中田勇次を田中勇次と間違えて呼んでから二週間
何事も前向きが信条な私は、取り敢えず謝った。
謝って、それからメル友から始めた。
………
……
…
いや!「友達から始めた」って、ちょっと、それって、まるで「いつか恋人になりたいな!」みたいじゃない!
違う、違う、そういう気持ちでメル友になったんじゃなくて!!
でも、ユージ君は事情を話したら笑って許してくれて、けっこう度量があるよねーなんて
……いや、いや、いや、それはね、人間としてね
だって、だって、私の方が年上なんだよ?心が大きくなきゃいけないのは私じゃない!
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「……何悶えてるの、青木」
こ、こ、こ、小西さーーーーーん!?!!?!
「なんでここに!ここ私の家!私の部屋!!」
「いや、アンタ竹刀手入れするからって竹刀袋持っていったけどさ、コレ」
小西さんが差し出したのは竹刀削りだった。
「忘れてったろ?これないと手入れしようがないじゃないか」
「あ、ありがとう……」
「………」
な、なんでしょう……
「いや、別に。お茶ぐらい出してもいいとは思うけど」
い、いま持ってくるから、目を開かないで!恐い!なんか恐いから!!
「……傷つくねぇ」
「……で、この濃~~いお茶は嫌がらせかなにか?」
ごめんなさい、茶葉入れすぎました。
「アンタね、お茶ぐらい用意できないとお嫁に行けないよ」
うう……意外と古風だよ、小西さん。ちょっと小姑だよぉ……
「で、明日はデートなんだ?」
「ゲホッ!ゴホッ!」
お茶が喉に詰まった……く、苦しい……
「遊園地って、またベタというか、青いっていうか……
あ、ここの遊園地の近くに美味しい和菓子のお店があるんだよ」
「デ、デートじゃありません!一緒に遊びに行くだけです!!」
「田中くんと?」
「中田くんです!!」
あ……
「ふーん」
「ほ、本当に友達なんですよ!別につきあってるとかじゃなくて」
「つきあいたいんだ」
「だ~か~ら~~」
「いいんじゃない。結構男前だし、剣道も強いしね」
煎餅をかじりながら小西さんは雑誌の文字を追っている。
「別に他の奴らにバラしやしないから、安心していっといで。ああ、ちゃんと避妊はするんだよ?」
「小西さん!!」
ぬこ「よくじつ~~」
まったくもう、小西さんが変なこと言うから……言うから……
ああもう!忘れよう!こんなに良い天気なんだし
「あ、青木さーん」
「ゆ、ゆぅじぃくん!?」
声、裏返っちゃった……
「ゴメン、待った?」
「う、ううん全然!!」
「そっか、よかった。あ、タマちゃん。この人が青木さん」
………え?
「は、初めまして。川添珠姫です」
………え?
「折角だからタマちゃんも一緒にと思って。大勢の方が楽しいでしょ?」
ああ、うん、そう……だね……
「でも、青木さんの私服って新鮮だなぁ」
え!そ、そう!!
「どこから回ろうか?青木さんって絶叫系大丈夫ですか?」
「大丈夫っていうか、寧ろ大好き……かな」
「ホント?よかった」
……って、ユージ君さり気なく手を握ってる!握ってる!!
ユージ君の体温……たい、たい……いや、いや、おちついて、おちつくのよ私
そうよ、蜜蜂を数えるのよ。一匹、二匹、三匹……
ぬこ「さらによくじつ」
「それで?」
私が淹れたお茶(今度は及第点を貰えた)を小西さんが飲みながら、私に尋ねた。
「楽しかったですよ。ユージ君とタマちゃんと三人での遊園地……うん、楽しかった」
「友達三人で」
「友達三人で」
タマちゃん、良い子だったなー……
「折角、豊乳ブラまで買ったのにねぇ」
「な、何で知ってるんですかーーー!!」
「……冗談だったんだけど」
やぶ蛇だーーー!!
「いや、アンタの部屋だから別にアタシは困らないけど、転がり回るのやめなよ」
「アンタってホント……」
な、なんですか、小西さ~ん……
「………」
だ、黙らないでくださいよぉ
「いや、アタシが男だったらアンタのコト放ってなんか置かないのにねぇ……」
つつ…と私の顎を指でなぞる小西さん……
「は、はわわ……」
「冗談だよ、冗談」
た、食べられるかと思った……
うう、私ってばやっぱり蜜蜂なんだ。花の蜜をせっせと集める蜜蜂。
小西さんは獲物を狙う肉食のスズメバチ……
「……なんか失礼なコト考えてないかい?青木ィ」
「か、かんがえてないです、ハイ!」
ぬこ「でもって」
「ねぇねぇ、知ってる?」
部活前に井口っちんが着替えてる私の横でうわさ話を始めた。
「小西さんね、室江に道場破りにいったらしーよ?」
ええ!?小西さんが!?
「やっぱりあの小さい子のコト、かなり気に掛けてたもんねー」
「いやいや、話によると男子の方に勝負を挑んだらしーのです」
と寺池さん。
「ほほー、なんでまた?」
首を傾げる佐藤さんは、部室に小西さんが入ってきたのを見てそくささと出て行った。
「………」
「えっと、小西さん?」
「青木……」
「は、はい……」
小西さんは私の身体を強引に引き寄せる。
私の身体をすっぽり納めちゃうぐらい、小西さんと私には体格の差がある。
「だ、誰にも言うんじゃないよ?」
な、なんだろう……小西さん、いつになく真剣だ。
「………」
「………」
「………」
「………」
「中田勇次のアドレス、教えてくんない?」
待て。
小西さん、ちょっと待て。
なんで耳を真っ赤にしながら、それを言う。
「室江高校で何があったー!!」
以下、容疑者Kの証言
「アタシは、アタシの大事な友達に恥かかせた奴にヤキ…文句を言ってやろうと思って、室江に言っただけさ
で、何て言っていいか分からなかったから取り敢えず殴っ…肉体言語を使うコトにした。
いつの間にか試合をすることになってた。
負けた。男にも負けたコトがなかったアタシが負けた。勇次は強かった。
その時だね、アタシの身体の中に衝撃が奔ったのは。
他人を屈服させる悦びは知ってたけど、させられる悦びは初めてだったよ。
むしろコレが本当のアタシなんだ。つー訳でユージに惚れたね、ウン」
えっと、大事な友達はドコヘ?友情はどこへ?
「いいじゃないか、細かいことは」
よくない!よくないよ、小西さん!!
「取り敢えず一つ分かったことはさ、ユージってのは超がつく鈍感なんだ」
そうそう……って、呼び捨てにしている!?
「だからここは停戦といこう。いや、むしろ青木がよければアタシはユージを二人の共有財産にしても構わない」
「きょ、共有……」
「つまり3Pだよ」
真顔でなにを言ってるんですかー!
「いいかい、ユージは只でさえ鈍感な上に、近くには川添さんがいるんだ。幼なじみなんだよ。
アタシ達は一歩も二歩も先を越されているんだ。だからこの差を埋めるには協力すべきなんだ」
な、なんか小西さんの言う通りな気がしてきた…!?
「だからアタシは作戦を考えた。そういうのはアタシは得意だからね。まず、ユージを呼び出す」
ふんふん……
「そしてユージの飲み物に目薬を入れる」
は?
「そしてユージに跨る」
ま、跨r…
「ユージは責任をとる。以上」
「それ犯罪じゃないですかー!っていうか目薬っていつの人ですかーーー!!」
「犯罪じゃないよ、ただの逆レイプだ」
「いや、犯罪でしょ?それ犯罪でしょ?」
「知っているかい、青木。痴漢は女が言い出してしまえば99%成立する」
き、綺麗な小西さんに戻ってください……
「この作戦なら川添さんを100%出し抜けるのになぁ」
勝利より大事なものがきっとあるはずです。
「とにかく強姦はやめましょう」
「青木、アンタは女の子なんだから強姦とか牝豚とか肉便器とか
女装プレイとか可愛いクリスとか軽々しく言っちゃ駄目だよ」
言ってない!言ってないです!
「とにかく、鈍感だけど真面目な奴だから、抱いてしまえばコッチのもんだよ、ユージは」
抱かれたいじゃなくて、抱く?!
「ま、監督を脅して来週の日曜日に室江と練習試合をするようにし向けたから、その時になんとかしよう」
脅して!?
「大丈夫、ユージなら途中でいなくなっても誰も気付かないさ」
「そ、そんなことないですよ!私はユージ君いなくなったらスグわかります」
「………可愛いねぇ、青木は」
め、目を開いたまま近づかないでください、小西さん……
「ユージを抱く前に予行練習したほうがいいよ、青木は」
「な、なんの予行練sy……アーッ!!」
その日、私は小西さんの朧胡蜂を浴びて一つ大人の階段を登ったのでした
おしまい
最終更新:2008年10月27日 23:15