「そんなこともあったかな。」
一年前、三人の女の子に囲まれたことを思い出して、駐輪場で一人つぶやく。
その声をかき消すかのようにザーザーと雨が降る。
「まいったね。確率30%でも降るときには降るんだ。」
合同練習を終えて出てきたときには、雨が降り出していた。みんな傘の用意を
していなくて途方にくれていたが、栄花くんと宮崎さんは「春雨じゃ、濡れていこう」
などといって、そのまま二人並んで歩いていった。風邪ひかないかな?
岩佐君と外山さんは、岩佐君のお家の人が迎えに来たので、一緒に帰った。
残りの人たち、キリノ先輩や、タマちゃんたち女の子は、コジロー先生が車で
送っていくことになった。残されたのは俺一人。
「ホント、どうしようかな…」
暗い空を見上げてぼやくと、携帯が震えた。あ、マナーモードのままだった。
あわててポケットから取り出して確認する。横尾さんからだった。
「はい、中田ですが…」
「ああ、あたし、あたし。どう、今日は合同練習だったんだろ?」
「そうですよ。よくご存知で…」
「石橋先生から『手伝いに来い』って言われていたんだ。」
「あれ、でも今日は来ていなかったですよね。」
「うん。ちょうど大学の練習試合と重なっていてね。どうだった?」
「まぁ、可もなく不可もなくといった感じですけど。」
「おまえらしいな。ところで、雨は大丈夫か?」
「ちょうど駐輪場で途方にくれています。」
「そっか…ちょうどあたしも練習試合が終わって帰るところなんだけど、
迎えに行ってやろうか?」
「え、いいんですか?」
「そっちこそ、免許取立ての怪しい運転でよければな。」
「いえいえ、ぜひお願いします。」
「じゃ、門の前に着いたら、もう一度鳴らすわ。」
そういって電話は切れた。
彼女と、横尾摩耶さんは、以前練習試合でタマちゃんとの試合を見ていたから、
面識はあった。タマちゃんの瞬殺のイメージしかなかったけど。でも一年前の
合同練習でお相手をしてもらってわかった。スゴイ、この人。引き分けにもかかわらず、
押されっぱなしだったなという、自分としては不満の残る試合だった。
そう、その合同練習の後、俺はあの子達に囲まれたんだ。「つぎの合同練習で
お返事します」とか、なんとかいって、三人には引き取ってもらった。
「なんでこんなことになるのかな…」
とため息をつくと、横尾さんが物陰から現れた。
「よう、室江の中田くんだったっけ。モテるじゃないか…」
「は、はぁ…」
「わりーな。あたしも出るに出られなくて、結局一部始終を見させてもらったけど…
どうするんだ?」
「それが、なんとも…」
「ま、あたしも女の端くれ。一言言わせてもらうなら、中途半端はよしなよ。
それがたとえ残酷な返事であっても。」
「そう、ですね…」
「ま、そんなしけた面すんなよ。なるようにしかならんのだから、深刻ぶるな。」
そういうと、横尾さんは俺の肩をバシバシとたたいた。
結局、次の合同練習の日、一人ひとりに丁寧にお断りをすることにした。そりゃ、
女の子に好意を持たれて悪い気はしないけど、彼女たちのことをよく知らないし、
なにより、今の俺に、女の子と付き合うということがピンとこないんだ。だから
横尾さんの言うように、中途半端な気持ちで付き合うぐらいなら、きちんとお断りする
ほうが彼女たちのためにもいいだろうと思って…
小川さん、近本さん、青木さんの順で説明していった。悲しそうな顔を見るのは
忍びなかったけど、中途半端はいけないと思って、丁寧にお断りをした。青木さんが
少し長引いたけど、通りかかった横尾さんが「みっともないよ」と一言、
声をかけてくれたから、彼女も引き下がってくれた。もしかして、
気にかけていてくれたのだろうか?
それ以来、横尾さんとは話をする機会が増えてきた。最初は剣道のこと。
合同練習でも何度か剣を交えた。ついで勉強のこと。彼女の志望大学と
俺の志望大学が一緒なので、試験のことを話したり、図書館で勉強したりした。
そして受験勉強のストレス解消とやらで、長電話につき合わされたり、
道場での個人練習につき合わされたりと…
俺自身も、年の近い兄貴?ができたみたいで、横尾さんにつきあわされるのは、
次第に苦でなくなっていった。コジロー先生と石橋先生もこんな感じだったのかな?
「やはり師弟は似るのだろうか…」
と独り言を言ったときに、携帯が鳴った。横尾さんからだった。
「着いたぞ。」
「スミマセン。今から行きます。」
道場の横を通り、噴水の前を通って、「総合運動公園」とかかれた門まで来た。
白い軽自動車がハザードをたいて止まっていた。助手席の窓を軽くノックすると、
窓が自動的に開いて、横尾さんの声が聞こえてきた。
「待ったか?防具や竹刀は、後ろにのせな。」
「スミマセン。わざわざ。」
そういって後ろのドアを開け、防具と竹刀を手早く積み込む。
それから助手席のドアを開けてもぐりこむ。シートベルトを締めるのを見計らって、
車が動き出す。
「スミマセン。ほんと…」
「いいってば。おまえには受験の頃、いろいろ世話になったからな。」
「そんな、俺なんて何にも…」
「いいから、人の厚意は素直にもらっておけ。」
「はぁ…それじゃ…」
「ところでどうだった?今日は。」
「まぁ、さっきも言ったけど可もなく不可もなくですね。」
「ウチの後輩たちはどうだった?特に安藤とか…」
「あ、安藤さんですか…」
俺が口ごもったのを見て、横尾さんも察してくれたようだ。それきり、
車内を沈黙が支配する。
ぐーっ。
沈黙を破ったのは、俺のおなかの音だった。
「くっくっくっ…さすが育ち盛りだな…」
横尾さんがさも面白そうに笑う。恥ずかしくて耳が赤くなる。
「どこかドライブスルーでも寄るか? 」
「いえ、もう晩飯の時間ですし。」
「それもそうだな。じゃ、まっすぐ帰るか。」
「あ、でも、どこかスーパーに寄ってもらえるとありがたいかも。」
「なんでさ?」
「今日と明日は、うちの両親はじいちゃんのところに行っているから、
今晩と明日の朝は俺が自分で用意しなくちゃならんのです。」
「ふーん…それならおまえ、晩飯はあたしの家で食べさせてやろうか?」
「え、そんな…」
「だって、武道場からだったら、おまえの家よりもあたしの今借りている
下宿のほうが近いし。それにおまえ、出来合いのものを買って帰る気だろう?
それよりもあたしがちゃんとしたものを作って、食わせてやる。」
「横尾さん料理できるんですか? 」
つい、口を滑らせてしまった。ギロリとにらまれる。
「おまえ、あたしを女だと思ってないだろう?」
「いえ、そんな、めっそうもない。」
「いーや、思っていないからそんなことを言うんだ!」
「ホントですってば!」
「それならウチに寄って食っていけ!」
「わかった、わかった、わかりましたから、前を見て運転してー!」
「目に物を見せてやるー!」
結局そのまま、横尾さんの住む下宿へ連れて行かれることになった。
下宿とは言うものの、簡素なワンルームマンションという感じだった。
「まー、座って座って。」
横尾さんはそういいながら、丸いちゃぶ台を出してくる。どこのサザエさんの
世界だよ…と思いながら見渡すと、小さな和ダンスといい、アンティークっぽいものが
目に付いた。
「へぇ…いいですね、こういうの…」
そういいながら、ちゃぶ台を撫で回す。適当に年季の入った傷や凹みが渋みを出している。
「ありがと。そんじゃ、ぱっぱとやるから、待ってな。」
そういうと、横尾さんは台所に消えた。冷蔵庫の開け閉めの音や、
包丁の音が聞こえる。やがてジャージャーという音が。炒め物だろうか?
「はい、おまちどうさん。」
豚の生姜焼き、ほうれん草のおひたし、海鮮サラダなどが、ちゃぶ台に並んでいく。
「へぇ…」
「まぁ、大見得を切ったけど、ありあわせのものだからな…でも、
栄養のことは考えているつもりだぞ。」
「そうですね、おみそれしました。」
「わかればいいんだ…それじゃ、いただきますか。」
「はい、いただきます。」
手を合わせてから、箸に手を伸ばす。恐る恐る料理に手をつけていったが、
どれもこれも上手にできている。
「どうだ、味は?」
「いやー、どれもこれも美味いっスよー。スミマセン。ご飯、おかわりください。」
「そうか、それなら『まいりました』といえ。」
「まいりました。まいりました。だからおかわりをください。」
「よしよし。」
そんなこんなでありがたく横尾さんの手料理を頂戴した。
食後にインスタントコーヒーをいただいていたのだが、昼間の疲れのせいと
食後の満腹感のせいで、今度は睡魔が襲ってきた。横尾さんの話に相槌を
うっているものの、うつらうつらしだした。
気がつくと、横になって眠っていた。蛍光灯は消され、枕元に小さなランプが
鈍い光を放つ。ちゃぶ台は片付けられていて、頭には枕が。体にはタオルケットが
かけられていた。あわてて体を起こそうとすると、横尾さんの声がする。
「ようやく目覚めたか。」
声のするほうを見ると、横尾さんも横になって、ひじで頭を支えていた。
風呂上りなのだろうか、髪の毛は濡れていた。服もTシャツとショートパンツに
着替えていた。
あわてて体を起こすと、くっくっくっと笑いながら横尾さんが言う。
「カワイイ寝顔だったぞ。」
「そんな、悪趣味ですよ、人の寝顔を見るなんて…でも、すみません。」
「よっぽど疲れていたんだな。いいよ。いいよ。」
そう言いながら、横尾さんは起きあがると、蛍光灯をつける。
まぶしい光で、徐々に頭が覚醒する。おきあがって、あぐらをかく。
それにしても、わざわざ俺がおきるまで寝かせてくれたり、タオルケットを
かけてくれたり、もっとさかのぼれば、飯を食わせてくれたり、車で迎えに来てくれたり、
横尾さんは何でこんなに俺によくしてくれるのだろう?ふと、気になって尋ねる。
「横尾さんは…」
「ん?」
「何で、俺にこんなに良くしてくれるんですか?」
横尾さんは一瞬、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をすると、大きくため息をつき、
どっかとあぐらをかく。
「ちょっと、座れ。」
「座っていますけど。」
「正座で。」
俺が正座で、横尾さんの正面に座ると、彼女は少しずつ話してくれた。
「最初おまえを見たときはなぁ、モテモテの優男のぼくちゃんという感じで
見ていたんだ。」
「はぁ…」
エライ言われようだな。少しへこむ。
「だから、ちょっとヤキを入れて、性根を据えなおしてやろうかと、合同練習に
つきあわせたり、勉強で呼び出したりして鍛えてやろうと思っていたんだな。」
「そうですか…」
「そう意味では、あたしもおまえを男とは見ていなかったんだけどもさ、ほら、
ウチの一年が鎌崎の連中に絡まれていた時…おまえが助けてくれたんだろ?」
そう言えば、そんなこともあったかな?
「あたしも見ていたんだけど、文句のつけようがないくらい、水際だった裁き方を
したからな…それにしても、よその学校同士のもめ事だから、放っておけばいいのに、
火中の栗を拾うその義侠心。上級生相手でも一歩もひかないそのまっすぐな姿勢。
あたしゃ、お前の中の男に気づいていなかったんだな、あたしは…それ以来、
おまえを見る目が変わったんだ…剣を交えたり、話をしたりしているうちに、
ますます、おまえは磨けば光るダイヤの原石だと思うようになったんだ。」
「そんな、ダイヤだなんて…」
「謙遜するなよ。ま、それがおまえのいいところでもあるんだけどさ。
素直な性格同様の、癖のない太刀筋。打てば響くように飲み込んでいくその頭脳。
誰彼となくやさしい穏やかな性根。時折見せる男らしい一本の筋。
そして、女心をわからん朴念仁さ加減…だから、あたしも、一年前のあの子達の
気持ちがよくわかるよ。」
「え、それって…」
「そ。あたしはそういう気持ちなのに、おまえは一向にあたしを女としてみてくれない。」
「…」
「だから、ここで一つ、あたしをアピールしてやろうかな、と…」
そう言うと、横尾さんはTシャツを脱ぐ。驚いたことに下着はつけていなかった。
お椀のように盛り上がった、豊かな胸に目が釘付けになる。そして、あっけに
とられている俺に身体を寄せると、顔を俺にぐっと近づけて言った。
「そう、だからおまえも一年前と同じように、決断を下してくれないか?あたしも覚悟を
決めている。それがたとえあたしにとって残酷な結論であっても受け入れるよ…
おまえは、あたしを女としてみてくれるのか、それとも、ただの志望校の先輩か…」
今までの横尾さんとの交流が頭の中をめぐる。お互い真剣に剣を交えたこと…勉強で
お互いの苦手分野の教えあいっこをしたこと…横尾さんの愚痴を俺が聞き、逆に俺の
愚痴を彼女に聞いてもらったこと…なんか、年の近い兄貴を相手にしているような
交流だったけど、今にして思えば彼女が俺をさっぱりと、かつ優しく包んで
いてくれていたよなぁ。今まで意識はしていなかったけど、俺は内心彼女に甘えて、
彼女に惹かれていたのかな…そうでなきゃ、今日も横尾さんの厚意に甘えては
いないだろう…
俺は横尾さんの肩に手を伸ばすと、ぐっと抱き寄せる…つもりが、そのまま
押し倒された。胸が押し付けられる。凄く熱い。そのまま口付けを交わす…
というか奪われる。
何分経っただろうか。息苦しくなって口を離す。二人の間には唾液の橋がかかる。
「あ、ユージ…」
潤んだ目で横尾さんが言う。
「続きは…」
そういって目線をベッドにのばす。そうだな。床では痛いから。横尾さんは
立ち上がると、ショートパンツを脱いでベッドの上で正座して、おいでおいでと
手招きをしている。俺もあわてて服を脱いで、ベッドの上に行き、正座をする。
横尾さんと向かい合う。
「ま、それじゃ、よろしく頼むぞ、ユージ。」
彼女はぺこりとお辞儀をする。端から見れば、間抜けな光景だろう。なんか、
ペースが狂うな。あわててこちらも、
「いえいえ、こちらこそ…」
とお辞儀をすると、そのまま肩をつかまれ、また押し倒された。そのまま唇を交わす…
というか、奪われる。彼女は舌を差し込むと、俺の前歯からその奥までなで回したり、
情熱的に俺の舌と絡めたりする。
いつの間にか息苦しくなって、口が離れる。その好きに抗議の声をあげる。
「ひどいや、横尾さん…」
「まって、ユージ…名前で呼んで…」
頬を染めて彼女はそう言う。ものすごいギャップに、「ホンマにアンタ横尾さんかいな。」
と言いたくなる。それを我慢して、ご期待に応えることにする。
「摩耶さん…」
「ユージ…」
そういって視線を交わし、また唇を重ねる。ヤラれっぱなしではくやしいので、
唇を重ねると同時に、右手を彼女の豊かな胸に伸ばす。手からはみ出すくらい大きい。
そしてゴムマリのように、はじき返そうとする感触がする。次第に乳首が硬くなってきた。
(俺の手で感じてくれている…)
興奮した俺は、唇を放すと、身体の位置をずらし、顔を彼女の胸の位置に持っていく。
そしてそのまま乳首に舌をのばす。舌先で形をなぞってみたり、唇で軽く噛んでみたり。
そのたびに摩耶さんは軽く喘ぎ声を上げて反応してくれる。その声がますます
俺を興奮させる。
俺は今度は左手を彼女の股間に伸ばす。ショーツ越しにでも、湿っているのがわかる。
胸から顔を離し、両手でショーツにかける。
「待って…」
摩耶さんから声がかかる。
「こんどは、あたしが…」
そういうと、180度、体を入れ替える。そして俺のトランクスに手をかけると、
そのままずり下げていく。興奮した肉棒を抑えるものがなくなった直立する。
彼女の右手が俺の肉棒に触れる。
「すごい…やけどをしそうだよ…熱くて、堅い…」
しばらく彼女の暖かい手で撫で回されていたが、今度は違う柔らかな感じがする。
「あむっ、うん…くふっ…」
これは舌で?アイスをなめるように上から下へ…筋に沿って…彼女の舌が這い回る。
あまりの気持ちよさに、腰が浮きそうになる。刺激されるばかりも悔しいので、
彼女の足をたたく。
「俺も、お返し…」
そういって足を引っ張る。彼女も理解したのか、股間を俺の顔の上に持ってくる。
そしてショーツをずらして秘所をあらわにする。
「すごい…」
彼女の秘所に顔を近づけた俺は、興奮のあまりそうつぶやいた。うす暗くて、
よくわからないが、そこは熱気に包まれており、手を伸ばすと湿り気を感じた。
そのまま顔を近づけて、茂みから、切れ目から、突起から、泉の中心部から、
それぞれ唇や指を思いつく限りに動かしてみる。そのたびに泉の奥から次々と
愛液が湧いてくる。
俺の刺激で興奮したのか、口の奥深くに咥えこんだり口をすぼめたりと、摩耶さんの
動きに変化が出てくる。俺も負けじと、泉の奥に下を差し入れたり、突起を軽く
押さえたりと変化をつける。
やがて、お互いの興奮が爆発する。
「う、うぉっ!」
「む、むーっ!」
声を合図に、俺は摩耶さんの口の中にすべてを出していた。その後、彼女は残っていた
ものも吸い上げた。
体を起こすと、彼女は顔をしかめながらも飲み込んでいた。
「にがい…」
「そこまでしなくても…」
「さて、と…」
そう言って彼女はショーツを脱ぎ捨てると、俺の上に馬乗りになる。
言わなくても…この先は…
「一度出したのに…すごいね…これ…」
そう言って、彼女は俺の肉棒をつまむと、泉の中心めがけてセットする。それから、
俺の目を見つめると、意外な言葉を口にする。
「なぁ、ユージ…」
「何?」
「好きだといって…」
突入体制を整えている今にしてみたら、何とも間抜けなことかも知れないけれども、
女の子にとっては、とても大事なイベントなのだろう。それならば、サービスしますか。
「好きだよ、摩耶さん。うん。剣道をしている姿も、勉強をがんばる姿も、
俺だけに愚痴をこぼしてくれる姿も、みんなみんな、好きだよ、愛してる。」
「うん。ありがとうユージ。あたしも…」
最後はよく聞こえなかった。彼女はポロポロ涙をこぼしていた。
普段の凛々しい姿とのギャップにクラクラする。
「じゃ、ユージ、おまえの童貞を、もらうぞ…」
俺の肉棒は、そろそろと彼女の中に隠れていく。
「あっ、くふう…」
濡れているとはいえ、痛みを感じるのか、彼女が痛みを混じった声を上げる。
「大丈夫?」
「いいから、最後まで、一気に…」
その声を聞いて俺も、腰を突き上げる。
肉棒の先端に何か触れた。これが処女膜かな?彼女の瞳を見つめると、軽くうなずいた。
それを合図に一気に腰を進めると、一瞬の感触の後に絶叫が響く。
「あ、ああああーっ!」
「摩耶さん…」
「いい、大丈夫だ…」
大丈夫なはずはないだろう。だって、俺の肩を握りしめるその手が、
強く食い込んでいるもの。全身がこわばっているもの。全身で『痛い』って
言っているじゃないか…そんな俺の迷いを後目に、彼女は言う。
「ははっ、覚悟は、していたけど…痛いもんだな…」
「大丈夫?」
「いいから、気に…すんな…」
彼女は静かにうなずいた。その健気な姿が俺の理性のたがを外したのか、
俺は猛烈な勢いで腰を突き上げる。
「あっ、くっ、はぅん!」
少しずつ、彼女の声に官能の響きが混じってくる。体もピンク色に染まり、汗が噴出して
いる。そんな姿がますます俺を興奮させる。というか、こちらのコントロールをはずれて、
自然と腰が動く。彼女の奥にえぐり込むたびに、汗や二人の体液が飛び散る。
ただ、物事には最終局面がある。我慢に我慢を重ねていたが、いよいよこらえきれなく
なってきた。
「くっ、も、もう」
暴発寸前のアラームが脳内に鳴り響く。摩耶さんの体内から抜こうとするが、彼女は
逆に深く体重かけて離してくれない。
「ちょ、ちょっと、ヤバ…どいて、くれないと…」
焦る俺の顔を見て、摩耶さんは笑った。背中がぞくぞくとするような、妖艶な女の笑顔で。
(そっちがその気なら!!)
俺は最後とばかりに突き上げると、すべてを彼女の中へ放った。でも、硬さが…とれない…
そのまま、俺たちは何度も何度も、気を失うまで交わった。
夜中にのどの渇きを覚えて目を覚ます。時計を見ると、四時頃か?
意識がはっきりするにつれて、右手のしびれと重さも意識する。
(そういえば、昨日は…)
行為の後、そのまま眠ってしまっていたようだ。摩耶さんは俺の右手に頭を乗せ、
俺にしがみつくようにして眠っている。なんだか見てはならないものを見てしまったような
気がした。
(寝顔はカワイイもんだな…こんなところは、女の人、イヤ、女の子なんだよな…
でも、どいてもらわないと、起きあがれない…)
そっと、引き離して身を起こそうとする。でも、結局彼女を起こしてしまったようだ。
「あ、んん…あれ、ユージ…」
「おはよう。摩耶さん。可愛い寝顔だったよ。」
とたんに彼女の顔が真っ赤になる。抗議の声もあげられないようだ。
「……!」
「ちょっとゴメンね…」
そう言って軽く受け流して、台所に行き、水道の蛇口をひねる。
二,三杯水を飲んでから、彼女のもとへ戻る。
「ユージ。後悔していない?」
「なんで?何で後悔しなけりゃいけないのさ。摩耶さんこそ、その、俺でいいの?」
「ユージだから、その…」
「俺も同じだよ。ゴメン、摩耶さん。まだまだ眠いや…」
そう言うと俺はまた布団に潜り込み、右手を伸ばす。また彼女がしがみついてきた。
俺の胸に顔を埋めるように。その重さを意識しながら、再び眠りについた。
最終更新:2008年06月23日 23:51