゃん…」
そう言うと、彼女と唇を重ねる。左手はそのまま胸を攻める。そして右手を
袴の隙間から下半身に差し込む。そこは熱気にあふれていた。
どうにかこうにかして、その熱気の中心部を見つけ、下着の上からなぞる。
彼女は身をよじらせるが、体重をかけて、唇も、右手も、左手も離さない。
やがて、息苦しくなったのか、彼女が首を振って大きく息をつく。
「はっ、はっ、はあっ…」
くったりしている隙に、胴衣を完全に脱がし、彼女の腰や脚を持ち上げ、
袴を完全に脱がす。ショーツだけの姿になった。
「ユージ、くぅん…」
彼女が潤んだ瞳で見つめる。興奮した俺は、ゴクリとつばを飲み込むと、
彼女のショーツに手を伸ばした。おそるおそる手を伸ばして、そっと引き抜くと、
彼女と身体の間に5,6本糸を引いた。そのまま、わき出す泉に口を付ける。
切れ目から可愛い突起も。そのたびに彼女は可愛く啼く。
(もうそろそろかな?俺も限界だし)
そう考えて、彼女の秘所から顔を離し、俺自身もすべてを脱ぎ捨てた。
「それ、入るのかなぁ…」
タマちゃんが不安そうに言う。
「うん…大丈夫かな?」
「お願い、やさしくして…」
「努力はするけど、約束はできないよ」
そんなことを言いながら、ナニを中心部にセットする。
「あ…」
「くっ…これは…」
狭い穴を突き進む。いくら濡れているとはいえ、処女でしかも小柄な彼女だから、
とてつもなくきつい。やがて、進入を阻む感触が。これがいわゆる処女膜だろうか?
ナニの先端で、そのまま突き進もうと考えたが、一呼吸おく。
そして彼女の瞳を見つめると、
「行くよ。」
とだけ言った。彼女は小さくうなずいた。それを合図に突き出す。
ブチッ
かすかにだが、なにかが破れた音がしたような気がした。同時に彼女が叫ぶ、
俺の肩を強く握りしめる。接合部からは純潔の証である血がかすかに流れている。
「タマちゃん。俺たち一つになったよ…」
「うん…あたしはユージくんのもの…そしてユージくんはあたしのもの…」
涙を浮かべている彼女がいとおしくて、抱きしめる。
どれくらい経っただろうか、彼女が静かに言う。
「ね、ねえ?」
「なに?」
「男の子って、動かないと気持ちよくならないんでしょ?」
どこでそんな知識を仕入れたのかなと、少しあきれながらも答えた。
「うん、まぁ、そうなんだけど…」
「あたしはいいから、ユージくん、気持ちよくなって…」
「でも。」
「少し痛みは退いたから。」
そう言って微笑んだ。
「わかったよ。じゃ、タマちゃん。お言葉に甘えて、少しずつ動くね。」
そう言って、少しずつナニを引き抜き、また差し込むことを繰り返す。
「…うぅ、あっ!」
まだ痛むのか、顔をしかめている。俺が何を言っても、今は返事をする余裕がないようだ。
それどころか、俺も彼女の中の気持ちよさに、あんまり話しかける余裕もない。
「くっ…あぁっ、あん…やん」
「ううっ…かはぁっ」
回数を重ねる毎に、少しづつだけど快楽の声が混ざってきたようだ。
「あん、あん、うんっ…」
潤んだ瞳と、甘い声がますます俺を興奮させる。
一瞬動きを止めて、ぎゅっと抱きしめる。つながったまま、唇を重ねる。
「ユ、ユージ、くぅん…」
彼女がいとおしくていとおしくてたまらない。ずっとこうしていたいけど、俺も限界だ。
「タマちゃん、もう…」
「うん。来て…」
そう言うと彼女は両手を俺の背中に回し、両足を腰の裏でクロスさせる。
同時に俺は腰の動きを再開させる。激しく、彼女の中を突きやぶらんかぎりに。
「あふっ、あ、あ、ああんっ!あーっ!!」
最後の一突きとばかりに押し込んだときに、彼女の絶叫が響いた。同時に彼女の中に、
俺はすべてを放出していた。
そのまま二人は朝まで抱き合ったまま眠っていた。目が覚めてから、お互い
気恥ずかしくて「おはよう」がなかなか言い出せなかった。服を着替えに家に戻ると、
「朝帰りはまだ早い!!」と母さんにどやされたけどね。やぶ蛇にはなりたくないから、
ひたすら頭を上げて嵐が過ぎるのを待ったけど。
そして二人並んで市立武道場に向かう。玄関には三人が待ちかまえていた。
向こうが話しかける機先を制して言った。
「ゴメン!やっぱり俺にはタマちゃんが隣にいない日々は考えられないんだ!」
二人をつなぐ手が熱く感じられる。三人は一瞬あっけにとられたけど、
やがて、ふっ笑うと、
「やっぱり」
「そうだよね」
「お幸せに」
と言ってくれた。俺たちはそのまま頭を下げた。どれほど下げていたのだろうか、
頭を上げると、三人は姿を消していた。
「ありがとう…」
自然とつぶやいていた。三人とも素敵な女の子だから、きっと俺以上にいい男と
出会うだろうね。ありがとう。こんな俺たちを認めてくれて…祝福してくれて…
………「あぶないっ!」
タマちゃんの声に我に返る。イカンイカン、一年前のことを考えていたせいで、
つい、信号を見落としたらしい。
「あー、びっくりした。」
「もう…気をつけてね。」
「うん、ゴメンね、タマちゃん。」
「うん。もう…ユージくんまでいなくなったら、あたし…」
ああ、そうだ。もう俺だけの命じゃないんだ。そう考えると、あらためて
左右をよく見てから、自転車をこぎ出した。
しばらく坂道をこいで、駐輪場に着いた。「諸車進入禁止」とあるから、
ここからは歩かなくちゃいけない。自転車を止めて鞄を下ろす。
防具は、まぁ盗んでいく物好きはいないだろうから、荷台にくくったままでいいかな?
彼女は花束を持ち、俺は手桶をぶら下げて砂利道を歩く。そして椿さんが
眠っている場所に着く。鈍く光るその石に軽く黙礼をする。それから周りを見渡すと、
少し雑草が目立つ。石に水をかける前に、その雑草を摘もうかなと考えていたら、
タマちゃんはしゃがんで、静かに椿さんに手を合わせた。
俺も彼女の横にしゃがんで両手を会わせようとしたら、砂利道の隙間から薄紫色の
花が咲いているのを見つけた。レンゲ草かな。可憐な姿、砂利を押しのける力強さ。
椿さんの生まれ変わりだろうか。
軽く目を閉じ、手を合わせてつぶやく。
椿さん。タマちゃんと結ばれて、一年経ちました。体は大きくなったけど、
俺はまだまだ未熟です。でも、タマちゃんを幸せにできるように、
タマちゃんにふさわしい男になるように、精一杯のことをします。
だから、タマちゃんを…あなたの大事な人を、俺にまかせてください。
最終更新:2008年06月25日 16:40